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名前だけ知っていたものの、今日まで読んでこなかった本の一冊。怪奇小説だということも知らなかった。表題作。放校になった少年。その妹。ヒロインは家庭教師で、二人の面倒を見ている。家の主人は「自分は何も関わりをもちたくない」と言って序盤に退場。以後、ヒロインの家庭教師の視点で物語は語られていく。どうも『人間失格』の主人公が幼少の頃に下男や女中たちから教わったことを、この家の子どもたちも教わったらしいのだが、どうもはっきりしない。少年が放校になった理由もはっきりしないし、少年に悪さを襲えた「下賤の者」達が死後も屋敷にとりついているらしいのだが、どうもそれも曖昧模糊としている。どうもどうもどうもだ。ただ、この家庭教師、どうもまともではないらしい。結構妄想が入っている。幽霊の存在は小説の構想としては「事実」なのかもしれないが、彼女が事態をより複雑に、こんがらがったものにしているという印象はぬぐえない。全てとは言わないまでもかなりの程度幻覚だったのではないか、と思えてくる。曖昧模糊という意味では、『藪の中』にも似ている。考えてみれば芥川にも怪奇小説の類は多い。以下、本書に収められている別の短編を紹介すると…「古衣装の物語」古典的な三角関係。男は妹と結婚した。姉は嫉妬した。妹は若くして死んだ。自分の衣装を娘に残して。姉は男と再婚した。派手好きな彼女は、妹の衣装を求めた。男は姉の魅力に逆らえずに承諾した。だが妹の衣装を身にまとった姉は…「幽霊貸家」その家は幽霊屋敷と呼ばれていた。3か月に一度、老人がお金を取りに来るだけだった。青年に語ったところによると、老人は娘の結婚に反対したのだという。娘は死に、家にとりついた。老人は幽霊を店子にして、3か月に一度、家賃をもらいに来るのだという。しかしある日、老人は自分でいけなくなり、青年に託した。青年が屋敷に入って見ると、そこにいたのは幽霊ではなく…「オーウェン・ウィングレイブ」彼は軍人の家系に生まれた。しかし兵役を拒否した。一族から疎まれたのみならず。先祖たちの肖像画からも反感を買っていたらしい…「本当の正しい事」ある有名な作家が死んだ。未亡人は彼の伝記を遺したいと思った。ある人に、伝記作者として白羽の矢が立った。彼は故人の書斎で資料をあさりながら、故人の霊魂らしき存在の支援をそこはかとなく感じる。しかし実際のところ、故人はただ自分の存在に気付いてほしかったのであり、もっと言えば、伝記など書いてほしくなかったのである。…【中古】 ねじの回転 心霊小説傑作選 創元推理文庫/ヘンリー・ジェイムズ(著者),南条竹則(訳者),坂本あおい(訳者) 【中古】afb
2021.12.04
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本書の中でもっとも内気な作家さんという印象を受けた。絵が好きな人らしい。「かぜひき」『火山灰の下で』『珍客』という掌編二篇。前者はポンペイ、後者は老子に取材。なるほど絵の中の世界こそもうひとつの現実への入口かもしれぬ。鏡のように。病中のうわごとと断ずるなかれ。「屋根の下の気象」幼いころ、屋根の上に登って見た町の景色。これは小説だろうかエッセイだろうか、と考えてしまうあたり、すでに作者の掌の上で転がされているのかもしれない。結末に至るプロセスの描写の方がよほど幻想的である。「ある絵画論」看板だけでまだ作品が収納されていない美術館に入った主人公。そこで見た二枚の絵は、彼の心象風景だったのか?「墓碣市民」死んでなお、死亡届をだされなかったがゆえに、今も生きているようにふるまい、投票にも来る男。作者のアウトサイダー意識の投影だろうか。「好もしい人生」集中随一の喜劇あるいはコント。自殺志願の男が一転して仲人を頼みに来る。その経緯は?「舶来幻術師」江戸川乱歩に勝るとも劣らぬ耽美と少年愛の探偵小説。語りが幻想的である。「角の家」すみ、と呼ぶのだろうが、つの、と読めば動物の暗示。実際その家には、狒々になったご主人とその妻と、影武者が住んでいた。ミステリタッチで真相を知った語り手と狒々の主人の交歓が哀愁を呼ぶ。「ある生長」マタンゴよろしく、どんどん巨大化しつづけるキノコ。パニック小説のはずなのに、登場人物が自然災害のように受けとめるところが日本のお話らしい。「山姫」彼女が本当に狼と人間の子で会ったかどうかは分からぬ。だが人間の子にかぶりつく結末はホラーだ。「こわい家」小説かと思ったら随筆だった。「壁の男」作者が入院中に書いたものらしい。壁のシミや落書きを生きているものと仮定したらどういう物語になるだろうかという見本のような短編。「さんどりよんの唾」作者若かりし頃の断章。箴言。あるいは散文詩。「浮き草」中身を読んで表題から連想するのは女性のアンダーヘアである。一夜の交合は『雨月物語』の一編ほどではないが、夢幻であったのか、それとも少年の夢精だったのか。「猫の泉」フランスのさびれた町、ヨン。そこは40人ほどの住民しかいない小さな集落だった。そこの三十人目の訪問者になった主人公は、時計の予言を聞いてくれと町長から頼まれる。洪水の予言を聞いた彼は、しかしそれを住民に知らせなかった。集落は洪水で滅び、彼が戯れに危機を告げた猫たちだけが生き延びた…幻想文学としては随一の名編。「硝子の章」作者若かりし頃の随筆。万華鏡への偏愛。作家「日影丈吉」の原点だと思う。新編・日本幻想文学集成 1
2021.10.22
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作り物語の作家、という印象が強かった。よくいえば「奇妙な味」の短編集である。「火星植物園」火星にも地衣類ぐらいはいるだろうと信じられていた時代。患者の妄想は人間の皮膚に寄生する火星型植物に及んだ、という作中作と、そのオチを語る医者。「影の舞踏会」真実はおそらくオチにある通りなのだろうが、そこに至るまでの女の思い込みと妄想がすごい。そして実は男の恋人は刑事さんだったらしいという暗示。「地下街」その降霊術はやはりいかさまだったのか。それでも主人公にとっては、魂の救済だった。「牧神の春」その動物園は、だれでも見れるわけではありません。誰でも入場できるわけではありません。まず、呪文を唱え…「薔薇の獄」諸事情により中絶せざるを得なかった息子が、そのまま生きていたらかくあらんという姿で会いに来た。少年愛的な要素も感じる。「薔薇の縛め」舞台は一転して西洋。どうも中世らしい。善政で知られた領主には人に言えないマゾヒスティックな趣味があり、それをある方法で満たしていた…「被衣」「薔薇の縛め」の男女を逆にしたような掌編。聖女のような奥方には、実は彼女自身も気がつかなかった倒錯的趣味があり…「薔人」絶世の美青年で、人の心を操り、金にも女にも不自由しない主人公。而して現実は、精神病院にいるこの上もない醜男だった。「幻戯」魔術師、というよりうらぶれた手品師が主人公。これも「薔人」と似たようなオチだ。ただし一層身につまされるのは、過去を美しく書き換えることによって、生きていかれる現実もあるということを、主人公が自覚し、かつ読む者が痛感するからである。「日蝕の子ら」昭和18年。日本が破滅に向かって突き進んでいるときの、とある小さな世界の嘘と「しあわせな結婚」を、虚構に託して謳いあげた佳品。「銃器店へ」少年は青年のドッペルゲンガーだったのだろうか。終わりが始まりにつづく果てしない悲劇。「卵の王子たち」ここでいう自閉症は現代でいう「引きこもり」に似た概念で扱われているので注意。ミステリー的ファンタジーだが、ここにも少年愛的趣味が見られる。「夕映少年」少年は、いや患者の姿さえ、「わたし」が作り出したまぼろしだったのか?「星の断片」昭和49年から昭和7年にタイムスリップした青年。長編にすれば喜劇になるところを、実りなき男女のやり取りに集約して抒情的に謳いあげた一篇。新編・日本幻想文学集成 1
2021.10.21
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本書に収録されている作家の中で紅一点。「貝のなか」閉鎖的な歯科大の女子寮での出来事。登場人物はイクラとかスジコとか海に関する象徴的な名前で呼ばれる。主人公の入寮で始まり退場で終わるこの物語は何だか倉橋版「坊っちゃん」のような気がしないでもない。それにしても「わたし」の男友達の左翼的通俗さよ!「囚人」プロメティウス神話を逆手に取ったような現代の寓話。逃亡の企ては儚くも雲散霧消し、あとには永遠に続く男女のSM的関係が残った。「夢の中の街」作者の故郷は高知なのだろう、と推測できる。ただここにあるのはローマ字表記される架空の都市。それもKouchiだかKohchiだかKochiだか判然としない。故郷は遠きに在りて思うもの、というが、主人公はどうも故郷で父に犯され、その父を殺してしまったらしい、とも読める。「宇宙人」卵から生まれた宇宙人は両性具有だった。発見者である姉弟は、それぞれの方法で宇宙人を慰みものにする。姉は結婚式場から抜け出し、宇宙人の穴の中から虚空に飛び降りる。弟も後に続いたかどうかは、わからない。「隊商宿」聖書のアブラハムとサラの話、ソドムとゴモラの話をSF風にしたもので、そうそう「神」の思い通りになんかいくものか、という気概がオチに表れている。「白い髪の童女」能の「安達ヶ原」を思わせる老女が登場する。三島由紀夫の古典的戯曲にみるような男女の愛憎のすさまじさに圧倒された。もっともここでは男の身勝手さが強調されているが。「虫になったザムザの話」『変身』のパロディのような小品。「アポロンの首」それは果たして首であったのか植物であったのか。美男子の首を次々と生む木があれば、男などいらなくなるかもしれぬ。「神秘的な動物」世界の終わりはどのようにもたらされるだろうか? エントロピーの増大? それともリヴァイアサンやゴジラといった怪獣によって?「ある老人の図書館」その老人が読んだ本は、読まれる端から白紙になった。その老人が図書館で死んだとき、老人は一冊の本となり、吸収するに値しなかったものが排泄物として襖の中の古新聞のように積み上げられていた。【送料無料】新編・日本幻想文学集成 1/安部公房/倉橋由美子/中井英夫
2021.10.20
