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ちょっと遊んでみよう目をいつもより見開いてけれど見ているのはいつも風景じゃないスチールの机も背もたれのかしいだ椅子もないいっぱいに開いた視界の中で整然と並んだ球体が打ち寄せる波のような音を感じて収縮と膨張を繰り返すしかも微妙に揺れるのだ音の波は数限りなく並ぶ球体が揺れることでその動きを明らかにするいつの間にか私は天も地もなく果てもない空間で見渡す限り並ぶ球体に囲まれるようにいたいくつも波があらゆる方向から打ち寄せる球体は膨らんでは揺れ揺れては縮むその動きはパターンとして私の目に映りだす巨大な波がゆっくりとやってくるのがわかる吹き上がる勢いのある流れも突然沸き起こるつむじ風もすべて球体の動きよって視覚化されている私は球体によって表現された波動をその身をもって感じている空気の圧力、波、私をくるみ、そして流れていく波は互いにぶつかり合うことなう球体によって確実に伝えられていくいくつも波が交差して、そしてなにごともなかったように流れていく
Apr 30, 2005
こもれびおどる もりのなかのこみちをあるく てをつないでこのままときが とまればいいしずかなじかん ふたりだけのかぜがひかってる おだやかにくもがながれる とおいそらへこのままかぜに ながされたいあなたとふたり どこへだって※このあとはアドリブでどうぞNHKはコーエーのサウンドウェアをBGMに使うことが多いようで。今日は『信長の野望 覇王伝』の『陽光の頃』(作曲 菅野よう子)がかかってました。今の季節にぴったりのいい曲です。で、前半部分の歌詞をかってにつけてみました。後半は口から流れるままに言葉をつないでみてください。
Apr 29, 2005
公園の丘の上でぼんやり町を眺めるなんにもない日曜の午後ふい現われたあのコは僕のセルロイドのメガネを取って風のように消えてった僕が驚いたのはメガネを取られたことじゃなくてメガネをとったらこんなに空が広く感じられたこと町の様子はかすんで見えないけれど空はどこまでも青くってどこまでも広くってどこまでも遠かった空の向こうから風が吹いてあのコが笑っているようで僕はメガネを探そうともせずに両手を広げて丘を駆け下りたきっとこのまま飛べるんだそう思って駆け出したのさ
Apr 28, 2005
少女がくれた白いスフィアはまだ私の手元にある少女がしっかり握り締めて私に渡した子供の手の中にすっぽり隠れるほどの小さなつややかなスフィアほんのりぬくもったそれは僕の手のひらの上でかすかな音楽を奏で始めた螺旋を描いて空へ立ち上っていくような不思議な音色少女はその音楽を耳にすると小さくうなづいたそれから、それから……。私にはまだその時が訪れていないのだろういくら握りしめても少女のように音を奏でさせることはできないよほど分解してみようかと思ったが磁器のように滑らかな表面には髪の毛ほどの筋もなくしかし壊すことはためらわれた。少女は次第に姿を変えていったそれまで5歳ほどに思われた彼女は僕の目の前で成長したその服装も制服になり大人びた私服に変わるそれにつつまれた体つきもそして僕にむけられた顔もまぶしいばかりの乙女は成熟した女性になりやがて老齢にったした身に付けていたのもいつしか落ち着いた和装になっていた「忘れないで、その音を。そして握り締めて、あなたの手で。」彼女は初めて口を開き、それが最後になった。スフィアも歌うのやめた。私はいまも肌身離さず白いスフィアを持っている。時間があれば握り締めている。いつかこのスフィアを渡す相手を見つけるその時まで。その時私は小さな子供の姿でいるのだろうか、そして自分の音楽を聞きながら肉体の成長と老衰を追体験するのだろうか。このスフィアの正体を私は知らない。
Apr 27, 2005
泣ける話と人は言う心を打つ物語と人は言うされど空を流れる雲風に輝く緑瞬く星々の渦時の流れの行く末を見つめて涙を流すことを知らずしてどうして真の涙を知るというのか自然の響き共鳴して心揺さぶられ自然に涙の湧くことがまずは真実の感動への一歩なり
Apr 26, 2005
