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今日は朝九時から医者を回っていました。 まず最初は内科。 本当は耳鼻咽喉科に行って喉に消毒剤を塗ってもらいたかったんだけど(あれ塗ると治り早いですからね)、休みだったんで内科に行きました。 検診の結果、風邪ということが判明。 でもって、私はダメもとでお願いしたわけですよ。「風邪薬、処方できませんか?」お答え「家にある葛根湯でも飲んでいてください」 ああ~、やっぱりこうなっちゃったか。 実は数日前、産婦人科に行って同じことを言ったら、やっぱり同じお答えが返ってきまして、 医者を換えたらなんとかなるのではないだろうかというはかない望みに期待をかけたのであります。 でもやっぱり、 妊婦には薬は飲ませられないのだそうで……。 結局、うがい薬だけ処方してもらうことになりました。 そのために約1000円の検診料が……。 これだったら家で寝てれば良かった。 まあ、ちゃんと医者に診てもらったから不安は減ったけどね。 その後に、産婦人科に四ヶ月目の検診。 二週間ぶりです。 超音波写真を見て、一言。 二週間前より断然人間らしくなってる! ちゃんと頭があって、手らしきものがついてるんです。 頭が大きいのはダンナゆずりかな、と(あくまで私に似たとは言わない女の虚栄心)。 そうか、ダンナに似てるから私は今、こんなにぱくぱく食べてるのか。 いや~、それがあなた、また体重増えちゃったんですよ。 現在3キロ増です。 お医者さんにも「あんまり食べ過ぎないように気を付けてね(はあと)」と言われました。 てへっ、注意されちゃった。 でもって、手足が少々むくんでいるそうで、塩分取りすぎに注意しないといけないみたいです。 そういえば、ここ3日くらいしょっぱいものが食べたくて仕方なかったのよね。 特にラーメンとか。 ラーメン屋に行って、みそラーメンでもずるずるすすりたいと思ったのですが、それはさすがにいかんだろうと自粛しました。 スーパーでインスタントラーメンのみそを買って食べたんです。 私、ラーメンのスープはふだんは残す主義なんです。 だって飲むと喉が渇くし、健康にも良くないだろうってことで。 それが今回は全部飲んじゃったんですよ。 おいしくてたまらなかったんです。 そこで思い出しました。 友人の奥さんが、マクドナルドのポテトがやめられず、妊娠高血圧症候群に悩み苦しんだことを。
2005年11月24日
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四ヶ月目に突入し、お腹が出てきました。 単なる太りすぎかな、とちょっと心配になったりして(^^; そろそろマタニティドレスを買わないとダメみたいです。 妊婦用の通販雑誌って可愛いのが多くて、つい目移りしそう。 またもや風邪ひきました。 前回よりひどいみたいで、今喉がすごく痛いです。 今日はもうおとなしく寝ることにします。
2005年11月23日
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「うちらの世界にはな、この道のものしか知らん伝説言うモンがあるんや。そのうちのひとつがこのイザナギはんとイザナミはんの話や」 環喜の話していることは、総会で信行が語っていた「裏伝説」なるもののことなのだろう。日本神話にまで裏伝説があるとは思いもよらなかった。凛太郎は好奇心に駆られて、いつしか身を乗り出して環喜の話に耳を傾けていた。晴信はすでにこの話を耳にしているのだろう。初々しい反応を見せる凛太郎に、やや得意げな表情をしている。「古事記では、イザナギはんとイザナミはんがどうなったか、あんたは知っとるか? 凛太郎はん」「はい。たしかイザナミの命令に背いて、イザナギが後ろを振り向いてしまったために、イザナミが怒って、二人は永遠に仲違いしたっていう話じゃ……」「まあ、おおかたそうやな」 弓削家の実力者に合格点をどうにかもらって、凛太郎は胸を撫で下ろした。当の環喜は凛太郎のそんな様子に構わぬ風で、考え深げな目をして語り続ける。「うちらの言い伝えではな、それから先があるんや。イザナギはんは、どうしてもイザナミはんのことをあきらめきれんかった。それでどないしたら、イザナギはんともう一回夫婦になれるか訊ねた。するとイザナミはんは、黄泉の国の扉を誰かが開けてくれたらもう一度あんたの妻になるとイザナギはんに約束したんや」「その黄泉の国の扉って、どこにあるんですか?」「そんなんうちが知っとるわけないやないか」 とぼけた調子で、環喜が肩をすくめた。落胆を隠せない凛太郎を励ますように、晴信が言葉を受ける。「ずっと以前から僕はその扉を探しているんですよ、凛太郎さま」「晴信くんが?」「はい!」 これから蝉を捕りに行くんだという子供のように、晴信は元気よくうなずいた。「だって兄さんが僕に教えてくれたんです。黄泉の国への扉が開いて、イザナギさまとイザナミさまがふたたびまみえた時、とっても平和で幸せな世の中が始まるんですって」「先生がそんなことを……?」「はい!」 晴信は誇らしげにうなずいた。疑問が残る凛太郎に、環喜が説明する。「秀信は昔から伝説の研究に余念のない子ォでな。だから晴信にそれを教え込んだんやと思うで。済ました顔して、案外秀信は夢見がちな子かもしれへんな。この世のすべたが平和で幸せになることなんかありえへんのに」「おばあさま、それは違います!」 晴信はぷんぷん、と頬をふくらませた。「この世にきっと神様はいます。いつまでも今みたいに、人間同士が争って傷つけ合ってる世の中なんておかしいです。きっと何かの方法で、平和で幸せな世の中はやってくるんです」「争って傷つけ合ってる世の中って……晴信くん、君はいったい」 凛太郎は戸惑いながら問うた。あどけない晴信に、そんな言葉は似合わない気がした。 つづく
2005年11月22日