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この本は四人の作家のアンソロジーである。しかし五十音順に、この人からいこう。「デンドロカカリヤ」雑誌掲載版つまりはオリジナルというわけだ。一言で言えば悩み多き人間が植物になってしまう話だが、現実的に考えれば、精神分裂病(当時の表現)になって病院に収容(これも当時の概念)される話のように思えなくもない。「カフカ」の変身は虫だったが、虫はまだ動くことができた。しかし植物に変化してしまった人間は、動くことさえからわず、「標本」としてさらされ続けることになる。「詩人の生涯」真説・イエス/キリストの誕生のように思えた。クリスマスの俗説によれば、イエスもまた雪の最中に生まれたようにイメージされている。而してその生涯は、既成の価値観への反逆と新しい価値の創造であった。「家」何世代にもわたって家に住み続けている先祖。それは守るべき伝統なのか、断ち切るべき因襲なのか。「鉛の卵」安倍公房版「タイム・マシン」。八十万年後の世界は植物人のユートピアだった。しかし実は彼らこそ、どれい人間から保護されている希少種族だったのだ。タイムマシン「鉛の卵」からやってきた古代人(現代人)のアイデンティティはどちらに帰属するや?「チチンデラ ヤパナ」どこかで見たことがあると思ったら、『砂の女』の冒頭部分だった。見えざる壁。異郷。蟻地獄。「カーブの向こう」カーブの向こうには見慣れた風景がある、それは予想でなく確信であり、もっと言えば日常である。しかしその日常感覚が崩壊してしまったら?「ユープケッチャ」ユープケッチャは昆虫の名前だそうである。代謝が極めて遅く、自分の糞を微生物に発酵させて食し、自給自足的に生きる。安部さんの小説の代名詞ともいうべきこの名前のない主人公も、寓意的にユープケッチャなのかもしれぬ。地図についての話が、現代のグーグルマップの先駆けのようで、興味深かった。「砂漠の思想」映画「眼には眼を」の評論の体をとった作者の哲学的随筆。日本人は先の戦争で被害者であったと同時に加害者でもあった、ということを遠回しに伝えようとしている。「クレオールの魂」寄せ集めのピジン言語から生まれるクレオール。日本語もそういう古代のクレオールの生き残りであるという説があるそうだ。なるほど、そう考えれば日本語が琉球語を除く他のどの言語とも姻戚関係が遠いことの説明がつく。またチョムスキーの生成文法論によれば、言語を生成する能力は人間に与えられた固有の力である。ピジンが現実に何とか適応しようとする寄せ集め集団の共通言語だとすれば、クレオールはそこから不死鳥のように飛び立つ、伝統(因襲)への反逆者かもしれない。「ペンは剣よりも強し」。言葉を獲得したときから、猿は猿であることをやめ、ヒトとして歩み出したのだ。新編・日本幻想文学集成 1/安部公房/倉橋由美子/中井英夫【3000円以上送料無料】
2021.10.19
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四編の中編小説を収める。「狂気のマンクトン」ウィルキー・コリンズ主人公が抱いていた考えが「狂気」であり「妄想」であると考えるのは徹底したリアリズムだ。だがそれはこうした怪奇小説を作り物ではなくリアリズムの産物だと世間に対して申し訳するための言説にすぎない。幽霊は信じるものの眼には見えるのであり、それは妄想ではない。同じように、先祖から伝わった予言や警告も、部外者の眼にどのように映ろうとも、当事者にとっては切実なものなのだ。苦悩から歓喜へ、歓喜から絶望へ。このアップダウンはまさに大衆文学の十八番である。「剥がれたベール」ジョージ・エリオットSFでいうテレパシーとか未来予知をテーマにした小説も、ゴチック風に料理すると全く色彩が異なって見える。死者の(一瞬の)蘇生というスパイスも相まって、思わず降りかかった主人公の災難と境遇に読者は同情したくなるだろう。それにしても、恋は盲目とはよく言ったものだ。彼が彼女に殺されなくて、本当によかった。「クライトン・アビー」メアリ・エリザベス・ブラッドン「狂気のマンクトン」とよく似ている。過去の「亡霊」が男を殺す、という構図も、アビーという固有名詞も。語り部が男ではなく女に変わったせいで、ヒロインに焦点が当てやすくなった。彼女のプライドの高さと夫への愛情を、読む者は忘れがたく感じるだろう。「老貴婦人」マーガレット・オリファントオリファンとはこの人のことではないかと思う。本中編も心霊小説で、老婦人が愛した血のつながらない小娘に残した遺言状を巡ってのコメディである。もっともコメディと感じるのはこちらが内情を知っているからで、物語の中の「生きた」登場人物にとってはさぞ気味が悪い出来事だったろう。序盤の遺言状作成を巡るやりとり、中盤の煉獄でのやりとり、下界における物語終盤の「幽霊」話、そしてハッピー・エンドを暗示させる結末。映画向きのお話だと思うのだが、だれか撮ってくれないだろうか。ヴィクトリア朝怪異譚 [ ウィルキー・コリンズ ]
2021.10.03
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『ガラスの仮面』の姫川亜弓の「演技」でその存在を知った物語だが、今回あらためて完訳を読んだ。感想は、やはり、怪奇幻想小説に仮託したレズビアン小説ではないか、というものだ。作者は否定するかもしれないが、作品は作者から独立するものだ。ちなみにブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』は本書から派生したものという。アンハッピー・エンドでなくて、よかった。そのものがないので、似た本の紹介。↓吸血鬼カーミラ/レ・ファニュ/平井呈一【3000円以上送料無料】吸血鬼カーミラ Carmilla【電子書籍】[ レ・ファニュ ]
2020.10.30
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「血の小姓」の詩人による怪奇な短編。転校生が地元で恐れられている「風の又三郎」(嘘)の目をくりぬき退治したところが、どっこい奴さん健在で、大人になって訪れると昔の邑は廃墟同然になっていた。今は飛行機乗りになっていた主人公は、空中で20年前と変わらぬ姿の又三郎(嘘)と対峙し、今度こそ本当に退治するが、自分もやられてしまった、その死の縁で書き綴った物語、という体裁である。【中古】 少年小説大系(第18巻) 少年SF傑作集 /月路行客(著者),會津信吾(編者),横田順彌(編者),尾崎秀樹 【中古】afb
2020.04.25
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例によって少年小説大系の一環だが、SFというよりこれはヒロイックファンタジーであり、こちらの方に分類した。武力をもたない平和主義者では駄目だ、という主張は九条至上主義者にはお叱りを受けるかもしれないが、弱肉強食の戦前の時代を考えればリアリティがある。何しろ大正二年の作である。二年後は第一次世界大戦勃発だ。悪魔の国へ乗り込んでの悪魔退治というのは、桃太郎に着想を得たものだろうか。わからないが、お供の犬猿雉は本作に登場しない。代わりにあの白雪姫が、主人公のパートナーとして活躍する。内容的には通俗だが、文体に読ませるものがあって、今日読んでもなかなか面白い。まあ梗概のようなところもあり、一度読めばたくさんではあるが。【中古】 少年小説大系(第18巻) 少年SF傑作集 /月路行客(著者),會津信吾(編者),横田順彌(編者),尾崎秀樹 【中古】afb
2020.04.23
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ブラッドベリは抒情詩人である。この本も、児童書のカテゴリーに分類してもよかったのだけれど、図書館の一般書のコーナーにあったので。簡単に言えば、「夜を怖れることはない」という寓話。夜=闇ではない。確かにダークではあるのだけれど、夜には夜の楽しみ方がある。だから、夜のスイッチをつけたり消したりして楽しもう、というメッセージが伝わってくる。もちろんブラッドベリのことだから、こんなにお説教臭くなく、もっと詩的なのだけれど。児童書のコーナーにあってもいい本だと思うけれど、子どもだけに読ませるのはもったいない。物の見方を変えたい人に、おすすめの一冊である。『中古』夜のスイッチ
2020.04.21
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「獣人街」中編。神に乗っ取られた男が、教祖の予言を無にすべく、関係者を殺しまくるお話。だがオチを見れば、神の企み(抵抗というべきか)も…「巨根街」中編。ある日空に浮かんだ、巨大な男性器の形をした不動の雲を巡るドタバタ喜劇。オチはSF風。以下短編。「夢中犯」一人称。よくできているが、煙草を吸わない人はどうやって捕まえるのか?「顔」一人称。タクシー強盗写真に写った人影は、被害者のものでも、犯人のものでもなかった。あなたの影だったのですよ。あなたはいったい誰ですか? あれ、どこに行ったんですか?「無縁の人」運命には逆らえないと思いますか。東洋的な、あまりに東洋的な作品で、ハインラインなら「否!」と机をたたきそうなな短編。「失われた水曜日」一人称。空白の24時間は、確かに存在した。しかしその存在を感知した者は…「他人の掟」怪奇というより恐怖小説。権力が本気になれば一人の人間を社会的に抹殺することくらい…「幻視人」一人称。強い願望から生まれた理想の女性。「衝動買い」一人称。成り行きで衝動的に買ったインクは、遺書しか書けないインクだった。「黙って坐れば」一人称。占師が語るお客への説明。「浮気に悩まされているが、事を荒立てなければ、すべてが解決する」とはどういう意味であったか?「蒸発」果たして彼は帰る家を間違えたのか、それともパラレルワールドに迷い込んだのか?「黒の収集車」一人称。黒いビニール袋には何が入っているか? またそれを利用した男のその後の運命やいかに?「ボール箱」一人称。ボール箱が語っているのに、なんだかえらくエロチックなお話。「赤い斜線」一人称。乞食が語る落ちぶれ話。【中古】 幻視街 / 半村 良 / KADOKAWA [文庫]【宅配便出荷】幻視街【電子書籍】[ 半村 良 ]
2019.04.15
