inti-solのブログ

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2022.12.08
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テーマ: ニュース(100321)
カテゴリ: 災害
過去100年で最大規模、トンガ噴火の驚くべき実態を解明

最新の海底調査では、この噴火で10立方km分の岩石が噴き上げられたことが示された。1991年のピナツボ火山噴火を上回り、過去100年間で最大規模となる。
噴き上げられた超高温のガスと灰は、観測史上最高の高度57kmまで上昇した。また、1億4600万トンの水蒸気が大気に放出され、この影響で発生した津波は世界に波及した。
調査チームは周囲の海底約2万2000平方kmをマッピングした。多くが白い微細な堆積物で覆われた不毛地帯となっていた。採取した岩石コアからは、噴出した灰や岩石が崩壊したことによって激しい火砕流が起こっていたことがわかった。
海中で起こった火砕流を実際に目にした者がいるわけではないが、仮説では、高温の灰によって海水が瞬時に蒸発して水蒸気の層が作られ、火山の噴出物が海底を滑るように移動するのだろうとされている。
噴火で陥没したカルデラ地形の周囲では、放射状にいくつもの火砕流の跡が発見された。火砕流は調査範囲の端に当たる、火口から約80kmまで達していた。それ以上先まで到達した破片もあるかもしれない。
最新の調査ではさらに、火口の中央部分が高さ700mも陥没していたことも明らかになった。削り取られた噴石の4分の3は、火山から半径20km以内に落下したようだが、その他の大部分は大気に放出され、その後何カ月も塵となって空気中に漂っていたようだ。
噴煙だけでなく、噴火は驚異的な津波をも引き起こした。一部では、波の高さは15mに達したと言われている。さらに、津波は世界中の海に広がり、地球の反対側にある地中海の海面を30cm上昇させた。
火山から遠く離れたところでは、噴火に伴って大気中を伝わる特殊な音波が6日間で地球を4周した。(要旨)

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トンガの火山噴火については、噴火が起きた直後に 記事を書いたことがあります。
この時点で、噴火の規模は1991年のフィリピン・ピナトゥボ山の噴火に迫る可能性が指摘されていましたが、もちろん実際の噴火規模はその時点では分かりません。
その後続報がありませんでしたが、上記ナショナル・ジオグラフィックの記事によれば、その後の調査で、やはり噴火の規模はピナツボ火山を超え、過去100年間で最大規模であった、ということです。
ただし、引用記事には「この噴火で10立方km分の岩石が噴き上げられ~1991年のピナツボ火山噴火を上回り」とありますが、実際にはピナツボ火山噴火の噴出物総量は10立方kmなので、この記述岳から考えると、噴火規模はピナツボ火山を上回ってはおらず、同程度とも思えます。
この辺りは、引用記事の書き方がやや不十分であり、ピナツボ火山噴火の噴出物総量は10立方kmでしたが、マグマ換算※では、 ウイキペディアの記述 によれば4立方km、独立行政法人産業技術総合研究所地質調査総合センターのホームページによれば5立方kmとなっています。
一方、トンガの噴火の「10立方km分の岩石が噴き上げられた」というのが見かけの噴出物総量なのか、マグマ換算なのかは明示されていないからです。噴火の規模がピナツボ火山を超えると断定している書き方からすると、マグマ換算で10立方kmという意味である可能性が高そうですが。

※マグマが地上に噴出すると溶岩になります。マグマの体積と溶岩の体積はだいたい同じですが、火砕流はマグマより比重が軽いので、マグマに比べて体積がかなり膨らみます。



火砕サージ(火山灰と空気の混ざった高熱の爆風)が海面上を移動することは知られています。例えば、約9万年前の阿蘇山の超巨大噴火による火砕流の堆積物は、四国や山口でも確認されているし、7000年前の鹿児島南方の喜界カルデラの海底火山噴火による火砕流も南九州に到達しています。
しかし、火砕流が海の下を進む、という事態はまったく初耳です。記事の書きぶりから考えると、火山の専門家にとっても「初耳」の事態だったのでしょうが。なかなかに驚くべき事態です。火砕流は海の上を移動するとは限らず、海の底を移動する場合もある、ということですか。

ピナツボ火山の噴火は、事前に火山活動が激化し、小規模の噴火も起こっていたため、周囲30km圏内の住民は避難を済ませており、これほどの規模の噴火でありながら、噴火による直接の死者は出ていません。が、それにもかかわらず最終的には800人もの死者が出ることになってしまいました。これは、降り積もった火山灰の重さによる家屋倒壊や、火山灰や火砕流の堆積物に雨が降ったことによるラハール(火山泥流)が原因となっています。また、避難所での不衛生な生活環境の影響も小さくなかったようです。(現在の災害関連死に相当)

トンガの場合は、小さな島国なので、避難するといっても逃げ場があまりなく、事前に島民が全員避難した島はないようですが、火砕流の直撃を受けた有人島はないようです。なので噴火の時点では大きな人的被害は生じませんでしたが、あれから11か月、大量に降り積もった火山灰による二次的被害がどの程度あったのかは、判然としません。ピナツボ火山の例から考えれば、その後で多くの犠牲者が出ていても不思議はないところですが。

このような巨大噴火がどの程度の頻度で起こるのかは何とも言えませんが、ピナツボ火山と今回のトンガの噴火は、似たような噴火規模ですが、その間隔は30年、かつ過去100年間では最大規模でした。その前の近似規模の火山噴火は1883年クラカタウ火山の噴火です(おそらく、両噴火より噴火規模は少し大きい)。そうすると、だいたい140年間で3回この規模の巨大噴火が発生している、ということ40~50年に1度ということになります。願わくば、日本でこんな規模の(ましてや、もっと大規模の破局噴火は特に)噴火は起こらないことを願うばかりです。





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最終更新日  2022.12.08 19:00:08
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