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先週の土日にかけて、ダンナと友人たちと旅行に行ってきました。 二十人の大旅行。 場所は山荘です。「子供が生まれたら、旅行は当分できないからしておいた方がいいよ」とあちこちで言われているため、参加しました。 医者からも許可を得たんです。 感想。 寒かった……。 山の上だからかなり寒いだろうと覚悟して厚着して行ったんですが、それでも耐えられないほど寒かった。 妊娠してから私、めっきり冷え性になってしまいまして特に下半身が寒くてたまりません。 お医者さまに聞いたところ、妊娠中、妊婦の体は赤ちゃんを守るために体温が高くなるのだそうです。そのため、体が多くの熱量を必要とし、結果寒がりになったりするとのこと。 この山荘は二階が吹き抜けになってまして、天井がものすごく高いんです。 「火曜サスペンス劇場」「金田一少年の事件簿」に登場する山荘を思い出していただければいいような作りです。 だから暖房を最高温度まで焚いても、ちっとも暖かくならないのでした。 妊婦でない人たちもみんな「寒いなあ」と言っている温度ですから、私はもう寒さで手がかじかむ勢いなんですよ。 宴会が始まって、みんなお酒を飲んだから体がぽかぽかあったまって、そんなに寒くなくなったみたいだけど、私はお酒を飲んではいけない状態なのでそれもできない。 仕方がないので、立ってずっと暖房器具のそばにいました。 なぜ立っていたかというと、温風が出てくる部分がちょうど立った時に腰の辺りに来るんです。 座っていたら温風に当たれないんですよ。 山荘に着くまでが一苦労でして、山の上を車で行くんですね。 それですっかり車酔いしてしまい、山荘に着いてから二時間くらいぶっ倒れていました。 私は車酔いなんか子供の時以来したことなかったんですが、やっぱり妊娠すると体質も変わるみたいです。 一番困ったのは、夜寝る時でした。 男性と女性、二部屋に分かれて寝るんですが、同室である女性の一人が「暖房をつけて寝ると、空気が乾燥して風邪をひくからつけて寝たくない」って言うんです。 私は寒くてたまらないから付けて欲しい、と言ったんですが、「それはあなたが普段体を甘やかしているから冷え性になっているだけで、私は日頃鍛えているから今だって半袖のパジャマで寝られる。布団を重ねて寝たら済む話でしょう」って言うんです。 そっちだって、口の周りに濡れタオルまいて寝たらいいじゃん!と思ったんですが、そこはぐっとこらえました。 まあ、仕方ないかと思って使えるだけの布団を重ねて寝たんですが、本当に寒くて寝られない。 あまりの寒さにコートを着たまま寝ているというのに。 もうこれだと絶対私が風邪をひく、と思って彼女に談判。「今は妊娠中で普通の体じゃないので、お願いですから暖房をつけさせてください」と頼んだんですが、あいかわらず聞き入れてくれず、最後の方はほとんど泣きそうになってしまいました。 そうしたら周りの人が間に入ってくれて、ようやく23度まで暖房を入れていいと言われたんですが、「こんな山奥に来るんだからカイロくらい持ってきなさいよ」とお小言。 思わずむかっとして、「あなたも妊娠してみれば私の言ってることが少しは分かると思いますよ」と言い返したくなったんですが、 それを言ったら泥沼間違いなしなのでやめました。 後で聞いたら男性組の部屋の人は30度くらいまで暖房を上げて寝ていたそうです。 ダンナに「僕たちの部屋に来て寝れば良かったのに」と言われたんですが男の中で女が一人寝てるってのもねえ……。 まあ、実際のところは「私もワガママ、相手もワガママ」で、集団生活ではありがちなことなんでしょうが、マジでつらかったです。 今回、私が妊娠したことを初めて知った人が多かったので、様々なことを言われたのですが、一つ思ったのは、 独身で子供がいない人ほど言うことが厳しい場合が多い(そういう人が悪いと言っているわけではありません。また、みんながみんなそうだと言っているわけでもありません)ということでした。「今まではダンナと二人でカップルでラブラブしてればいいけど、これからは親としての責任が生じてくるから大変だ」「自分が自由に遊べなくなるからと言って、育児ノイローゼになったりしないように。あなたは思い詰めやすそうだから」などといったことを言われたのですが、 わかってるよって感じ。 とゆーか、 それが嫌で産もうかどうか迷ったのをようやく(頭の中では)乗り越えたんだから、わざわざそれをもう一回リピートして私を不安にさせないでって感じ。 思うに、未婚の人にとって出産、育児っていうのは、遠い未来のことだからあんまり実感がわかなくて、つい理想論を言ってしまうんだろうと思います。 たぶんあの人たちにとっては、精一杯善意でアドバイスしてくれてるつもりなんだろうなあ。 私も素直に聞けばいいんですが、ただでさえ不安で気が立っているので表面上はニコニコしてても、内心はイライラしちゃうんです。 思えば私も独身時代、そんな感じでしたからあんまり人のことをとやかく言えませんが。 でもこれは未婚、既婚関係ないかもしれません。 出産と子育てって個人差が大きいから、つい自分と違った相手のことを「どうしてあなたはそうなの?」って目で見ちゃうのかもしれない。 だから女同士のバトルって成立しやすいんでしょうか。 ほら、よくやってるじゃないですか。 働くママ vs 専業主婦とか、未婚女性 vs 既婚女性とか。 こういうのって、はっきりした勝ち負けの基準もないし、正解もないからみんな不安になって、自分を正しいと思いたくて、相手を攻撃しちゃう方向にいきやすいんですよね。 私も注意しようっと。
2005年11月21日
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風邪ひきました。 喉風邪です。 昨夜からおかしいなあ、と思っていたんですが、朝起きたら完全に痛くなっていました。 ふだんなら市販の風邪薬を飲んだら治るレベルなんですが、妊娠前期の今って薬はできるだけ飲まない方がいいんですよね。 市販薬は審査が厳しいから、そうそう妙なことはないと思いますが、もし赤子に何かあったら……と思ったら怖くて飲めません。「あの時、私が油断していなければ~!」と後でシャウトしたくないので。 家事を全部済ましてから、午後産婦人科に行って妊婦用の薬をもらおうと思って病院へ。 閉まってました。 そう、木曜日の午後は休診だったのです。 いわゆるうっかりミスですが、今までさんざん通ったのに忘れてしまうなんて私のぼけも相当のものです。 よく似たことは先週もありまして、「ブラザー・オブ・グリム」って映画を見に行こうとしたんですね。 その上映時間が13時50分で、頭の中で何度もその時間を復唱しながら家事をしていたんですが、出かけたのは14時。 家を出た途端、もうとっくに映画には間に合わないことに気が付いて、おのれのぼけっぷりに怖くなりました……。 これは妊娠のせいですよね? そうだと言ってほしい、マジで。 今週末は出かけなきゃならないから、早く風邪を治したいよ~。
2005年11月17日
