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「希色ちゃん…実は…」
 言わなければならない時に来ているのはわかっているのだが、その時が突然来たこともあって、巧はなかなかその先の言葉を口に出すことができない。
 マジョンナはそんな巧の横から口を出すことはなく、事のいきさつを見守っている。ニージョも一緒だ。
 このまま黙っていても、この状況下では希色が近々ロイキと対面を果たすことは間違いない。その時を迎えれば、今希色が見せている不安の表情より、彼女はどれだけまた大きな不安を抱えることになるだろう。
 昨日とは違い、今度は真実を話すことがその時の不安を幾分緩和させて、希色のためになるのではと思い直し、巧は息をついて再び口を開いた。
「落ち着いて聞いてね。実は…昨日、希色ちゃんが夢だと思ってたことは…現実に起きたことなんだ。つまり、もう一人の…希色ちゃんが、鏡の中から現れたんだ」
 ゆっくりと、自分でも確認するように、言葉を搾り出した。
「……」
 それを聞いた希色は、その事実に驚いているのか、冷静に受け止めているのかわからないような、話を聞く前と同じ不安の表情のまま、言葉を発さず巧を見つめたままの姿勢でいる。

「希色ちゃん、ごめん!昨日は、本当のことを言うべきかどうか迷ったんだけど、気を失ったばっかりだったし、それ以上希色ちゃんに不安な思いをさせたくなかったんだ。初めから言うべきことだったのに…今になって不安を煽るような真似して…ごめん」
「あ…ううん、ごめん、気にしないで」
 突然謝られ、固まっていた希色も我に返り、首を横に振る。
「本当は現実に起きたことなのかもってずっと思ってて。夢だと思いたかったのかもしれない。だから私、あの時は本当に元気付けられたよ。すごく恐かったし、巧くんの様子を見てても、いざ自分も同じ目に遭ったらって考えると、きっとあの時に言われてたら不安で押しつぶされてたと思う。でも、一緒だから大丈夫だって言ってくれて、巧くん達がいてくれるって思ったら、私、全然恐くなくなったんだ。もう一人の私と対面するその時は…やっぱり恐いかもしれない。でも昨日巧くんが言ってたみたいに、ミックくんも悪い人じゃないし、もう一人の私に会えるって、考え方を変えればすごい楽しみかもって思えるようになったの」
 希色はそこまで一気に気持ちを表に出すと、今度は笑顔になって付け加えた。
「だから、夢が現実になったんだって思うとちょっとビックリしてるけど、大丈夫だよ!みんながいてくれるから!」
「希色ちゃん…」
 巧は、希色はつくづく強い人だと思った。
 自分が同じ立場だったら、果たしてここまで言えただろうか。いかに夢(実際には現実だが)で体験したとはいえ、それが現実となった事がわかれば、冷静を保ったとしても、笑顔など到底出すことができなかっただろう。
 それと同時にその笑顔を見て安心した。
 昨日の段階での心配は拭われ、置かれている状況は同じになったとはいえ、自分も精一杯希色を支えてあげようと、素直に思った。

「…うん!ありがとう」
 希色は、そう巧に声を掛けられ、不安と緊張の糸が切れたのか、笑顔のまま涙を流しだした。
 まだ見ぬ現実に、短期間で覚悟を持たなければならない。いかに強い心を持っていても、やはり負担は大きいものである。
「なんとか、丸く収まったみたいね」
 マジョンナはそう言うと、希色にゆっくりと近づき、そして抱きしめた。

「先生…」
 希色がマジョンナの胸の中で涙を拭い、笑顔を取り戻すと、マジョンナは希色から離れ、腰に手を当てた。
「さ、これからやることがたくさんあるわ。申し訳ないけど、巧、希色。今日の放課後は私の家で作戦会議よ。覚悟はいいかしら?」
「えっ?作戦…会議?先生、どういうことですか…?」
 マジョンナの言葉に、驚きの表情で巧は言葉を返した。
「あなたたちは、まだ知らないことが多すぎるわ。私が知っていることだけでも、あたたたちの頭に入れておきたいの。そうじゃないと、協力しようにもできないでしょ?こういうことは、早い方がいいわ。まぁ私自身、まだ知らないことも多いのだけれど…」
「なるほど…。でも先生、俺達にできることって、いったい何があるんですか?」
「そうね…、いくら同じ姿の二人って言っても、やっぱり二人は一心同体なのよ。二人一緒でないとできないこともあるわ」
「一心同体…」
 マジョンナの話で、巧は気がかりなことを思い出した。
「そう言えば…先生、今朝から、ミック達の姿が見えないんです。鏡を通して、俺がいないと出て来れないはずなんですけど、出てくる様子が全くなくて…鏡の向こうに現れることもないんです。たぶん、ロッキーと一緒のはずなんですけど」
 それを聞いたマジョンナは、眉間にしわを寄せた。
「出てこない…?気まぐれかしら?向こうで何か調べてるのかもしれないわね…」
 そこまで言うと、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り始めた。
「よくわからないけれど、詳しい話は放課後よ。そこにミクタ達も招集するわ。希色はそこでもう一人のあなたと対面っていうことになるけど…大丈夫?」
 そう言われ、マジョンナと目が合って、一瞬希色は胸に手を当てたが、笑顔で「はい!」と返事をした。
「よかった、安心したわ。それから…」
 マジョンナがさらに続けるので、巧達は「今度は何だ?」と言う表情で彼女の言葉を待った。
「私のことを先生、って呼ぶのは授業の時だけにしてちょうだいね。あれは、あくまで仮の姿なわけだし、その呼ばれ方だとピンと来ないのよ。だから、私のことはマジョンナ、でお願いね」
 と、注意されると、二人は
「はい、先生!…じゃなくてマジョンナ…さん。さん付けでいいのかな?」
「私はなんだか呼び捨てはできないかも…」
 などと戸惑いながら確認しあった。
 その横で、それまで黙っていたニージョが、
「わいは、やっぱり姐さんが一番しっくりくるわぁ」
 とマジョンナに近寄っていった。
 が。
「もう…勝手にしなさい!」
 と、マジョンナの怒りを買い、蹴りをくらうのであった。 

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最終更新日  2006.08.16 15:23:28
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Re:鏡の中のボク(29)(08/16)  
こもも2055  さん
久しぶりに遊びに来ました~♪
今は誰のファンかと言うと、マジョンナ先生、いえ、マジョンナさん、いえいえマジョンナ姐さんが好き♪ いいなぁ。
拝読するたびに胸の中があったかくなる感じがします。応援しています! (2006.08.20 06:27:37)

Re[1]:鏡の中のボク(29)(08/16)  
サワデー☆  さん
>こもも2055さん
返事が遅れてすみませんm(__)m
そうですか!俺も実は姐さんが一番好きだったり。。自分で言うのもなんですけど汗
彼女はいったい何者なんでしょうね~、これから彼女には活躍してもらいますよ。
更新はダラダラですけどちゃんとしますので、楽しみにしていただけると嬉しいです♪ (2006.08.22 19:14:56)

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