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「『インプレッサ』って書かないでくださいね。これ、インプレッサじゃありませんからね」 取材の日程や段取りを決める幾度かのメールのやりとりで、僕がしきりにこのクルマのことをインプレッサと連呼していたのが気になっていたのだろう。 じゃあWRXってなんなのさと思ったら、それ自体が車名であるという。すなわち「スバルWRX」という銘柄のモデルであり、その下に「STI」と「S4」の2種類が設定されていると。 「このS4は直噴2リッターのターボにCVTの組み合わせで、STIの方は昔からの『EJ20』に6段MTの組み合わせなんです」 要するに、現状スバルのセダンは「インプレッサG4」とこのWRX、そして「レガシィB4」が用意されていると。そしてステーションワゴンは「レヴォーグ」と「レガシィツーリングワゴン」が用意されていると。察するに、次期型以降のレガシィはいよいよ米国主導のフルサイズDセグメントとして昇格させて、日本ではレヴォーグとWRXをレガシィ相当としてこれから売っていこうというのだろうか。となるとレガシィの名前は国内ではどういう扱いになるのだろうか。それ以前に、スバルの生産規模でここまでモデルを細分化する意味はなんなのよ? 全長4595mmの全幅1795mmで、ホイールベースは2650mm。インプレッサに例えることを避けるとすれば、S4のディメンションは先代の「アウディA4」にほど近い。素直にみれば、日本で扱うにギリギリ程よい車格のセダンである。一方で、搭載される「FA20」型フラット4は直噴ターボにより300psを発生。トルクも40.8kgmと、V8を積んでいた当時の「アウディS4」にも比肩しそうなほどだ。 それに組み合わせられるトランスミッションはレヴォーグと同様、スバル渾身(こんしん)の縦置き用CVT=リニアトロニック。そういえばアウディはマルチトロニックやめちゃったね……と話し始める頃にはH君もかなりイライラしている風だったので、黙って試乗に専念することにした。 くだんのCVT。そのフィーリングに関してはS4のポテンシャルにほぼほぼきれいに寄り添っている。気になったところといえば、走り始めの食いつきが敏感でじんわりとしたスタートには若干アクセルワークを気遣うこと、全開時の加速感に例のグニュッとした伸び感がつきまとうこと……くらいだろうか。疑似的に設けられた6段のステップは適切で、マニュアルライクな運転ではシフトダウンによるエンブレ効果もまずまず望めるなど、サーキット走行級の負荷でも与えない限りは十分スポーティーに振る舞ってくれる。耽美(たんび)的MTシンパには相いれないところはあるにしても、印象的CVTアンチを納得させるに十分なものを持ってはいるようだ。 そしてわざわざSTIを別途で用意しているくらいなのだから、S4の役割が運動性能と上質感の融合にあるとするならば、静粛性の高さもCVTを使った恩恵ということになるだろう。もちろん巡航時の使用回転数の低さは、燃費の向上にもつながっている。自慢のアイサイトはレヴォーグと同様の最新フェイズが採用されているが、その優秀な前車追従クルコンを使っての高速巡航では、100km/h前後の速度で15km/リッター付近の数値を示していた。WRXを名乗るかつてのクルマたちとは雲泥の差だ。 スポーツセダンというよりはいかにもスポーツカーでございという曖昧さのない乗り心地である。 そこから速度域を上げていけばさすがに全体のライドフィールは丸く収まってくるも、ようやくしんなり走り始めたかと思う速度はおおむね100km/h前後。つまりそこから向こうにS4の本領は待っている。強引に負荷を掛けても身をよじらせるようなそぶりも見せず、姿勢をフラットに保ちながらピターッとコーナーを抜けていくサマをみるに、その限界は相当に高いことは十分に察せられる。箱根でいえばターンパイクなんかをズバズバ上がっていけば、じっくり粘り倒すその動きにほれぼれすることだろう。 が、STIが傍らにあると聞けば、果たしてこのフォーカスの狭さはなんなんだろうという気にもなってくる。せっかく別立てで売るのであれば、使っている時間の圧倒的に長い低中速域から上質な乗り心地を目指すべきではないだろうか。それでは300psを支えられないという話ならば、本末転倒もいいところ。パワーを切り捨てたぶん低回転域からのトルクをよりフラットなものとしてCVTの特性との親和性を高め、その上でサスセットの方向性を再定義すべきではないだろうか。 ライバルとすべきだろうクルマたちのポジションと、WRX STIが傍らにあるという前提を押さえていれば、より扱いやすさと乗り心地に配慮した全天候型GTという落としどころが見えてくるはずだ。ともあれ、速いという価値に引っ張られすぎ。それがゆえにごく普通のスバル車、それこそインプレッサG4辺りがもっている素直さや優しさがそがれているところが、つくづく惜しいと思う。
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