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アリアナ・グランデ:スウィートナー【先着特典】スウィートナー (スペシャル・プライス・エディション) (B2告知ポスター付き) [ アリアナ・グランデ ]米津玄師:BremenBremen [ 米津玄師 ]
2019年01月31日
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ドアを開けると、そこには羊男が立っていた。羊男は開いたドアにもドアを開けた僕にもたいした興味はないといった格好で、ドアから二メートルばかり離れたところに立った郵便受けを珍しいものでも見るようじっと睨んでいた。羊男の背丈は郵便受けより少し高いだけだった。百五十センチというところだろう。おまけに猫背で足が曲っていた。それに加えて僕の立っている場所と地面の間には十五センチの差があったから、僕はまるでバスの窓から誰かを見下ろしているような具合になった。羊男はその決定的な落差を無視しようとするかのように、横をむいて熱心に郵便受けを睨み続けていた。郵便受けにはもちろん何も入ってはいなかった。「中に入っていいかな?」と羊男は横を向いたまま早口で僕に訊ねた。何かに腹を立てているようなしゃべり方だった。「どうぞ」と僕は言った。(中略)羊男は頭からすっぽりと羊の皮をかぶっていた。彼のずんぐりとした体つきはその衣装にぴったりとあっていた。腕と脚の部分にはつぎたされた作りものだった。頭部を覆うフードもやはり作りものだったが、そのてっぺんについた二本のくるくると巻いた角は本物だった。フードの両側には針金で形をつけたらしい平べったいふたつの耳が水平につきだしていた。顔の上半分を覆った皮マスクと手袋と靴下はお揃いの黒だった。衣装の首から股にかけてジッパーがついていて簡単に着脱できるようになっていた。胸の部分にはやはりジッパーについたポケットがあって、そこに煙草とマッチが入っていた。羊男はセブンスターを口にくわえてマッチで火をつけ、ふうっとため息をついた。僕は台所まで行って洗った灰皿を持ってきた。「酒が欲しいな」と羊男が言った。僕はまた台所に行って半分ばかり残ったフォア・ローゼスの瓶をみつけ、グラスと二個と氷を持ってきた。(村上春樹さん「羊をめぐる冒険」P334)
2019年01月31日
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米津玄師:BOOTLEG【新品】【CD】BOOTLEG 米津玄師ニッキー・ミナージュ:Pink Friday【中古】 【輸入盤】Pink Friday /ニッキー・ミナージュ 【中古】afb
2019年01月30日
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町屋良平さんの「1R1分34秒」を買書つんどく。「なんでおまえはボクシングやってんの? 青春小説の新鋭が放つ渾身の一撃。デビュー戦を初回KOで飾ってから三敗一分。当たったかもしれないパンチ、これをしておけば勝てたかもしれない練習。考えすぎてばかりいる21歳プロボクサーのぼくは自分の弱さに、その人生に厭きていた。長年のトレーナーにも見捨てられ、変わり者のウメキチとの練習の日々が、ぼくを、その心身を、世界を変えていくーー。 」(新潮社の紹介)
2019年01月30日
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僕は本能的に彼女が既にこの家を去ってしまったことを感じとった。彼女はもうここにはいないのだ。僕は調理台に両手をついて頭の中を整理してみた。彼女はもうここにはいない。それは確かだった。理屈や推理ではなく、現実にいないのだ。がらんとした家の空気が僕にそれを教えていた。妻がアパートを出ていってしまってから彼女に巡り合うまでの二ヵ月あまり、いやというほど味わったあの空気だ。僕は念のために二階に上がり三つの部屋を順番に調べ、クローゼットの扉まで開けてみた。彼女の姿はなかった。彼女のショルダー・バッグとダウン・ジャケットも消えていた。土間の登山靴もなくなっていた。まちがいなく彼女は行ってしまったのだ。彼女が書き置きを残していきそうな場所をひとつひとつあたってみたが、書き置きはなかった。時間から見て彼女は既に山を下りてしまっているだろう。彼女が消えてしまったという事実が僕にはうまく呑み込めなかった。起きたばかりで頭がまだよく働かなかったし、それにもし頭がよく働いたとしても、僕のまわりで起りつつある様々な出来事のひとつひとつにきちんとした意味を与えていくことはもうとっくに僕の能力の範囲を越えていた。要するに物事を流れのままにまかせるしかないのだ。(村上春樹さん「羊をめぐる冒険」P326)
2019年01月30日
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宇多田ヒカル:SINGLE COLLECTION VOL.2Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.2(2CD) [ UTADA HIKARU ]宇多田ヒカル:FantomeFantome/宇多田ヒカル[SHM-CD]【返品種別A】
