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2015.09.15
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カテゴリ: 小説
表題作とその他の1840-60頃に書かれた短編集。シュトルムはドイツの弁護士で、判事や知事をやりつつ創作したらしい。

「みずうみ」は詩作が好きなラインハルトが幼馴染のエリーザベトと恋仲だったものの、ラインハルトが大学に行っている間にエリーザベトはエーリッヒと婚約し、失恋したラインハルトは二度とエリーザベトとは会わずに歳をとってエリーザベトを回想する話。
三人称。現在(老人)-過去(少年-青年時代)-現在(老人)という入れ子構造で、青年期の回想から老人となった現在へと時間を飛ばすことで、最後にラインハルトの一途な思いを強調するという手法。ラインハルトのエーリッヒに対する感情は直接かかれていないものの、エーリッヒがエリーザベトに送った鳥を嫌いだと言う認知不協和によってラインハルトがエーリッヒを嫌いだということを間接的にほのめかしている。また少年時代に二人でイチゴを探したことを青年時代にもう一度話題に出すことで、時間経過による感情の変化を対比させている。オーソドックスな失恋小説だけれど、古い小説にしては様々なテクニックを短編の中に詰め込んでいる。
物語がどの時代のどの場所の話なのか説明不足で、当時のドイツならではの生活感がないのが欠点。イムメン湖(インメン湖)という具体名がでてくるものの、その湖とエーリッヒの別邸の位置関係がよくわからない。エーリッヒが父親の湖畔の別邸を相続して金持ちになったからエリーザベトが惹かれたのか、あるいは家が近所だから親しくなったのか、エーリッヒとエリーザベトが付き合う動機がいまいちわからない。タイトルになっている湖周辺の地理や友人との関係は詳しく書いてほしい。
物語に二回乞食の少女が出てくるものの、プロット上の存在意義はなさそうで脱線気味。乞食の少女がラインハルトに惚れて後にラインハルトの家政婦になって老後の世話をしているとか、何かしらもうひと工夫ほしいところ。脇役をうまく活かして中篇くらいにすればもうちょい読み応えがあったかもしれない。

「マルテと彼女の時計」は私が住む下宿の大家のマルテばあさんの時計は彼女の人生を見てきたという話。
語り手の私の一人称でありながら三人称的にマルテの生活を書くという語りの手法。老人と古い時計を組み合わせて感傷を書くパターンは既視感があるので特に面白いというわけでもない。

「広間にて」は祖母バルバラが古い広間で幼年時代の回想を孫の青年に話す話。
三人称。老人の回想と家族愛を書いた小ぶりな短編で、また老人の回想ネタかと飽きてくる。


三人称で、出来事を作者が直接見ているという体裁で書いている。登場人物に具体性がなく少年、少女、猟人と書かれていて、寓話的だけれども寓話的なオチやひねりがあるわけでもなく、ただの少年のいたずらを書いただけの話で特に見所はない。

「遅咲きの薔薇」は私が友人の家を訪ねたら、友人は妻の少女時代の肖像画と現実の妻とのギャップに萎えていたけど、かつてこうだった彼女は今も生きていると遅まきながら気づいたのだと打ち明けられる話。
私が友人の独白を延々と聞かされる形式。実体験を書いた私小説のようなものなのかもしれない。
おお、青春よ
おお、うるわしの薔薇咲く頃よ!
とリア充に惚気られたところで、読者もおお、青春よと共感できるわけでもなく、物語としてはつまらない。

全体の感想としては、失恋や死別といった個人の感傷に焦点を当てた小さな物語で、人間の普遍的感情の一端はとらえているものの、書かれた時代の社会情勢やら経済状態やらが反映されておらず、プロットもなく、物語世界の広がりが乏しいあたりは物足りない。この作者にしか書けない何か独自の特徴があるかというとそうでもない。

★★★☆☆






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最終更新日  2016.02.11 00:00:24
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