机の上に磨きこまれた鏡面卵君が顔を近づければゆがんだ顔が映るだろう指先で軽くノックしてごらん僕はここにいる卵の中で卵の表面になにも映らないすべてが絶えるその日を待っているんだごめんよもう会えないでも軽くノックしてくれたならきっとぼくも殻をつつくよ最後のお別れのそれが合図だ
Apr 25, 2005
昨日がどんなにひどい一日でその夜ときたら二度と思い出したくないことばかりだったとしてもほら茜色の筆でさっと夜空をなでたら希望の光が差し込んでつらい思い出は夢になる昨日がどんなに大変な一日でその夜ときたら涙を流さないで思い出せない晩だったとしてもほら茜色の筆でさっと夜空をなでたら暖かな日が差しこんで自然と笑顔が戻ってくる忘れないであなたには茜色の筆がある忘れないであなたには光を呼ぶ筆があるさっと夜空をなでればほら朝日が筆を追ってやってくる忘れないであなたには茜色の筆がある忘れないであなたには光を呼ぶ筆があるさっと夜空をなでればほら朝日が筆を追ってやってくる
Apr 24, 2005
海から流れ込む大気は冷たくて並木の若葉も凍えて揺れるそのまま凍りついてしまえばよいのにとわがままな独り言5月の空に雲の宮殿季節代わりの風は 雛鳥を巣から誘い出し旅人の心をくすぐる僕といえばこの生活から離れがたくしかたなくイマジネーションの凧を風に乗せて空へ飛ばすけれど宮殿は程遠く今年も旅立てぬことのせつなさを凍える若葉の色にたとえて慰める
Apr 23, 2005
月明かり射す街角で長く伸びた自分の影を見つめながら思うこれ以上の登場人物など必要なのかと街、夜、月、自分と自分の影それで十分これ以上加えるとしたら流れる風のほかは一切不要だ僕はゆっくりと自分の科白をしゃべりそして必要な時間を押し黙ってそれからまた唇を開くそれだけで十分静かな夜に僕の物語が続く月はこれ以上傾かないし夜明けは来ない物語が終わるまでずっと
Apr 22, 2005
呼吸も止るスピード狭まる視野とらえていた後姿見失った見回せない振り返れないちょっとのずれは一瞬先の死強烈なスピードの檻後姿失った今スピードは必要か目標のない失速永遠にさまよう目もくらむスピードのなかかすかな痛み視線このスピードも追い抜く速さ振り返らないけどわかる自分が前にどこまでも突き抜けるスピードそれを追い抜く二人の意識
Apr 21, 2005
さようならさようなら崩れ落ちていくそれは世界を支える柱にして世界そのもの地形を水平面に時間を垂直に連ねた水晶の柱砕け散る破片の中に炎が見える(炎の中に数え切れぬ人影が揺れている)キラキラと輝きながら過去の空間へ落ちていく春の明るい空から降る雨粒のように大きな亀裂は過去と未来に向かって走り音もなく破片が弾けやがて小さな破片になって飛び散っていく(それは世界の種になるのか、それともただの屑なのか)無音の崩壊見下ろしても見上げてもただ静かな空間が広がっている細かい破片が水晶の破片が霧雨のように降り注ぐ空間にあまねく行き渡るように(覚える者も忘れる者もない、わたしはだれでもないただの視点)さようならそれからさようなら
Apr 20, 2005
灰色の街、今の僕は自分が後にしてきた故郷をそう呼ぶ。ほかに言い表す言葉を思いつかないからだ。そこにはこの世界にあるような色はない。モノクロの世界だ。そう書いてしまうと、そこは退屈でつまらなく、寂れる一方の街であると思われてしまうかもしれない。初めて色を目にしたとき、僕の目に故郷はそのように映った。そうでないことを十分知っているはずなのに。"色に迷う"、色の意味するところは違うのだが、その言葉がぴったりだ。色つきの夢さえ見なければ、僕は今もあの街にいただろう。微妙な陰影がすべてを飾った、そして誰もが鋭い感性でそれを感じ取っていたあの世界を。 「それほど、色のついた世界のほうがいいの? 色のない世界には魅力はないの? 私は、私も今のあなたにはくすんだ存在にしか見えないの。もうあなたの目はだめになってしまったの、私と同じ陰影を見ることができないの」 彼女はそういって、涙を流しながら僕にすがりつき、そして僕の眼を覗き込んだ。そこに元凶を探すかのように。今振り返るとそれはできのよいモノクロ映画の一場面のようにしか思い出せない。不思議なことに、これだけ豊かに色の溢れた世界へ来たというのに、僕のものを見る目は、その能力を落としているような気がしてならない。