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2013.12.29
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カテゴリ: 小説
裏の教会の朝鮮人が嫌いな女を書いた表題作と他の短編二つ。
「不意の償い」はセックスしているときに両親が火事で死んで罪悪感で精神を病んだ話。主人公が一人称で過去を語るものの、精神異常をきたしている語り手が自分の異常を客観視して整然と語るのはナラトロジー上の設定が矛盾しているし、主人公が何故、誰に対して語っているのかが不明なのもナラトロジー上の瑕疵。精神異常者の心理描写をやってみたという域を出ていない。もしやるならば一人称で語るのではなく、フォークナーがベンジーの心理描写でやったように登場人物の意識の流れを作者が書くという形式のほうが向いている。あるいは主人公が精神科医に体験を語るという形式にすればナラトロジー上の瑕疵が解消されてもうちょいましな仕上がりになったかもしれない。エンタメ作家ならまだしも、純文学作家が語りのリアリティの根幹にかかわるナラトロジーの作法に無自覚なのはよくない。
「蛹」はカブトムシが蛹になる心理を書いた話。読者がカブトムシなら面白いのかもしれないものの、あいにく私はカブトムシではないので面白くなかった。文庫版の解説だと安藤礼二が異様な設定を借りて自分自身のことを語っていると言って独創性を評価しているけれども、そもそも自分自身のことを語るのに異様な設定を借りなければならない必然性はあるのだろうか。人間はわけがわからない文章に遭遇すると脳が勝手に意味を補完して理解しようとするけれども、純文学の読者や文芸評論家というのは意味不明な文章に無理やり意味を見出して虚像をありがたがっている阿呆じゃなかろうか。安藤礼二は文学とはそもそも表現が崩壊してしまうような極を目指すものではなかっただろうかと言って田中を正真正銘の純文学作家だと持ち上げているものの、その極にあるのは言語芸術ではなく言葉の意思疎通が通じない精神病棟だろう。
「切れた鎖」は裏の教会にいる在日朝鮮人が嫌いな女の話。祖母の梅代が主人公なのだろうけれど、誰が主人公なのか、どういう方向に物語を展開したいのか、何を表現したいのかわかりにくい。美佐子と美佐絵の母子の名前が似ていてわかりにくい。主語を省略しているので文章がわかりにくい。短編の中で何度も過去と現在のエピソードを行ったり来たりするのも状況がわかりにくい。「母」という言葉を安易に使うものの、美佐絵の母の美佐子、美佐子の母の梅代、梅代の母など該当する人物が複数いて、誰の視点から見て「母」なのかがわかりにくい。なんで朝鮮人が泥なのもよくわからない。文章が下手糞で推敲不足で、読者が表現内容を理解して物語を楽しめる水準に至っていない。

★★☆☆☆

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最終更新日  2013.12.30 00:50:56
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