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中には乱歩の言う「変格推理」的なものもあるが(特に最後の作)、それはさておき、紹介を進めたい。「身勝手な巨人」オスカー・ワイルド『幸福な王子』に収録の一編。「きりしとほろ上人伝」は芥川版「身勝手な巨人」か。「追い剥ぎ」ダンセイニ卿政治犯でさらし首になった男の遺体と、聖職者の亡骸をすり替えた追い剥ぎたち。「ショーニーン」レディ・グレゴリイアイルランドの民話的伝説に取材した英雄譚。「天邪鬼」エドガー・アラン・ポー最大の敵はおのれ自身。完全犯罪の完成を阻んだのも。「マークハイム」R・L・スチーヴンソン『ジキル博士とハイド氏』的『罪と罰』。「月明かりの道」アンブローズ・ビアス『藪の中』を思わせる殺人事件だが、こちらは犯人がわかっている。オチが喜劇的な幽霊譚。「秦皮の木」M・R・ジェイムズトネリコの木は魔女の箒の材料。本物の魔女を処刑したらどうなるか、というお話。逆に言えば、このようにならないのであれば、全て冤罪ということ。「張りあう幽霊」ブランダー・マシューズ幽霊だって幽霊同士結婚したいときもある。「劇評家たち あるいはアビー劇場の新作 ――新聞へのちょっとした教訓」セント・ジョン・G・アーヴィン『ハムレット』を酷評した批評家たち。芥川はこれに触発されて「MENSURA ZOILI」を書いたのか。「林檎」H・G・ウェルズせっかくもらった本物の知恵の木の実を、投げ捨ててしまった男の話。「不老不死の霊薬」アーノルド・ベネットO・ヘンリーなら悪漢小説にするところを、買い手に焦点を当て、サキ的な皮肉な悲劇に仕上げた。「A・V・レイダー」マックス・ビアボーム病的な作話癖のある男の真摯な告白。されどのど元過ぎれば…「スランバブル嬢と閉所恐怖症」アルジャーノン・ブラックウッド実は閉所恐怖症のせいではなく、悪霊のせいだったというオチ。終わり良ければすべて良し。「隔たり」ヴィンセント・オサリヴァン戦死した夫が迎えに来てくれました。「白大隊」フランシス・ギルクリスト・ウッド英霊とともに第一次大戦を戦う。「ウィチ通りはどこにあった」ステイシー・オーモニア誰もが自分の記憶が正しいと主張し、誰もが間違っているというドタバタ劇、あるいは社会の縮図。「大都会で」ベンジャミン・ローゼンブラットマネキンの代わりに立つバイト。ただし笑うべからず。まるで『ガラスの仮面』の「石の微笑」だが、笑ったんじゃないのにね。これもサキ的。「残り一周」E・M・グッドマンペンネームの割にアクのあるオチ。あと1月しか生きられないとわかったら、恨みを晴らしますか?「特別人員」ハリソン・ローズアメリカ独立の英霊とともに戦う。「ささやかな忠義の誓い」アクメッド・アブダラーアヘンとか出てくるから清の時代かな。『罪と罰』的冒頭だが、殺人者に反省の色は全くない。あとは冒頭に至るまでの展開が時系列的に。混血の妻の言うことより義兄弟と家父長制が大事。今でも中国人は女子より男子を尊ぶ。暗い暗い映画になりそうな短編。以下、芥川自身の手による翻訳など。「春の心臓」ウィリアム・バトラー・イェイツいくら修業を積んでも若返らないし、不老不死にもならないという現実。だが、信じて斃れたものは不幸だろうか?「アリス物語」ルイス・キャロル全部芥川が訳したのならよかったのに。「馬の脚」芥川のこの手の小説としては代表作かもしれないと、今なら思う。【送料無料】 芥川龍之介選 英米怪異・幻想譚 / 澤西祐典 【本】
2018.12.19
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親子の愛、男女の愛、同性愛、愛にもいろいりありまして…中編集。「夜更けのエントロピー」紹介済。読み直してみると、娘への愛情はわかるけど、語り手がウディ・アレンの映画の主人公みたいで気持ちが沈んだ。「バンコクに死す」これも紹介済。「歯のある女と寝た話」どこに歯があるって、そりゃ、下の口に決まってるでしょうが。「フラッシュバック」フラッシュバックは現象だけでなく商品名でもある。アメリカ人が過去の栄光や想い出に溺れるように、日本人が仕組んだ陰謀だった、という設定。「大いなる恋人」架空の戦場詩人に語らせた、彼にしか見えない乙女の姿。【中古】 愛死 角川文庫/ダン・シモンズ(著者),嶋田洋一(訳者) 【中古】afb
2017.03.11
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『学校の怪談』のアメリカ・バージョン・アップ版。まずは子どもが一人死ぬ。謎を解き明かそうとした人たちが次々に死ぬ。昔死んだはずの人たちが現れる。いったいなぜ? 何が起こっているの? そういう意味ではミステリーかもしれないが、はっきり言って完全にホラーだ。日本産のは心理的にエグいけど、あちらさんのは物理的におどろおどろしい。小説だったから読み進められたというのが正直なところだ。そんなものをなぜ読んだのか。夜の子供たち』で活躍するマイク・オルーク神父が小学生の頃の話で、彼がなぜ身体障害者になったのかわかるかな、と思ったからだ。しかし謎は解けなかった。この本では彼は五体満足のままだったからだ。そういう意味では、ハッピー・エンドのお話である。なお、この本はポーの『アッシャー家の崩壊』へのオマージュでもある。サマ-・オブ・ナイト 上 / ダン・シモンズ、田中一江 / 扶桑社ミステリ−【中古】afb【中古】 サマー・オブ・ナイト 下 / ダン シモンズ / 扶桑社 [文庫]【メール便送料無料】【あす楽対応】黒猫 アッシャー家の崩壊 早すぎる埋葬【電子書籍】[ エドガー・アラン・ポー ]
2017.03.03
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吸血鬼を主題にしたお話は多い。本書もそのひとつなので便宜上ここに分類したが、免疫学や血液学等に関する蘊蓄に着目すればSFの範疇に入れてもおかしくないだろう。元ネタは同じ作者の短篇「ドラキュラの子供たち」。もっとも似ているのは冒頭だけで、結末も全く違う別の物語になっている。吸血鬼の子供を人間が養子にした。吸血鬼はその子を取り戻すが、人間側は誘拐ととらえ、奪回に命を懸ける。…異論は承知のうえで、あらすじから枝葉をそぎ落とすとこんな感じになるか。お話としては面白いんだけど、それは吸血鬼=悪の前提があるから。試しに「吸血鬼」を「有色人種」に、「人間」を「白人」に置き換えてみたら???となるだろう。もとの短編にはないドラキュラ伯爵の回想と語りが魅力の一冊。【中古】 夜の子供たち(上) 角川文庫/ダン・シモンズ(著者),布施由紀子(訳者) 【中古】afb【中古】 夜の子供たち(下) 角川文庫/ダン・シモンズ(著者),布施由紀子(訳者) 【中古】afb
2017.01.14
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地球上の生物が人間に暴動を起こし始める中、実験室で飼われていた一匹の鼠だけが人間の味方になる。ーーなんて紹介文を読んだら、チャペックの『山椒魚戦争』の再来か?と思ってしまうけれども実際は違った。実験用のラットと聞いて、『アルジャーノンに花束を』のようなネズミが、人類に力を貸すのかと思ったらそれも違った。「一言でいえば、動物愛護団体や環境保護団体のバイブルになりそうなヒッピー小説、それがこの本じゃないか」「いや、それもちょっと違うだろう」「確かに、僕らが毎日食べてる安い卵は、鶏卵孵卵器と化した雌鶏が昼夜をおかず無精卵を産み続けているおかげだし、その<残酷性>については『美味しんぼ』でもかつて指摘されたとおりだ」「ふむふむ」「だがそれも<健康に育った雌鶏の卵こそ健康にいい>という人間本位の哲学の反映にすぎない」「それで」「動物実験に至っては、何も動物を虐待する意図で行っているのではなく、医学の向上のためにやっていることだ」「まさか人体実験するわけにもいかないしね」「そう、SSや731部隊みたいにね。だからそういうのをストレートに風刺したものとしてとらえるには、じゃあ医学の進歩はどうなるのだ、iPS細胞でクローン人間を造るのか、その方がもっと問題ではないか、となるわけじゃない」「すると?」「独裁者対虐げられたる民衆、体制対反体制、白人対有色人種、欧米対アジア・アフリカ、要するにいつの時代にもあるマジョリティVSマイノリティの対決の構図の隠喩としてとらえた方がいいんじゃないかな、と思うんだけど」「そうするとドクター・ラットの役割はさしずめアンクル・タローというところかな?」「そうだね。動物たちはアニメ『風の谷のナウシカ』の王蟲のように人間たちに対して果敢に戦った。実験動物だけではなく、文字どおり全世界の動物たちが」「だけど敗れた」「そう。人間たちの巨神兵は腐らなかった。大砲だからね。だが彼らは昇天した。地球上から消え去った。一匹残らず、一頭残らず、一羽残らず。マッドなドクター・ラットただ一匹をのぞいて」「人間たちが勝利した」「そうだろうか? 全人類が明日から一斉に菜食主義者に転向する? ありえないね。おまけにミルクもチーズももう作れないんだぜ。全人類でドクター・ラット一匹を分け合う? まさかね。繁殖させようにも雌がいない。きゃつは見捨てられたんだ」「それはそうだね。言動自体が裏切行為だったから」「人類に残された道はふたつ。栄養失調でくたばるか、共食いしてクロイツェル・ヤコブ病でくたばるかだ」「海苔はビタミンB12の供給源だろう?」「確かにそうだが、海でしか生産できない。襲撃が起き、殺し合いになるだろう。第一、自分たちに歯向かうものを圧倒的軍事力で制圧してきた万物の霊長たる人間が、人種や民族や宗教その他の理由でお互い同士いがみ合ってきた人間たちが、そうそう平和的に共存できると思うかね?」「SFの話になってきたぞ。現実に戻そう」「君が海苔の話なんか待ちだすからさ。さっきのを少し言い換えよう。自分たちに歯向かうものを徹底的に痛めつけてきた人間たちの<敵>がいなくなったとして、そこで本当に永遠の平和が訪れるのだろうか。むしろ」「むしろ?」「新たなる<敵>を見つけて、永遠に内ゲバを行うのではないか」「つまりこういうわけか? それが、戦うことによって相手を滅ぼした集団にかけられた呪いではないか、と」「そういうこと。おまえもたまにはいいこと言うじゃん」「忘れたか? おれはそもそもおまえなんだぜ」「え?」「どら、思い出させてやろう…」【中古】 ドクター・ラット ストレンジ・フィクション/ウィリアムコッツウィンクル【著】,内田昌之【訳】 【中古】afb【中古】 山椒魚戦争 岩波文庫/カレル・チャペック(著者),栗栖継(訳者) 【中古】afb風の谷のナウシカ プルバックコレクション 王蟲/怒りの紅なりきりマスク Mr.トランプ ドナルド・トランプ アメリカ大統領マスク ものまね なりきり 有名人 変装マスク かぶりもの
2016.12.29
