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天空にかかるは天使の羽か悠々と泳ぎ去る白い魚の影か少々書くことにつかれました。もとより気まぐれで始めたことにかえって追われてしまいいまやすっかり水槽は乾いてしまいました魚たちもみあたりませんですので、しばらくのおでかけ戻るのは明日?それとも来年?意外に1時間後かもしれませんこの日記のことですからでは……
Nov 27, 2005
私は長いキャリアの中で、いまのいままでひとつの疑問に悩まされ、ついに明確な解決を見ずに最後の時を迎えることになりそうだ。それは個人の記憶に関するもの、過去の記憶の所有に関することだ……。 私はすでに3人の先生を訪れて、いずれも満足した結果を得られずに終わった。私が知りたいのは、私が失ってしまった記憶。整然とならんだブロックの中から、ほんの数個だけ抜き去られたような記憶。催眠術ならばそれを取り戻せると言われ、安くはない料金を支払ったのだけれど、誰も私の記憶を取り戻すことができなかった。記憶というものは、まったく消えてしまうものなのだろうか。私とってそれは大切なものなのに。 4人目の先生はとても親身になってくれた。私の事情を知ると、口にはしないもののとても同情してくれたようだ。けれど私は、先生に内緒にしていることがある。それは私が逆行催眠にかかっている間の様子を秘密に録音しているのだ。もちろん先生も録音している。だが、のちに聞かされたそれが、本当に催眠状態にあった私の語ったすべてなのか、私は信じられなかった。ふたりと3人目の先生が後日私に聞かせたのは、きっと編集されているものに違いない。ビデオではなく、録音テープであるところが怪しく思えてしまう。 そんな心が影響しているのか、4人目の先生での催眠はなかなかはかどらず、私は自分が録音した音声を聞きなおすたびに落胆せずにはいられなかった。ただ、少しずつ、何かが私の中で変わり始めていることにも気がついている。もしかしたら、私は大事な記憶を取りもどせるかもしれない。私の父、父を亡くした記憶……。 私は父の書き残した言葉を思い出しながら、今日も依頼人の記憶を呼び起こすために施術を行なった。失われた記憶は3年前のもの。私がヨーロッパに留学していた頃だ。依頼人の記憶は失われていたわけではない、じつは封印されているのだ。誰に? 依頼人自身が無意識に行なったのだろうか。それとも私と同じ職業の者だろうか? どうにか封印を解く手がかりを見つけた。私はひとつのキーワードを手に入れたのだ。完全に封印することは、かえって危険を伴う。一生開くことがないことを前提に、封印の鍵が設定されていたのだ。それは依頼人の父の名前。気がつけばどうってことはない。これを元に試してみよう。つづく
Nov 26, 2005
冬空をなぞる指先に絡まる雲は冷たく、肌のぬくもりに消えて指先を濡らす。湖沼を目指す渡り鳥の声は鋭く、心を貫いてなおも夕暮れの空に響く。夢は狩人の腰に輝く3つの星、輝く犬を従えて銀河の枯野を渡る。狭霧の中で静まる湖畔の家、訪れたことはないが心懐かしく思う。**************************************冬の中にひとりいることの寂しさは、けれどなぜか心休まるもの。いつまでもこの季節の中にいたいと思う……。
Nov 25, 2005
夜が斜めに差し込んで窓のあたりはもう暗いじっとりとした月の影がシルバーメタルの塗料のように斜めの夜を伝って部屋を光で汚してく線の切れた受話器を握って思いつく限りの秘密の言葉をつぶやいてみる月の光をぬぐった手のひらが銀色にねばついて身にまとった絹のカーテンにかすれた手がたを残している電話が唐突につながってノイズの向こうにぼそぼそとアベ マリアが聞こえているゆるゆると紐解ける夢の包みには忘れたくない未来からの思い出が過剰なラッピングにくるまれているはめごろしのドアにノブはない切れた線を指に絡めて今夜も一晩中アベ マリアを聴いて過ごす
Nov 24, 2005
薬指にギリギリとひとまわりサイズの小さなナットをはめていく回すたびにねじ山が皮膚を破り痛みが走り血が流れだす血に塗れたナットがぬめってなかなか回らない関節を越えるたびに骨がきしんで悲鳴が口から漏れる最後まで回しきるとぼろぼろの指の根元に無骨なナットが鈍く光っているもう二度と抜く気にはなれない
