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2019.05.07
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テーマ: 戦争反対(1190)
カテゴリ: 戦争と平和
特攻70年「特攻は日本の恥部、美化は怖い」 保阪正康さんインタビュー
特攻とは何か。特攻隊員たちの遺書が自身の執筆活動の原点というノンフィクション作家、保阪正康さんに聞いた。
ある元海軍参謀にインタビューをした際、戦時中の個人日誌を読ませてもらったことがあります。特攻隊についての記述があり、「今日もまた、『海軍のバカヤロー』と叫んで、散華する者あり」と記してありました。部外秘の文字も押されて。この元参謀によると、特攻機は離陸した後はずっと、無線機のスイッチをオンにしているそうなんですよ。だから、基地では特攻隊員の“最後の叫び”を聴くことができた。「お母さーん」とか、女性の名前もあったそうです。「大日本帝国万歳」というのはほとんどなかった。ところが、そうした通信記録は残っていない。故意に燃やしてしまったに違いありません。“軍神”が「海軍のバカヤロー」と叫ぶ。それは当局にとって、隠蔽すべきことだったでしょうから。 (以下略)

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特攻という「統率の外道」の作戦に、命令には絶対という戦時下の時代といえども、いかに不満が強かったかがよく分かる話です。
が、今から4年半も前の話を何故いま取り上げるのかというと、この話を必死で否定しようとするネトウヨ、あるいは自称軍事専門家が少なくないようだからです。彼らにとっては、「特攻神話」にあからさまに水を掛ける、こういう「不都合な真実」は嫌で嫌で仕方がないのでしょうね。
例えば、こんなToggeterまとめなどが典型的でしょう。

ジョンお姉さんの「特攻に関して毎度毎度テキトーなことを言う人」
「個人日誌」ってさ、「私文書」だよね。それに「部外秘」のスタンプって、公的機関がスタンプを押す個人日誌(日記)って何だろう?よくわかんない。
そもそも、「軍の秘密に該当すること」を「個人日誌」に記述してあるのを許可してスタンプを押す海軍ってよくわからない。
普通は公的機関である軍が個人、しかも軍人の私文書を検閲するなら、「個人的な文書に軍の秘密を書くな」って命令するんじゃないかな、と思うの。
んー・・・海軍の飛行機が積んでた無線機ですか。
単座機だとこんなもんですかね。
96式空1号無線電話機(対地通達距離約100Km)
3式空1号無線電話機(対機通達距離約185Km)
主に特攻作戦を行った場所って沖縄近海っすか?
鹿児島からだと700km以上ですかね。
今でいうところの「圏外」ですね。
どうやって通話したんでしょ?沖縄から九州まで聞こえるほど声が大きかったか、通話のために糸電話でも搭載してたんでしょうか。
「いやそれらの言葉って随伴した誘導機=戦果確認のための機体が受信したもので 地上で受信したものじゃなかったのは普通に書籍で確認できるはずだが・・・」
というコメントがありますが、保坂氏は明確に「基地で叫びを聞くとができた」って言ってるんですよねえ。(一部要約)

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いきなりダメ出ししてしまうと、

「海軍の飛行機が積んでた無線機ですか。単座機だとこんなもんですかね。」

ここに既にダウトがあります。
特攻機は単座機だけだったとでも思っているんですか?ということです。


その元海軍士官は、美濃部正(敗戦時少佐、後年航空自衛隊空将)です。
彼は、断固として特攻攻撃は行わない、という信念の元、夜襲専門の航空部隊「芙蓉部隊」の飛行隊長を務めた人物です。その美濃部の伝記「特攻セズ-美濃部正の生涯-」境克彦著・方丈社2017年の330-331ページに、以下の記述があります。

沖縄特攻の菊水作戦は芙蓉部隊が岩川に移ってからも続いたが、特攻機に使う実用機は底を突き、5航艦司令部は機上作業練習機の白菊を投入する事態に追い込まれていた。
(中略)美濃部は手記に「印象に残るのは、若い少尉の小隊長の適切な事務処理であった」と記しているが、名前を聞くのを忘れていた。この小隊長が~鳥井道夫少尉(後のサントリー副社長)である。
5月末、その鳥井が白菊特攻機から傍受したという電文を美濃部にそっと渡した。
「海軍のばか野郎」
美濃部はすぐに握りつぶして鳥井に言った。
「このことはみんなに知られないように処理してくれ」