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今日で妊娠80日目です。 ということは、妊娠3ヶ月半ば。 なのに、体重が2・2キロ増えてしまいました。 週に四日はウォーキングしてるんだけどな~、毎日90分。 まだ安定期に入っていないので、マタニティビクスもできません。 昨日食べたものがハンバーグだったので、そのせいで0.2キロ増えたのよ! と言ってみる。 そう、昨日より0.2キロ増えているのです……。 五ヶ月になったらこれくらい増えても道理にかなってるんだけどねえ。 そんなにお菓子とか脂っこいものとか食べてないはずなんだけど、なぜだろう。 今日、実家の母にプリンをもらったのですが、太るのが嫌なのでダンナにあげてしまいました。 私は過去にさんざんダイエットで苦労した経験があるので、あまり太りたくないです、ハイ。 頼むよ、中の人(←赤ちゃんのこと)。 でもあんまりこういうこと言うと、赤子が拗ねて腹の中で何をしでかすか分からないのでやめようと思います。 妊娠発覚当初、私はさんざん日記に「妊娠したという現実感がない」と書いたところ、その後頭痛づわりで苦しめられたからです(元はというと、この時あまりのしんどさに運動できずに食べていたのが太る原因だった)。 あれはきっと腹の中の赤子が「現実感がないんだったら、たっぷりリアル感を与えてやるわい!」と決心した結果だと思うのです。 ところで皆さんは占いって信じますか? 私は「信じない」といいつつ、信じちゃう方です。 ってゆーか、結構好き。 「占いなんて迷信だよね」とか言ってる方が、クールに見えるというのは分かってますが、でもついやっちゃうのよ。 とくにネット占いが好きです。 だって簡単に結果が出てくるんだもん。 私は中国の四柱推命という占いが特に好きです。 四柱推命で検索すると、すぐにいくつかの占いサイトが出てきます。 今話題の細木数子さんの六星占術というのはぶっちゃけこれです。 でも本格的に占おうとすると、あれってかなり複雑だから、同じ年日に生まれたからと言って、同じ運勢になるとは限らないのですが。 生まれた時間が大いに関係するんですよ。 でね、去年、私はとある占いサイトで自分の運命を鑑定してもらったんです。 私は長年ずっとある夢があって、その夢は叶うかという相談だったんですが。 その答えは、「来年、あなたには子供が生まれるからまずは子育てを優先しなさい」でした。 占ってもらったのは7月だったんだけど、まさにぴったしカンカン(古いって)。 まあ、偶然にしても当たったわけです。 ちなみに夢が叶うかどうか、という答えは、「35歳くらいで芽が出て、成功するのは55歳。つまり先は長いので、子育てその他で人生勉強しながら気長にがんばりましょう」でした。 ダンナは「そんなの一般論じゃないか」とバカにするのですが、でも言われて胸がスーッとしたのは事実。 なんとなく行く先を示してもらったような気がして。 迷信っちゃあ、迷信なんですが、もともと占いってそういう気休めのためにあった気もするんですよ。 人間、うじうじ考えるのは時間がもったいないですからね。 まあ、占いのために大金をつぎ込む気はないので、そこそこ信じていこうと思います。 きっと子供が生まれたら生年月日で占うんだろうなあ。 ちなみに占いでは女の子が生まれるって出てるんですけど、これはどうなるんでしょうね。 結構楽しみ。 男の子でも女の子でもどっちでもいいんだけどね、ママは。聞いてるかい、赤子よ。
2005年11月16日
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「どうした、凛太郎?」 菓子をほおばったまま、明が訊ねる。祥も何事かと身を乗り出した。「何や、腹でも壊したんか?」 凛太郎を心配げに見やる晴信をなだめるように、環喜が冗談を言った。「環喜さん……」 震える声で、凛太郎は問うた。「そのかむろって言葉、晴信くんの髪型のことですよね」「そやけど……それが何か?」 凛太郎の肩はわななき始めた。環喜の前で取り乱してはいけないのに、と分かっていても、目頭が自然と熱くなる。信行の言葉が、頭の中でぐるぐると回り出した。「ごめんなさい……っ。僕の母さんのせいで、ごめんなさい……っ」 凛太郎は頭を下げた。涙をこらえているため、喉が痛い。「僕の母さんって?」 晴信のあどけない声が聞こえる。 暖かい手のひらの感触とともに、明が肩を揺さぶってきた。「ここ何日か元気がないと思ってたんだがよ、おい、何かあったのかよ、凛太郎ちゃん!」「……明子さまのことか?」 何か思い当たったように、秀信がつぶやいた。 数十分後。 ようやく人心地ついた凛太郎は、泣きはらして赤くなった目を隠すようにして縁側を見つめていた。庭の緑がまぶしい。環喜が機転を利かせて、凛太郎は涙が止まるまで一人きりにさせてもらっていた。明は祥と秀信に連れられて、無理矢理散歩に行かされたらしい。 畳を踏みしめる静かな音がした。やや驚いて、凛太郎は振り返る。そこには環喜と晴信がいた。「凛太郎さま!」 晴信は凛太郎の傍らにちょこんと腰掛けて、凛太郎を見上げる。子供なりに凛太郎を励ましているのだろう。そんな色の瞳をしていた。「よっこらしょっと」と環喜も凛太郎のもう一方の脇に腰を下ろす。「あんた、信行に何か言われたんやろ」「べ、べつに……」「隠しても無駄やで。うちは巫子やさかいな。まあ、晴信みたいに現役ちゃうけど」「もうっ、おばあさまったら!」 晴信は照れたように笑った。「あんたが信行に言われたことはお見通しやで。おおかた、明子のせいで晴信が幼くして巫子にされたとか何とか、信行は言うたんやろ」「の、信行さんは、そんな……」「あんた、ほんまに正直やなあ。全部顔に出てもうてるで。うちと晴信の預言もいらんわ。なあ、晴信」「え……僕の預言が、凛太郎さまのお役に立てないってことですかっ?」「あんたも冗談のわからへん子ォやなあ」 晴信の頭を、環喜はちょん、とこずくマネをした。「環喜さま、乱暴ですっ」 晴信が口をとがらせて、頭を庇う。そのあどけなさが愛らしくて、思わず凛太郎は笑みを漏らした。環喜がうなずく。「あんたはそうやって、いつもニコニコ楽しくしとったらええのです。周りの人間のよけいな言葉なんか聞くことはない。それがこの子にとっても、一番の励ましなんやから。なあ、晴信」「ええ、環喜さま!」 晴信は元気いっぱいにうなずいて、凛太郎を見上げる。その瞳は、「環喜さまを信じてください、凛太郎さま」と語っているようだった。「それって、いったい……」 戸惑って凛太郎が訊ねる。環喜に背中を押されて、晴信は一心に語り始めた。「僕はっ、巫子になれて幸せなんです。兄さんたちの役に立てるし、イザナギさまがイザナミさまにふたたびまみえる日のお手伝いができます!」「イザナギとイザナミ……?」 事態がよく飲み込めていない凛太郎に、環喜が注釈を始めた。「あんたも知っとるやろ。古事記に出てきはるイザナミ神とイザナギ神や」 つづく