2019年01月29日
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「冬には羊は何をしているの?」と彼女が訊ねた。管理員は彼女の存在にはじめて気がついたみたいに、ハンドルに手を置いたままぐるりとこちらを向き、彼女の顔を食い入るように眺めた。アスファルトの直線道路で対向車の影もなかったからいいようなものの、それでも冷や汗が流れた。「冬の間は羊は牧舎の中でじっとしているんだよ」管理人はやっと前を向いてからそう言った。「退屈しないのかしら?」「あんたは自分の人生を退屈だと思うかい?」「わからないわ」「羊だって似たようなもんだよ」と監理員は言った。「そんなこと考えもしないし、考えてもわかりっこない。干草を食べたり、小便をしたり、軽い喧嘩をしたり、おなかの子供のことを考えたりしながら冬を越すんだ」(村上春樹さん「羊をめぐる冒険」P305)
2019年01月29日
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バッハ:ヴァイオリン協奏曲集【中古】 J.S.バッハ:ヴァイオリン協奏曲集 /ヒラリー・ハーン(vn),マーガレット・バーチャー(vn),アラン・ヴォーゲル(ob),ジェフリー・カヘイン(co 【中古】afbレディー・ガガ: ボーン・ディス・ウェイ【中古】 ボーン・ディス・ウェイ−スペシャル・エディション− /レディー・ガガ 【中古】afbレディー・ガガ:ジョアンジョアン [ レディー・ガガ ]
2019年01月28日
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「たぶん私が羊を起こしてしまったんだろう。羊はきっと何百年ものあいだあの洞窟の中で眠っていたんだ。それを私が、この私が起こしてしまったんだ」「あなたのせいじゃありませんよ」と僕は言った。「いや」と羊博士は言った。「私のせいだ。もっと早くそれに気づくべきだったんだ。そうすれば私にも打つ手はあったんだ。しかし私は気づくのに時間がかかった。そして私が気づいた時には羊はもう逃げ出したあとだった」羊博士は黙り込んで、つららのような白い眉毛を指でこすった。四十二年という時間の重さが彼の体の隅々まで浸み込んでいるようだった。「ある朝目が覚めるともう羊の姿はなかった。その時になって私はやっと『羊抜け』というのがどういうものかを理解することができた。地獄だよ。羊は思念だけを残していくんだ。しかし羊なしにはその思念を放出することはできない。これが『羊抜け』だ」(村上春樹さん「羊をめぐる冒険」P258)
2019年01月28日
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バッハ:ゴールドベルク変奏曲【中古】 J.S.バッハ:ゴールドベルク変奏曲 /グレン・グールド(p) 【中古】afbバッハ:ゴールドベルク変奏曲【中古】 J.S.バッハ:ゴールドベルク変奏曲 /マレイ・ペライア 【中古】afb
2019年01月27日
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上田岳弘さんの「ニムロッド」を買書つんどく。「仮想通貨をネット空間で「採掘」する僕・中本哲史。中絶と離婚のトラウマを抱えた外資系証券会社勤務の恋人・田久保紀子。小説家への夢に挫折した同僚・ニムロッドこと荷室仁。やがて僕たちは、個であることをやめ、全能になって世界に溶ける。「すべては取り換え可能であった」という答えを残して。第160回芥川賞受賞作。」ニムロッド [ 上田 岳弘 ]価格:1620円(税込、送料無料) (2019/1/27時点)楽天で購入
2019年01月27日
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「簡単に説明すると」と羊博士が言った。「羊が私の中に入ったのは一九三五年の夏のことだ。私は満蒙国境近くでほうぼくの調査中に道に迷い、偶然目についた洞窟にもぐりこんで一夜を過ごした。夢の中に羊が現われて、私の中に入ってもいいか、と訊ねた。かまわん、と私は言った。その時は自分でもたいしたことのようには思えなかったんだ。なにしろこれは夢だとちゃんとわかっていたしな」老人はクックッと笑いながらサラダを食べた。「それはこれまで見たことのない種類の羊だった。私は職業柄世界中の羊は知っていたが、それだけは特別な羊だった。角が奇妙な角度に曲がっていて、足はずんぐりと太く、目の色は湧き水のように透明だった。毛は純白で、背中に星の形に茶色い毛がはえていた。こんな羊はどこにもいない。だからこそ私はその羊に私の体の中に入ってもかまわんと言ったんだ。羊の研究者としてもそのような珍種の羊を見逃したくはなかったしね」「羊が体の中に入るというのはどういった感じがするものおなんでしょう?」「特別なものはない。ただ羊がいると感じるだけだ。朝起きて感じるんだ、羊が俺の中にいるとな。とても自然な感じだ」(村上春樹さん「羊をめぐる冒険」P255)