美濃部にしても美濃部にこの電文を伝えた鳥井にしても、「参謀」ではないし、細部の描写に上記引用記事とは差異があるものの、その程度の誤りは不思議ではなく、保坂の取材源は2人のいずれかである可能性が高そうです(もちろん、同じ、あるいは同様の無線を傍受した他部隊の参謀から取材した可能性もありますが)。
なお、わたしは未読ですが、美濃部は「大正っ子の太平洋戦記」という自伝があり、そこにはおそらくこのあたりの経緯について、もう少し詳細な記述があるかもしれません。

いずれにしても、白菊は、乗員5名の機上作業練習機なので、いきなり「単座機」に限定しようとした上記のToggeterは、入口で間違えてしまっているわけです。そもそも、特攻作戦には単座の戦闘機ばかりではなく、乗員が2人以上の爆撃機、攻撃機、中には双発の重爆までも投入されていることは、初歩的な知識に属すると思われるので、この筆者はよほどの無知か、あるいは意図的に結論に都合の良い前提条件を設定しようとしたのだと思われます。

なお、機上作業練習機とは、「多座機における操縦員以外の乗員の任務である航法、通信、爆撃、射撃、写真撮影、観測などの訓練を行うための機体」であり、また実際の運用として「近距離輸送や連絡、対潜哨戒等の任務でも利用された。」というので、単座の戦闘機よりも強力な無線が装備されていたであろうことは容易に想像できます。
具体的な型番は分かりませんが、旧海軍の航空機搭載無線は単座機用が96式空1号無線、複座機(艦上爆撃機等)用が同空2号、3座機(艦上攻撃機、水上偵察機等)用が同空3号、多座機(陸上攻撃機など)は98式空4号を使用しています(96式3号は電信つまりモールス信号専用、98式4号は通話専用)。 こちらのホームページ によれば、複座機用96式空2号無線の対地到達距離は公称1100kmなので、沖縄から九州まで、スペック上は余裕で届くでしょう。

また、無線機の公称到達距離は、「公称」でしかなく、その時々の電波状態や周波数(低周波数の方が遠達する)によりますが、公称値より遥かに遠方まで通じることが多いようです。なので、公称到達距離よりも遠いから電波が届かない(はず)というのも、これまた誤った思い込み、ということです。したがって、もし仮に白菊が搭載していたのが単座機用の96式空1号無線だったとしても、沖縄から九州まで無線が届く可能性はかなり高いでしょう。

長々と書きましたが、当時、「志願」のタテマエの裏で特攻を事実上強要する海軍中央に対して、多くの特攻隊搭乗員が不満を抱いていました。何も「海軍のバカヤロー」無線に限らず、基地を飛び立った特攻機が司令部に対して攻撃を掛けるそぶり見せてから敵に向かって飛び去っていく例があったという話はよく知られています。
そこから考えれば、敵艦への突撃直前に「海軍のバカヤロー」を無線に言い残す特攻機は、いて当たり前としか思えないのです。したがって、この話は「さもありなん」であることは明白なのです。


無線がどのくらい届くものか、逆に最大通信距離の公称値がいかにアテにならないかを物語るエピソードに、真珠湾攻撃時の有名な電文「トラトラトラ」があります。この電文は、攻撃隊指揮官淵田美津雄中佐の97式艦上攻撃機からモールス信号で送信されたもので、当然直接日本までは届かない、と考えられたので、機動部隊の旗艦「赤城」がこれを日本に向けて転送しています。
ところが、実際には淵田機の発した最初の電文が直接、6800kmも離れた広島沖の連合艦隊旗艦「長門」に届いているのです。97式艦上攻撃機の装備していた無線は96式空3号無線電信機であり、前述のホームページによれば、その公称最大通信距離は1300kmとなっていますから、その公称値の優に5倍以上の距離まで届いたわけです。もちろん、電波条件のよいときに限られるので、常にそんな距離を届く保証があるわけではないですけれど。
もっとも、美濃部の伝記の引用部分をよく読むと、「電文」とあります。これを字義通りに解釈するなら、無線電話ではなく電信だったと思われます。だとすれば、そもそも公称のスペック上も沖縄から九州まで充分に届くはずです。

※電信のほうが無線電話より遠方まで届きます。いや、届くという言い方は語弊があるでしょう、どちらも電波なので、出力と周波数が同じなら届く距離自体は同じですから。ただ、耳で聞き取るのに、モールス信号の方が人の話し声による通話よりも、電波が減衰したり雑音が混ざったりしても判別しやすいため、結果的に遠くまで通信が到達する、ということです。





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最終更新日  2019.08.13 23:34:49
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