2005年11月15日
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青桐の葉陰に石榴の花が灯火のように咲いていた。 環喜の部屋は、そんな庭の景色が見える奥座敷の一室にあった。部屋は畳敷で、数々の趣味の良い和風調度品が所々に置かれている。「環喜さまがご自分のお部屋に、人を入れられることは滅多にないことですよ。凛太郎さまと明さまは、よほど環喜さまに気に入られたのでしょうね」 凛太郎と明を部屋に案内した祥が、我が事のように誇らしげに耳打ちする。晴信も嬉しげにうなずいている。「環喜さま、参りました」 秀信が一礼とともに環喜に告げた。環喜は縁側に向かって、腰を下ろしていた。汕頭刺繍の着物を着ている。その華やかだが渋みのある柄は、環喜によく似合った。「お入りやっしゃ」 環喜が振り返って、笑顔を見せた。「では、ご遠慮なく」 秀信がそう言って、足を踏み入れると凛太郎たちも後に続く。「柊子、座布団持って来たってや」 環喜が横を向いてそう呼びかけると、ふすまが開いて紬姿の少女が現れ出た。年は十七、八といったところだろうか。つややかな黒髪をお下げにしていた。ゆかしげな美しさを持った少女だった。「はい、環喜さま」 少女は手にしていた座布団を一枚ずつ、「あんた、頼まれんでも茶菓子くらい持って来たりィや」「でも環喜さま、座布団と同時にお茶菓子は持てませんわ。手は二本しかありませんもの」「あんたの理屈好きは日本一やなあ」 柊子と呼ばれた少女と、環喜のやりとりに明が笑いを漏らした。「あんた、笑い顔も男らしいなあ」 環喜はにっこりと明に微笑みかけ、柊子に「なんぞふるまったってや」と命じる。柊子はこっくりとうなずくと、奥の間に引っ込んだ。 やがて熱いお茶と、凝った作りの和菓子が出された。和菓子の上品な甘さとお茶の渋みが合わさって、絶妙なうまさだった。「おいしいえ?」「はい」「もっちろんだぜ!」 凛太郎と明が答えると、環喜は「そら良かった」と満足気にうなずく。凛太郎たちが菓子を食べ終えた後、環喜はふと晴信に目を向けた。「あんた、髪伸びてきたみたいやなあ。うちが切ったるわ。こっちへおいで。それやとかむろにならへん」 凛太郎の体がビクリ、と震えた。かむろという言葉に反応したからだった。 つづく
2005年11月14日
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「今日はすまなかったね」「えっ?」 信行の言わんとしていることが凛太郎にはよく分からなかった。てっきり、会議の時のようにきつい言葉を浴びせかけられると思っていたのだ。信行は凛太郎をなだめるように笑いかける。「今日はすまなかった、と言っているのだよ。君にあんな毒舌を吐いてしまって、とても反省している。私はどうも思っていることをズバズバと口に出してしまう癖があってね。家内にもよく怒られているんだ」「そ、そうなんですか」「君と真の姿になった明殿の美しさに、すっかり心奪われてしまってね。つい良からぬ妄想をしてしまい、それを口に出してしまった。助平な中年オヤジと嘲笑ってくれたまえよ」「中年オヤジだなんて、そんな……」 凛太郎は言葉を濁した。信行はバツが悪そうに、頭をかいている。こうしていると、信行はそんなに悪い人間ではないように思える。自分は若輩者だし、信行にからかわれていただけなのかもしれない。考え込む凛太郎の顔を、信行はいつのまにかのぞき込んでいた。 凛太郎は思わず照れくさくなって、信行から身を引く。信行は肩を揺らして笑った。「そう怖がらないでくれたまえよ。君の美しさは、明子譲りだと思って見とれていただけなのだから」「僕の母さんに?」「ああ、私の妹でもある」 信行は遠い目をしてうなずいた。「一見おとなしそうだが、芯の強い女でね。凛とした美しさをいつも兄ながら感じていた」 思わず身を乗り出して、凛太郎は信行の話に聞き入っていた。秀信以外の者から、母親である明子の話を聞くのはこれが初めてなのだ。 もっと明子の話が聞きたい。そんな思いが、凛太郎の表情に出ていたのだろう。信行は面白そうに凛太郎を見つめた。そして言葉を続けた。「まったく明子は、大胆不敵な女だったよ」「えっ……」「巫子である自分の役割を放棄して、男に走るとはな」 凛太郎の背筋を、冷たいものが駆け抜けた。信行は隠していた牙をむき出しにして、凛太郎に毒を注入していく。「晴信の髪型を君も知っているだろう? 男の子にしてはめずらしいおかっぱ頭くらいにしか君は思っていないだろうが、あれは”かむろ頭”というのだよ。大人でもなく、子供でもない。この世のものではない異界のものに生涯を捧げた人間の証だ」 凛太郎は胸をつかれる思いがした。今まで晴信の髪型を可愛いとしか思っていなかったのに。いつだったか晴信は自分の髪型を嫌だと言っていた。だったらヘアスタイルを変えればいいのに、くらいしか凛太郎は思っていなかった。その髪型に、そんな深い意味が込められていたとは。 青ざめた凛太郎に、信行は得々と言葉を続ける。「君の母上、明子もあの髪型をしていたよ。けれど明子が巫子として任命されたのは十三の時だ。だから明子は、短いながら普通の少女としての生活も知っている。だが晴信は生まれてまもなくして巫子にされた。だから、普通の少年とはほど遠い生活を送り続けている。友達と遊ぶこともできず、学校にも行けず――そして、恋を知ることもできない。性を知ることもない。君の味わっている快楽を、晴信が経験することは生涯無い」 信行のまくしたてる言葉を、凛太郎はただ黙って聞くしかなかった。それは母の選んだ人生で、自分には関係ないと反論するには、凛太郎は晴信と深く関わり過ぎていた。晴信のあどけない顔、自分を見上げるつぶらな瞳が脳裏に浮かぶ。そして時折、瞳をよぎる哀しげな色も。信行は落ち込んでいく凛太郎をしてやったりと見つめている。「なぜだか分かるか? 君の母君、明子が自分の使命を棄てて、好き勝手をしたからだよ。時代が時代なら、禁忌を犯した巫子である明子は打ち首ものだな。罪の子である君も、もちろんこの世に存在するわけもない。そして晴信は、つらい巫子としての使命を負わずに済んだだろう」 そして信行は、とどめを刺すようにその言葉を吐いた。「明子があんなことをしなければ、晴信はごく普通の少年として幸せに暮らせたのだ」 凛太郎は息を詰めて、信行を見つめた。全身の血の気が急激に引いていくのを感じる。信行は一言言い捨てて去っていった。「環喜さまにひいきにされたからといって、調子に乗るなよ!」 つづく
2005年11月13日