多くの色を見分けることはできるが、あれほど細かな差異も陰影の中に読み取った、あの感覚はもう戻らない……。 僕らが生まれた街には、プリズムによって分けられた色がなかった。太陽をはじめ、いかなる照明の色も白しかなかった。白と言う表現は、この世界での便宜上に使っているに過ぎない。ただ僕らの街では光は白く、ほかの色に分解されることはなかったのだ。その代わり、僕らの眼はどんなわずかな光と影の差異をも見分けることができた。だから僕らが作るものは、色をつけるのではなく、異なる陰影の差異によってデザインされた。それは衣服から建物まですべてに及んだ。ビルは太陽の動きに合わせて、様々な文様をその壁面に作り、そしてシルエットを変えて見せた。立体造詣については、きっと色のあるこの世界よりも、はるかに豊かで、技術、芸術ともに高い水準にあったと思う。 いや、もうはっきり思い出せないのだが。 衣服や装身具も、その形と材質、そして人が身につけたときに生じる変化を計算して作られていた。トップデザイナーのドレスは、身に付けて光の中で回転すれば、何着もの違った衣服に早変わりしながら回転しているように見えたものだ。動物の毛並みもしかり。それに人間の肌も。 「あなたの文様をもう見ることができない。私の背中の文様をあなたはもう見てくれない。」 僕らにはそれぞれ肌の状態や毛の生え具合によって、ひとりひとり異なる影の文様を肌の上に作った。見る人が見れば、個人の区別もつくのだという。僕らは互いの体に現われる陰影=文様を見るのが好きだった。指を這わせることも。それは愛し合う者どうしなら当然のことだったろう。恋人たちだけではない。親はは抱きしめた子供の文様を見て、愛情を深くするとも心理学者は言っている。 人間の肌に浮かぶ陰影は、感情や隊長の違いですぐに変わった。僕が色つきの夢を見たと話したときから、彼女の体に浮かぶ文様は変わったのだ。顔の表情はいつもどおりだが、剥き出しにした肌を見ればすぐわかる。わかってしまうのだ。 「あなたがだんだんかすれていくわ。あなたが夢の中で色を見たそのときから、あなたの姿は見えにくくなっていたの。私の愛した文様はもうないわ」 彼女はそういって立ち去るつもりだったのだろう。けれど数歩あゆんだ彼女は、急に泣き出して振り返った。 「どうしても色のある世界へ行くの。あなたの目はこの街のすばらしさを見る力を失うわ。色に惑わされてきっと後悔する。けれどもうこの世界には戻れない。もう戻れないのよ。さよなら!」 うつむいて走り去った彼女の後姿はモノクロの彼方。僕はもう彼女の体に浮かんでいた文様を思い出せない。あれほど愛していたのに。 後悔はしない、そう心に決めていた。けれど今は色に溢れたこの世界で、息苦しさを感じる。あぁ、あの街に戻りたい。色はなく、その代わり光と影が織り成す文様がすべてを飾ったあの街へ。*******************************************************誤字脱字を修正、文章も手を入れました。2005.04.22
Apr 19, 2005
座敷の床の間に、陶器製の香炉があった。白に青で複雑な網目が描かれている、火鉢に蓋を乗せたような香炉だ。蓋に開けられた小さな穴から一筋の煙が流れてくる。それが畏まって座っている私のもとへと来るのだが、これがいやな匂いなのだ。なにを焼いているか、香木とは思えない。だがここは相手が大変に恩になている人の客間で、いくらひとりで待たされているとはいえ、香炉の煙を手で仰いでよける無作法はできない。最初は鼻息で煙を退けようとしたが、それは帰って花から煙を吸い込んでしまい、もう少しでむせてしまうところだった。だからかすかに唇を開いて息を吐き、なんとか煙を向こうに追いやろうとしたのだが、煙はまるで白い蛇のように、顔のまわりにまとわりついてきた。その匂いは、なにか髪の毛か、毛皮を焼いたような匂いで、頭がクラクラしてしまう。もう我慢できない。私は床の間ににじり寄ると、香炉の蓋を開いた。すると灰にうずもれるように、炭の破片がひとつと、それを抱くように、しわくちゃな塊があった。その塊が焼かれてにおうのだ。あまりの臭気に返って好奇心が沸いた私は、鼻を袖で塞いで顔を近づけた。するとしわくちゃなものは、かすかに震えて、そして目を開いた。それはじっと見据えてぽつりと言った。「修行の邪魔だ。」私は慌てて香炉の蓋を置くと、しびれる足をもたつかせ、慌てて座敷を飛び出した。
