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大胆なダウンサイジングが必ずしも貧弱なパフォーマンスにつながらない・・・クルマつくりの基本となるべき考え方だと思います。シリーズ「マイスターの逸品」はフィアット500です。記事はMSN自動車からです。
19世紀末に産声を上げた自動車は、126年もの長きにわたり、速さと安全性、そして快適性を追求して絶え間なき進化を続けてきた。そして、1世紀を経て進化のベクトルは「環境」へと向かっている。 FPTの開発者たちがこだわったのは、世界トップクラスの環境エンジンの実現。吸気効率の向上やエンジンのダウンサイジングなどによりCO2排出量削減と燃費向上を可能にしたテクノロジーは、「インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー 2011」で4賞を獲得するほどの評価を得た。 加えて、信号待ちなどで停車すると自動的にエンジンが停止し、発進する動作を感知するとエンジンが再始動する「START&STOPシステム」を標準装備させた。日本車が得意とする分野だが「イタリア車のよさはデザインだけではない」という、開発者たちの意地が表れている。 しかし、燃費向上やCO2削減の技術だけなら、どの自動車メーカーも行っている正統進化の範疇(はんちゅう)を出ない。「TwinAirエンジン」がマイスターの逸品たるゆえんは、その視点が未来に向かっているところだろう。ダウンサイジングで4気筒エンジンに比べ非常に短く、軽く仕上がったことにより、将来的に別のテクノロジーと組み合わせることができるようになった。電気モーターを組み合わせれば、街乗りに適したハイブリッド車に理想的なエンジンユニットとして使用可能だ。また、メタン燃料システムとの組み合わせにも対応でき、将来的にさらなる環境性能の向上が期待されている。 「大胆なダウンサイジングが、貧弱なパフォーマンスに必ずしもつながらないことを証明した。驚くべき高トルクと優れた効率を手ごろな価格で実現したこの小さな2気筒エンジンは非常に個性的なユニット」。インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー 2011の審査委員であるジョン・ケリー氏は「TwinAirエンジン」をこう評した。 環境性能を向上させるがあまり、エンジン本来の役割である「快適な走行」が犠牲になっては本末転倒である。FPTのエンジニアは、環境性能にこだわりつつも、エンジンパフォーマンスを犠牲にすることは許さなかった。 2気筒で875ccと小排気量の「TwinAirエンジン」は、吸気バルブの開閉制御だけで吸気量をコントロールするマルチエアシステムやインタークーラー付きターボの採用などにより、4気筒で排気量1240ccのエンジンを上回るパフォーマンスを実現。加えて、直列2気筒特有の振動もカウンターバランサーシャフトで抑えることに成功した。 「フィアット 500 TwinAir」が優しいのは地球環境に対してだけではない。パッセンジャーにも優しい車づくりが徹底されている。例えばエアバッグ。フロントのデュアルエアバッグ、サイドエアバッグ、前席ウインドエアバッグ、運転席ニーエアバッグと七つの装備を実現した。前席のシートベルトは、ダブルプリテンショナー式を採用。バックル側に加え、リトラクター(巻き取り部)側も引き込む構造で、万一のときでも、前席のパッセンジャーをしっかりとシートに固定してくれる。 特筆すべきは「フィアット 500」専用に開発されたESP(電子制御式スタビリティコントロール)の採用。タイヤの路面グリップを前後、左右方向とも常にモニターしながら、横滑りが起こると瞬時にブレーキやスロットルバルブの開閉で姿勢を正常化してくれる。ただし、開発エンジニアがこだわったのは、ブレーキ作動による自動制御の介入によってドライバーの意志をそがないことだった。あくまで主役はドライバー。ドライビングの楽しみを損なわないようにする配慮は、モータースポーツの本場である欧州の自動車メーカーならではといえよう。 実際に事故が起きたときには、エアバッグシステムの減速度センサーを利用して衝突や横転時の衝撃を感知。一定以上の衝撃を感知すると、燃料供給ポンプの電源を遮断し燃料供給を停止して燃料の漏れを防ぐ。 シンプル・イズ・ベスト―。デザイナーも、この普遍的な価値観を追求した。ただし、彼らの考える「シンプル」とは、単に飾り気がないことではない。余計なものをそぎ落とすことを楽しみ、必要十分なインテリアを構築することにある。 シフトレバーはクローム仕上げにすることで、全体的にレトロな雰囲気の中で、洗練されたメカニズムの印象を与えるワンポイントとして作用している。つつみ込まれているような印象を抱かせる。 もちろん、レトロな雰囲気を演出しただけではない。細部に現代の人間工学を融合することで、ドライバーの運転のしやすさもしっかりと保証している。1点を見つめるだけで瞬時に速度や回転数が確認できるメーターパネルや瞬時に見分けがつき操作性も良好なプッシュボタン式スイッチに、その一端を垣間見ることができる。 もう一点「フィアット 500」をシンプルに見せている工夫が、収納スペースの設置場所だ。インストルメントパネル下の運転席側に小物入れを、助手席側には大容量の開放型収納トレイを設置するなど、あえて見えにくい位置にグローブボックスを装備している。結果的に、室内がシンプルに見えるだけでなく、ゆったりとした空間の実現にも一役買っているのだ。 「フィアット 500」ファンならば、横に伸びた「ひげ状」のアクセントライン中央に配した "FIAT"のエンブレムを見るだけで、往年の名車を思い出すことだろう。一方で、なじみ深いキャンバストップのルーフは、現行型では固定式や電動開閉式ガラス製ルーフに変更するなど、現代のモデルとしての使いやすさも追求。ホイールのセンターキャップなどに「500」のモデル名をロゴとして使用するなど、フィアット車史上初の試みも見られる。 ただの懐古主義に陥らず、伝統を受け継ぎながら、さらに進化させるマイスターたちの心意気。ヨーロッパの自動車文化は、彼らのこだわりによって支えられている。
生産終了から30年後、その思いを受け継ぎ、最新型として新たに産声を上げたのが現行型の「フィアット 500」である。開発メンバーは、50年の歴史を背負い、世界中に存在する熱烈なファンを納得させる必要があった。
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