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2024.07.30
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最近は『アサシンクリードシャドウズ』(Assassin's Creed Shadows)というゲームが炎上したので、これと歴史の改ざんについて考えることにした。

●歴史とは何か

歴史とは過去の人間生活に起こった事象の変遷・発展の経過である。文字ができる前の時代の歴史は骨や土器や化石などの出土品を解析して、争いがあったか、何を食べていたのか、栄養状態はどうだったのかなどを推測している。文字ができてからは古代人が戦争や天変地異などの何か重要な出来事を後世に残そうとして石や粘土板や紙に記録するようになって、現代人はそれを信憑性が高い一次資料として現代語に翻訳して、他の資料との整合性を考えていろいろな仮説の中から矛盾がない説を史実としている。しかし鎌倉幕府の成立は源頼朝が征夷大将軍になった1192年じゃなくてそれ以前だという説が有力になったりして、史実とされて教科書で教えられていたことが後から変わることもある。

●『アサシンクリードシャドウズ』の問題

『アサシンクリードシャドウズ』はUBIの看板タイトルのアサシンクリードシリーズの最新作で11月15日に発売予定のゲームで、日本を舞台にして織田信長に仕えた黒人の弥助を主人公にしている。しかし畳が長方形でなくて正方形だったり、桜が咲いているときに田植えをしていて豊作だと言ったり、日本向けの動画に中国語の簡体字の字幕が使われていたりして、時代考証が不十分なだけでなくて開発チームや監修者の中に日本人がいなくて日本の文化について根本的に理解していない人が作っているのがわかる有様だった。日本人がこれを見たら違和感だらけでよくある外国人が作った和風ファンタジーだとすぐにわかるし黒人が侍として活躍しようがファンタジー忍者が登場しようが別に気にしないけれど、問題はUBIが史実を忠実に描いたかのように発言したことである。​ ファミ通のインタビュー ​では「数年間、専門家の助けを借りていましたが、日本のスタジオとチームでも調査を行いました。異なる種類の情報源を使ってチームが正しく理解し、16世紀の日本の様子を再構築するために必要なすべての情報を持っているかを確認しました。」と言っている。​ Xboxのインタビュー ​では「We’re showing real historical figures, such as Oda Nobunaga and a lot of events that happened during that time, so you’re not only playing in feudal Japan, but learning about this fantastic time period.」(織田信長のような実在した歴史上の人物や当時の出来事を忠実に描いているので、封建時代の日本を舞台にゲームを楽しみながら、この素晴らしい時代について学ぶことができます)と発言した。それでゲーマーたちが忠実に描いていないだろと批判して、粗探しが始まって画像の無断盗用や左右反転コピペが発覚して炎上が広がった。
専門家でない人なら弥助が侍だったと言われてもふーんそうなんだと思う程度だろうし、私もこの問題が起きるまで気にしなかった。そういえば侍とは何ぞやと考え始めると、主人のために戦えば侍で、主人がいないのは侍でなくて野武士だという広義の定義では弥助は本能寺の変で織田信忠がいる二条新御所で刀で戦った記録が残っているので侍といえなくもないけれど、なんで弥助には三浦按針みたいに苗字(家名)がないの、俸禄はどのくらいなの、なんで資料がないの、といろいろ疑問が出てくる。信長は刀好きで森蘭丸には不動行光、黒田官兵衛にはのちに国宝になるへし切長谷部という名刀を下賜しているけれど、弥助には刀を与えたようだけれど名刀として後世に残っていないのでそれほどお気に入りだったとも思えない。資料があまりないことから見ても弥助はたいして重要な人物ではなかったと思われる。
この炎上でUBIの株価が一時的に約15%下落して、UBIは「皆さまのご意見は深く尊重されるとともに、日本の皆さまにご懸念を生じさせたことについて、心よりお詫び申し上げます」「史実や歴史上の人物を再現する目的で作られたものではありません」と声明を出してトーンダウンしている。外国産のフィクションでも真田広之に監修を任せて細部にこだわったディズニーのドラマ『SHOGUN』がヒットしたのに比べて、『アサシンクリードシャドウズ』は発売前から不買運動をされる有様で、いくらフィクションと言えども時代考証は重要である。時代考証をしたうえでフィクションとして面白くするために脚色するのはありだけれど、時代考証がずさんなのはクリエイターの創作姿勢としてだめである。歴史フィクションが好きな人は歴史に詳しい人が多いのだから、ネタ元にリスペクトがなくてろくに調べてない外国人が明らかに不正確な情報を史実かのように語ったら批判されて当然である。