Apr 18, 2005
私には暗くなりたいときがある。暗くなるのではなく、自分から望んで暗くなりたいと思うのです。絶望にかられたわけでも、この世に嫌悪を抱いたわけでもなく、ただただ、暗い闇の中に深く沈んでしまいたいと思うのです。たとえば照明のひとつもない、ガラス張りのエレベーターに運ばれて、地中深くに潜っていくような、海溝に落とされた錘のように、すうっと深海の闇の中に沈んでいくような。そうでなければ明かりの消えた地下鉄の車両にいて、やはり照明のつかない地下の鉄路を延々と移動していくような。 そういえば以前、熱に浮かされた少年が、地下鉄の車両から降りることもできず、ひたすら地下を運ばれていくといった話を書いたような気がします。もしお暇ならば、この日記をさかのぼって探して見てください。もしその少年が半ばあきらめて、列車に自分の身をゆだねているようでしたら、その気持ちに近いかもしれません。でも、暗くなりたいという気分は、もっと透明でもっと自然な、けれどじつに静かな衝動です。 列車、といえばこんな話をノートに書きつけた記憶があります。それは深緑色の沼の中から始まるのです。……自分が沼の中にいるのはわかっていた、不思議と息は苦しくない、けれど水面にいち早く出たくてしかたなかった。閉所恐怖症の私は、目の前を濁った緑色の水でふさがれているのが、ひどく不安で、しかも狭苦しい感じがして、たまらなく嫌だったのだ。けれど手足が動いている風もなく、私は不透明な緑の粒子がびっしりとして流れる沼の水の中にいた。すると自分の不安が形を持ったように、目の前に大きな黒い影がぼうっと現われた。私は逃げようと必死になったけれど、まるで体はなきがごとくで、声も出ない。どこか現実感はないのだが、しかし総毛立つような恐怖が湧き上がる。黒い影が目の前にぬっと現われると、それが巨大な鯰だとわかったとたんに、そのまま真っ暗な鯰の中の闇に呑み込まれた。 僕は大きな声を上げて目を覚ました。起き上がろうとしたが、誰かが僕の体を押さえつけていた。けれどそれが女性の手だとわると恐怖も不安な気持ちも消え去っている。母だろうか、姉だろうか? 若い女性の膝に頭を預け、僕は列車の椅子に足を屈して横たわっていた。僕の小さな体は彼女の左手で支えられ、切りそろえた髪は彼女の右手で優しくなでられたいる。不安なことはなにもない、大丈夫。ここなら鯰の悪夢も怖くない。まどろみながら幼い僕はそう心の中でつぶやきながら、また眠り落ちていく。眠りに落ちると、視点は僕自身から遠ざかっていく。二人掛けの椅子が並ぶ古い車両には、僕と僕の眠りを見守る女性しかおらず、その前後につながる車両には照明すら点いていない。ただ、それが果てしなく続いているように思える。遠くに走る先頭車両も、運転席だけ小さな照明が点いているのがうかがえた。 遠く離れていく列車を見送った僕は、無人駅であっても不思議ではないような小さな駅のホームにひとりたたずんでいた。通過駅にしか過ぎない小さな駅のホームには、小さな外灯がひとつ。それだけが唯一周囲の闇から駅を守っていた。僕は明かりを消したカンテラを手に提げて、光の輪の中から退場する。遠近感もわからぬ闇の中で次第に小さくなっていく、列車の明かりを見送りながら……。 「あなたのお作って、かならず女の人が出てくるのね。それで都合よくあなたを助けたり、守ったり、自分の命を投げ出したたり。ねぇ、それって酷くエゴじゃなくって? きっといま書いているお作にも、都合よく女の人が出てきて、あなたを救うのだわ」 誰だろう、編集者ではないだろう。なぜこんなにも俺の短編にズケズケと意見を言うのだ。まぁほめられた作品なぞないし、それに職業作家でもない。そうだ、いったい彼女は俺の作品をどこで読んだんだ。俺は睡眠不足のせいでボーリング玉のように重くなった頭を持ち上げて、声のするほうを見た。女は俺の前に座っていた。安っぽいソファーに腰をかけている。和装なのはなぜだろう。女は激しい口調だったが、決して怒っているようには見えなかった。挑発しているのだろうか。 空になったグラスが二人の間にあった。これまた安っぽいコーヒーテーブルの上。