ドナルド・ハリソンの骨太のアルト・サックスのソロがいい。 スタンダード「Sweet and Lovely」はリズミックでノリのいいアレンジだが、仕上がりはさっぱりしている。 ジョージ・ケイブルスのパーカッシブなバッキングがフロントをぐいぐいとプッシュする(しすぎ?)。 エンディングのピアノとドラムスはコルトレーン・カルテットのマッコイとエルヴィンの演奏を何故か思い出させる。 次もスタンダードの「It Never Entered My Mind」
ヘンダーソンのミュート・プレイもマイルスを思い出させるリリカルなものだが、ちょっと音がでかすぎる。 ケイブルスのピアノ・ソロは音数が多く饒舌。 寡黙なトランペット・ソロとは対照的だ。 エディ・ハリスの名曲「Freedom Jazz Dance」はハリスの演奏のイメージに近いファンキーな演奏。 筆者はマイルス・デイヴィスの「Miles Smiles」の神経をピリピリ刺激するような演奏が好きなので、この演奏は温いと感じてしまう。 Natsuko Hendersonの「I'm Gonna Miss You, My Darling」 タイトル通り切なく甘いバラードだが、演奏はそれほど甘くない硬派の演奏なことが面白い。 リー・モーガンの「Totem Pole」はラテン・テイストは残しつつ、小気味のいいテンポで進む。 ハリソンのファンキーでアーシーなアルト・サックス・ソロがいい。 最後はメル・トーメの名曲「Born to Be Blue」 ミディアム・テンポのパワフルな演奏だが、騒々しく少し落ち着きがない感じがするのは何故だろうか。 全体にジェラルド・キャノンの重量感のあるベースの存在感が大きい。 録音は、いつもながら全帯域にわたってエネルギー感のあるこのレーベル特有の録音で、申し分ない。
Eddie Henderson:Witness to History
1.Eddie Henderson:Scorpio Rising (feat. Lenny White, Mike Clark) 2.George Cables:Why Not? 3.Charles N. Daniels, Harry Tobias & Gus Arnheim:Sweet and Lovely 4.Richard Rodgers & Lorenz Hart:It Never Entered My Mind 5.Eddie Harris:Freedom Jazz Dance 6.Natsuko Henderson:I'm Gonna Miss You, My Darling 7.Lee Morgan:Totem Pole 8.Mel Tormé & Robert Wells:Born to Be Blue
Donald Harrison(as) Gerald Cannon(b) Lenny White(ds) Mike Clark (ds track1) George Cables(p,e-p)
Recorded on September 13, 2022 at Sear Sound Studio C, New York City.