2019年01月27日
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バッハ:ヴァイオリン協奏曲集J.S.バッハ:ヴァイオリン協奏曲集(初回生産限定) [ 諏訪内晶子 ]バッハ:ヴァイオリン協奏曲集SUPER BEST 100 88::J.S.バッハ:ヴァイオリン協奏曲集 [ ヘンリク・シェリング ]
2019年01月26日
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「『白鯨』がすきなんですね?」と僕は訊ねてみた。「ええ、それで小さい頃から船乗りになろうと思っていたんです」「それで今はホテルを経営しているのね?」と彼女が訊ねた。「このとおり指を失くしてしまいましたもので」と男は言った。「実は貨物船の積荷を下しているうちにウィンチにまきこまれちゃったんです」「可哀そうに」と彼女は言った。「その時は目の前がまっ暗になりましたね。でもまあ、人生というのはわからんものです。なんとか今ではこのようにホテルを一軒持てるようになりました。たいしたホテルではありませんが、それなりになんとかやっております。これでもう十年になりますか」とすれば彼はただのフロント係ではなく、支配人なのだ。「最高に立派なホテルよ」と彼女が励ました。「どうもありがとうございます」と支配人は言って、我々のグラスに二杯目のワインを注いでくれた。「でも十年にしては、なんというか。建物に風格がありますね」と僕は思い切って訊ねてみた。「ええ、これは戦後すぐに建てられたんですよ。ちょっとした縁がありまして安く買い取ることができました」「ホテルの前にはいったい何に使われていたんですか?」「北海道緬羊会館という名前になっておりまして、緬羊に関する様々な事務と資料を・・・・・」「緬羊?」と僕は言った。「羊です」と男が言った。(村上春樹さん「羊をめぐる冒険」P240)
2019年01月26日
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米津玄師:YANKEEYANKEE [ 米津玄師 ]Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.1 【中古】 Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.1 /宇多田ヒカル 【中古】afb
2019年01月25日
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「正直に言うと、この話は何かしら気に入らないんだ。ひっかかるんだよ」「どんなことが?」「何から何までさ」と僕は言った。「全体としてはお話にならないくらい馬鹿げているくせに、細かいところが実にくっきりとしていて、おまけにちゃんとからみあってるんだ。良い感じがしないよ」彼女は何も言わずに、テーブルの上の輪ゴムを指で転して遊んでいた。「それにだいたい羊をみつけだしてからどうなるんだ?もしその羊が本当にあの男のいうような特殊な羊だったとしたら、それを見つけ出すことで、僕は今よりずっと深刻なトラブルにまきこまれるかもしれない」「でもあなたのお友だちは既にその深刻なトラブルにまきこまれているんじゃないかしら?だってそうじゃなければそんな写真をあなたにわざわざ送ってはこないでしょ」彼女の言うとおりだった。僕はみんなに手を読まれてしまっているようだった。「どうも行くしかなさそうだな」と僕はあきらめて言った。(村上春樹さん「羊をめぐる冒険」P185)
2019年01月25日
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back number:アンコール【送料無料】【ベストアルバム】アンコール/back number[CD]通常盤【返品種別A】
2019年01月24日
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「芥川龍之介選英米怪異・幻想譚」を買書つんどく。「気鋭の研究者と当代随一の翻訳家がタッグを組み、芥川が選んだ「新らしい英米の文芸」を蘇らせる!旧制高校の英語副読本として編まれたアンソロジー八巻より、二〇の短篇をさらに精選。ポーやスティーヴンソンから本邦初訳の作家まで、芥川自身の作品にもつながる“怪異・幻想”の世界を全て新訳で堪能する。イェーツやキャロルなどの芥川による翻訳も収録。」(「BOOK」データベースより)
2019年01月24日
