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旧事諮問録(下)(著者:旧事諮問会/進士慶幹|出版社:岩波文庫) もっとも興味があったのは、「御庭番」のところ。 確かに隠密行動はあったようだが、忍者というわけではないようだった。 いわゆる「伊賀者」ではあっても、身分が伊賀者なのであって、吉宗が紀州から連れてきた人たちが世襲でなったもの。紀州というと、雑賀の者かと思うが、そうでもないらしい。 家康以来の伊賀者は、まったく違う仕事をしている。 上巻と同じく、制度の面にのみ焦点が当てられ、江戸時代の人の感覚というのがあまり伝わってこないのだが、考えてみれば、江戸時代の制度を知っている人が生きている時代なのだから、旧事諮問会のメンバーにとって、江戸時代の感覚というのは肌で感じられたものであり、ことさら聞くまでもなかったのだろう。
1999.11.30
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旧事諮問録(上)(著者:旧事諮問会/進士慶幹|出版社:岩波文庫) 明治二十四年から、江戸時代の記録を残すために、幕府に仕えていた人たちから、江戸幕府の制度がどうなっていたのかを聞き出した記録。 上巻は、御小姓、御勘定組頭、評定所留役、大奥、目付という顔ぶれ。 それぞれ、自分の職分に関することは非常に細かいところまで覚えているが、それをはずれるとほとんど知らないのが面白い。幕府の中では、むしろ、いろいろ交流したりできないようになっていたのだろう。 大奥にいた女性は、十二代将軍家慶の時から大奥にいたというので、随分長い間いたように感じたが、調べてみたら、家慶は1853年まで生きていたのだから、そう何十年もいたわけではない。 この本で、町奉行、勘定奉行、寺社奉行の違いがようやくはっきり分かった。町奉行と勘定奉行は老中の管轄下にあったが、寺社奉行は大名がつとめ、将軍直属だったのだ。 ただ、制度についてはこと細かく質問しているが、人々がどのような考え方をしていたのか、どんなことを楽しいと思って生活していたのか、というようなことにはほとんど触れていないのが残念。 風俗についてもこんなふうに聞き出してくれればよかったのに。
1999.11.23
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浮生六記 浮生夢のごとし(著者:沈復/松枝茂夫|出版社:岩波書店・岩波文庫) 清代の随筆。 妻との情愛が大きな感動を与える。 決して裕福ではないのに、季節季節にそれなりに楽しみ、風雅をともとして生きる、という生き方がありのままに描かれている。作り物ではなく、現実であるために、より強い印象を残すのだ。 六巻のうち二巻は失われていて、特に琉球に遊んだ巻がないのが残念。
1999.11.12
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間違いだらけの時代劇(著者:名和弓雄|出版社:河出文庫) 腰巻きには、「時代考証家協会推薦」と書いてある。こういう協会もあるんだな。 内容は、主に、テレビの時代劇の考証の間違いあれこれ。 知識がある身にとっては耐えられない間違いが多いようだ。知らなければ何とも思わず見てしまうのだろうが。 著者の考えは「あとがき」にはっきり記されている。「時代劇は、チョン髷を頭にのせ、刀を腰に帯びた現代劇であってはならぬ。」「昔の姿に近づけば近づくほど、おもしろくなっていくものなのである。時代考証を正しくやればドラマがおもしろくなくなるというのは、物を知らぬ人の言い逃れに過ぎない。」 もちろん著者は何もかもその時代の通りにやれと言っているわけではない。正直に、文化文政以前のことはよくわからないといっているし、自分の失敗談も語っている。 最も印象に残ったのは、忠臣蔵に関するところ。「発端から終局まで実録とは大違いなのである。」(p51)と、巷間語られる忠臣蔵は実像とはほど遠いといいながらも、「忠臣蔵は、日本人の誇る日本人好みの名戯曲なのであるから、時代考証を介入させるべきではない……とわたしは思うのだ」(p52)と語る。 あくまでも、よりよい時代劇、より面白い時代劇を作りたい、という願いによって書かれた本であることが分かる。 ただし、タイトルはよくない。「間違いだらけの車選び」をもじったものだろうが、こういうタイトルでは、ちょっと志が低く見られてしまうだろう。
1999.11.11
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夜の蝉(著者:北村薫|出版社:創元推理文庫) 女子大生を主人公としたシリーズの二作目。 相変わらず、犯罪の犯人探しではなく、日常生活の中のちょっとした事件の謎を解く。 しかし、謎解きはむしろ添え物であって、主人公の内面の成長が主題であるようだ。 主要な登場人物がそろいもそろって博学多識なのが現実離れしているが、これは小説であって現実ではないのだからしがたがない。
1999.11.10
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道具が証言する江戸の暮らし(著者:前川久太郎|出版社:小学館文庫) 矢立、根付など、実物の写真と見開き2ページの説明文で、主に江戸時代の道具を紹介している。 知らないものが多いし、「打飼い」のように、時代劇で見たことはあっても名前が分からなかったものもあった。 ほう、なるほどと読み進み、あっという間に読み終わってしまった。 川柳の引用も多く、なぜこういうものが必要とされたかもわかりやすく説明してある。
1999.11.05
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復活(上巻)・復活(下巻)(著者:トルストイ/木村浩|出版社:新潮文庫) 昔々子供向けの世界文学全集で読んだことがあるはずだが、ほとんど覚えていない。 そもそも、子供に読ませるような話ではない。 心理描写がやたらと長い。冗長に思える。おまけに、登場人物の名前が理解しにくい。 主人公ネフュードフはドミートリイ・イワーノヴィッチで、マースロワはカチューシャでもある。 ロシアでは当然のこととして理解されることなのだろうが、どうもよくわからない。 上巻は慣れるまで時間がかかった。しかし、下巻になると、だんだん話が分かってきた。 ネフリュードフの疑問はトルストイの疑問であり、社会への憤りをストレートに出した小説なのだ。 主人公はマースロワの救済のためではなく、自分の魂の救済のために行動している。 しかし、それは利己的な気持ちからの行動ではない。 キリスト教とはほとんど無縁の者には理解できない原理によって行動しているのである。 解説によれば、トルストイ自身の体験がこれを書かせたものらしい。 しかし、問題はこの後だろう。続きを書きたいと思ったそうだが、ぜひ書いて貰いたかった。この後に来るはずの、苦悩、失敗、それを読みたかった。 もっとも、作品としては、何をすべきか、という新の目的を見いだすまでが重要だったのだろうが、これでは、読者としては結末がないまま終わられたような気になってしまう。
1999.11.04
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