ジュリアン・サンズ演じる魔法使いと同じ名を持つ「なんでも屋の魔法つかい」もまた最初から、魔力を取られ、次に犯罪で食べていく事を考えるしょぼくれた奴として登場し、早々とこの定説を覆してくれる。盗もうと思った車に乗っていた、こまっしゃくれた少女、図体の大きな犬、果ては車のナビゲーターまでが、魔法使いをコケにする。とんだ車を選んでしまった魔法使いが運命の歯車に散々にいたぶられる物語「妖術使いの運命の車Warlock at the Wheel」をはじめ、「自分の立場をわきまえておらず、ひとところに落ち着いていることができないし、底が知れなくて何をしでかすかわからない」と人間を散々にこき下ろしたあげくに、人間界にやっかいを持ち込む神々の話「見えないドラゴンに聞けThe Sage of Theare」新参者のトニーノ(トニーノの歌う魔法―大魔法使いクレストマンシー)に対して人間並みに焼もちをやくキャット(「魔女と暮らせば」)の冒険を語る「キャットとトニーノと魂泥棒Stealer of Souls」ディズニーに続いて、映画製作者か、映画監督のパロディ?と思われる『夢見師』キャロルの物語「キャロル・オニールの百番目の夢Carol Oneir's Hudreth Dream」 収録。とりわけ、「見えないドラゴンに聞け」は、親の方針でギリシア神話を読まされて、嫌で嫌でたまらなかったジョーンズのうっぷん晴らしとも言える神々の皮肉っぽい描写に大笑い。佐竹さんの、どこかデフォルメした挿絵が、普通でないジョーンズ・ワールドにはよく似合う。