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フランス編。ホラーというよりミステリー・怪奇・幻想小説が主。「青ひげ」シャルル・ペロー見てはいけないと言われるとつい見たくなるのが人情で…「コーヒー沸かし」テオフィル・ゴーティエ真夜中になるとポルターガイストが騒ぎ出し、肖像画から人が抜け出し、舞踏会がはじまる。青年は可憐な美女に恋をした。しかし彼女は…「幽霊」ギイ・ド・モーパッサン中身を見てはいけないと言われていた書類をもし見ていたら、どうなったんだろうねえ。「沖の少女」ジュール・シュペルヴィエル汝、死したるものを強く想うことなかれ。そは現身となりて沖の小島に独りさまよう身となればなり。…「最初の舞踏会」レオノラ・カリントン一時的に身分を交換した雌のハイエナと少女。そのために払った犠牲と結末は…。怪奇というよりグロテスクなほら話。「消えたオノレ・シュブラック」ギヨーム・アポリネール「壁抜け男」マルセル・エーメ並べてみるとよく似た趣向のお話。汝、妻ある男をコキュ(コケ)にすることなかれ。「空き家」モーリス・ルヴェル(『夜鳥』の作者)空き家に入ったコソ泥が、家主に見つけられた! と思ったら、その老人はすでにこと切れていた。そうとも知らずナイフで何度も突き刺した侵入者は…。「心優しい恋人」アルフォンス・アレー腹を裂いて自分の腸で恋人の足を温める男。考えたらどっかの漫画家の絵みたいでグロテスク。「恋愛結婚」エミール・ゾラ不倫の恋の成れの果て。夫(親友)を殺めたはいいものの、その後ずっと悩まされ、疑心暗鬼になり、お互いに毒殺を試みる。「怪事件」モーリス・ルブラン元検事が話した奇奇怪怪な殺人事件の真相は…本邦初訳。「大いなる謎」アンドレ・ド・ロルド岬にて亡き妻と夜毎語らいあう田舎貴族。それは幻想ですよ、科学で説明がつきますよ、と賢しらに説いたばかりに…これも本邦初訳。「トト」ボワロー=ナルスジャック『オズの魔法使い』じゃないよ。フランス語のトトは虱のこと。お母さんが息子に言う。モーリスも連れて行きなさい、と。いくら兄弟だからって、もううんざりだ。そうだ、事故に見せかけて水の中に突き落としてやろう…「復讐」ジャン・レイ屍を食らう鼠その他気持ち悪い虫に生きたまま食われる恐怖。え、何でそこに死骸があったかって? それはね…「イールの女神像」プロスペル・メリメ汝たわむれにヴィーナス像に指輪をはめることなかれ。そは汝を愛し、嫉妬し、…最初の舞踏会/平岡敦【2500円以上送料無料】
2016.12.07
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『八月の暑さのなかで ホラー短編集』に続く英米怪奇幻想小説集第二弾。「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語」エドガー・アラン・ポーポー唯一の長編の中から、幽霊船と人肉くじ引きの描写を抽出し翻案したもの。よく考えると怖い。「南から来た男」ロアルド・ダール哀は愛に通ず。「家具付きの部屋」O・ヘンリー青年が自殺したその部屋で、ちょうど1週間前、青年が好きだった女の子が自殺していた。偶然だが…「マジックショップ」H・G・ウェルズ手品? それとも魔法かな? 旧訳「魔法の店」よりこちらの題名がいい。「不思議な話」ウォルター・デ・ラ・メア長持という日本語は古語に近くなったねえ。「まぼろしの少年」アルジャーノン・ブラックウッド生れなかった息子を悼む切ない掌編。「エミリーにバラを一輪」ウィリアム・フォークナー南部の格式の犠牲になったのは彼女であったか、彼であったか? ヒ素は毒薬として使ったのか、防腐剤だったのか、もしくはその両方であったのか?「悪魔の恋人」エリザベス・ボウエン途中まで読んで結末の予想がつくが、それでも最後まで読んでしまう。悪魔の容貌の具体的描写がないのも怖い。「湖」レイ・ブラッドベリ幼くして死んだ少女は齢をとらない…死体となっても。『黒いカーニバル』所収。「小瓶の悪魔」ロバート・ルイス・スチーブンソンその小瓶は願い事を何でも叶える不思議な小瓶。ただし持ったままあの世に行けば地獄行き。それを回避するためには、手に入れたのより安い値段で、別の人に売らなければならない…売った後で不治の病に気がつき、その小瓶を男が見つけたとき、値段は二セントになっていた! もしそれを一セントで買えば、誰に売る? 誰が買う?「隣の男の子」エレン・エマーソン・ホワイトマイク。君は本当に運が悪かった。彼女を追い詰めて本当のことを話させてしまったばかりに、君は近々…南から来た男 (岩波少年文庫 605 ホラー短編集 2) (児童書) / 金原瑞人/編訳
2016.12.05
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真冬にこんな本を紹介して申し訳ない。その代わり、岩波少年文庫とあるけれども、子どもたちに独占させておくには惜しい珠玉の短編ばかりである。「こまっちゃった」エドガー・アラン・ポー実はこれは翻案である。時計塔の中にボールが入っちゃって、取ろうとしたら首が針に…江戸川乱歩好みの恐怖小説だが、翻案は妙に明るい。原題「ある苦境」。「八月の暑さのなかで」W・F・ハーヴィー「のど切り農場」「暑い夏」と同趣向の話。自分の墓碑銘を見た日が…「開け放たれた窓」サキ嘘を真実だと思わせてしまう小悪魔の力量。岩波文庫の『サキ傑作集』にも収録。「ブライトンへいく途中で」リチャード・ミドルトン最後の一行が効いている。「谷の幽霊」ロード・ダンセイニ(幽)霊を信じる人がいなくなった時、(幽)霊は滅びるのだろうか?「顔」レノックス・ロビンソンよくある題名。ただし、こちらは湖に移った美女の貌に惚れた男の話。ある日その顔は実体化して、二人の間には子供までできたのだけれど、その女性はまたふらりと消えてしまった。いや、そもそも子供などいたのだろうか?「もどってきたソフィ・メイソン」E.M.デラフィールドマリー・ローランサンに捧ぐ。「後ろから声が」フレドリック・ブラウンミステリーのようで実はホラー。「ポドロ島」L.P.ハートリー猫の呪いか、人の手によるものか。「十三階」フランク・グルーバーそのエレベーターはまぼろしの十三階に至る。されど降りる時は…真っ当な理由から蒸留器を求めた人類学者の悲劇。「お願い」ロアルド・ダール赤タイル踏んだら地獄に行くんだよ…子どもは遊びの天才である…「だれかが呼んだ」ジェイムズ・レイヴァー呼び鈴を押したから小間使いはやってきた。しかし女主人はベッドから出なかった。では呼び鈴を推したのは誰?「ハリー」ローズマリー・ティンパリ子どもの愛は惜しみなく奪う。送料無料/八月の暑さのなかで ホラー短編集/金原瑞人【中古】 サキ傑作集 岩波文庫/サキ(著者),河田智雄(著者) 【中古】afb【中古】 あなたに似た人 / ロアルド・ダール / 早川書房 [文庫]【メール便送料無料】【あす楽対応】【中古】ロアルド・ダールの幽霊物語 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
2016.12.04
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「黄泉の川が逆流する」母が死者の国から帰ってきた。けれども父も弟も幸せにはならなかった。弟は自殺し、父親も後を追うように死んだ。のこされた母親は、まだ語り手が養っている。…「ベトナムランド優待券」ベトナム戦争ごっこを売る会社。買う客。『ブラックジャック』の「あつい夜」を連想。もっともミンは武器の不法所持で逮捕されてしまう。志を引き継いだのは戦争後もベトナムに残った元アメリカ兵だった。「ドラキュラの子供たち」ルーマニアのチャウシェスク体制の下、子どもたちは虐待され、エイズが蔓延していた。エイズは人間よりも吸血鬼にとって致命的。ゆえに子孫たちはルーマニアのチャウシェスク体制を打倒すべく立ち上がる。もっともアフリカでエイズに罹って世界中にばらまいたのはドラキュラ公であったというオチがつく。「夜更けのエントロピー」ここで紹介される交通事故はすべて実話だとか。「一年間にハイウェイで事故死するアメリカ人の数は、ベトナムでの十年間で死んでいった数とさほど変わらない」。語り手は保険会社に勤めているが、果てして娘は無事だったのや否や。「ケリー・ダールを探して」アル中で終身雇用権を奪われた教師。義父に犯されたケリー・ダール。ふたつの魂が結合した時、奇跡が起きた。…と書くと美しいお話のようだが、そこに至るまでがなかなか。「教師には二種類ある。教壇の賢者と、同行する案内人と」という言葉はなかなか含蓄がある。「最後のクラス写真」大災厄の後、ゾンビが生き残った者を食い尽くした。世界で最後に残った老教師のもとに、ゾンビとなった二十三人の子どもたちが集まってきた。お目当ては先生の肉である。老いた女教師は彼らを鎖につないで根気強く教育した。だがその甲斐はあっただろうか?ある日、大人のゾンビたちが学校に押し寄せてきた。食うものがなくなったので、子どものゾンビを食べるためだ。老教師はひとり立ち上がってゾンビと化した子どもたちを守った。戦いの後、教師は子どもたちを解放していった。「学校は終わりです。うちに帰りなさい」。だが翌朝も、子どもたちはやってきた。本短編集中で個人的にもっともすきなお話である。「バンコクに死す」最愛の男(片思い)の命を奪った女吸血鬼を倒すべく、エイズに罹ったその男は…異国情緒に満ちた一篇。【中古】 夜更けのエントロピー 奇想コレクション/ダン・シモンズ(著者),嶋田洋一(訳者) 【中古】afbその他こんな本も。『カーリーの歌』『重力から逃れて』『殺戮のチェスゲーム』『ハイペリオン』『ハイペリオンの没落』『エンディミオン』『エンディミオンの覚醒』『ダーウィンの剃刀』『鋼』『雪嵐』以上早川書房『サマー・オブ・ナイト』『うつろな男』『諜報指揮官ヘミングウェイ』以上扶桑社『夜の子供たち』『愛死』『エデンの炎』以上角川文庫
2016.12.02
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世にも奇妙な物語である。三部構成である。ヒロインの児童期、思春期、青年(成年)期。一種の教養小説と言えなくもない。だがそのために払った犠牲は大きかった。もともとは長姉がしでかしたこと。彼女のヴ―ドゥーへの傾倒が悲劇を生んだ。自らは失踪、母親と父親と次女は交通事故で死亡。生き残った末っ子だけがわがトラウマを拭うべく、東奔西走する。大人の、友達の、自らの力を恃みにして。夢のような小説だ。もとい、悪夢のような小説だ。つじつまが合わないことおびただしい。だがそれが我々の現実ではなかろうか?悪夢ではなく不条理と呼ぶだけで。ストレンジ・トイズ / 原タイトル:STRANGE TOYS (ストレンジ・フィクション) (単行本・ムック) / パトリシア・ギアリー 谷垣暁美
2016.11.29
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ふとしたことで話をした、某私立中高一貫校の中学生が娯楽のために読んだという本。ヒストリアンというのは歴史学者のことだ。ブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』の現代版ともいうべき内容で、ホラーとファンタジーとミステリーがないまぜになった、妖しくも美しい愛の物語だ。愛? もちろんドラキュラ伯爵、あるいは串刺し公の愛ではない。男女の、あるいは親子の情愛のことだ。ヒロインの父親の、失踪した妻を探す旅。ヒロインがボーイフレンドとともにやはり失踪した父親を探す旅。二つの意図(糸)が縦糸と横糸のように絡み合い、壮麗なタペストリーを織りなしていくさまは、読んでいて感嘆のため息が出る。漢字も中学生が読むにしては結構難しいものも少なくないのに、君には感心したよ、I君。【中古】 ヒストリアン1 / エリザベス・コストヴァ【中古】 ヒストリアン2 / エリザベス・コストヴァ
2016.10.09
