リュンポリス
2026
2025
2024
2023
2022
2021
2020
2019
2018
2017
2016
2015
2014
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
全1件 (1件中 1-1件目)
1
アメリカで空前の大ヒットを記録している『ブラックパンサー』。ヒーローのオリジンモノとしては、史上最高の興行収入を叩き出しているのではないでしょうか。一世を風靡した『ワンダーウーマン』を軽く飛び越え、あの『スターウォーズ:最後のジェダイ』にも肉薄する成績を打ち立てています。『ブラックパンサー』ブームはもはや社会現象になっており、興行収入10億ドルを超えるのも時間の問題でしょう。これほどまでに大ヒットした『ブラックパンサー』ですから、マーベル好きとしては観ないわけにはいきません!※ネタバレ注意!『ブラックパンサー』を一言で形容するなら、まさに「新世代」のヒーローです。それは人種的に新しいというだけではありません。『ブラックパンサー』ほど社会的メッセージが重厚に内包されたヒーロー映画は、今まで存在しませんでした。この作品のテーマは、現代の複雑な社会情勢を反映しているがために、極めて社会的・政治的なものとなっています。それは、「持つモノ」と「持たざるモノ」の対立です。ブラックパンサーであるティ・チャラ王の治めるワカンダ王国は、ヴィブラニウムという宇宙的超合金を豊富に保有しており、他国とは一線を画した超高度な文明を保持しています。あらゆる攻撃を弾くキャプテン・アメリカの盾がヴィブラニウム製として有名ですが、それほど強力な金属が腐るほどあるのですから、間違いなく地球最強の国家でしょう。そんなワカンダ王国が取っていた政策は、「国際社会から孤立すること」でした。ヴィブラニウムは核にも勝る戦略兵器であり、言わばヒッタイト王国における鉄のようなものです。それを使って世界征服することもできますが、頭の良いワカンダ人たちは、拡張政策がいずれ綻びを生むことを知っていました。アリストテレスの理想国家の条件である「自給自足が達成できる程度の大きさ」を従順に守っていたんですね。だからこそ、ヴィブラニウムを国際競争に巻き込まないために、「ワカンダ王国は第三世界の取るに足らない発展途上国」という偽の情報を世界中に流布し、徹底的な情報統制を実施しました。そして、世界中のあらゆる事件から目を背け続けたのです。例え、ワカンダ人たちと同じ「黒人」が、世界中で奴隷として酷使されようとも、差別されようとも、何も手を差し伸べず、ただ隠れながら傍観するだけだったのです。「難民は面倒ごとを持ち込むだけだ」ウカビの一言は、ワカンダ王国の自国第一主義を、現実の国際社会に適用させます。「黒人が迫害されていた時に、お前たちは何をしていた」キルモンガーの怒りは、決してマーベル・シネマティック・ユニバースだけのフィクションではありません。ナショナリズムか、グローバリズムか。この問いは、トランプ大統領がアメリカ・ファーストを掲げてから、極めてコントラバーシャルな議題と言えるでしょう。事実、ティ・チャラも国王としてこの問いに悩み続けます。今までのヒーローも苦悩に満ちていましたが、あくまでも「個人」ベースの悩みでした。自らの称号に「アメリカ」の名を刻むキャプテン・アメリカでさえ、『シビルウォー』で国際協定に反したように、国を顧みることは殆どありませんでした。国王として、自国民を幸福にしなければならない責任を背負うヒーローとして、ここまで真っ向から政治にぶつかったヒーローは、ブラックパンサーが初めてではないでしょうか。ティ・チャラが最後に出した答えは、ナショナリズムではなく、グローバリズムでした。ワカンダ王国は、「持つモノ」としての責任を世界規模で背負うと決意したのです。「賢者は橋を架け、愚者は壁を作る」これほど痛烈で明確な政治批判があるでしょうか。あらゆるものが繋がる社会で、自国だけに目を向けることはできません。全てが全てに連鎖する時代。ティ・チャラはそれを見据えていたのかもしれません。このように、『ブラックパンサー』はヒーロー映画としては珍しく、極めて社会派の映画でした。「黒人ヒーロー」にばかりスポットライトが当てられている今作ですが、本作が社会現象と化した真の要因は、現代に即した社会的メッセージにあるのかもしれません。
2018.03.10
コメント(0)