酒瓶はない。グラスだけがひとつ、なんだか言い訳じみている。 「どうしてひとりでいられないのかしら。すべてをひとりで背負って生きていけないのかしら。あなたはいつも自分の作品の中で女に助けを求めているの。なぜ。」 女の口調が少しぞんざいなものになった。俺は立ち上がる、もし呼んだ音があるなら、その作品について意見をいうのは自由だ。だが、なんでこんなシチュエーションなんだ。なにがしたい。目的はなんだ。俺はよろよろと立ち上がり、ひどくゆっくりとコーヒーテーブルをまわりこんで女の前に立った。ふくらはぎに当たったテーブルがずりっと退き、グラスが転げ落ちた。女は俺を見上げている。逃げる風情もない。その目はまっすぐ俺を見ているが、俺にはその色がわからない。 「なんでそんなことを言うんだ。」 俺は声を荒げたつもりだが、かすれて息が抜けた不明瞭なうなり声でしかなかった。ますますいらだって俺は女の両肩をグッとつかんだ。このままソファーの上に押し倒すことも、引きずり落とすこともできる。 「あなたは助けを求めてるの、守ってもらわないといけないの、そういつも守られているのよ、あなたは。」 女が一言一言区切るように言った。顔の表情は変わらないのに、語気はとても強く、俺は肩をつかんだまま金縛りにあったように、指一本動かすことができなくなっている。重い頭を振り上げて、その勢いでなにか言おうとしたが、唐突に部屋の照明が落ちたのか、真っ暗になり、自分でなにを言おうとしたのか忘れてしまった。 「ほら闇の中にひとりでいなさい。ひとりでいなさい。誰も来ないわ。呼んでも来ないわ。」 指先の感覚がなくなると、遠くで女の声がした。感覚の喪失は体中に広がって、俺は目と耳だけの存在になってしまった。そのときになって初めて嗅覚が最初からなくなっていたのに気がついた。 闇に戻る。暗い空間に。トボトボと歩くように……。暗くなりたいときがある。それは悲しいとか、望みを失ったとか言う感情によるものではないのです。それはじつ静かな衝動なのです。
Apr 17, 2005
青空を吹き渡る風の中に 旅人の詩(うた)が流れて行くちぎれた言葉の断片が僕の目を潤ませる"どかで会おう""風の中で"どこまでも朗らかででもとても切なくて青空にはぐれ雲旅人はどこへ行くのだろう青空を流れる雲の上に旅人の言葉が流れて行く忘れられた言葉の意味が僕の心を誘う"思い出して""忘れない"どこまでも白い雲でもいつかは消えるよ青空に白い雲旅人はどこにいるのだろう吹き渡る季節変わりの強い風戯れに運ぶ旅人の詩旅人自身も忘れた言葉の破片がまるで花びらのように舞い散るよ僕はそれを追って旅を続ける風がいざなう遠い旅路もう帰る家も忘れた"どかで会おう" いつかきっと"風の中で" 会える日が来る"思い出して" そのときがくれば"忘れない" 僕も風の中を渡る旅人たちは5月の空を目指すそこは旅人と風の王国雲の城には地上を離れた詩人たちが旅の思い出を天上の調べに乗せて歌うどこかで会おう旅人よ風の中で別れた友よ思い出して5月の空を忘れないであの風を吹き過ぎ行く風から帽子を守り見上げる夜空に傾く半月大空の奇跡が僕をきっと待ってtいる
Apr 16, 2005
旅の途中で是非寄りたい場所があった。巨大なドラゴンの残骸。はるか遠き過去に命を失い大地に倒れたドラゴンの半ば朽ちた姿が掘り出され、埋まっていたときの姿をほぼそのままにいまは巨大なオブジェか前衛的な建造物のようにして存在している。写真でしか見たことはないが、一生に一度見ておきたいもののひとつだった。飛行船はゆっくりと雲の帳を抜けると、ラウンジの窓際に立ち並ぶ人々の口からまたも声が漏れた。興奮、驚愕、畏怖……。平原を囲む岩山の峰、そのふもとにごろりと横たわるのはまさしくドラゴンだった。巨大な翼は根元からもがれ、尻尾の先もかけてはいるが、まるでドラゴンが午睡を満喫していつかのような姿だった。角のかけた横顔は、それでも冒しがたい尊厳を持っていた。どのような名匠、芸術家もその姿を作品に現わすことはかなわないだろう。そう思わせる雰囲気があったのだ。飛行船は最寄の繋留地に降り立ち、私を含め、期待に胸高鳴らせる乗客は、我先にタラップを降りるとチケット見せるのもそこそこに、ドラゴンのそばへ向かうバスに乗り込んだ。そう、ここは観光地なのだ。