●弥助の歴史改ざんの問題

UBIの炎上で弥助に関する本を書いていた日本大学法学部准教授のトーマス・ロックリーも批判の対象になった。ロックリーは『Yasuke: The true story of the legendary African Samurai』という本を出版して、Wikipediaやブリタニカを自著に沿う内容に改ざんしていたことが判明した。しかもその主張は根拠がない。
本能寺の変で自害したとされる信長の遺体が見つかっていなくて、焼けて身元の判別がつかなくなった説と、遺灰が阿弥陀寺の清玉上人に持ち出された説と、首が原志摩守宗安に持ち出されて西山本門寺に埋められた説があって、いまだに真偽は不明である。
しかしロックリーはTIMEの「​ The True Story of Yasuke, the Legendary Black Samurai Behind Netflix’s New Anime Series ​」で「Yasuke was in the temple with Nobunaga when he performed seppuku. “There’s no record, but tradition holds it that [Yasuke] was the one who took Nobunaga’s head to save it from the enemy,” Lockley said. “If Akechi, the enemy, had gotten the head and he’d been able to hold up the head, he would have had a powerful symbol of legitimacy.” Lockley explained that an act like that would have given Akechi credibility as a ruler. After the attack on Nobunaga, Akechi did not get much support and was soon defeated in battle. “Yasuke, therefore, by escaping with the head, could have been seen and has been seen as changing Japanese history,” Lockley said. 」と記録はないと前置きしつつも弥助が信長の首を敵から守って日本の歴史を変えたと見られると言っていて、弥助を英雄視している。
BBCの「​ Yasuke: The mysterious African samurai ​」という記事でも同様に「He was also there on the fateful night one of Nobunaga's generals, Akechi Mitsuhide, turned against him and set the warlord's palace alight, trapping Nobunaga in one of the rooms. Nobunaga ended his own life by performing seppuku, a ritual suicide. Before he killed himself, he asked Yasuke to decapitate him and take his head and sword to his son, according to historian Thomas Lockley. It was a sign of great trust. 」と弥助が信長に信頼されて首と刀を息子(信忠)に届けたというロックリーの説を紹介している。
CNNの「​ African samurai: The enduring legacy of a black warrior in feudal Japan ​」という記事でも「Facing defeat, Oda ended his own life to avoid losing his honor. He performed a ritual called “sepukku” which saw him stab a short sword into his stomach, slicing horizontally while his attendant Ranmaru Mori lopped off his head. Legend has it, says Lockley, that Oda’s last order to Yasuke was to take his sword and his decapitated head to his son.」と森蘭丸が信長の首を切り落として信長が最後の命令をして弥助が首と刀を息子(信忠)に届けさせたというロックリーの説を紹介している。
このロックリーの説を裏付ける根拠がない。ルイス・フロイスの『1582年度日本年報追信』だと弥助は「信長の死後、世子の邸へ行き同所で長い間戦っていた」とされていて、弥助が信長の首を本能寺から二条新御所の信忠に届けたかどうかには言及していない。森蘭丸は本能寺で討ち死にしているけれど信長より先に死んだのか後に死んだのか不明で森蘭丸が信長の首を切ったという証拠はないし、明智光秀の1万の軍勢に本能寺が包囲されて首を探している中で長身の黒人の弥助が信長の首を持って逃げていたら目立ってすぐに発見されるだろうし、もし弥助が首を守って二条新御所の信忠に届けたとしても信忠や家臣がそれに言及しないのもおかしい。『信長公記』によると信忠は「腹を切った後、縁の板を剥がしてこの中に入れ、遺骸を隠すように」と自分については言ったけれど信長の首の扱いには言及していないので、信忠のところに信長の首が届かなかった可能性のほうが高い。弥助が日本語を話せて信長の最期を見届けたのならそれを信忠や家臣に伝えないのもおかしいし、明智光秀も投稿した弥助に信長の首の所在を尋問せずに「その黒人は動物であって何も知らず、また日本人でもないから彼を殺さず、インドの司祭たちの教会に置くように命じた。」と何も知らないような扱いをしてすぐに追い払うのはロックリーの説とつじつまが合わない。信忠の家臣が信忠の切腹後も戦って討ち死にしている一方で、弥助が刀を捨てて投降するのは忠義がなくてとても伝説の侍とはいえない。ロックリーが黒人奴隷が信長に信頼される侍になって信長の首を持って逃げて日本史を変えたというサクセスストーリーを主張したいなら歴史研究者としてでなく小説家として言うべきで、根拠なしにtrue storyと言うのは学者としてのモラルが欠如している。TIMEやBBCやCNNのような比較的権威のあるサイトで仮説にすぎないものが史実であるかのように外国に広がると、それを訂正するのも大変になる。
日本ファクトチェックセンターは「​ 黒人侍とその家族の画像?【ファクトチェック】 ​」という記事でAIが作った黒人侍の白黒写真の真偽についてロックリーに尋ねているけれど、聞く相手を間違っている。専門家が言うことだから正しいとみなすやり方は専門家が間違っている可能性を考慮していない。

