仙台市でラムネ製造会社のほか、教育用品の販売、ホテル経営など次々に事業を成功させていた江川金鐘さん=「元禄」社長(68)=の所へ、閑古鳥でも鳴きそうな近くのすし店の主人が相談に来たのは昭和四十一年。金鐘さんはアイデアマン。既に二十代でラムネやサイダーなど清涼飲料を作る機械を発明し、特許を取っていた。
相談を受けて、とっさに思い浮かんだのが、大阪に住んでいたころ一皿十円のすし店が大繁盛していたこと。「いっそ屋台でも開いて、そこで安いすしを握ってみてはどうだい」
一皿二十円のこの屋台ずしは大当たり。うわさを聞いた客が連日ワンサカ詰め掛け、長い行列ができた、という。ただ欠点は、お客さんを長く待たせなければならないこと。金鐘さんがまたまたアイデアを出し、カウンターを丸くすることを勧めた。確かに面白い発想だったが、今度は作る方が大忙しで、それこそぐるぐる目が回る。「それならすしを回してしまえ」
仙台市の一番町にベルトコンベヤーを使った回転ずし「元禄寿司」がオープンしたのは昭和四十二年。金鐘さんが四十五歳の時だった。
それまですしといえば、フグや懐石料理と並んで高価な食べ物とされていた。それが一皿五十円と安い値段の魅力もあって、サラリーマンが昼食時には列をなして食べに来て、一般のすし店から反感を買うほどだった。
「多くの人にすしを安く食べてほしかった」と金鐘さん。今では、店も国内外に直営・フランチャイズ合わせて二百十店に上っている。「元禄」の専務江川進興さん(37)は「ネタは生産現地から大量に仕入れ、大冷蔵庫で保存、そこから各店に搬送する効率的な流通システムを取っているのがうちの自慢です」と安さの秘密を説明する。
土、日曜日の昼過ぎ、仙台市郊外の回転ずし店は家族連れでにぎわう。「わさびを抜いとこうか」と子供に話しかける店員。「これからは職人かたぎの人より、経営センスを備えた人が必要になる」と話す進興さんは、すしを握る機械を発明、特許を取っている。
「企業は同じことを続けたら停滞してしまう。常に新しいものにチャレンジしていかないとね」
写真/気軽に食べられる回転ずしは仙台生まれ
PR
フリーページ
カテゴリ
コメント新着