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彼ははじめて何秒か目を閉じ、そのあいだ沈黙した。「私の仮説を言おう。あくまで仮説だ。気に入らなければ忘れてくれればいい。私はその羊こそが先生の意志の原型をなしていると思うんだ。」「動物クッキーみたいな話ですね」と僕は言った。男はそれを無視した。「おそらく羊が先生の中に入り込んだんだ。それはたぶん一九三六年のことだろう。そしてそれ以来四十年以上、羊は先生の中に住み着いていたんだ。そこにはきっと草原があって、白樺の林があったはずだ。ちょうどその写真のようになね。どう思う?」「とても面白い仮説だと思います」と僕は言った。「特殊な羊なんだ。とても・特殊な・羊なんだ。私はそれを探し出したいし、それには君の協力が要る」「探し出してどうするんですか?」「どうもしないさ。たぶん私にはどうにもできないだろう。私が何かをするにしては、それはあまりにも大きすぎるんだ。私の望みは失われてゆくものをこの目で見届けることだけだよ。そしてもしその羊が何かを望んでいるのだとしたら、私はそのために全力を尽くしたい。先生が亡くなってしまえば、私の人生にはもう殆ど意味なんてないからね」(村上春樹さん「羊をめぐる冒険」P168)
2019年01月24日
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レディ・ガガ:ボーン・ディス・ウェイ【中古】 ボーン・ディス・ウェイ−スペシャル・エディション− /レディー・ガガ 【中古】afb
2019年01月23日
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街に帰るのは四年振りだった。四年前に帰ったのは僕の結婚に関するいわば事務的な手つづきのための帰郷だった。しかしそれは――僕が事務的な手つづきと考えていたことを、他の誰もがそうは見なさなかったということで――無意味な旅だった。要するに考え方の違いなのだ。ある人間には終わってしまったことが、他の人間にとっては終わっていない。それだけのことだ。それだけのことが線路の先の方にいくとずっと大きな違いを持つようになる。それ以来、僕にはもう「街」はない。僕にとって帰るべき場所はどこにもない。そう考えると、僕は心の底からほっとした。もう誰も僕に会いたがってはいないのだ。もう誰も僕を求めていないし、誰も僕に求められることを望んでいない。(村上春樹さん「羊をめぐる冒険」P121)新しいジェイズ・バーの西側と南側には大きな窓があって、そこから山なみと、かつて海であった場所が見渡せた。海は何年か前にすっかり埋めたてられ、そのあとには墓石のような高層ビルがぎっしりと建ち並んでいた。僕はしばらく窓際に立って夜景を眺めてから、カウンターに戻った。「昔なら海が見えたね」と僕は言った。「そうだね」とジェイは言った。「よくあそこで泳いだよ」「うん」と言ってジェイは煙草をくわえ、重そうなライターで火をつけた。「気持ちはよくわかるよ。山を崩して家を建て、その土を海まで運んで埋めたて、そこにまた家を建てたんだ。そういうのを立派なことだと考えている連中がまだいるんだ」(村上春樹さん「羊をめぐる冒険」P125)
2019年01月23日
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MISIA:星空のライヴ【中古】 星空のライヴ〜The Best of Acoustic Ballade〜 /MISIA 【中古】afb I WiSH :BEST WiSHESBEST WiSHES [ I WiSH ]
2019年01月22日
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もうひとつはちょっと変った頼みだ。一枚の写真を同封する。羊の写真だ。これをどこでもいいから人目につくところにもちだしてほしい。これもずいぶん勝手な頼みだと思うけれど、君以外に頼む相手がいないんだ。僕のありったけのセックス・アピールを君に譲ってもいいから、僕のこの頼みだけは叶えてほしい。理由は言えないけれど。この写真は僕にとって重要なものなんだ。いつか、もっと先に、説明できると思う。小切手を同封しておく。いろんな費用に使ってくれ。金のことは何も心配しなくていい。ここにいると使いみちに困るくらいだし、それに今のところ僕にできることはそれくらいしかなさそうだからね。くれぐれも僕のぶんのビールを飲むことを忘れないように。(村上春樹さん「羊をめぐる冒険」P118)
2019年01月22日
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エレーヌ・グリモー:メモリー【輸入盤】エレーヌ・グリモー/メモリー [ ピアノ作品集 ]川嶋あい:Coupling BestCoupling Best/川嶋あい[CD]【返品種別A】
2019年01月21日