Nov 23, 2005
ただただ青い空を一羽の鳥が一直線に横切るのを見て私は初めて青空が弧を描いていることに気づかされた
Nov 22, 2005
見渡す限り白銀の世界が広がり所々にうずくまるような丘も山も白く輝いていた男はひたすら目印も無くかすむ太陽を信じられずひたすら吹きすさぶ風の中をさまよっている出なければよかった静けさに耐えられず山の宮殿を抜け出した彼は自分の居場所がとても人のいるべきでない場所であることを知った美しいが強風のわめきが膨張した鼓膜を振るわせる耳を抑えた掌が冷たい手袋なぞ無かったこれまでいた場所では必要ではなかった彼は次第に後悔の念にかられたが今さら戻る道などわからない白い平坦な世界にうずくまる姿はどれも彼がいた場所のように見えるし刻々と風に揺れて形を変えているようだ彼は思い出すここへ初めて来たときのことを舵の効かない船は彼と仲間を乗せてここまで流されたそしてついに粉砕され彼らは投げ出されたのだ彼だってほかのクルーと同じように沈んでしまうはずだっただがそれをさせなかったのは白い腕、豊かな髪、感情のない微笑み気づいたらあの場所にいた白い宮殿永遠に霞と風の中に存在する住人の存在すら希薄にしてしまう場所だから出てきたあの場所からみれば楽園もこうして来て見れば地獄落ちるのか……男の意識が薄れゆっくりと足元に倒れこもうとしたとき下からすっと伸びた二本の細い腕が彼を支えて持ち上げた白い腕、細い肩、豊かな緑の髪凍えた男の体を抱きかかえすっと白銀の雲の上へ浮き上がり尾びれの一振りで強い気流をさかのぼって雲嶺の宮殿へ向かう静かな世界へ彼が誘われた静かな世界へ赤く染まり始めた空の果てに地球の影が黒く刻まれていく
Nov 21, 2005
南天に輝くオリオンに綾をかける珈琲の湯気白くおんもら輝く様はまるで銀河を見るかのよう体は寒さに震えても心の震えはそれとは違う冬空の天体観測測るは自分と星の距離いつかあの空へ三ツ星輝く冬の空へ
Nov 20, 2005
そういえばと、流れる雲を見上げながら思ういつか、あの雲の宮殿にひとりの分身を送り込んだが彼はまだそこにいて、時おり池の辺から下界を見下ろして私の姿を探しているのだろうかそこには彼以外にも多くの人物がいるのだけれど、彼らは互いに出会うことはない相手の姿は霞の中の影にしか見えず、その声は風のささやきにしか聞こえない彼らが唯一目にするのは天空に住む人魚、彼らを雲の宮殿に導いた人魚僕の知っている彼は、セスナ機のコクピットから人魚のかいなに抱かれて雲の世界に運ばれて行った……雲を見上げて思うなぜ自分であの雲の上に行こうとしなかったのかはるか見下ろされる下界にいていま思う
Nov 19, 2005
雲が渦巻いているのを見てそれが大空の呼吸であると気づいたのは熱で浮かされた意識のせい空は宇宙へ続く虚空の空間ではないそれはそれでひとつの生命体なのだ海が生命体であるのと同じように空もまたそうなのだ
Nov 18, 2005
厚い雲の切れ目から射しこむ一条の光降り注ぐ蜜色の輝きの中に戯れる人魚のひれは大きく翼のよう(人はそれを天使と呼ぶ)光とともに地上へ身を躍らせ途中で光の柱の周囲を巡るように上っていくそんなことがたまらなく楽しいのか飽きもせず光が消えてしまうまで人魚は雲の下を泳いでいた
Nov 17, 2005
冬空を覆う波打つ雲が湖面に流れる朝霧のようひとり小船を漕ぎ出して"湖の女"の面影を探すやがて霧が晴れ朝日が射す頃に青空のまん中でぽつんと浮かんでいる自分に気づく
Nov 16, 2005
討論番組を視る司会役とアナウンサーがいて彼らの前には体中に口のあるシュブニグラスの落とし子がその口々に違うことを言って五月蝿いこと醜いこと夥しい視てるだけで取り込まれそうなので、テレビを消して眠りについた
Nov 15, 2005
唐突に鳴り出した電話に出てみれば、若い男性の声で、個人情保護法の新条例により、別れた彼女の記憶を消去すると一方的に告げられた。驚くより前に奇妙なパルス音が受話器から流れて…………………………………………………………… ……なぜかどこにもつながっていない受話器を手にしたまま、僕は泣いていた。理由はよくわからないのだが、胸の中に空いた穴を埋めるように涙が流れて仕方がなかった。