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「冷凍の美少女」sleeping beautyならぬfrozen beauty。長編になりそうな素材ではある。「豚島の女王」別名「ポルコシト島の女王」。「黒衣の紳士」その紳士があなたの1年を大金で買おうと言ったとき、金を払っていれば1年の寿命が保証された。それをあなたが1秒に値切ったものだから…「軟体人間」基本的アイディアは「創世記」と同じだが、カーシュが書くと…「乞食の石碑」その石碑の下に、お宝が眠っていたなんて、ねえ。「この世ならぬ部屋で」とうに死んでいることも知らず、女の手を離したばかりに、彼女は天国へ、自分は地獄へ行った男。「聖シモンの書簡」その老人は実はイエスだった! しかしシモンは信仰ゆえに気がつかなかった。「腹話術人形の脅迫」狂気か事実か? 死んだ腹話術氏の霊魂が人形に乗り移って、息子に…「廃墟の軍歌」『続・猿の惑星』を思わせる短編。ただし「彼等」はもっと弱々しい。「破滅の種子」プレゼントされた人が災難にあって死ぬという指輪が巡り巡って、もとの売主に…果たしてそれは寿命だったか? ショック死だったか?「びんの中の遺書」アンブローズ・ビアスの最期について。「人類供応法」に似るが、こちらはアトランティス人という設定。「ダ・ヴィンチの踊る人形」世紀の天才が潜水艦を発明できなかった理由について。「不死身の伍長」蜂蜜と、なま松脂と、卵と、バラ。消化剤のはずが、不老不死の万能膏薬になっちまった。床屋医者パレが処方してくれたそうな。【中古】冷凍の美少女《イギリス異色作家奇談集》 ジェラルド・カーシュ ソノラマ文庫海外シリーズ
2015.10.26
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「神の遺書」ジョン・ラッセル潜水服で陸に上がり、先住民に神と讃えられた男。「コルシカの復讐」ギイ・ド・モーパッサンこの老いぼれの細腕じゃあ、息子の敵は討てないからねえ、犬を仕込んでやったのさ。「鬼判事の肖像」ブラム・ストーカー「鬼」だった判事は、肖像画となりてなお下宿人の学生に…「口笛の鳴り響く部屋」ウィリアム・ホープ・ホジスン美しい妻を王様にとられた道化師の怨念。「命を賭ける戦場」C・E・モンターギュ誰が一番先に戦死するかを賭けたのだが…純文学的筆致。「手首は招く」ルイス・ゴールディング美しい女優と一緒になるために、弟を殺したシャム双生児の兄。「悪霊封じの置物」マーク・チャニングホストの話を信じなかったばっかりに…「古き館の終焉」バーナード・ブロミッジ古き良き伝統を蹂躙するような成金子女の言動に、屋敷は…「アウル・クリーク橋の事件」アンブローズ・ビアス首を吊られ、走馬灯のように駆け巡る…「饒舌の報酬」ジェームズ・ヒルトン自己顕示欲によって旧悪が露見し、自ら破滅を招いた偽薬売り。「食屍鬼」サー・ヒュー・クリフォードあれは魔女だったのか? 赤ん坊を蘇らせ、舌だけ抜いて、また殺めたのか?「銀仮面」ヒュー・ウォルポールこちらを参照。「呪われた大聖堂」ウォルター・デ・ラ・メア悪魔にさらわれた司祭の話。『神は復讐のために悪魔をお創りになった』「蛇」デニス・ホイートリー杖が蛇に変わる術を駆使する呪術師。最後のオチが衝撃的。
2015.10.16
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このあたり、怪奇小説というより、ミステリーや残酷小説が多い。「13人の鬼あそび」エクス‐プライベイト・X12人で始めた鬼あそびだったのに一人多い…その子は、死んだ女の子の霊だった…「幻の孤島」H・T・W・ボースフィールド本当にあったメデューサの島。「復讐のロシア料理」E・M・ウィンチ赤ん坊の肉と毒を煮込んで…何もかも奪われた高貴な女の復讐譚。「汚れなき友情」ジョン・ラッセル首狩族の友情。「暗い旅立ち」フランシス・アイルズ(アントニイ・バークリー)女を殺して高飛びのはずが…犯罪心理小説。「暗闇の声」トマス・バーグ鸚鵡の姿をした悪魔。「ヴァルドマール氏の病症」エドガー・アラン・ポー催眠術が解けた途端、その生ける屍は…ラヴクラフトがこの短篇に触発されて書いたのが「冷気」。「運命のいたずら」E・W・ホーナング『またまた二人で泥棒を』所収。愛しい女を殺されたラッフルズの苦悩。「雨の夜の殺人」リチャード・ヒューズ死んだふりは熊相手だけにするべし。ゆめゆめ「あの人を殺して私も死ぬ」タイプの女の前ですること勿れ。「コップ一杯の殺意」マイケル・ジョセフ姉を毒殺しようとして、失敗。ほっとする気の弱い青年。「処刑公爵」オノレ・ド・バルザック一族の血を絶やさぬために、自分以外の一族を処刑しなければならぬとは!『人間喜劇』より。「アンジェラスの鐘」ウィリアム・ヤンガーDV妻が信仰によって夫を殺したとき、高らかに笑ったのは…「窓の中の分身」マーティン・アームストロング老人は語る。自分は窓に映った分身のひとりであり、死者の肉体を借りて現世にいるのだと。それは事実か妄想か? 芥川龍之介が好みそうな一篇。「浮気の呪術」R・H・バーラム性悪妻と怪しげな薬剤師は主人公を呪い殺そうと企むが、もっと怪しげな香具師が彼を助ける…「呪われた舌」クランチ・ベイン・クーダーその子は失踪した夫の一粒種。ただたいそう残酷で、その舌には…「邪神の復活」アーサー・マッケン牧神パンがこの世に復活し、まぐわってできたその女の子が長じて、現れるところ必ず災いをもたらす…その最期はこの世のものとも思えぬ…送料無料 13人の鬼あそび 恐怖の一世紀3【中古】
2015.10.12
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『恐怖の一世紀1 真夜中の黒ミサ』の続き。「悪夢の化身」ガイ・エンドアドアを開けたばかりに、伯父の霊魂に憑依せられ、姿かたちも…「四人目の秘密」ジョン・ラッセル漂流ミステリー。人種差別意識などもたず、黒人に頭を下げていれば、三人とも助かったのにね。「木霊のする家」T・F・ボイス幻想小説。「テオドール!」と呼ぶと「テオドール!」と返す家。だがある日、声は返ってこなかった。「主人は死んでしまったの」木霊が答えた。「幻の貴婦人」エクス‐プライベイト・X(アルフレッド・マクルランド・バーリッジ)二目と見られない顔になってからも、男を惑わす妖婦人の霊。「鼠:その幻想」A・E・コッパード罠にかけられたその鼠は、死んだ母親と同じように、上肢を砕かれていた…「恐怖の寝台」ウィリアム・ウィルキー・コリンズ降りてくる天井という話は、江戸川乱歩もよく使っていたね。「大修道院長の秘宝」M・R・ジェームズ自分で隠した宝を、死してなお守る院長。「ふたつの終局」アレックス・ウォー心理小説。自分がハンセン氏病に罹ったと思い込んで死んだ男。作者はイーヴリン・ウォーの長兄。「復讐の手指」シオドア・ドライザー殺した相手に喉首を絞められ…『アメリカの悲劇』の作者による怪奇小説。「死者の微笑」マリオン・クロフォードそれは伯父の陰謀だった…。「メルドラム氏の憑依」ジョン・メトカーフメルドラム氏は、実は邪悪なエジプトの神の化身だった…。「ユド女族の孤島」ウィリアム・ホープ・ホジスン悪魔島に棲む悪魔のような女たちの目を掠めて真珠を手にした船長と少年。
2015.10.02
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「真夜中の黒ミサ」マーガレット・アーウィンその教会では、中世、黒ミサが行われ、いたいけな子供やうら若き乙女が祭壇に饗せられていた…「丘の上の音楽」サキ(H.H.マンロ)あなたは牧神を信じますか?「漂流船」ウィリアム・ホープ・ホジスン人食い船の話。「ディケンズを愛した男」イヴリン・ウォーその老人は、男にディケンズの小説を朗読してくれるよう懇願し…「海の老人」の変奏曲。しかも、救いがない。「恐怖の演出」オーガスタス・ムュアそう、演出だったんだよ。よかったね。怖かったろうね。「カナリアが知っている…」F・テニスン・ジェンお芝居のはずが、霊媒師に本物の霊が乗り移り、自らの死の真相を語りだす…「白昼夢」L.A.G.ストロング男が愛人を殺害したのは妄想だったのか? それとも人知れず妻が処理したのか?「廃屋の霊魂」ミセス・オリファント牧師の説得で成仏した魂。「赤い部屋」H.G.ウェルズ暗黒こそすべての恐怖の源なり。「古代の魔法」アルジャーナン・ブラックウッド魔女の子孫がたまたま先祖が殺された土地に来たばかりに…邦訳短篇集もある作家の中篇。
2015.09.08
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現実を浸食する悪夢。ここに収録されているのはSF以前のSFであり、強迫観念的な怪奇小説である。言葉遣いが詩的だから活字では読めるが、映画化されても絶対に観たいとは思わない作品群である。年代順に並べてあり、中ほどからあの有名な「ネクロノミコン」が小道具として出現。話がだんだん長くなっていく。「海神ダコン」魔神来りて扉を叩く。「白い帆船」地球が平らだった頃の話。世界の果ては滝になっていて…「夢の都市セレファイス」覚めない方が幸せな夢もある。「海底の神殿」アトランティスもの。「月の沼」沼の精の正体は…「エーリッヒ・ツァンの音楽」妙なき調べは魔物の演奏…「アウトサイダー」ゾンビ(?)当事者の書いた哀しくもおどろおどろしい手記。「暗黒の秘儀」現れたのがブルックだったらよかったのに。「死体安置所の中で」棺桶代をケチって死体の足首を切断した男が死者に復讐されるお話。「クートゥリュウの呼び声」海に現れた怪物。中篇。「冷気」私は死んだ。だがまだ生きている。だからこの家は冷やさなければならない…「戸口の怪物」ラヴクラフト版「故エルヴシャム氏の物語」。「超時間の影」収録作品中最も長い中篇にして、もっともSFに近い設定。先史時代、太古の地球に存在した知的生命はその後どうなったか。遙かなる未来の地球の描写については『タイムマシン』の影響がある。最後の一行を読んで恐怖を覚えるか、やはり狂人の妄想だったと結論づけるかはご自由に。 【中古】文庫 クトゥルー 1 暗黒神話大系シリーズ / H・P・ラヴクラフト/大瀧啓裕【楽フェス_ポイント10倍】【画】【中古】afb
2015.07.31
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日本オリジナル短篇集。早川書房が翻訳権を独占しているため、「狂った家」「蒸発」「不吉な結婚式」の3作は『モンスター誕生』に収録されなかった。「激突!」スピルバーグ監督作品の原作。文庫本で約50ページの中篇だったんだね。「狂った部屋」部屋は男を殺そうとしていた。しかし妻が邪魔だった。抗生物質のように家に作用していたのだ。そこで家は男を操り、妻に対して激怒させ、彼女が家を出て行くように仕向けた…「屠殺者(スローター)の家」幽霊とまぐわう話は日本の古典にも多いが、外国のは生身で怖い。ヴォネガットの『スローターハウスへようこそ』もいつか読んでみよう。「蒸発」あるいは消失か。外堀を埋めるように、じょじょに、自分の知人が《そもそも存在しなかったこと》にされる恐怖。最後には…「不吉な結婚式」果たして新郎の死因は悪魔の呪いか単なる事故か。一服の笑劇。[文庫]【中古】【メール便可】激突! / リチャード・マシスン 小鷹信光