●なぜ歴史は改ざんされるのか

・利益や名声を得るため

歴史が古くなるほど資料が乏しくなって専門家でも何が真実か断言できなくなるので、そこに歴史の改ざんの余地が生まれる。生きている人間は事実無根の事を言われたら反論するけれど死者は反論できないし、専門家でない一般人には反論するほどの知識もないしわざわざ調べるほど暇でもないし、専門家でも外国人が外国語で出版した本や論文を全部チェックするのは大変なので、歴史を改ざんしてもなかなかばれにくい。芸術の盗作と似たようなもので、捏造がばれれば名声を失うけれど、ばれなければ専門家の地位を得て本が売れたり記事の執筆依頼がきたり大学の講師になれたりする。
旧石器捏造事件を起こした考古学者の藤村新一は「功名心から捏造を始めたものの、『神の手』などともてはやされるようになり、プレッシャーから捏造を続けてしまった」と言っていて、学者としての真理の探究よりも功名心が上回ったようである。
吉田清二が『朝鮮人慰安婦と日本人』を出版して慰安婦が強制連行されたと主張したのは金儲けのためだろうし、朝日新聞が吉田証言を根拠にして女子挺身隊と慰安婦を混同して慰安婦を外交問題にまで発展させたのも反日の購読者に媚びて金儲けをするためだろう。
韓国が端島炭鉱(軍艦島)で朝鮮人労働者が虐待された証拠して出した写真が実際は福岡の筑豊炭田の写真だったように、韓国政府は被害者ぶって補償で利益を得るために証拠を捏造して歴史を改ざんして外交問題にしようとする。

・国を支配するため

新しい国や政権ができたときに、焚書して過去の王朝や政権を否定して歴史を改ざんすることがしばしばある。秦の始皇帝は秦以外の国の歴史書を焚書して自分の偉業を称える刻石を作らせた。日本では第二次世界大戦で敗戦して、GHQが日本人の愛国心をなくさせるために戦前に出版された7000冊が燃やされて、日本人はアメリカに従順な自虐史観に調教された。
仮想敵国を作ると愛国心を煽って国内の問題から国民の目をそらさせることができるので、中国は南京事件を大虐殺に仕立て上げようとして合成写真などで証拠を捏造して反日プロパガンダを広めている。

・自分の国を擁護するため

アメリカは第二次世界大戦で日本人を猿扱いして東京を空襲して10万人を虐殺したり広島に原子爆弾を落として14万人虐殺したり長崎に原子爆弾を落として7万人を虐殺したりして非戦闘員の市民を虐殺して、イスラエルがパレスチナ人を動物扱いして市民を無差別に虐殺しているのと同様の大量虐殺をしたけれど、その蛮行を正当化するために日本人が残虐非道だったのだという物語をでっちあげて歴史を改ざんしたがる。中国系アメリカ人のアイリス・チャンは『ザ・レイプ・オブ・南京』で日本軍が数週間の間に一般市民約26万人から35万人を虐殺し、女性2万人から8万人をレイプしたと証拠もなしに主張して、最近はアメリカ人のブライアン・マーク・リッグが『Japan's Holocaust: History of Imperial Japan's Mass Murder and Rape During World War II』という本で1927年から1945年の間に天皇の命令で少なくとも3000万人が虐殺されたと根拠もなしに主張していて、外国に反日プロパガンダを広めている。ジャーナリストや歴史家の肩書を持った人たちが史実に嘘や誇張を混ぜて拡散する工作活動をするので悪質である。

●歴史を改ざんされないためにどうすればいいのか

しばしば文系の学問は役に立たない(企業の利益にならない)からなくせと言う人がいるけれど、大学が歴史を研究して研究成果を継承し続けなければ歴史が改ざんされても気づけなくなる。それゆえに歴史研究者の数と質を維持して、文化財や歴史資料や公文書を保管してデジタル化するなり外国語に翻訳するなりして資料に反する説の間違いを証明しやすくするのが重要である。国立公文書館の平成30年の「​ 公文書管理体制の日英比較 ​」という記事によると「欧米先進諸国では、作成後30年経った重要公文書は国立公文書館に移管されて永久に保存され、原則として公開されるという「30年ルール」が定着している。最近はその期間が縮小される傾向にあり、イギリスでは2010年の法改正により、「30年ルール」が「20年ルール」に改められ、現在は2023年の全面施行に向けた移行期間となっている。日本は「30年ルール」さえ定着しておらず、彼我のあまりの差に驚かされるばかりである。」そうで、公文書がちゃんと保管されて公開されることで事実を確認しやすくなる。
化石とかの考古学的な資料は放射性炭素年代測定で年代がわかるので捏造しにくい。しかし写真や動画はAIの進歩で捏造が容易になって、古代史よりも近現代史の検証の方が難しくなるかもしれない。AIが悪用されたらカティンの森事件のように虐殺をなすりつけられたり偽旗作戦で被害をでっち上げられたりする可能性があるので、資料の真偽を判定するための科学技術も発展させる必要がある。Xのインプレゾンビが東日本大震災の写真や動画を能登地震の時に投稿したように、写真や動画が合成でないとしても元の文脈とは違う文脈に使われることもあるので、いつどこで誰が撮影したのか、初出はどの本やサイトなのかという背景情報もアーカイブして検索しやすくする必要があるだろうし、exif情報がない写真は加工されたものとみなして歴史的資料として採用しないとかのデジタル資料に対応した保管基準も必要だろう。反日外国勢力による歴史の改ざんからの防衛も国家の防衛の一環として相応の予算をつけて取り組むべきで、従軍慰安婦問題みたいに捏造から外交問題に発展するようなことは繰り返してはいけない。






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最終更新日  2025.11.24 09:42:38
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