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いったい僕は何を考えていたんだろう?羊だ。僕はソファーから起きあがり、相棒の机の上にあったグラビア・ページのコピーを手に取り、ソファーの上に戻った。そしてウィスキーの味の残った氷をなめながら写真を二十秒ばかりじっと眺め、その写真が何を意味するのか我慢強く考えてみた。写真には羊の群れと草原が写っていた。草原がとぎれるあたりには白樺の林が連なっている。北海道特有の巨大な白樺だ。(中略)僕はテーブルの上にその写真を放り投げ、煙草を一本吸ってあくびをした。それからもう一度写真を手に取り、今度は羊の数を数えてみた。しかし草原はあまりに広く、羊はピクニックの昼食どきみたいな感じでばらばらに散らばっていたので、遠くの方に行けば行くほどそれが羊なのかそれともただの白い点なのかは不明確になり、最後には目の錯覚なのか虚無なのかわからなくなった。仕方なく僕は一応羊であると確信できるものだけをボールペンの先で数えてみた。三十二というのがその数字だった。三十二頭の羊。何の変哲もない風景写真だ。構図がきまっているわけでもないし、これといって味わいがあるわけでもない。しかしそこにはたしかに何かがあった。トラブルの匂いだ。それは僕は初めてそれを目にした時にも感じたことだし、この三ヵ月間づっと感じつづけてきたことだった僕は今度はソファーに寝転んで顔の上に写真をかざし、羊の数をもう一度数えなおしてみた。三十三頭。三十三頭?僕は目を閉じて首を振り、頭の中をからっぽにした。まあいいさ、と僕は思う。たとえ何が起こるにせよ、まだ、何も起こってないんだ。そして何かが起こったとすれば、それはもう起こってしまったことなんだ。(村上春樹さん「羊をめぐる冒険」P92)
2019年01月21日
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バッハ:ヴァイオリン協奏曲集【輸入盤】ヴァイオリン協奏曲集 ミュレヤンス、フォン・デア・ゴルツ、フライブルク・バロック・オーケストラ [ バッハ(1685-1750) ]リアーナ:アンアポロジェティック【中古】 アンアポロジェティック−デラックス・エディション(初回限定盤)(DVD付) /リアーナ 【中古】afbリアーナ:トーク・ザット・トーク【中古】 トーク・ザット・トーク(初回限定スペシャルプライス盤)(紙ジャケット仕様) /リアーナ 【中古】afb
2019年01月20日
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陣野俊史さんの「泥海」を買書つんどく。「二〇一五年一月七日、パリ十一区で「あの事件」は起きたー泥濘と腐臭の中を彷徨い続ける彼らは、マリカの「愛の物語」に引き寄せられるように語り出す・・・・・「私」の話を。彼らはなぜ、「その線」を越えたのか?文学の臨界に挑む傑作!」(「BOOK」データベースより)泥海 [ 陣野 俊史 ]楽天で購入
2019年01月20日
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「何もいらないんだ」と僕は言った。「君と君の耳だけで本当に十分なんだ。それ以上はなにもいらない」彼女はつまらなそうに首を振って僕の肩に顔を伏せた。しかし十五秒ばかりあとでもう一度頭を上げた。「ねえ、あと十分ばかりで大事な電話がかかってくるわよ」「電話?」僕はベッドのわきの黒い電話機に目をやった。「そう、電話のベルが鳴るの」「わかるの?」「わかるの」彼女は僕の裸の胸に頭を載せたままはっか煙草を吸った。しばらくあとで僕のへそのわきに灰が落ちたが、彼女は口をすぼめてそれをベッドの外に吹きとばした。僕は彼女の耳を指ではさんだ。素敵な感触だった。頭がぼんやりとして、その中で形のないさまざまなイメージが浮かんでは消えた。「羊のことよ」と彼女は言った。「たくさんの羊と一頭の羊」「羊?」「うん」と言って彼女は半分ほど吸った煙草を僕に渡した。僕はそれを一口吸って型灰皿につっこんで消した。「そして冒険が始まるの」(村上春樹さん「羊をめぐる冒険」P66)
2019年01月20日
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シューベルト:さすらい人幻想曲ほかシューベルト:さすらい人幻想曲 シューマン:幻想曲 [ マウリツィオ・ポリーニ ]テイラー・スウィフト:テイラー・スウィフト【中古】 【輸入盤】テイラー・スウィフト /テイラー・スウィフト 【中古】afbつみきみほ:つみきみほ
2019年01月19日
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「すごいよ」と僕はしぼり出すように言った。「同じ人間じゃないみたいだ」「そのとおりよ」と彼女は言った。彼女は非現実的なまでに美しかった。その美しさは僕がそれまでに目にしたこともなく。想像したこともない種類の美しさだった。すべてが宇宙のように膨張し、そして同時に全てが厚い氷河の中に凝縮されていた。すべてが傲慢なまでに誇張され、そして同時に全てが削ぎ落とされていた。それは僕の知る限りのあらゆる観念を超えていた。彼女と彼女の耳は一体となり、古い一筋の光のように時の斜面を滑り落ちていった。「君はすごいよ」とやっと一息ついてから僕は言った。「知ってるわ」と彼女は言った。「これが耳を開放した状態なの」(村上春樹さん「羊をめぐる冒険」P60)
2019年01月19日
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cocco:ラプンツェルラプンツェル [ Cocco ]cocco:ベスト【中古】 ザ・ベスト盤(初回限定盤) /Cocco 【中古】afb