2015.07.23
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「魔の創造者」ヴァーノン・ラウスウェルズの『モロー博士の島』を怪奇小説仕立てに焼きなおしたもの。スリラーバーグより怖いかも。「霧の夜の宿」ガイ・プレストンお客様、お風呂に入ってはいけません。深紅に染まっておりますから。「タブー」ジェフリー・ハウスホールドその肉、美味しいですか?「蝋人形館の恐怖」ヘイゼル・ヒールドウェルズの『宇宙戦争』を怪奇小説仕立てに焼きなおしたもの。「黒い絨毯」カール・スティヴンスン軍隊蟻との戦争。「第三の生贄」スティヴン・ホールイドが実体化したような魔物が…『ジキル博士とハイド氏』の末裔。メール便送料無料!【中古】 モロー博士の島 / H.G. ウェルズ / 東京創元社 [文庫]【メール便送料無料】【あす楽対応】【中古】 宇宙戦争 完訳版 偕成社文庫/H・G.ウェルズ(著者),雨沢泰(訳者),佐竹美保(その他) 【中古】afb10500円以上お買い上げで送料無料【中古】afb_【単品】_ジキル博士とハイド氏 (フォア文庫) [新書] RL スティーヴンソン小林 与志Robert Louis Stevenson各務 三郎
2015.06.11
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異色作家短篇集19。「時間の継ぎ目」ジョン・ウィンダム50年前に消えた男性と50年後に再会。そのからくりは…「水よりも濃し」ジェラルド・カーシュ邦題は「水よりも濃い(恋)」の方がよかったんじゃないかな。ブラック・ユーモアなお話。「煙をあげる脚」ジョン・メトカーフのろわれた宝石と護符を脚に縫い付けられた少年。「ペトロネラ・パン――幻想物語」ジョン・キア・クロス母親のエゴのために一生赤ちゃんのままで終わらなければならないとは。『失われた時を求めて』。「白猫」ヒュー・ウォルポール金持ちの未亡人の守護神ペネロピーは死んだ夫の化身だろうか。「顔」L・P・ハートリー世の中にはそっくりさんが三人はいると言うけれど、紙の上に描いた女が実在するとは…しかも双子で。余韻の残る普通小説。「何と冷たい君の小さな手よ」ロバート・エイクマン死霊からかかってきた電話。「虎」A・E・コッパード調教師VS虎。その結末は…「壁」ウィリアム・サンソム放水中に壁が倒れてきたが、運よく助かった消防士の話。「棄ててきた女」ミリュエル・スパーク誰が女を棄ててきたのか? 星新一的短篇。「テーブル」ウィリアム・トレヴァーテーブルをめぐる家族・夫婦の愛憎劇。普通小説。「詩神」アントニイ・バージェスシェイクスピアは、実は未来から持ち込まれた作品を模写しただけだった? って『ドラえもん』かよ。「パラダイス・ビーチ」リチャード:カウパーこれも『ドラえもん』的な完全犯罪。自動執事の存在が怖い。【送料無料】 棄ててきた女 アンソロジー / イギリス篇 異色作家短篇集 / 若島正 【単行本】メモ。ジェラルド・カーシュ『壜の中の手記』『廃墟の歌声』ヒュー・ウォルポール『暗い広場の上で』『銀の仮面』ロバート・エイクマン『奥の部屋』A・E・コッパード『郵便局と蛇』ウィリアム・トレヴァー『聖母の贈り物』リチャード・カウパー『クローン』『大洪水伝説』
2015.06.03
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ヒルティの小難しい本ではなくて。「空白の悪魔」オーガスト・ダーレス寝ている間に犯罪の片棒担がされていたと知った男の驚愕と…「祖霊に安らぎを」ヘレン・W・カッスン墓参りなんか来なくていい。安らかに眠らせろ。と思った頑固爺さん、子孫にとりついたがかえって喜ばれる結果になり…ユーモラスな短篇。「聖家族」マーガレット・セント・クレアドラキュラ一族に嫁がんとする娘は…「時を超えて」キャロル・ジョン・デイリー時が止まっている間も動ける人種は、逆に人より早く年をとっちゃうと思うんですが。とつっ込んでみる。「謎の木片」エミール・ペテイジャ木片は実は檻で、呪符が書かれていて、宇宙の流罪人が中にいたんだ…「過去からの遺言」アーサー・J・バークス生まれ変わっても借金を返すと誓った男。「悪魔の素顔」チャールズ・キング三原順の「ムーン・ライティング」シリーズを連想。だがこちらの方が陰惨だ。宿の主人が食●●とは…「幼い魔女」ウィリアム・テン8歳でも魔女は魔女。「笑顔の果て」メアリ・エリザベス・カウンスルマン嫉妬に狂ったあまり、最愛の妻を失った考古学者。誤解だったのに。「ガラス壜の船」P・スカイラー・ミラーその船はね、店主が乗ってた沈没船そのものだったんだよ…「美しき人狼」ロバート・ブロック人狼を愛した不倫男の悲劇。
2015.06.02
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副題を《アメリカン・ファンタジーの原点》とする本書は、『ムーン・プール』などで知る人ぞ知る作家、メリットの日本オリジナル短篇集。どれも「境界」を扱っているのが特徴。『タイム・マシン』のモーロックを連想させる表題作や、動物と人間の精神の境界を越える「蜂になった男」、時空を超えた恋愛「中世フランス語の幻」、『鏡の国のアリス』よりもっと大人のファンタジー「竜鏡の向こうに」、森と人間の争いに巻き込まれた男の話「樹精の復讐」、人間とロボットの争いを描いたこの作家にしては異色のSF「最後の詩人の決断」。「古代マヤ神の復活」は短篇として読めないこともないが普通小説のようだ。それもそのはず、ヒロインが神として目覚めるのは先の話で、これは絶筆なのである。同じことは「白い道への門」にも言える。「金属怪獣の女王」は、逆に長編『金属モンスター』からの抜粋。ハガードの『洞窟の女王』をもっと幻想的・狂的・メタリックにした感じ。松本零士先生に漫画化していただくときっと素晴らしいものができるだろう。
2015.05.18
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異色作家短篇集17。「壁抜け男」壁を自由にすり抜けられる才能を持った男が、壁の中に閉じ込められてしまったわけは。「カード」社会貢献度の低い人間は、1ヶ月のうち何日間かしか生存を許されない社会。しかし闇でカードを買えばその日数だけ生存できる。中には1ヶ月に三十二日以上生存する輩も現れ…「よい絵」観ているだけでおなかがいっぱいになる絵を描く画家がいた。人はそれを栄養絵画と呼び…「パリ横断」ナチス占領下のフランス。闇肉の担ぎ屋がその日拾った相棒の巻き起こすトラブルに振り回され…「サビーヌたち」自身をいくらでも分裂(同時存在)させることのできる女の数奇な結婚・恋愛譚。「パリのぶどう酒」酒が嫌いなぶどう酒造りの男と、酒好きなのにお金がない小役人の、およそ接点のない物語。「七里の靴」それを履けば七里を飛べるという魔法の靴。読者は信じますか? 小学生は信じました。値段は三千フランです。【中古】 壁抜け男 異色作家短篇集17/マルセルエイメ【著】,中村真一郎【訳】 【中古】afb
2015.04.23
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異色作家短篇集15。SFなどもあって分類に悩むが、本質は詩情あふれる幻想小説作家だと思うので。「穏やかな一日」ピカソに会いたい会いたいと思っていたらほんとに会えた。画家は砂浜に絵を描いていた。しかし今日その写真が残っていないのはなぜか。「火龍」騎士たちはそれを龍だと思った。本当は蒸気機関車だったのに。「メランコリイの妙薬」それは、…ニョン婆に聞いてくれ。「初めの終わり」初めて有人ロケットが飛び立つ日、飛行士の両親はどこでどうしていたか。「すばらしき白服」一着の晴れ着を六人でシェアすると…「熱にうかされて」細菌に犯された人間が、回復したように見えて、実は別人になる…恐怖。「結婚改良家」普通小説。子はかすがい。「誰も降りなかった町」老人は待っていた。辺鄙なこの町に殺したってあとくされのない男が降りてくるのを。男は待っていた。人を殺しても見つからない町が見つかることを。「サルサのにおい」『白壁の緑の扉』の変奏曲。ただしここで取り残されるのは現実主義的な妻である。「イカロス・モンゴルフィエ・ライト」そしてガガーリン。「かつら」日本昔話の「頭に柿の木」どころじゃないね。貫通してるんだから。「金色の目」地球から火星に移住した人類は、火星のものを食べているうちに火星人になった。ある日地球が原爆戦争で滅び、勝者が火星にやってくるが…「ほほえみ」最終戦争後、生き残った人類は「文明」を思わせるものを片っ端から破壊し始めた。自動車は勿論、モナリザの絵まで…「四旬節の最初の夜」ハンドルをもつと人格が変わるという話はよく聞くけれど、飲酒運転の方が安全な男がしらふで運転すると…「旅立つ時」普通小説。老いた夫は象のように死ぬと旅立ち、妻は泣く泣く見送るが…「すべての夏をこの一日に」金星では七年に一度しか晴れの日が来ない。つまり太陽が拝めない。地球から来た少女はクラスメートに太陽がどんなものか諄々と説いて聞かせるが…「贈りもの」クリスマスを宇宙で迎える少年に贈るツリーとは…「月曜日の大椿事」自動車自転車の正面衝突事故の顛末。「子ねずみ夫婦」いるんだかいないんだかわからないお隣さん夫婦の秘密とは…「たそがれの浜辺」瀕死の人魚が打ち上げられた日。「いちご色の窓」火星に移住してきた一家。父親は、過去を振り捨て、未来に生きるためにある決心をした…「雨降りしきる日」さあお立会いお立会い。ここに弾けば雨降る不思議な竪琴があるよ…異色作家短篇集 15【3000円以上購入で200円クーポンプレゼント!】メランコリイの妙薬/レイ・ブラッドベリ/吉田誠一【後払いOK】【2500円以上送料無料】
2015.03.16
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「高額保険」こそ泥のつもりが詐欺を発見。スタージョンの処女ショート・ミステリー。「もうひとりのシーリア」「影よ、影よ、影の国」「裏庭の神様」ドラえもんの「ソノウソホント」と民話「三つの願い」を足して2で割り、スタージョン的ふりかけをまぶしたような佳品。オチが笑えた。「不思議のひと触れ」=「奇妙な触合い」「ぶわん・ばっ!」「死ね、名演奏家、死ね」と双璧を成すジャズ小説。『アマデウス』の原型ともいえる。「タンディの物語」遭難した宇宙人が地球人に助けられるという意味では『E.T.』的だが、フュージョンするとは…「閉所愛好症」宇宙飛行士になるのは心身ともに健康でよく訓練されたエリートという常識を、口先三寸で丸め込んだオタク願望成就的短篇。「雷と薔薇」1947年作。『渚にて』より『最終戦争の目撃者』より古いこの分野の先駆的作品。しかもまだ主人公の行為によって、一縷の希望が残されている。…「孤独の円盤」不思議のひと触れ 河出文庫 / シオドア スタージョン 【文庫】【新品】【2500円以上購入で送料無料】【新品】【本】【2500円以上購入で送料無料】不思議のひと触れ シオドア・スタージョン/著 大森望/編 大森望/訳 白石朗/訳