バスはドラゴンの顔がよく見える位置に立てられた4階建ての展望施設の前で止まった。足早に下りたものの、ちょっと迷う。展望台に上がるか、近くへ行くか。結局ほかの乗客に押し流されるように、ドラゴンへ向かった。ドラゴンはまるで岩山をそのまま削ったような荒々しい雰囲気と、深みのある琥珀色をしていた。近づけばその皮膚が破れ、肉がそがれているのが見える。それは山に開いたクレパス、風穴を思わせる。しっかりと閉じたあぎとの中に牙は見られなかった。まぶたもしっかりと閉ざされていた。だからこそいまも威厳を保っているのだろう。ドラゴンの口先を横に見ながら、喉から腹へ向かう。腹腔はすっかり皮膚も肉もなく、残った皮膚を巨大な肋骨が支える景色は、まるで巨大なアーケードのようだ。その大きさは我々が乗ってきた飛行船をまるまる飲み込んでしまえそうだ。昔はこの中に発掘用のキャンプが置かれ、いまは研究施設のほかに、みやげ物やが軒を並べている。ドラゴンのオブジェや、鱗、牙のレプリカが並び、この地方独特の織物が大小さまざまな品物になって並んでいる。いずれもドラゴンの姿をあしらっているところが、いかにもみやげ物らしい。僕は露店を目の端に見ていたが、両目は天井を支える巨大な肋骨の並びと、それにかぶさるドラゴンの内部を見上げていた。すでに死骸としての生々しさはなく、まるで巨大な寺院の中にいるような気分になった。肋骨は塔ほどの大きさを持つ柱。それがかしいだ感じで脊椎に連なっている。大地震でも来たら、まるでドラゴンのつめのように、軒を並べる商店に突き刺さるだろう。実はこの中に実際に祭壇が置かれたこともある。もっとも天井までの高さがある部分に、巨石を組んだ祭壇がある。今は信者もいないようだが。それでも観光客はそれぞれの仕草で祭壇に祈っていた。僕も帽子を取って深々とお辞儀。地元ではこのドラゴンを"眠れる世界王"と尊敬をこめて呼んでいるのだ。陛下ご機嫌はいかがですか?腹腔が終わる部分に、もうひとつ展望施設がある。ここまでそぞろ歩いて30分。ドラゴンは小山のように大きい。展望施設でお茶を飲みながら不図思う。ドラゴンの死骸に群がる自分たちが、まるでシデムシか蛆にようだと。そう思うと急にここにいることが恥ずかしくなって、施設を出ると腹腔内を通らず、遠回りして背中に沿って作られた遊歩道を歩き、最初に見た展望施設に入ると、再度ドラゴンの顔を見て(群がる人間を意識から締め出して)早めにバスに乗り込んで、ほかの乗客が来るのを待った。その手には次の目的地に関するパンフを持って。
Apr 13, 2005
なぜあなたの手はそのように大きいのでしょうかその手を空にかざせば街は影に隠れ大地に伏せれば街は地中に潜ってしまうけれどあなたはその手で緑に包まれた過去の街を支えその身を深い海に沈めるもうその街には誰もいないのになのにあなたはいまも支え続けているのはなぜですか? 飛行船が多島海を離れ、海の色がより深まる海域にその奇跡はある。すでにひとつの奇跡を目にしていながらも、その海域にある島の景観は言葉を失わせるほどの衝撃を与えてくれた。それは海上に浮き上がるように存在する緑の島。だが実際に宙に浮いているわけではない。それは海の中から突き出された、1本の巨大な腕によって支えられているのだ。その腕は巨神の腕とされている。自ら大海に沈み、いまは誰も住む者とてない、緑の奥に隠された古代都市の廃墟を支えている。 記録が残されたときからその都市は廃墟だった。わずかに都市から持ち出された文献もあるのだが、それはこの島を所有する国の宝物館のはるか置くに秘されて、実際に目にした者はもうこの世にいない。世界の考古学者が、この奇跡の島を調査したいと申し出たが、国はそれをいまも拒み続けている。許されるのは飛行船や遊覧船に乗って、遠くから眺めるだけ。島を警備する船や飛行船も島自体に近寄らない。恐れ多いからというのが公式に発表されている理由だ。それを否定することはできない。それでも近づこうとする人間も出てくるが、彼らが再び人前に姿を現わすことはない。 非人道的だと非難する人々もいる。そこまでして隠すのだから、国際上明らかになってはいけないものがあるのかと、勘ぐる国もある。だが、いったいなぜ彼らは探ろうとするのだろう。