Nov 14, 2005
目をつぶって枕に頭を乗せてしばらくすると小さな音が夜を通して聞こえてくるつぶやきのような遠いざわめきのようなノイズちいさなパイロットランプを点滅させているテレビ? それとも10年以上のつきあいのある古い形のトランジスタラジオ?やがて僕の中でノイズは小さな魚の群れになって瞼の裏の闇で幾度も身を翻す誰が指揮をとるでもなく銀色の嵐のような魚の群れその中を突き抜けるパルス誰かが切り忘れた回線から漏れるパルスが小魚を狙うカマスやシイラのように何度もノイズを貫いて聞こえるそれはまるで吹雪の中に見え隠れする測候所の赤いランプに似て果敢にノイズを貫きながらも時折嵐の中に消えてしまう注意深く闇を探る耳に遠くの街道の音がゆっくりと聞こえてくる低く静かなエンジン音タイヤが夜に溶け混じって粘るアスファルトの上を刹那に接し刹那に離れていく音それはまるで並みの下で聞く潮騒のようだ夜の闇が緩やかに揺れて波を作り冷たい夜気が潮を作る私は静かに深い海へ夜の海へと沈むダイバー深夜の潜水フ夢も見ずに夜に沈む深海の潜睡フ
Nov 13, 2005
冬の門は静かに開くいまは誰も近づかぬ城壁にオリオンの三ツ星が凍えて震える夜月から零れた霜が見えぬ門の姿を現わし静かに流れる笛の音が錠をはずして門はため息のような白いもやを吐いて鋭い軋みを上げて開いて行く城壁はたちまち白く霜に凍り枯れた草もすべてが鋭く透明になっていく開かれた門からは次々と大きな白い鳥が舞い上がり夜空に雪の結晶を振りまいて白いパレードの道を作る笛を手にした白い小鬼がはぜるに門から繰り出し滑るように踊りながら街への道をかけていく門から噴出す冷気が一段と強くなれば体中にツララを下げた巨人たちがゆっくりとそして雪の息を吐きながら門の外へと歩き出す二列に並んだ巨人たちの肩には鎖そのまわりには白い粉のような結晶を振りまいて無数の妖精たちが踊り飛び舞い飛びちりちりと笑う鎖が巨大な輿氷山のごとき巨大な輿を引き出してついに門には吹雪が吹き荒れ妖精は慌て巨人のツララの影に身を隠し遠くで小鬼のよろこびの声があがる夜空すら霜に凍り風は白くシャーベットのようにキラキラとして冷たい吹雪の音は角笛のごとく街に響き人々を襲れて家に駆け込み薪をくべる青白い雪と氷の輿はただひとりの主人を3つの季節から守り封じている巨人たちが強く鎖を3度引けば彼らの雄叫びと氷山の叫びが木霊して氷は打ち砕かれ雪は飛び散り中より白い裳裾を広げた女王がゆったりと歩みだすその姿は巨人たちよりもはるかに大きく広げたも裳裾が触れた山はすべて白く雪に埋もれほんのつま先が触っただけで河は湾にいたるまでを氷の中に閉じ込めた静々歩く女王の黒いふたつ目は青白い月を捕らえ唇からもれる吐息は下界に吹き渡るそして幽かな軋みを残して冬の門は閉ざされる冬の眷属が戻ってくる花がにおう春の夜まで
Nov 12, 2005
昨夜久しぶりに夢を見たつらい夢だった目覚めてもなお心に深く食い入っていたまるで夢うつつのままに断崖絶壁の端に歩きよってしまったようだもう一歩で真っ暗な崖底に落ちる夢に背を押され私は身を投げる長い奇数つもりは毛頭ない自ら命を絶つつもりもだが何かがそうさせようと内側から切り崩し掘り崩そうとしている夢は危険見る夢はすべて悪夢だ
Nov 11, 2005
10代の後半にこんなことを考えていたもしこの世界の創造者がいるとしたらなぜこの世界を作ったのだろうかと思い至ったのは創造者自身もまたわかっていないということ創造者は自分自身がなぜ存在しているのかその理由がわからなかったそこで自分が生きている世界とよく似た世界をつくり自分に似た種族を作り自分の存在理由を探ろうとしたそういうことなのだとだからこの世界にはよろこびも悲しみも怒りも満ち溢れているのだとあらゆるものが混沌としてあるのはすべて創造者の実験観察のためなのだと似たようなことがリグ・ヴェーダに書いてあると最近知ったあながち的外れな考えではなかったかと思う
Nov 10, 2005