2014.11.03
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ここに収められた諸作品は、虐待や差別や偏見に苦しむ人々をモチーフにしている…「影よ、影よ、影の国」意地悪な継母は影の国にとりこまれてしまった。だからもう僕は影で遊ばないんだ。「秘密嫌いの霊体」憎しみを糧とするポルターガイストにとりつかれた女性を好きになった男性。一時は信用と職を失い、生活はどん底にまで落っこちるが…「金星の水晶」金星人はね、あれは地球人を怖がっていたんじゃないんだ。罵っていたんじゃないんだ。地球人は笑われていたのさ。珍妙で、可笑しいってね。最後の一行が秀逸。「嫉妬深い幽霊」幽霊にとりつかれた女性を好きになった男性。嫉妬深い幽霊に散々悩まされるが…「超能力の血」僕は心が読めるわけじゃないんだ。ただカードがわかるだけなんだ。手品みたいなものなんだよ。それなのにみんな僕を避けるんだ。生まれた娘も、事故に遭って生ける屍状態なのに、僕の娘だからって、安楽死させてくれないんだ…「地球を継ぐもの」生き残った人類に生殖能力はない。後の世は「道具の使い手」ラッコに託す…だが人類の英知を刻み込んだ金属板にラッコが示した反応を見たとき、「私」の心に殺意が芽生えた…「死を語る骨」骨が死の光景を語るなら、警察も楽でいいのにね。他作者との合作。
2014.09.14
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異色作家短篇集5。はしがきには本書がSF短篇集のように書いてあるけれども、それらしきものはほんの二、三篇。その二、三篇にしてからも、SFはモチーフで真に描かれているのは怪奇幻想の類だ。各篇必ず献辞で始まるのが特徴。「蠅」映画化された著者の代表作。痛ましき悲劇と夫婦愛。「奇跡」悪いことはできないものです。ましてや神様を騙すなぞ…痛快作。「忘却への墜落」警察の推理は間違っていたけど、未必の故意はあったわけだからあんたは有罪さ。首を吊らされて死ぬまでの間に走馬灯のように思い出してろ。「彼方のどこにもいない女」長崎の原爆で異次元に飛ばされた女とテレビで交信した男は彼女に恋をする。彼が向こうの世界に行くにはこちらの世界で超小型原爆を爆発させ自分がその爆心地にいればいいとわかり…実験の結果、無事向こうに行けたが、彼女はこっちの世界に来てしまった。「御しがたい虎」ちびであることにコンプレックスを持つ男。相手を支配するために催眠術をマスターし、手始めに動物園でその成果を出そうとする。しかし彼が身につけたのは逆テレパシー能力で…「他人の手」自分の手をある日他人に支配された男の話。逆に言えば相手の男には自分の手があるわけで…「安楽椅子探偵」赤ちゃん誘拐事件の真相を居ながらにしてかぎつけたおじいちゃん。普通のミステリーと違うのは、彼が犬だということ。「悪魔巡り」妻の病死と前後して飼い犬を安楽死させてしまった男。それを悔やんでいると、悪魔が彼を誘惑し、妻と犬を復活させてくれたのだが…「最終飛行」結婚を控えて新しい家族のために引退するパイロット。最後のフライトの事故を防いだのは、アホウドリに姿を変えた亡き弟だった…「考えるロボット」ポオの小説を下敷きにしたチェス・ロボットの話。なるほど体は機械仕掛けだったが頭脳は…サスペンス仕立ての佳篇。蝿 異色作家短篇集 / ジョルジュ・ランジュラン 【単行本】メール便80円【中古】蠅男の恐怖 The Fly/FXBR-1190【中古DVDレンタル専用】【税込み】【3500円以上で送料無料】【レンタル落ち中古DVD】ザ・フライ 特別編【字幕のみ】ジェフ・ゴールドプラム
2014.08.30
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アンソロジー選者のダール氏いわく、「女性には長編小説を書く才能がある。また、超自然的なものを書く異常な才能がある」。要するにおしゃべりで怖い物好きということか。そういえば世界で最も偉大なロマンス『源氏物語』の作者も女性で、その中には「夕顔」というゴシック・ロマンもあった。…「W・S」L・P・ハートリー極悪人として描いた作中人物に殺される話。「ハリー」ローズマリー・ティンパリー死んだ兄が妹を迎えに来る話。「街角の店」シンシア・アスキス骨董店の主人は自分が不正に富を得たと思い込み、その償いに…これで成仏できたかしら。「地下鉄にて」E・F・ベンスン目撃した飛び込み自殺は、未来の出来事だった。「クリスマスの出会い」ローズマリー・ティンパリー時空を超えた邂逅。タイムスリップもの。「エリアスとドラウグ」ヨナス・リーノルウェー人作家による怪談。これをよりリアルに長編化すると『白鯨』になる。「遊び相手」A・M・バレイジ彼らが住む家はもと女学校。そこで病死した女学生の霊が娘と父を慰める。「鳴り響く鐘の町」ロバート・エイクマン鐘は鳴る、いつまでも。死者たちをよみがえらせるまで…「電話」メアリ・トリーゴールド略奪婚。その電話は前の奥さんからかかってきた。死んだはずなのに…「手の幽霊」J・シェリダン・レ・ファニュ一家に付きまとう手だけの幽霊。「落葉を掃く人」Ex-プライベート・X(A・M・バレイジ)道のこっち端まで掃いたら、あんたを迎えにくるぜ、と言い残して死んだ乞食。「あとにならないと」イーディス・ウォートン彼が幽霊だとわかっていたら、案内などしなかったのに。「ブライトン街道にて」リチャード・ミドルトン今朝死んだはずの少年に会ったホームレス。ユーモラスな掌編。「上段寝台」F・マリオン・クロフォードその船室のその上段に寝た者は海に飛び込むという…【中古】 ロアルド・ダールの幽霊物語 ハヤカワ・ミステリー文庫/ロアルドダール【編】,乾信一郎【ほか訳】 【中古】afb
2014.08.18
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異色作家短篇集4。「ノアの子孫」よそ者の肉はおいしいねえ。この村の肉は食いあきたよ。「レミング」そういえば人間の遠い祖先はネズミだってね。「顔」坊主憎けりゃ袈裟まで憎い。袈裟まで憎けりゃ袈裟を大事に。あたしが死んだら誰もあんたを守ってくれないと袈裟が信じてくれるように。外の世界は魑魅魍魎だからねえ。ホーッホッホッホッホ…「長距離電話」私どもは墓場の住人であります。遠からずあなたをお迎えできる日の参りますことを、一同心からお待ちいたしております。「人生モンタージュ」人生を映画に要約することはできるけれど、実人生が映画のように端折られてしまったら…「天衣無縫」しがない用務員の男がある日突然知識を吸収する天才になった。しかしそれは、外星人によって地球の知識を搾り取られるためだった。「休日の男」誰がその日のうちに死んでしまうのかわかってしまう男の仕事とは。「死者のダンス」第三次世界大戦は現代のゾンビを生み出した、というアイディアがなければ、愚劣な若者の麻薬パーティを描いただけの小説にすぎない。「陰謀者の群れ」周りの人間がみんな自分に嫌がらせをしている、という被害妄想で人々を刺した男。だが警官に射殺されたため、その動機は小説家の筆を通して語られるのみである。「次元断層」この世界がパラレルワールドである証拠。わが妻の夫から電話がかかってきた…「忍びよる恐怖」生きているロサンジェルス。生きている土地。成長する土地はついにアメリカを飲み込み、そこに住む人々を…「死の宇宙船」着陸した惑星には、不時着した宇宙船があった。調べてみると、そこにはこちらの乗組員と同じ顔をした男たちの死体が…「種子まく人」平和な村にやってきては、ひと騒動起こし、不信と不安と不和の種をまいて次の村へ移動する、迷惑千万な…の話。13のショック 異色作家短篇集 / リチャード・マシスン 【単行本】宿題。『地獄の家』
2014.08.15
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異色作家短篇集3(2はすでに紹介している)。いかにもスタージョンらしい残酷でピュアな短編ばかり。「一角獣の泉」処女性は象徴にすぎない、と一角獣は言った。「熊人形」少年に未来の夢を見させ、知識を吸い取る怪物。少年が縁を切ろうとすると…「ビアンカの手」白痴の女性の美しい手に惚れて結婚したがために、その手に絞め殺されてしまった男。その後その手は老婆のように…「孤独の円盤」円盤ではなかった。壜詰めの手紙だった。オチはセンチメンタルだが「メクラとチンバ」を思い起こさせた。ある生きものには言うに言われぬさびしさがあるそれはひどく大きなさびしさだから生きもの同士で分かちあわねばならぬそれがわたしのさびしさであるだから知るがいい、宇宙にはあなたよりさびしい者が存在すると(「いちばんさびしい人へ」)「めぐりあい」唯我論の逆。自分が「彼女」の夢の中の存在だとしたら…「ふわふわちゃん」あまりに猫的な人間は、猫に消される恐れがある。「反対側のセックス」天使(第四次元の人類?)は実在した。彼らの食料は人間の高尚な思考の副産物。性を超越したその存在曰く、「知識は煉瓦の山で、理解は建物の造り方です。わたしのために、建物を造ってください!」「死ね、名演奏家、死ね」犯罪心理小説。ラッチ死すともラッチ・バンド死せず。「ラッチならどうする?」哀れなるかなフルーク君。「監房ともだち」兄の胸の中に棲んでいる弟は人を言いなりにさせる能力を持っていて…「考え方」弟が呪い殺された。そう信じた兄は復讐に乗り出した。呪い返しだ。彼は、端から見てそれがどんなに奇妙に思えても、独特の方法で自分の考えを実現させてしまう男であった。【中古】 一角獣・多角獣 異色作家短篇集3/シオドアスタージョン(著者),小笠原豊樹(訳者) 【中古】afb宿題。『瓶づめの女房』『1ダースの戦慄』『幻想と怪奇 宇宙怪獣現る』『時間のかかる彫刻』『影よ、影よ、影の国』『海を失った男』『不思議のひと触れ』『輝く断片』『きみの血を』『ヴィーナス・プラスX』『奇妙な触れ合い』『20世紀SF2』
2014.08.11