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二週間ぶりに検診に行って参りました。 ただいま妊娠76日目に入っているとのことで、正確な日付を聞いて、私ってもう妊娠3ヶ月を過ぎてるんだ……とようやく知った次第。 そこでごそごそと妊娠発覚の時にもらった「妊娠ガイドブック」を読んでみたところ、 妊娠三ヶ月はつわりがひどい時期です。 空腹になると、つわりはいっそうひどくなります。 食べ物を小分けにして食べることにしましょう。 との文字が。 しくじったよ、ママン。 私は普通に朝、昼、晩を食べてから、お腹が空いたら間食していたのだった……。 たしかに空腹になったら気分悪くなってました。 それが嫌で、たくさん食べていたのだった。 だから体重が二キロも増えたんだね。 前回、増えたのは一キロと書いたんですが、それからまた一キロ増えたんです……。 体重って、増える時は一気に増えるもので。 あ~、真面目にガイド読んでおけばよかった。 妊娠発覚当初は、「自分は母親にちゃんとなれるのか」「ママ友づきあいはうまくいくんだろうか」などと悩んでいたもので。 そんな先の話より、足下をちゃんと見ておけばよかった。 反省。 そこで先生に「まだ体重が増える時期じゃないですよね?」と聞いたところ、「はい(苦笑)」との返答が。 私の顔はかなりひきつっていたらしく、「まあ、痩せるよりは赤ちゃんのためにいいですよ」となぐさめの言葉が返ってきました。 なぐさめの言葉なんて、心に届かない風(BY ふしぎの海のナディアED)というフレーズが耳に響く私。 だが、だが、私にはなぐさめがひとつあるっ! 私のバストは10センチ大きくなったのだ~! ちゃんとトップバストとアンダーバストを計ったから、事実ですよ、あなた。 背中の肉がついたからじゃありませんよ(マジで)。 横になってもバストはプリンのように綺麗な形を保っています。 ここのところ、ヤケに胸が張ると思っていたら、体は着々と授乳の準備を進めていたのでした。 ああ、生命の神秘。 私の頭の中身はちっとも変わってないけど。 きっと、増えた二キロの体重は、大きくなったバストなのよ~! バスト一個につき、一キロ。 完璧な計算だ!……なわけないか。 先生に、「あんまりたくさん食べないでね」と忠告をいただきました。 まあ、検診の結果は異常なしだからよしとするか。 でも胎児に頭ができて、とくとくと心臓が脈打っている姿はまさに生命の神秘でありました。 私の中に、もう一人べつの人間が宿ってるんだ。
2005年11月12日
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信行はムッとしたまま、黙りこくった。環喜の事実上の勝ちに晴信が、凛太郎に微笑みかける。「良かったですね、凛太郎さま」 祥が凛太郎の肩に手を置いた。「まったく、人の恋路に邪魔するヤツはああなるってことよ」 肩を落とした信行に、明が小気味よさそうに笑った。 会議が終わって、吉原たちが帰った後。 凛太郎と明は、秀信たちとお茶を飲んでいた。今日は晴信たっての希望で、ココアとケーキだった。「環喜さんって、とっても元気なおばあちゃまですね。僕の祖母を思い出します」 お代わりの紅茶に、祥に砂糖を入れてもらいながら凛太郎は言った。「おばあちゃまはおやめください。環喜さまがお怒りになります。あの方はいつまでたっても少女のような心映えの持ち主ですから。ねえ、秀信さま?」「ああ」 秀信が目を細めてうなずく。 口の周りをショートケーキのクリームだらけにした晴信が凛太郎に身を乗り出した。「ねえ、ねえっ、凛太郎さまっ。環喜さまってとってもいい方でしょ?」「晴信くんは、環喜さんのことをおばあさまって呼ばないの?」「だって、環喜さまが怒るんだもん」 祥のいうことは事実だったか。凛太郎は苦笑した。「まあ、女はいつまでたっても若いつもりでいてェもんだからな」 ケーキを手づかみで口に運びながら、明がしたり顔で言う。凛太郎は笑ってそれをいなしてから、晴信に答えた。「ええ。僕のことを庇ってくださって、本当に助かりました」「この屋敷で、お前の味方は環喜さまだけではないぞ、凛太郎」 秀信の優しい言葉に、凛太郎は目を見開く。「私の部下である陰陽師の間でも、お前に好意を持っているものはたくさんいる。伝説の巫子の生まれ変わりと、尊敬の念を抱いているものも少なくはない。嘘だと思うなら、晴信との修行を終えた後に、屋敷を散歩してみるといい。お前に憧れの視線を送っているものがたくさんいるであろうことに気づくから」「そんな……」 凛太郎の疑念は晴れなかった。弓削の屋敷に滞在してからというもの、信行や秀信の兄姉たちがしょっちゅう棘のある言葉を投げかけてくるので、凛太郎は部屋から出るのが怖くなっていたほどだったのだ。明がそばにいなければ、とっくに家に逃げ帰っていたかもしれない。たとえそこに勾玉憑きや鈴薙の襲撃があったとしても。 秀信は、励ますように凛太郎に語りかけた。「嘘ではない。元より、お前は人に好かれる性質なのだ。凛姫の生まれ変わりということを抜きにしてもな」「でも、僕は決してクラスでも人気者じゃありませんでした。特に杉原さんみたいな人には嫌われて……」 凛太郎の脳裏に、クラスメイト・杉原里江の姿が浮かぶ。マイクロミニの制服に身を包み、勾玉憑きとなってまで凛太郎に反抗した少女。彼女との和解を、凛太郎は今でも果たしていない。 沈鬱しかける凛太郎に、明がウィンクする。「里江ちゃんはお前に嫉妬してただけさ。お前がこの色男の明さまに惚れられてるのがくやしいからさ」「明のどこが色男なんだよっ」 凛太郎はベーッと明に舌を突き出す。だが、秀信たちの視線を感じてすぐに居住まいを正した。「ご、ごめんなさい……」 ちぢこまる凛太郎を取りなすように、秀信が言葉を続けた。「だから、お前もできる限りこの弓削家に馴染むことだ。その方が、今後の勾玉憑き対策にも役立つ。お前の助力なしではこの問題は解決せぬからな。それに……」 そこで言葉を切って、秀信はつつみこむような笑顔を浮かべた。「お前には私がついている。分かっているだろう、凛太郎?」「はい――はい、先生!」 凛太郎は目に涙をにじませて、秀信に大きくうなずいた。晴信は嬉しそうに兄と凛太郎の交流を見守っている。明は面白くなさそうに鼻を鳴らした。 ひとしきり秀信たちと歓談すると、すでにそれなりの時間になっていた。一足早く晴信は眠り込んでしまい、祥に抱えられて寝室に行った。「それじゃあ先生、おやすみなさい」 凛太郎は秀信に挨拶して、お茶を飲んでいた部屋を出た。中ではメイドたちが後かたづけをしている。メイドなるものに身の回りの世話をしてもらうことに、凛太郎はまだ慣れない。先ほども自分も手伝うと彼女たちにしつこく食い下がった末、丁重に断られたところだった。「あ、そうだ!」 部屋を出てから、数分長い廊下を歩いたところだった。明が急に歩みを止めた。「どうしたの、明?」「さっき、クッキーが少し余ってたろ。あれうまかったから、今夜の夜食にちょっとばかしもらってくる。凛太郎、先行っててくれよ」「あんまり食べると太るぞ、まったく」 走り去っていく明の背中に文句をつけながら、凛太郎は前を向いて歩き出した。 その時だった。凛太郎の行く手をはばむように、一人の男の影が立ちはだかった。「の、信行さん……どうしてここに」 凛太郎は驚いてその男の名を呼んだ。「いやあ、ちょっとここを通りかかってね。偶然だな、まったく」 信行はニヤリと笑った。 つづく