いったい神の腕に支えられた島をそのままの姿で受け入れ、その奇観に素直に感動を覚え、その感動を忘れずにこれからの日々を過ごしていればよいのだと、個人的に思う。青い海から忽然と突き出されるひじから先の白い腕。その先端に開く掌には、直径焼く10キロに渡る古代の都市の廃墟と、それをまばゆいこの地方特有の陽射しから守るように茂る緑。青と白と緑、その配色の美しさに心打たれぬ者はいないだろう。それでいいのだ。ただ感動すればいいのだ。無理矢理にそこへ足を踏み入れてけがすことなどない。その必要などないだろうに。 それでも時々近づく者がいる。彼らが国境を越えて母国に戻ることはない。故意に制止を振り切って島に近づけば、死を覚悟しなくてはならない。そのために、その島に国際平和を脅かすものが隠されているのではと疑われたこともたびたびあったが、そのたびにこの国高官や、時には元首自らの命と引換えにして疑いを退けた。好奇心を持つことはよいことだ。私だって好奇心があったればこそ、飛行船に乗り込んだ。だが、過ぎた好奇心はあさましく破壊的だ。この島はそれを拒絶し、そのことをこの国の人々はよく知っている。私もその心を尊重したい。ルールを守れば、この奇跡をいつまでも見続けることができるのだ。この島を眺められる海岸に家を建て、天寿を全うするまで数十枚もの島の絵を描いた有名な画家もいた。 飛行船はゆっくりと島を周回して、そして内陸部へ向かう。巨神はいまも海の底で島を支え続けている。どのような姿をしているのか誰もしらない。その姿を想像することは許される。だが確かめることは決して許されない。この島に関するこの国の人々の考えをクレイジーだと揶揄する者もいるが、少なくともこの飛行船の乗客にはそんな人はいなかった。これからの旅も楽しくなりそうだ。 次の奇跡は、人々の好奇の目にさらされ続けたものだ。明日、現地に着く。風に乗った飛行船は雲のない海のような空を滑るように進む。
Apr 12, 2005
夜明けの街を抜けて桜舞い散るトンネルを風とともに吹き抜ける舞い散る花びらは天地を覆い重力から私を解き放つ淡い花びら越しの光の中で私の体は花びらになって飛び散った目もくらむ桜色のドットが乱れ飛び、あふれかえり、急流のように流れ、渦巻き、巻き上がり私の破片と交じり合う朧な私の意識が柔らかな波になって水面に浮かぶ花びらを揺らして薄れる一陣の風が並木を吹きぬけ桜は青空の中に吸い込まれて行った元の姿に戻った私は、風とともに目指す広がる雲海とそびえる雲峰の世界とそこに現われる奇跡を見せてくれる船の元へもうマスクはいらない春は終わっただが旅はまだ始まったばかりだ
Apr 10, 2005
国民が暴徒と化しているというのに政府の責任はないというそんな国が常任理事国として国連に参加していてよいのか疑問に思う常任理事からして4年に一度選挙で選んではどうだろう本部がある国ではいまでは第二次世界大戦の遺物扱いなのだから本部も持ち回りで移動か?そうするといくつかの国は脱退するかもしれないがドイツ、インド、ブラジル、日本の4カ国のつながりを切ろうとしてわざわざドイツの新聞社にコメントする大統領一国の大統領のすることとは思えない自国の総理も総理としてどうかと毎日首をかしげているが昨今の隣国も同様である謝罪は謝罪主張は主張とはいえ、海溝のように深い歴史の溝は断じて埋まりはしない心もとない細いケーブルでどうにかつながっているぐらいか
Apr 9, 2005
ここに書き置く言葉を捜して風を追って旅に出るコートにマスク帽子に鞄細身の傘が杖代わり自分の影を先導に朝の訪れぬ街を抜けて行こう残されたのは誰もいない僕の部屋
Apr 8, 2005
トンタランタン トンタランタンなんども聞こえる音人ならぬものが奏でるリズム季節代わりの南風トランタン トランタンタントラント トタラントンタン薄いトタンの屋根を廊下にかかる屋根の上を夜の風が渡っていくダンガ ダンガ ダダンガダダドド ダダガ ダダドダ激しい風が巨大な夜の王のマントが翻るように激しい風が廊下を揺らしアパートを揺すりくらい崖の下でうなる海鳴りのように低く深くとどろく見えない闇の中で黒々とした蛇が激しい勢いでとぐろを巻いて解いては巻く頭も尾も見えぬ蛇の体だけが綾を結び激しく悶えるようにとぐろを巻いては解いては巻くドォォォォォォォォォォォオオオオオオオオゥゥゥゥオオオオオオオオオオオオどこかで南の風が吠えている生臭い海の匂いをたっぷり飲み込んだ南の風が桜の花を身にまとい吠えているいまも窓を叩いている私を呼んでいる私を