2019年01月18日
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その時僕は二十一歳で、あと何週間かのうちに二十二になろうとしていた。当分のあいだ大学を卒業できる見込みはなく、かといって大学をやめるだけの確たる理由もなかった。奇妙に絡みあった絶望的な状況の中で、何ヵ月ものあいだ僕は新しい一歩を踏み出せずにいた。世界中が動きつづけ、僕だけが同じ場所に留まっているような気がした。一九七〇年の秋には、目に映る何もかもが物哀しく、そして何もかもが急速に色褪せていくようだった。太陽の光や草の匂い、そして小さな雨音さえもが僕を苛立たせた。(村上春樹さん「羊をめぐる冒険」P17)「あなたはいったい何を抱えこんでいるの?」と彼女が突然僕に訊ねた。「たいしたことじゃないよ」と僕は言った。彼女は少し先に進んでから道ばたに腰を下ろし、煙草をふかした。僕もその隣に並んで腰を下ろした。「いつも嫌な夢を見るの?」「よく嫌な夢を見るよ。大抵は自動販売機の釣銭が出てこない夢だけどね」彼女は笑って僕の膝に手のひらを置き、それからひっこめた。「きっとあまりしゃべりたくないのね?」「きっとうまくしゃべれないことなんだ」(中略)彼女は笑って煙草を灰皿につっこみ、残っていた紅茶を一口飲み、それから新しい煙草に火をつけた。「二十五まで生きるの」と彼女は言った。「そして死ぬの」一九七八年七月彼女は二十六で死んだ。(村上春樹さん「羊をめぐる冒険」P19)
2019年01月18日
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モーツァルト:レクイエム【輸入盤】レクィエム ラバディ&レ・ヴィオロン・ドゥ・ロワ、ラ・シャペル・ド・ケベック、ゴーヴァン、ルミュー、他 [ モーツァルト(1756-1791) ]
2019年01月17日
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24回目の1.17。ただいま5時46分です。それでは行ってきます。
2019年01月17日
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レディ・ガガ:ジョアンジョアン [輸入盤][CD] / レディー・ガガケイティ・ペリー:プリズム【中古】 プリズム(初回限定盤) /ケイティ・ペリー 【中古】afb米津玄師:dioramadiorama/米津玄師[CD]【返品種別A】
2019年01月16日
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「ところが、亡くなる三日ほど前・・・・・私が最後に見舞ったとき、なぜだか妻の枕もとからは本が消えていました。そこにあったのは、幼い孫が描いた家族の似顔絵だけでした。読む本がなくなったのならば手配しようかと私が言うと、妻は妙にさばさなとした顔で、もういいのだと首をふりました。もう私、さすがに満ちるのはあきらめたわ、と」常にしゃかりきに何かを追っている妻を、かつて自分は永遠に満ちることのない三日月にたとえたことがある。(森絵都さん「みかづき」P424)ばあちゃんは満ちるのをあきらめたとき、もしかしたら満たされていたのではないか。とりとめもない思いが浮かんでは消える。(森絵都さん「みかづき」P425)というわけで、森絵都さんの「みかづき」を読みました。年末にも書きましたが、どこまでもベタですよ。でも、好きですね、こういうベタさ。1代目「吾郎」と「千明」、その子「蕗子」「蘭」「菜々美」特に「蘭」、そして「蕗子」の子「一郎」そして「井上阿里」。「千明」に「阿里」、いいですねえ。そして、3代に渡る、塾や学校の教育にかかる物語ですが、そこを通して「吾郎」が流れています。「吾郎」は、運命に翻弄され たようにも見えますが、終始変わらなかったのは「吾郎」かもしれません。この26日から、NHKでドラマとなって放映されるそうですが、1話め「一郎」からお話しは始まるみたいです。高橋一生さん演じる「吾郎」も楽しみですが、永作博美さんが「千明」ですと!これはこれは・・・・・。
2019年01月16日
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レディー・ガガ:ARTPOP【中古】 【輸入盤】ARTPOP /レディー・ガガ 【中古】afbケイティ・ペリー:ティーンエイジ・ドリームティーンエイジ・ドリーム 〜コンプリート・コンフェクション〜 [ ケイティ・ペリー ]
2019年01月15日