2005年11月09日
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「ま、まあな」 緑色の髪をした鬼が、めずらしく照れた表情を見せる。「ああ、ごめんやす。いきなりあんた呼ばわりしてしもうたなあ。うち、あんたのこと、明はんって呼んでええか?」「いいぜ」 明は環喜に快諾した。環喜は晴信に聞いて、明の名前を知っていたのだろう。「おおきに」 環喜は明に一礼すると、信行に向き直った。それまでの笑顔が一転して厳しいものになり、信行が背筋を正す。「信行はん」「は、はい。何でございましょう、おばあさま」「あんた、部屋の外で聞いとったら、ずいぶん凛太郎はんに冷たい仕打ちをしてるねえ」「そ、そうでございますか? でも事実、凛太郎くんは……」「お黙り」 環喜は一喝した。部屋中が静まり返るほどの迫力だった。「晴信に聞いたところ、凛太郎はんは美しい心映えの持ち主とのこと。事実、うちもその通りやと思います。一目見てそう感じました。伊達に長いこと生きてませんから」「そんな……」 環喜の手放しの褒めように、凛太郎は頬を熱くした。「まあ、褒めてもらっとけよ、凛太郎ちゃん」 明がウィンクして、祥が微笑む。環喜の言葉に、部屋中の人間が聞き入っていた。「そやから、鬼神さま方もこの子に惚れたんちゃうか? おなご言うもんは、心の底から自分に惚れ込んでるもんにはなかなか冷たくできるもんやあらへん。特に優しい子ォほどな。おおかた、凛太郎はんもそういう気持ちやったんやろ。まあ、凛太郎はんは今生はおなごやあらへんけどな」 ふくよかな環喜のユーモアに、部屋中がなごやかな笑いにつつまれた。恥ずかしくなってうつむく凛太郎に、環喜はにっこりと笑いかける。深い慈愛に満ちた笑顔だった。「それにな」 不意に、環喜は真顔に戻って言った。「鬼神さまがこの世に現れる時は、この世が乱れた時や。きっとうちは、今の世の中に怒って、鬼神さまが千年の眠りからお目覚めになったと思てます。凛姫さまが凛太郎はんとして、この世に生まれ変わったのも何かの縁やろ。そして御子を産みはったんも、何かの深い縁があったからや。なあ、晴信」「ええ、おばあさま!」 晴信は、元気いっぱいに環喜にうなずいた。二人が凛太郎を見つめる目には深い信頼と尊敬が満ちあふれていた。弓削家における新旧の巫子が、凛太郎にそこまで重きを置く様に、信行を除く一同は説得されていった。自分に向けられる視線が、次第にやわらかくなっていくのを凛太郎は肌で感じる。「だからうちたちは、重い使命を負った凛太郎はんを支えていかなあきまへん。そうやないか、信行?」「は、はい、おばあさま……」 信行はしぶしぶうなずいた。 つづく
2005年11月08日
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「関係ねえじゃねえか、お前には」 もう我慢できない、といった風情で明が口をはさんだ。「無くはないと思うが。もともと凛太郎が鬼の子供をはらんだせいでこの事態が起こったのではないか?」「そ、それは……凛太郎が無理矢理嫌がってるのを、鈴薙のヤローがヤッちまったんだよ!なあ、そうだろう、凛太郎?」 明がすがるように、凛太郎を見つめる。明の言葉にうなずくのが明らかに得策だということは分かっている。この場をうまく納めることができるし、何より明を傷つけずに済む。 けれど凛太郎はうなずくことができなかった。あの晩、鈴薙に心惹かれていた自分――鈴薙の封印を解いてしまった自分がたしかに存在したのだから。「ふん、返答もできぬのか。やはり君は喜んで鬼に……」「おやめください、信行さま」 祥が見かねて叫んだ時だった。「あんた、この子にひがんだらあかんえ」 たゆたゆとした京なまりが、清流のように響いた。「環喜(たまき)さま!」 祥の叫びを皮切りに、室内にどよめきが響いた。 出入り口から、従者に手を引かれてやって来たのは美しい着物を身につけた老婆だった。つやつやとした白い髪を童女のように肩で切り揃えている。体全体はふくよかで、白い丸顔には優しげな垂れた目が二つはめ込まれていた。 老婆の傍らに寄り添っているのは、晴信だった。凛太郎を見て、目を輝かせる。そんな晴信を見て、老婆は微笑ましげに目をすがめた。 春風のような老婆の登場を不思議に思っていた凛太郎に、祥が小声で講釈を垂れる。「あのお方は、弓削環喜さまです。およそ六十年前、弓削家の巫女として絶大な力を発揮なさいました。弓削家がここまで興ったのも、環喜さまの並はずれた能力に負うところが大いにあります。巫女を引退なさった後は、養子をお取りになりたくさんのお子様をお産みになりました」「じゃあ、もしかしてあの人は……」「そうです。秀信さまと晴信さまのおばあさまに当たります」 心なしか、祥の答えに秀信が誇らしげに微笑んだような気がした。老婆――環喜は従者に上座の席に腰をおろした。そこは信行の隣席で、信行は煙たそうに環喜を横目で見る。「凛太郎はん」 人心地ついた様子を見せてから、環喜は凛太郎に声をかけた。「は、はいっ!」 凛太郎は緊張して答える。環喜は微笑みながら小さな体を折り曲げて一礼した。「お初にお目にかかります。うちが弓削環喜や。あんたのお噂は、晴信から上々聞かされました。噂の通り、いや、噂以上にあんた綺麗な子ォやなあ、凛太郎くん。それに心映えも美しい、まっすぐな目ェしてはるわ。鬼神さまが惚れ込みはるのも無理はないわなあ。ねえ、あんた」 環喜は明に微笑みかける。鬼の姿を見ても、環喜は少しも狼狽していなかった。さらにいきなり「あんた」呼ばわりである。だがそこには少しも非礼さはなく、明に好意を抱いているのが伝わってきて暖かい気分になるほどだった。 つづく
2005年11月07日