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えっと。『ブラウン神父』シリーズで有名なチェスタトンの唯一の長編推理小説だそうです。が、分類に迷いました。グレゴリーとサイムは詩人。冒頭からサイムはグレゴリーに食ってかかります。お前は本当に無政府主義者なのかと。それに対してグレゴリーは自分の秘密を明かし、サイムもまた同様に自分の身分を明かします。「自分は刑事だ」と。さてそれからが諧謔に満ちた展開になるのですが、サイムはグレゴリー属する無政府主義者の団体に入会します。勿論グレゴリーは大反対するのですが、約束に縛られていいたいことも言えない彼の主張は誰にも聞き入れられず、グレゴリーはまんまとつい最近死んだ「木曜」の後釜に納まります。本当はグレゴリーが狙っていたのに。密偵として潜入したサイムでしたが、実は日曜を除く全員が密偵だったということが少しずつ明らかになり…その過程がまた傑作です。しかも彼らは「本物の無政府主義者」として、逆に警察から追われる羽目になるのでした。ここまでならかなりブラックですが、ユーモア小説です。しかし問題は日曜の男でした。実は他の六曜の男たちを密偵に任命した「局長」こそ日曜だったことがわかり…では日曜も警察の人間だったのかというと…いやまあ、みなまでは申し上げますまい。とにかく最後まで読んでみてください。その上でどうしても首をかしげる事項があれば、ここやここやここをご覧になるといいいでしょう。きっと、ああ、そういうことだったのかと、どれかひとつくらいの解説には合点がいくのではないかと思います。木曜の男
2014.06.19
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図書館を逍遥していると思いがけない本に出くわすことがある。映画で観たお話の原作に出くわしたときは、おやと思った。読みだしてみると、なかなか面白い。ただ作品としては映画の方に軍配を上げたい。小説はあくまで短編であり、語弊を恐れずに言えばあらすじの域を出ていない。また原作では老人として生まれたベンジャミンがいきなり百科事典を読み始め、その後肉体だけでなく精神も時間に逆行していくのだが、そのために通常の人間関係が損なわれ、挫折の色が濃いものになっている。映画のベンジャミンでは逆行するのは肉体だけで、精神は正常発達している。ゆえに、時に哀愁を帯びながらも、「ノーマルな」愛情関係がなりたっているのである。【送料無料】ベンジャミン・バトン [ フランシス・スコット・フィッツジェラルド ]
2013.08.29
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岩波だから世界文学、という分け方はしません。『大転落』なんかユーモア小説ですしね。岩波は結構怪奇幻想小説の宝庫です。本書もそう。『変身』は、ある日突然おぞましい虫になってしまったザムザのお話ですが、これは逆の立場から、狐になってしまった妻を愛してやまない男の悲哀あふれる物語です。しかも奥様の旧姓がフォックスというのですからふるっています。もちろんこのお話を普通に読み解けば、妻が若い男と駆け落ちした現実を認められずに狂った男の悲劇、となるわけで、主人公の周囲の人のほとんどはそう見ています。人間が物理的に狐になるなんてことはありえませんから、『変身』の場合と同じように、実際にはこれは何らかの暗喩として適用せざるを得ないと思いますが、しかしながら、物語世界の中においては、やはりテブリック夫人は雌狐になったのでありましょう。巷の純愛小説よりよっぽど純愛的な物語、一読の価値は十分にあります。【送料無料】狐になった奥様 [ デ-ヴィド・ガ-ネット ]
2013.06.25
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怪奇小説の親玉的存在。昔創元推理文庫で読んだものを、図書館で新訳に挑戦。すっかり忘れていたが、全文これすべて日記と書簡からなっている。ただし伯爵の残したものは何もないので、一方的な欠席裁判という気がしないでもない。註釈にしたがって読み進めていくと、この小説がお上品なヴィクトリア朝時代の秘められた官能小説でもあることに気がつく。同性愛、重婚、フェミニズムなど、現代的解釈も多々まじっているかもしれないが、確かに、少なくとも「吸血鬼に襲われる美女」という構図は何やら艶めかしい。もっとも、この分野の先駆的小説「吸血鬼カーミラ」も、かなり官能的だが…。創元推理文庫 502‐1【1000円以上送料無料】吸血鬼ドラキュラ/ブラム・ストーカー/平井呈一【送料無料】ドラキュラ完訳詳注版 [ ブラム・ストーカー ]
2013.06.24
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冒頭、ネヴァモアと鳴くポーの大鴉よろしく、執事が主人公を図書館から別の世界へと案内する。まるで『不思議の国のアリス』のウサギのように。だがすべては夢だった、というオチで、ただストーリーを「追う」だけでは面白くない物語。むしろこれは、描写の妙を楽しみながらゆっくり読む類の本である。リリスというのは、創世記には出てこないが、伝承によればイブと結婚する前のアダムの妻の名前だ。リリスが出るからにはアダムもイブも登場する。その他小人や巨人族も。何しろ夢の中の世界であるからして、お話が二転三転、味わいとしてはエンデの『はてしない物語』(ネヴァーエンディング・ストーリー)に近い感じか。「生きようとしないものは死ぬこともできない」「神さまが貴女をそのように創ったんじゃない。あなたは自分で自分をそうしたのだ、リリス」終盤に近づくにしたがってキリスト教のドグマ臭くなるけれど、言葉の織り成す視覚的マジックによって、その手の描写が好きな人なら楽しめるように仕上がっている。ただ個人的に、もう読み返すことはないと思うので処分本NO243。ちくま文庫リリス/ジョージ・マクドナルド/荒俣宏【もれなくクーポンプレゼント・読書家キャンペーン実施中!】
2013.03.29
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推理小説作家らしく、恐怖譚とはいえどちらかといえば奇譚的要素が強く、超自然的現象による恐怖はほとんどみられない。例外は「火の文字」くらいである。なお巻末の「蝋人形館」は、いわゆる肝試しの話。ゆめゆめ悪戯するなかれ。「金の斧」「胸像たちの晩餐」「ビロードの首飾りの女」「ヴァンサン=ヴァンサンぼうやのクリスマス」「ノトランプ」「恐怖の館」までがひとつづき。老婦人の語る「金の斧」を皮切りに、夜ごと仲のいいフランスの荒くれ船乗りたちが、それぞれ自分の見聞した恐怖物語を披露するという、どっかで聞いたような趣向である。どの話も怖いことは怖い。ただいわゆるゴシック小説を読みなれた身としては少々物足りなかった。悪魔は人間の裡にある。なるほどそれはそうだろうが、そしてそれが推理小説の王道だろうが――フィクションなら、人の裡に棲む悪魔が、何らかの実態乃至現象として、世に顕現してもよさそうなものではないか、と思ってしまうのである。処分本NO.222。【中古】 ガストン・ルルーの恐怖夜話 / ガストン・ルルー
2012.08.04
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『デッド・ゾーン』の続編だがさしあたって本筋には関係ない。クージョはセントバーナード犬。ちょっとしたアクシデントで狂犬病に感染し、三人の男を噛み殺し、一人の少年を脱水症状で間接的に死に至らしめた、不条理な死神の象徴。フランク・ドットの再来。クージョがおかしくなる兆候はあった。しかしそれは見過された。あるいは無視された。そのために一人の妻はDVから救われ、ひとつの家族は息子を失った。神も悪魔もここにはいない。まさに死神は不条理にやってくる。不条理は死ばかりではない。仕事、夫婦、親子…いたるところに陥穽の黒い悪魔は潜んでいる。その最大のものが死というだけだ。作者は恐怖の扱い方がうまい。翻訳を通しても、著者名を伏しても、その独特の話法によってキングの作品であることがすぐわかる。30年前の小説だが、蒸し暑い夏にお薦めの一冊である。クージョ / スティーヴン・キング【中古】【ブックス0531】
2012.05.23
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怪しい薬を実験的に飲まされて、超能力者にさせられてしまった親子のお話。昔読んだヴォクトの『スラン』を思わせる冒頭から、ぐんぐん読者を引っ張っていく。母親が殺され、ついに父娘が組織に 捕えられるところで上巻は終わる。弓月光の『瞬きのソーニャ』は、いまだ捕まらざるチャーリィの物語だ、ともいえよう。荒唐無稽な小説というのもあるにはあるが、少なくとも漫画よりはリアリティを要求される。上巻が逃亡劇なら下巻は脱出劇だ。悪魔の手からは無事に逃れた。しかし、アシモフの『夜明けのロボット』さながらのマインドコントロール能力を持つ父親も死んでしまった今、8歳の子どもにできることは限られている。そこで彼女はどうしたか…ハッピー・エンドを暗示させながら、そこに至るまでの過程は、自由を求めたがゆえに追われる者、また『キャリー』の発火能力を目の当たりにした者の恐怖を描いたサスペンス劇である。超能力はモチーフであってテーマではない。したがって怪奇幻想小説に分類した。 【中古】文庫 ファイアスターター 下【after0608】【10P12Jun12】【中古】afb 【ブックス0531】 【中古】B6コミック 瞬きのソーニャ(1) / 弓月光 【after0608】【画】
2012.05.08
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ミステリーだかSFだかホラーだか分類の難しい本。昏睡から還ったとき、ジョニーはかつての恋人が結婚しているのを知った。両親はますます不仲になっていた。そして彼の傷ついた脳細胞は二度と元に戻らず(デッド・ゾーン)、補償作用によって別の脳細胞が機能していることを知った。触ればそのものの未来がわかる、予知能力である。大昔なら神になれたろう。中世なら火あぶりにされただろう。現代では―マスコミの餌食になるのが関の山だ。それでもジョニーは他人のためにその能力を使った。連続殺人犯。大火事の予知。さらに…将来大統領になり全面核戦争の引き金を引くことになる男の「暗殺」。ジョニーには時間がなかった。デッド・ゾーンに巣食う脳腫瘍が日々大きくなっていったから。死ぬ前に、未来を変えなければならなかった。ジョニーは戦場に行った。そして…【中古】 デッド・ゾーン (上) / スティーヴン・キング [文庫]【あす楽対応】【中古】 デッド・ゾーン (下) / スティーヴン・キング [文庫]【あす楽対応】スティーヴン・キング原作の感動ドラマ!パラマウント ジャパン デッド・ゾーン シーズン1 コンプリートBOX
2012.04.26
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