静かに青をたたえる冬空に息を吐けば白く凝して雲となる日の昇りきらぬ朝の空は冴え冴えとしていまだ沈みきらぬ月はこの世のすべてが幻であることを自ら顕して青空に溶けて雲に混ざる
Nov 9, 2005
雨にぬれた黒いアスファルトの上り坂は大きな魚の背に似ていまにもゆらりと大きさんど感じさせない優雅な動きで大地の中に潜ってしまいそうだ左右に並ぶ街灯の明かりは見ている私を心の中からぬくめてくれる不思議なほど私を落ち着かせる坂を見上げてゆっくりと息を吸って吐いたそうすることで自分自身が暖かな明かりの中に溶け込んでいけるような気がして
Nov 8, 2005
静かに凍える不意の訪れた客人のように冬は首都に訪れ静かに雨を降らせている散り落ちた落葉が次第にその姿を微細なものに変えつつ立ち上らせる甘い香りが幾重にも巻いたマフラーを通して冷気に痛みを覚える鼻腔に届く頭の奥に甘い香りと静かな冬の夜のビジョンが広がり心の底から清らかな水のような感情が湧き出だし体を満たして行く小雨をよけながらヒマラヤスギの下の小道を暗がりの奥へ歩むやがて白い温室が見えてくるだろう
Nov 7, 2005
私の体には私の肩から上腕の上部そしてわき腹にいたるまで小さく硬い腫れ物がまばらだが触ればザラリとわかるほどにある物心ついたときから変わらぬ感触それが私のひとつの自己の確立につながる私にとってそれが普通の肌であっても他人からすれば触るのもはばかれる肌それが私と私以外のすべてのものに対する違和感の源になる私は指先に痛いほどに角質化した腫れ物を羽織っているいまはそれを悔いてはいないこれが私の幻視の源違和感が常に私に幻視を見せるそして現実をスチールのプレートはないが植物の小さなとげのような突起の感触が私と私以外のものの間にある違和感を思い出させてくれるだが、もしできるのならプレートをスチールのプレートをこの腕に植え付けてみたいものだ
Nov 6, 2005
肌の一部を金属にするそれは違和感を味わう楽しみ自分が普通ではないという非日常性人体にも社会的にも非難される罪悪感と背徳性自分の体をほんの少しではあるが改造したという破壊性と創造性自分の体になした、そしてやられたという嗜虐性と被虐性そして変身願望それらをたった一枚のシャツの袖にひっそりと隠された小さなスチールのプレートが満たしてくれる乾いた喉へのほんの一滴のうるおいでないかもしれないが
Nov 5, 2005
地下鉄に揺られながら……思う上腕の皮膚の一部を剥ぎ取ってその代わりに薄いスチールのパネルを移植する硬くしなやかなスチールが周りの皮膚とともに動き時に反発し、引きつり、あわやはがれるのではと危うい感覚を想像してみる白銀の縁に指を沿わせ柔らかな皮膚から硬いスチールへ変わるその境界の感触を何度も味わい楽しむことだろうわずかに盛り上がった皮膚のひきつり人肌にぬくもるスチールとその下に隠され、隔絶された真皮の感覚それはあくまでも硬く私の指を拒むスチールでなくてはならない
Nov 4, 2005
帰りの電車に揺られ適度にぬくもった席の上でうつらうつらしていた私の目には灰色の床が揺れているその中にじんわりと青がにじんだまるで空色の塗料が床から湧き出すように初めてではない青がにじむのことはもう珍しいことではないいずれ青が視界のすべてを覆うことになる私は青の中に溶け込むのだ
Nov 3, 2005
空に墜ちるどこまでも空に墜ちて行くもう大地には戻らない暗い宇宙へ行く気もないただひたすらに青がままの空間を思うがままに墜ちていくのだあぁ、心がこんなに震えているあぁ、なんて幸せなんだ
Nov 2, 2005
まだ暗い夜の中で真っ青な旗が翻り朝が訪れる白々とした東の空におっとりとした朝日が昇り朝はクライマックスを迎える朝日が朝を作るのはなく朝が朝日を呼ぶのだ青い旗は再び翻り涼やかな風を朝に送り込む手に手に旗をもつ人々が朝の挨拶に息を白くして朝の道を昼に向かって歩き出す夜には群青の旗を振りながら寒さに震えるオリオンを見上げながら家路につくことだろうそして青い旗を胸に安らかな眠りに着く大きな真っ青な旗が薄暗がりの中で翻る夜明けまで
Nov 1, 2005
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