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最近、ダンナの帰りがものすごく遅いんです。 夜の11時過ぎなんてザラ。 まあ、この不況の世の中、これくらいの帰宅時間の人はたくさんいると思うので、うちなんか大したことはないんでしょうが。 理由は仕事です。 会社の事情で人が減ったとかでこういうことになったそうです。 ダンナは会社の仕事内容にも人間関係にも満足してるし、私と生まれてくる子供のために一生懸命働いてくれているので、文句を言う筋合いはないのは分かっているのですが、それでも一言言わせてください。 寂しいよ~。 初の妊娠で、いろいろ不安なんだからそばにいてほしいよ~。 今の世の中、よく「子供を産んでも、子供も私も幸せになれるんだろうか」と思うようなニュースはたくさんあります。 それでも産むことを選択したのですから、文句を言う筋合いはないのかもしれないけれど、毎日つわりで気分が悪くて、妊娠がだんだん現実味を帯びてくると、やっぱり不安なんです。 誰かにそばにいてほしいんです。 実家の母や友達に話を聞いてもらうこともできますが、やっぱりダンナにそばにいてもらうのが一番安心するんです。 男だから、つわりのつらさなんて分からないんだろうけど、それでもなんとなく安心するんです。 お腹の中の子供が、父親を求めてるのかなあなんて気もします。 これがタイミングの悪いことに、ダンナの仕事が忙しくなったのは私がちょうど妊娠したころからなんですよね。 もうちょっとしたら楽になるから、とダンナは言うのですが、いつ元の生活に戻れるかは明確に答えてくれません。 ま、会社の事情なんてそう簡単に分かるわけないか……。 でもこのままの生活が続いたら、きっと子育ての悩みをダンナに話してる暇もないんだろうな。 自宅で子供と二人っきりで息が詰まらないかどうか生まれる前から心配してみたりして……。 何だか世のママさんたちが、必死にママ友達を作りたがる気持ちが分かってきました。 やっぱり子育てをしていると、その当人しかわからない悩みとか出てきますよね。それを話せる相手って欲しくなると思うんです。 でも、かと言ってそうそう簡単に自分と気が合う人間が見つかるわけもないのが現実。 今から憂鬱になってきました。 今日、ダンナと共通の友人に妊娠を報告しました。 みんなに「パパ」と言われて、ダンナはまんざらでもないみたい。 その人たちは女性だったので、私はつわりのことをたくさん話してしまいました。 みんな子供はまだいないんだけど、つわりの話しって男の人はまったく分かってくれないんだけど、女の人はまあまあ想像できるみたいですね。 一人の人が、「つわりって生理痛みたいな感じなんでしょう?」と聞いてきたので、「はい」と答えたら、みんな「ああ~」と同情してくれました。 やっぱり人に話すと、気が楽になるんだよね。 みなさま、グチを話してしまってごめんなさい(ここで反省しても仕方ないか)。 ある人に聞いたんだけど、つわりって楽な間に運動しておくと、あんまりひどくならないんですって。 あと、人とおしゃべりするのもいい方法みたいです。 今度試してみようっと。 ダンナがリストラされても困るので、これってぜいたくな悩みですよね。 分かってるんだけど、やっぱり寂しいのでした。 本人に愚痴るわけにもいかないので、ここでこっそり書いてみた所存なのでした。
2005年11月06日
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妊娠して五週目に入った私ですが、早くも1キロ太りました……。 理由はわかってます。 動かないのに今まで通り食べてるからです。「じゃあ、運動すればいいんじゃないの?」というツッコミが聞こえてきそうですが、そうもいかない。 なぜかというと、動くのがしんどいんです。 それ以前に、気分が悪い。 今までの日記にも書きましたが頭が痛いし、常にシクシクと下腹が痛い。 この下腹の痛みというのは、子宮を支える靱帯が妊娠のために引っ張られることによる痛みだということ。 べつに病気じゃないので、痛み止めを飲むわけにもいかないし(第一、今は過敏期でクスリの服用はできるだけ避けた方がいい時期)、毎日しんどく、だる~く過ごしてます。 妊娠前はウォーキングとかストレッチとかやってたんだけど、それをやる気にもなれない。 言ってみれば、生理のひどい時に運動するようなものなので。 こうやって、パソコンの前に座ってるのも具合の悪い時にはできません。 ひたすら寝てます。 私は入院中に、横になりながらテレビを見ていました。 今はそれが復活してます。 読書したり、パソコンしたりするのって集中力がいるし疲れるんです。 余談ですが、今NHKで「チャングムの誓い」という韓国ドラマがやっていて、その主人公のチャングムという子がまったくリアリティがないほど良い子なので、「こういう子ができたらいいなあ、まあ、できるわけないか……」と思いながら見ている所存。 後は細木数子の番組見たりとか。 7ヶ月あたりからもっと食欲が出て太るから、今はなるべく太らない方がいいとは分かってるんだけど、うまくいきそうもありません。 食べないと気分悪くなるんだよね、これが。 マタニティビクスっていうのがいいらしいんだけど、私の家の近所ではやていないので、ビデオ買ってやろうかなあと思ってみたりして。 でも三日坊主で終わりそうだなあ……。 とにかく毎日だるくて、生あくびばっかりしてます。 妊娠って、しんどいなあ……。
2005年11月04日
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「信じられん! この世に鬼というものがまことに存在しようとは」 感嘆したようにつぶやく吉原に、明はウィンクした。「良かったじゃねえか、死ぬ前に一目見られて」 明のぶしつけな言い方に、吉原の部下らしき人物がにらんだが、「いいんだ、いいんだ」と吉原は鷹揚に笑った。「さすがは鬼神さまだな。はっきりとものを言う」 吉原は少しも気分を害していなかった。それどころか、明に親しみを持っていた。この部屋中の人間がそうだった。通常なら、鬼などという非現実的な存在を見てもっとおびえてもいいはずなのに、誰もが明の美しさに見取れ、そして親愛を覚えていた。美しさと親しみ深さといったものは、通常相反するものなのに、この緑色の髪をした鬼はそれを兼ね添えていたのである。 幾分か誇らしげに、秀信は言った。「この鬼神さま――明殿が凛太郎の命ずるままに働いてくれます。信行さん、あなたはこれでも凛太郎をただの非力な少年だと思いますか?」「だ、だが、鬼とは言ってもどんな力を持っているかは分からないぞ」 食い下がる信行に、秀信が目で凛太郎に合図をした。