inti-solのブログ

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2018.01.31
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テーマ: ニュース(99434)
カテゴリ: その他
部下に覆いかぶさり背中に噴石直撃…死亡陸曹長
今回の噴火で死亡した陸上自衛隊第12旅団第12ヘリコプター隊の陸曹長(死亡後、3等陸尉に特別昇任)が、部下の隊員をかばい、噴石の直撃を受けていたことが関係者への取材でわかった。
陸自や関係者によると、陸曹長は23日午前、他の隊員7人と共に山頂から滑降を始めた。約10分後、スキー場北側の本白根山から轟音が響き、噴石が降ってきた。すぐに隊員らはコース脇の雑木林に避難したが、林の中にも噴石が降り注ぎ、隊員らは次々と倒れていった。陸曹長は、近くにいた部下を守るように覆いかぶさった。その背中を噴石が直撃したという。(以下略)

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噴火のあと、「自衛隊員が円陣を組んで民間人の親子を噴石から守った」という謎過ぎるデマがネット上に出回ったそうですが、真相は、上司が同じ自衛隊員の部下をかばった、というものだったようです。それはそれで、美談とも言えますが(人が死んでいるのに美談というのもどうか、とは思いますが、それはともかく)、自衛隊員が民間人を、というのとは話は違います。
この種の「美談」系のデマは、比較的罪の軽い部類ですが、昨今はそれが「これを報じないマスコミはけしからぬ」という、更に謎過ぎるマスコミ批判に結びつくことが多々あります。こうなると、罪が軽い、とはとても言えなくなります。

人は何でこうも簡単にデマを信じてしまうのでしょうか。多分、人は信じたいものを信じるという傾向がある生き物だからでしょう。こうであってほしい、という願望に合致する情報があると、疑う、真偽を確かめる、ということをせずに、飛びついてしまう、ということでしょう。

しかし、それらの匿名無根拠なネット上の情報を丸呑みして、、報道機関がその種のデマの拡散に手を貸したとなると、事態は更に深刻です。
こちらの記事 へのコメントでBill McCrearyさんが言及されている、産経新聞の誤報です。

産経報道「米兵が救助」米軍が否定 昨年12月沖縄自動車道多重事故
昨年12月1日に沖縄自動車道を走行中の米海兵隊曹長が、意識不明の重体となった人身事故で、産経新聞が「曹長は日本人運転手を救出した後に事故に遭った」という記事を掲載し、救出を報じない沖縄メディアを「報道機関を名乗る資格はない」などと批判した。しかし、米海兵隊は「(曹長は)救助行為はしていない」と回答し、県警も「救助の事実は確認されていない」としている。産経記事の内容は米軍から否定された格好だ。県警交通機動隊によると、産経新聞は事故後一度も同隊に取材していない。産経新聞は事実確認が不十分なまま、誤った情報に基づいて沖縄メディアを批判した可能性が高い。
昨年12月9日に産経新聞の高木支局長はインターネットの産経ニュースで「沖縄2紙が報じないニュース」として、この事故を取り上げ、沖縄メディアに対し「これからも無視を続けるようなら、メディア、報道機関を名乗る資格はない。日本人として恥だ」と断じ、同12日には産経新聞本紙でも報じている。ネットでは県内メディアへの批判が集中した。
しかし海兵隊は現場で目撃した隊員の証言などから1月中旬、「(曹長は)他の車両の運転手の安否を確認したが、救助行為はしていない」と回答。県警交通機動隊によると、事故で最初に横転した車の運転手は当初「2人の日本人に救助された」と話していたという。
批判を受けて琉球新報は高木支局長に、どのように事実確認をしたのか、県警に取材しなかったのはなぜか、沖縄メディアには取材したのか―の3点を質問した。高木支局長は「当時のしかるべき取材で得た情報に基づいて書いた」と答えた。

事故は昨年12月1日沖縄自動車道北向け車線で発生した。最初に左側の車線で追突事故が発生した。追突現場の後方で停車した別の車に曹長の運転する車が接触し、さらに後ろから米軍の貨物車が衝突した。その後、後方から追い越し車線を走ってきた米海兵隊員の運転する乗用車に、路上にいた曹長がはねられた。
在日米海兵隊のツイッターでは「多重事故で横転した車から県民を救出した直後に車にひかれ」と、救助したと断定した書き方をしていた。その後、このツイートは「多重事故で車にひかれ意識不明の重体になった」と訂正された。
海兵隊は取材に対し「事故に関わった人から誤った情報が寄せられた結果(誤りが)起こった」と説明している。

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米海兵隊は、「誤った情報が寄せられた」ことから間違いを書いたけれど、後で訂正したのだそうです。産経の沖縄支局長は、その訂正前のツィートでけを見て、早合点をしたのでしょう。
だけど、一応は「報道」を業として行う報道機関が、それが事実なのかどうか、当事者にも警察にも直接聞き取りを一切せず、海兵隊のツィートだけをソースに(実際には、おそらくそこから拡散した有象無象の保守派サイトを参照したのでしょうが)ここまで杜撰なデマ記事を書き、あろうことかそれに基づいて、「それを報道しない新聞はけしからぬ」と、沖縄の2紙を非難攻撃したというのだから、はっきり言ってどうしようもありません。


そもそも、仮にこのデマがデマではなかったとして、つまり曹長が本当に人命救助を行っていたとして、それが3000字もの長文記事に値するほどの美談か、というところにも、疑問の余地は大いにあります。この軍曹は、事故と全く無関係のとおりがかりの運転者だったわけではありません。事故の過失責任者ではないでしょうが、接触事故に関わっています。であるなら、知らんぷりして通り過ぎるのは救護義務違反であり、救助はある面では「当然のこと」とも言えます。ただ、場所が高速道路上であり、路上に留まっていること自体が非常に危険なので(実際、轢かれてしまった)、事故車の救助を行わなかったことは、批判には当たらないでしょうが。
いずれにしても、例えば水難事故で溺れた子どもを助けようと、周囲の大人が水に飛び込んで、子どもは助けたけど大人は水死、あるいは重体、という話は残念ながら夏場には時々耳にするできごとです。でも、一般の日本人なら、そのようなことがあっても、大抵はベタ記事で、全国紙に3000字の署名記事でほめられることはないでしょう。
それを「美談の主」が海兵隊員だと、3000字の署名記事で持ち上げる、のは、産経新聞の自由ではあります。が、それに追随しない新聞は報道機関を名乗る資格がないのでしょうか。そんなことは、産経新聞が3000字で称賛記事を書くのと同様、それぞれの報道機関の自由でしょう。
もちろん、これは、もし人命救助が事実だとしても、という話です。その前提すらデマだったのだから、お話にもなりません。
が、産経の支局長は、「しかるべき取材で得た」と言っているそうで。ツイッターだけを根拠に、海兵隊にも警察にも取材をせずに記事を書くことが、産経的には「しかるべき取材」なのだそうです。開き直りにもほどがある。

本題とはまったく関係ない余談ですが、事故にあった海兵隊曹長は、ヘクター・トルヒーヨ氏というのだそうです。完全にヒスパニック系です。ヘクター(Héctor)という名は英語読みになっていますが、これは英西共通の名前(スペイン語の場合は、正しくはeにアセント記号が付きますが)で、スペイン語読みではエクトルになります。付随して調べたところ、奥さんの名前もスペイン系。沖縄の米軍にも、ヒスパニック系は相当多いのだろうなと思いました。

今日の記事は、Bill McCreayさんのコメントに基づいて書かせていただきました。どうもありがとうございます。





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最終更新日  2018.01.31 19:00:04
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