三角猫の巣窟

三角猫の巣窟

PR

×

キーワードサーチ

▼キーワード検索

サイド自由欄

コメント新着

三角猫@ Re[1]:戦争反対について考える(04/02) 四角いハムスターさんへ 四角いハムスタ…
四角いハムスター@ Re:戦争反対について考える(04/02) お久しぶりです。 コメントはしておりま…
三角猫 @ Re[1]:善本位制について考える(08/02) 四角いハムスターさんへ 善本位制がうま…
四角いハムスター@ Re:善本位制について考える(08/02) 三角猫さんへ 中国は国家安全ために自国…
三角猫 @ Re[1]:善本位制について考える(08/02) 四角いハムスターさんへ 私は宗教国家の…
2016.03.21
XML
カテゴリ: 小説
●あらすじ
55歳で定年退職して糖尿病で失明すると宣告された男が死ぬために故郷の風村に戻り、勤め人として失敗したことや15年前に妹が惨殺されたことや弟が犯人と間違えて別の男を殺して逃亡したことや母親が自殺したことや父親が死んだことや妻と離婚したことをうだうだ考えながら母屋に入る気にならず木の上に塒を作って過ごすうちに死ぬ気がなくなり、母屋で弟の死体を発見して家ごと燃やしたり川で鯉釣りをしたりして充実した生活をしていると、村で女性が行方不明になったので、洪水を鎮める能力があるというスピリチュアル一族の青年が妹を殺した犯人だと目星をつけて殺しに行く。

●感想
主人公の一人称の現在形の語り。語り手は冒頭で自分の素性を説明しているので、誰かに読まれる/聞かれることを想定して語っていることになるわけだけれど、話し相手がいるわけでもない状況で実況中継風に現在形の一人称で登場人物が読者に対して説明するのは本来ありえない語りの形式。詩人でもない元サラリーマンが朝日を見て「差し上った朝日が、悶着の連続である浮世を何くわぬ顔で睥睨している。」とポエジーな描写をすることもありえない。作者と語り手が分離していないので、三人称にして作者による風景描写と主人公の心象描写を分けたほうがましだっただろう。文章自体が下手というわけではないものの、この一人称の語りの形式にした時点で語り手兼主人公のリアリティをなくしてしまって技術的に失敗している。
さらには語り手の私、弟、妹など、登場人物が名前で呼ばれず、説明に曖昧さも残る。その曖昧さを後半で叙述トリックとして使うというわけでもなく、ただ曖昧なだけで面白さにつながっていない。それに通常は自分の家族を回想するときに弟、妹と普通名詞で呼ばないで固有名詞で呼ぶし、第三者に対して自分との関係を説明するときに弟、妹と呼ぶので、この語り手はやはり第三者に読まれることを想定して語っていることになるし、その割には説明不足で、やはり語りが不自然。さらには主人公は犯罪を犯しているのに、取調べされているわけでもないのにべらべら自分の犯行を語るというのも不自然。
この作者の小説は初めて読むのでどういう作風なのかはよくわからないものの、好意的に見ればあえて不自然な語りの手法を採用した文体実験なのかもしれない。好意的に見なければナラトロジーに無自覚で構成が下手なだけかもしれない。
テーマとしては妹の惨殺やら弟の誤認殺人やら弟と妹のインセストやらの重いテーマを扱っているものの、テーマを真摯に掘り下げているわけでもなく、ごてごて盛り込んで陰鬱な田舎の雰囲気作りの演出をしたという感じ。犯人探しが始まるのが中盤を過ぎてからで展開が遅く、そのうえ推理に基づかずに証拠がないまま容疑者を決め付けて捜査していて謎解きになっていない。弟が間違った相手を殺した理由が不明だし、昔の列車の脱線事故で怪しい男を見たというくだりは物語の伏線になっているわけでもないし、家で見つけた死体が弟だという証拠もないし、弟と妹が愛し合っていたという証拠もないし、村人や警察は存在感皆無だし、警察が家を燃やしたやつに事情聴取さえせずに放っておくのもおかしいし、クライマックスで暴風雨というのもベタな展開だし、終盤は落雷だの土石流だのが都合よく発生するご都合主義MAXモードに突入してほとんどリアリティがなくなっている。それに主人公が始終陰気で人間的魅力がない不審者のおっさんで、その主人公のうだうだした内省に延々と付き合わされる読者はうんざりするし、この語り手に最後まで付き合って物語のオチを知ってもカタルシスもない。400ページほどあるけれど、プロットに無関係な内省はやたらと多いくせに事件の推理に必要な情報が欠けていて、読者が犯人を推理する余地はまったくない。構成にも内容にも欠点が多すぎてミステリとしても純文学としても面白く読める水準に達していない。amazonでやたら評価が高いのでどんなもんかと思ったら、丸山健二の熱烈なファンが持ち上げているだけだった。
語り手が読者に向かってつまらない話をうだうだ一方的に語るというのはアンフェアでストレスがたまるので、読者としても語り手に文句を言いたくなる。語り手への野次をびっしり書き込んでからブックオフに売ろうかな。電子書籍にニコニコ動画みたいにユーザーの野次を表示する機能があればもっと電子書籍が普及するんじゃないかと思う。

★★☆☆☆

ぶっぽうそうの夜 [ 丸山健二 ]

ぶっぽうそうの夜 [ 丸山健二 ]
価格:761円(税込、送料込)







お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2016.03.21 22:47:03
コメント(0) | コメントを書く
[小説] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: