『福島の歴史物語」

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2007.10.08
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 ──えっ、来玄尼? ええ、よく憶えていますとも。旅の僧から聞いたと言って金山の在処を三つも教えてくれたのが来玄尼でしたから。あそこから採れる金には随分助けられ・・。えっ、もしかして・・、まさかあの来玄尼も母上だったと? 
「そうですよ。いくら待っても来てくれないから、私の方から出かけてきたのです。あのときは祐長も、『なんと優しい子になったのだろう』と思いました」
 そう言われて祐長は、照れを隠して頭をかいた。
「しかし息子などというものは、いくつになっても母の私が見ててあげないと駄目なものなのです。例えあの世とこの世に分かれて住んでいても母は母。いくら大人になったとは言え、息子は子ども、気になるものなのです」
「・・」
「それでもお前の父上は私のことを、『もう一人前の領主として安積におるものを、いつまで口を出す積もりか?』と言って笑っておられました、だから私は言ってやりました。『立派な父上に負けるようなことがあっては、あなた様が笑われましょうに』と」
 雪女は今度は祐長の方に身体を向けた。しかし祐長の目には、下を向いた雪女の顔がほの暗く、確とは見えなかった。
 ──母上・・。
 祐長はよく見ようとして雪女の顔を下から覗き込んだ。その目が怪しく、薄緑に光っていたが恐怖は感じなかった。
 雪女は顔を少し上に向けた。
「どう? 祐長。祐時が言っていたように母は美しい?」
 ──顔が・・お顔がよく見えませぬ。しかしそのお顔は・・、ああっ確かにあのときの来玄尼! 母上は何かにつけ私を助けに来てくれていたのですね。
「ほほほ、いいのよ。私にはとても楽しいことだった」
 雪女は微笑みながら両手を祐長の脇の下に差し入れると、そのまますーっと抱き上げた。
「祐長や、私はこれから父上のところに行きますが、お前が一緒に冥土に来てくれれば私も安らかな気分で祐経様と暮らせます。今までは土肥実平様や双方の舅、姑様とも一緒でしたから、これでもなかなか気を遣っていたのですよ」
 今度は雪女は笑わなかった。
 ──そうだったのですか。しかし母上が喜んで下さるなら、私に否やはございませぬ。それに妻もあの世で待っていましょうから、今すぐにでもお供致しましょう。
 雪女は安心したような顔を見せた。
「ところで祐長や。何かこの世にやり残したことがありませぬか?」
 雪女は自分の顔の前まで祐長の赤ん坊のような身体を持ち上げると、高い高いをしながら訊いた。そしてその祐長の手は、無意識のうちに雪女の胸に伸びていった。
 ──ないこともありませぬ。それは三男の祐朝を、兄上の要請もあって日向の国富に派遣したこと。それから年の離れた末っ子・祐広の先行きです。母上・・、九州は確かに遠い。そこは遠い京の都から遙かに遠い南ですから。私も息子を手離したときは流石に辛かった。やはり自分の手の届く所にわが子がいないということは、淋しく心配なことですね。この年になって、はじめて母上のお気持ちが分かるような気がします。
「ほほほ、ようやく親の気持ちが分かるようになりましたか?」
 祐長は照れ笑いを浮かべていた。
 ──それはともかく、祐朝は遠過ぎるから訪ねて来たこともありませぬが、日向に居る孫たちも今は大きくなっている筈。ですから夢にでも見ればそれこそただ嬉しくて天にも昇る心地ですが、すでに私は隠居の身。もはやいつ逝ってもおかしくありませぬ。子どもたちも、そして孫たちもそれなりに生きて行きましょう。私からのこれ以上の指図は不要にございましょう。
 そう言いながらも祐長は懸命に雪女の乳房をまさぐっていた。しかしその豊かな乳房は、氷のように冷たかった。
 雪女はまた「ほほほ」と笑った。そして言った。
「そんなに母の乳が欲しいかえ?」
 祐長はこくりと頷いた。
「こんなに冷たくても?」
 そう言って冷たい乳房を押し付けてくる雪女の顔を、祐長は下からじー、と見上げた。その目は怪しく光っていた。しかし祐長はそーっと乳房をくわえた。







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最終更新日  2007.11.09 16:51:44
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