関本洋司のblog

2004年06月29日
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 プルードンにとって思想的な最大の敵は、マルクスではなくジャン・ジャック・ルソーだ。

 プルードンは、ルソーの社会契約が「持てる者の持たざる者に対する攻撃的および防御的な同盟」だと指摘したのち、以下のように言っている。

「人民だけが主権者であり、人民は自分自身によってのみ代表されることができ、また法は全体の意志の表現でなければならないということをはじめ、すべての煽動的雄弁家たちが利用する、その他のすばらしいきまり文句を原則的に確立したのちに、ルソーはひそかに彼の命題を放棄して、わきに逃げてしまう。まず彼は、集団的で不可分な一般意志のかわりに、多数派の意志を代位させる。(中略)それは、約言すれば、巧妙な欺瞞の助けによる社会的無秩序の合法化、人民主権に基礎づけられた貧困の聖化なのである。そのほかには、労働、財産、産業的諸力----それらを組織化することこそ社会契約の目的なのであるが----については、一言も述べられていない。ルソーは経済のなんたるかを知らないのだ。」(世界の名著53『十九世紀における革命の一般理念』中公バックスp164-165)

 ここでプルードンがその相互主義の前提として人民の経済的基盤を重視している点が重要だ。
 プルードンの相互主義はカントのアンチノミーに対応していて、決して解決されない矛盾の両極として個人と個人、あるいは個人と社会がある。その個人が、社会契約を通じて解消されてしまうことは、具体的には社会民主主義的な政策の中に、コミュニズム(アソシエーションのアソシエーション)が埋没することを意味する。プルードンにとって、あくまでも個人と社会は、契約を通じて対等であり続ける。
 また、ルソーと同じ集合力に着目しているとはいえ、前述したようにプルードンはそれを経済的な諸力 に規定し直したところに特徴がある(経済学的な価格論に範囲を限定したのではなく実質的な力として測定し直したのだ)。
 プルードンの初期の著作に文法書があるのだが、その中で彼は、「私」という単語がもっとも重要だと語っている。プルードンの思考の特徴がここにも現れていると言えよう。





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最終更新日  2004年07月02日 13時27分18秒


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