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「わかりました。じゃ、あなた方の会を紹介する印刷物などがあったら置いていってください」あまりに簡単に返されたため、一郎と菜々美はしばしぽかんと顔を見合わせた。「え・・・・・」「あ・・・・・」「今日はおもちではありませんか」「いえ、もってますけど。紹介していただけるんですか」「ええ、守秘義務があるのでお母さん方の情報をさしあげるわけにはいきませんが、私どものほうからあなた方の活動をみなさんいに紹介することはできます。とりわけ、お子さんの受験で悩んでいるお母さん方には優先的にご紹介させてもらいます。そうそう、船橋には頼もしい民生委員がいるから、彼女にも手伝ってもらいましょう」きびきびとした事務口調ながらも、言っていることは至極親切だ。そのギャップにまごつき、一郎は思わずたずねていた。「あの、なんでそこまでしてくれるんですか」あくまでクールなまなざしのまま、彼女はきっぱりと返した。「それはもちろん、ずっと待っていたからですよ」「はい?」「あなた方みたいな人たちがあらわれてくれることを」(森絵都さん「みかづき」P424)
2019年01月15日
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無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲【輸入盤】無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲 ユリア・フィッシャー(2SACD) [ バッハ(1685-1750) ]
2019年01月14日
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冲方丁さんの「麒麟児」を買書つんどく。「慶応四年三月。鳥羽・伏見の戦いで幕府軍を打ち破った官軍は、徳川慶喜追討令を受け、江戸に迫りつつあった。軍事取扱の勝海舟は、五万の大軍を率いる西郷隆盛との和議交渉に挑みための決死の策を練っていた。江戸の町を業火で包み、焼き尽くす「焦土戦術」を切り札として。和議交渉を実現するため、勝は西郷への手紙を山岡鉄太郎と益満休之助に託す。二人は敵中を突破して西郷に面会し、非戦の条件を持ち帰った。だが徳川方の結論は、降伏条件を「何一つ受け入れない」というものだった。三月十四日、運命の日、死を覚悟して西郷と対峙する勝。命がけの「秘策」は発動するのか――。」(「BOOK」データベースより)麒麟児 [ 冲方 丁 ]楽天で購入
2019年01月14日
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「先代はなんと?」「それが・・・・・」思いかえし、一郎は眉をひそめた。自信はないけど、やることにしたよ。昨年の暮れに学習支援の計画を五郎に明かしたとき、一郎は今と同様、相手の反応を内心で案じていた。祖父のことだから応援してくれるのは目に見えている。けれども、自分がしようとしていることは、どこか深いところで祖父を傷つけるのではないか。しかし、吾郎はそんな一郎の杞憂を一笑に付すように、至極にこやかに謎の文句をつぶやいたのだった。「新しい月」「あ?」「そうか、新しい月が昇るのか・・・って、じいちゃん、そう言ったんです。そのひと言だけ」新しい月が昇る。あれはどういう意味だったのか、今も心に引っかかっている一郎の前で、国分寺がちらりと千明の写真へ目をやった。「新しい月、か」口の中でくりかえすなり、よしわかった、と両手で膝を打ちならす。「協力しよう」(森絵都さん「みかづき」P398)
2019年01月14日
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パガニーニ:カプリス【輸入盤】カプリス ユリア・フィッシャー [ パガニーニ(1782-1840) ]
2019年01月13日
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よかったら萌ちゃんの勉強も見てやってくれないかと頭をさげられ、一郎がすぐに返事をすることができなかったのは、迷いがあったせいではない。肌の内側がうら寒くなるなよう疑念が頭をかすめたせいだ。家庭の事情から勉強につまずいている子どもが、少なくとも、この団地に二人はいる。ひょっとするともっと大勢いるのではないか。はたして全国的にはどれくらいの数に上るのか。無性に気になりだした一郎は、帰宅後インターネットを駆使して調べたあげくに愕然とした。これは、本当に日本の話なのか――。約十五年前に崩壊したバブル経済は、一郎が考えていた以上に深刻な影を社会の隅々へ落としていた。九十年代半ばから上がり続ける失業率と、増えつづける生活保護受給者数。塾の月謝どころか給食費さえも捻出できない家庭の増加。このぶんでは、美鈴や萌のような子は、全国の至るところで見受けられるにちがいない。祖母の家でなに不自由なく暮らしてきたせいか、なんだかんだ言いながらも日本は豊かだと信じていた一郎は、この現実を前にして、自分が立っている大地の平らかさが疑わしくなるようなゆらぎをおぼえたのだった。(森絵都さん「みかづき」P364)
2019年01月13日