Apr 7, 2005
あのひとはこのひとと仲が悪いこのひとはそのひとを中傷しているでもそのひとだってこのひとの金を盗んでいるそれにこのひととあのひとはそのひとを手にかけたそのひととこのひととあのひとによる罪は目を背けたくなるこのひとにはあのひとをうらむ理由があるそのひととこのひとだって……でも誰が誰だって言えない通報だって怖くてできないだって訴えられるかも個人情報は漏らせない
Apr 6, 2005
その人は見る人ですこの世界のすべてをこの時間のすべてをずっと見ています無言でだれもがわかっているんです見られてるってでもね、その視線をさえぎることもできないしまた見られているだけでなにをされるわけでもなにを言われるわけでもないのでないのと同じことになったのですところが、時々見られていることが重圧に思えてくる人がいるわけです罪を犯す人一所懸命な人世界を支配したい人そういった人は視線が気になるんです見ている人のはるか遠い昔からそして気の遠くなるような未来まですべてを見つめ続けている視線がこわいといってもいいでしょうだれも見る人の目を塞ぐことはできないし見る人の命を奪うこともできないただ見られ続けなくてはならないのですただ見られ続けるだけなのです
Apr 5, 2005
ローマ法王が亡くなられた。ブッシュもバチカンに行くとか、行かないとか。法王の意向を無視して戦争に加担したカトリックの信徒は、バチカンの地をその足で踏むことを許されるのだろうか。さすがに税関で靴も靴下も脱がされて、ひたすら待たされることもないだろうが。
Apr 4, 2005
崩れた本が目覚まし代わり寝ぼけ眼で散らばった本を集めて枕元へ薄目でタイトルを見れば未読の本ばかり起き上がって見回せば本の山ざっと見三千冊積読はその半分あまり時には慰めに時には励みに時には大きな負担にすべてが頭に入るわけでも心にのこるわけでもないが手放しがたく止み難くまだ続く書痴の人生思う日曜の朝
Apr 3, 2005
すでに過ぎた日に戻って記す記録。それは記憶のポケットにはまったあるやなしやの過去。振り返れば白い大きな影が悠然と頭上を通り過ぎていくようなそんな記憶大気がゆっくりと流れて行くイメージ天かける巨大な帆布なにもない大地ただみわたす限り緑が続く時々思う我々はここに必要ないのだと緑の下に埋まった思い出されることのない記憶思い出す者もまたともに埋まっている滅んでしまえ!すべて緑に覆われて土に帰るがいい……
Apr 2, 2005
ウバザメが月を飲み込む春の夜白い月を横にたなびく大きな蜘蛛が、すっと隠してしまうそんな風景を詠んだ雑俳。でも雲の比喩だなんて考える必要はないのです。なんといってもそれは本当のウバザメが夜の闇を通して海の闇から来たのだから……。宵風に散って慌てる桜花桜が風にあおられて、まるで火の粉が散るように花びらが夜空に舞うと、それが仲間だと思って、花陰に隠れていたタナゴの稚魚たちもぱっと散って、それかわ慌ててまた桜に戻る。正体を知らなければ不思議な眺めだし、知っていればおっちょこちょいなタナゴたちがかわいく思える。春になったせいか、深夜魚たちの動きも活発になったようです。冬の間にも私の周りには魚は泳いでいたのですが、それはモビールの魚、セルロイドの魚、綺麗ですがどこか作り物めいて……。月に向かって風が渦巻く、桜の花びらを巻き込んで、それはまるで天へ向かうトンネルのよう。魚たちだけがそこを通っていけるのでしょう。深夜魚たち、海の闇と夜の闇を重ねて泳ぐ魚たち。さぁ。今年も私に水の夢を見せてくれ!そうそう、月といえば昔はるかに月が地球に近い頃、大潮の日には、ときに海の水が月へこぼれることもあったとか。水が掛け橋になって一匹の鯉が月に上った。いまも満月を見ると泳ぐ鯉の影が見えるとか、見えないとか。魚の夢を見るときは心優しく揺れるとき波間にうつる月影に戯れる魚の夢を見るでは、このへんで……
Apr 1, 2005
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