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深山木
【11】金次郎の朝夕の行いについては、昨年も申し上げたとおり、食事も粗末で、衣服も粗末なものを用い、家も障子は反古(ほご)を張り、畳などに至るまで見苦しい事などは少しも構いません。すべて日用の事は倹約を専らにしております。また人に施す場合には米・金は勿論、衣類、夜具などに至るまで心よく支給し、荒地を開墾し、家の建築などする場合には、大工・職人・開発専門の技術者などを村へ世話し、少なからず食料なども支給します。ご領地で工事または開発などへ取りかかる時には別に賃金を支給し、また使い道の無いときは青木村その外にも支給し、何事も無駄が無いように厚く取り計らい、さらに荒地を開発する時や堰や用水路工事、家の建設などに至るまで取りかかるときは、平日の心持より格別の違いにて、費用がかかるにもかまわず努力し、既に今年の春以来それぞれ家の建設7軒を新規に建て、およそ金350両余りもかかったと聞きました。そのほか、物井村のまぐさ場に続く場所、堰用水の新規用水路で巾9尺長さ600間余りの場所は今年の正月にはやばや取りかかって、わずかな時間でできました。この場所の用水路については、数年物井村の用水場前で、竹や木を始め少なからず費用もかかり、その上、前からありました揚水用の堰ですが、川の端へ寄っている田畑はすべて湿気が強く、いずれ不作がちで、数年村でも困っていたということです。次第に田畑も立ち直り、その上揚水等の費用もなく、自然と用水の便利を考え、まぐさ場に続く場所の用水路工事もできあがったとのことです。右の場所は非常に水につかる場所で、雑木などは勿論、草ですら生育がよくない場所でしたが、このたび用水路で湿気が取れ、その上その堰の所々へ用水路を作り、地形を上げ、自然と湿気が去って、次第に林になるようにし、村の為になるようにと、今年の春、多くの杉苗を植え付けて、なお次第に植えていると聞いております。
このような事などで、御領地が相続する道を深く考え、誠意をもって世話いたしましたので、零細な農民たちはたびたび恩恵を受けて、子どものように懐くよう自然となっていき、その様子はいつとなく近国近郷へ響きまして、既に細川長門守様、川副勝三郎様から御依頼があり、その外の方々からも追々御依頼が来て、近在の者たちは、つてを頼んで開発などの次第を聞きたいと尋ね来るようなっているという事です。
「宮室をひくくして力を溝洫(こうきょく:用水路作り)に尽す」(論語、泰伯)と申す事に相当するようなことだと申しておりました。
【11】金次郎義、朝夕身分之行、昨年も奉申上候通、麁飯麁服を用ひ、居宅或ハ障子古反張、畳等ニ至ル迄見苦敷事少も不相構、万端日用之事は倹約を専相用候得共、又人ニ施し候ニは米金は勿論、衣類夜具等ニ至迄心能遣し、荒地起返し・家作普請等ニも、大工・職人・破畑人足等も村内え世話致置、不少扶持米等も差遣、御知行所ニて普請或ハ開発等え取掛り候節は別ニ賃銭差遣、又遣道無之候節は青木村其外ニも差遣、何事も費無之様厚取計、且荒地開発致候節、或ハ堰・掘割普請、家作等ニ至迄取掛り候節は、平日之心持より格別之違ニて、物入等ニも不構勢力を尽し、既ニ当春以来夫々家作普請計も七軒新規建家作仕、凡金三百五拾両余も相掛候様相聞、其余、物井村秣場野路続之地所、堰用水新規掘割、巾九尺長サ六百間余之場所、当正月早々取掛、暫時ニ出来仕候。右場所掘割候義は、数年物井村用水揚場前ニて、竹木を始不少入用も相懸、其上在来之揚ヶ前堰上候ニ付ては、右川端え寄候田畑は悉く湿気強、何れも不作仕、数年村方ニても難渋罷在候由、往々田畑立直り、其上揚ヶ前等之物入無御座、自然と用水便利を考、秣場野路続之場所掘割堰普請出来仕候由。然所右之場所至て水附之場所ニて、雑木等は勿論、草さへ生立も不宜候之所、此度掘割候ニ付湿気取レ、其上右之堰へ所々え溝を割、地形捲上ヶ、自然と湿気を去り、往々立出林ニ取計、村為ニ相成候様ニと、当春多分之杉苗植付、尚追々植付候趣相聞候。
卑宮室而尽力ヲ溝洫と申事ニモ可相当之由、申聞候。
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