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ドヴォルザーク、ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲【輸入盤】ブルッフ&ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲 ユリア・フィッシャー、ジンマン&トーンハレ管弦楽団 [ ドヴォルザーク(1841-1904) ]MISIA:NEW MORNINGNEW MORNING/MISIA[CD]通常盤【返品種別A】GReeeeN:まるわかり!? メガミックス3 ~5ReeeeN~
2019年01月12日
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先に動いたのは五郎だった。千明にこくんとうなずいてみせるなり、おもむろに一歩踏みだし、居間へと進む菜々美の背中に歩みよる。「菜々美」不安げにふりかえった菜々美の頭を「おかえり」となで、その手を赤んぼうへさしのべる。「さくら。さくら。よく来たね。よちよち、おじいちゃんでちゅよ」きょとんとしている孫を胸に抱きしめた吾郎は、極限まで眉尻をたらして「さくら」と何度も呼びかけながら、稲穂のような髪の色をしたその赤んぼうを千明のもとへ運んだ。目の前にさしだされた小さな命。三人目の孫。頭がうまく動かない。整理がつかない。腰が引けていながらも、その青い瞳と透けるような肌を見るなり、千明は反射的に手をさしのべていた。命の重みがふわりと腕にかかる。ミルクの甘い香り。眠たげな顔に思わず頬をよせた瞬間、千明の脳裏にまざまざとよみがえったのは、母の頼子が新生児の蕗子を初めて胸に抱いたときのひと声だった。「ああ、なんてかわいいんでしょう」忘れもしないその一言一句を、千明は震える声でなぞった。「大丈夫。私が守ってみせるわ」(森絵都さん「みかづき」P340)
2019年01月12日
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Cocco:ラプンツェル 【中古】 ラプンツェル /Cocco 【中古】afbGReeeeN:C、Dですと!?【送料無料】C、Dですと!?/GReeeeN[CD]【返品種別A】
2019年01月11日
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「頼むから感情的にはならないでくれ。まがりなりにも蘭は塾長だ。社員に対する面子もあるし、なにより、もう三十五歳だ。親がしゃしゃり出るような年でもないだろう」「私だってもう六十代です。それなりの分別はありますから、ご安心ください。あなたが考えているほどもう勇ましくはないわ」「いいや、君は変わらない」五郎がきっぱりと断言したのは、表参道駅の長い階段を上りきり、再び地上の涼風を浴びたときだった。「君はけっして丸くなどならない、鋭利な切っ先みたいな人だ」「切っ先?」「こうと狙いをつけたらどこまでも飛んでいくナイフのようでもあるし、決して満ちることのない月のようでもある」月。とっさに頭上を仰ぐも、午後三時の空に月の影はない。白濁した氷のような雲が風に押し流されていくばかりだった。(森絵都さん「みかづき」P310)
2019年01月11日
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ケイティ・ペリー:One of the Boys【メール便送料無料】Katy Perry / One of the Boys (輸入盤CD) (ケイティ・ペリー)ケイティ・ペリー:witness【メール便送料無料】Katy Perry / Witness (Clean Version) (輸入盤CD)【K2017/6/9発売】(ケイティ・ペリー)リアーナ :グッド・ガール・ゴーン・バッド【中古】 グッド・ガール・ゴーン・バッド(期間限定特別価格) /リアーナ 【中古】afb
2019年01月10日
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「塾長、改めてお願いします。私に、この部屋を貸してもらえませんか」「あなたが?ここで、あなたが教えるの?」「ぜひ、塾長もご一緒に」「私?」「無報酬で教えるかぎり、どんな授業をしようと保護者はいちゃもんをつけてこないでしょう。ここならば思う存分、気がすむまで子どもたちとむきあえます。理想の教育を探求する場所は、なにも私立校だけじゃないですよ、塾長」「国分寺さん・・・・・」考えるよりも先に体が震えた。涙の膜にうるんだ瞳で、千明は改めて室内をながめまわす。白々とした天井。カーテンすらもない窓。物に踏みしかれていた部分だけがやけに若い畳。いらぬ和室などなぜ作るのかとの反対を押しきって設置したにもかかわらず、こんなにも長いこと放ったらかしにしてしまった。無人の用務員室。この部屋が、やっと、命を得る。(森絵都さん「みかづき」P262)
2019年01月10日
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Salyu:TERMINALCD/Salyu/TERMINAL/TFCC-86213
2019年01月09日
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