了解のしるしに凛太郎はうなずく。「明、何か力を使って」「あいよ!」 明は指先を信行に向けた。信行の体が、宙に浮き上がる。「な、何をするっ! 早く下ろせ!」 一同が凝視する中、信行は空中で手足をじたばたと動かした。凛太郎の顔色が変わる。「明、やめて」「そうか? 俺としちゃこれでもぬるいくらいなんだけどなあ」 明は不服そうに指先を下に向けた。乱暴に信行の体は床に下ろされる。みっともなく尻餅をついた格好のまま、信行は明をにらみつけた。その滑稽さに吉原らが思わず笑いを漏らす。「ご、ごめんなさい……明が無礼なことをしてしまって。大丈夫ですか?」 凛太郎が差し出した手を、信行が振り払った。その衝撃に、凛太郎は思わず手の甲を押さえる。「君は知っているか? 鬼の習性を」 立ち上がりながら、信行が言った。唐突な言葉に、凛太郎は訳が分からずただ信行を見つめる。「鬼は人を食い物にする、と言っているのだよ。凛太郎くん」 一瞬、部屋の空気が凍り付いた。絶句している凛太郎をいい様だと思っているのか、信行が鼻を鳴らす。「伝説によれば、あの緑の髪の鬼――蒼薙は、凛姫の転生を待つためにおのれを石に憑依させて眠りについた。鬼といえども、生き物だ。千年の間、かなり力は弱っていたはず。それがあそこまで回復して、我々とともに戦おうとするとは、何らかの気の供給が必要なはずだ。鬼にとっての栄養とは、人間の”気”なのだからな」 信行の語ることは、凛太郎にとっては新事実だった。明は今まで、そんなことを自分に語ったことがない。「だからもう一方の鬼――鈴薙は、勾玉を人に憑依させて勾玉憑きを作り、その気を吸い上げることで強い復活を果たした。だが、この蒼薙殿はそういった行為をしているようには見えない。もししていたら、即刻私が成敗するがな」 さもおかしげに信行が笑った。「てめえ!」 信行に殴りかかろうとする明に、凛太郎が命じる。「やめて、明!」「けどよ……」 明は不服そうに信行をにらみつける。信行は言葉を続けた。「ということは、蒼薙殿が気を得ている方法はただひとつ――交わりだ。分かるか、皆さん? 今風に言うと、セックスだよ」 部屋中に狼狽した空気が流れる。凛太郎は背筋がゆっくりと冷えていくのを感じた。明は今にも信行に殴りかかりそうだった。祥は気遣わしげに凛太郎を見つめ、秀信はいつもの通り冷静だった。「伝説では、鬼は人を食うか、犯すかする生き物だとされている。この”食う”に当たるのが、勾玉憑きを作ることだ。長きにわたって勾玉憑きでいると、人は死んでしまうからな。それとも実際に、鬼は人を食っていたのかもしれないな。そしてもう一つ――犯すことによって、その人間の気を吸い取る。普通の人間は鬼に一度犯されただけで死んでしまう。鬼の精力とはそこまで凄まじく、与えられる快楽も半端ではないからな」 鈴薙と明に抱かれた時の感覚を思い出して、思わず凛太郎は赤くなる。たしかに信行の言うとおり、この二匹の鬼が自分にもたらした悦楽は尋常ではなかった。幾度も絶頂に導かれ、すべてを忘れさせられ――。そんな凛太郎の胸の内を読み取ったかのように、信行が言葉を続けた。「そんなに鬼に抱かれるのは心地良いか?」「えっ?」「凛太郎くん。君は今も蒼薙とベッドをともにしているのだろう? 蒼薙にあれほどまでの力を授けられるのは、君しかいない。伝説の巫女・凛姫の生まれ変わりで強大な気を持ち、蒼薙の千年前からの思い人である君しか、な――君は鬼に毎夜抱かれているのだろう?」 つづく
2005年11月03日
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今までさんざん私はこの日記に「妊娠している気がしない」「ママになるというリアル感がない」と書いてきました。 でも今は、母親としての自覚はともかく、リアル感は生じてきました。 だって、つわりがあるから。 つわりと言えば、皆さんまっさきに思い出されるのは、吐きつわりでしょう。女の人が「うっ」なんて言って、洗面所に向かってゲーゲーやるやつね。よくテレビドラマなんかでありますね。 私も今まで、つわり=吐くだと思っていました。 けど、現実にはいろいろ種類があるそうで、頭痛づわり、睡眠づわり、唾づわり(唾がとにかくたくさん出てくるそうです)などがあり、私はこのうち頭痛づわりと睡眠づわりになっています。 頭痛づわりとはその名の通り、頭痛がするつわり。 睡眠づわりとは、ひたすら眠くなるつわり。 これらはすべて妊娠中のホルモンバランスの変調によって起こるものだそうです。 睡眠づわりはいいんです、とにかく寝てればいいから。 でも困りものは頭痛づわりでありまして、頭痛がすると何もできないんですよ。 私は頭痛持ちではなかったので、このことを初めて知りました。 頭が痛いからテレビやラジオは単なる騒音だし、読書も駄目。 座っているのもつらいので、ひたすら布団に横になっているしかありません。 でも眠れないので、こうなるとイライラしてくるんです。 気分が悪いと、昔あった嫌なこととか思い出しちゃったりして、「小学生のころ、私に嫌なことを言ったあの子は今頃どうしているだろう。何か報いは受けたのだろうか。この世には神と仏はいるのだろうか」 などとムカムカムカムカ考えちゃうんですねえ。 こうやって書くと、私は「魔太郎がくる!」のパロディみたいなバカ女ですが、考えてる時は本人マジです。 他にも、「政府は増税するというのに、子供を産んで明るい未来などくるのだろうか」とか、「こんな世の中に生まれてくる子供は幸せなのだろうか」とか、真面目なネタもあります。 やっぱり気分が悪いと、明るいこととか考えられなくなるんです。 健康第一、とはそのために言われているのでありましょう。 布団の中でじ~っとしてるのって、時間の無駄以外の何者でもないと思うんですが、他に何もする気がおきないんです。 でも今のところ食欲は落ちてなくて、普通に食べているものだから体重はすでに1キロ増えてしまいました。 お腹がすくと、頭痛がいっそうひどくなると思うのは気のせいでしょうか……。 4週目だとまだつわりが始まったばかりなんですよね。 だからこれから吐きづわりが始まるかもしれなくて、今から戦々恐々としています。 実はさっき、妊娠中の体にいいと聞いたので玄米フレークを食べたら、胃がむかむかして吐きそうになりました。結局吐きませんでしたけど。 単に消化が悪かっただけと思いたいです。 ビタミンB6と葉酸を取るとつわりがマシになると聞いたので、さっそくサプリメントを買ってきたのですが、どうなんでしょう。 効いてほしいなあ。 出産までに好きなことをたくさんしておこうと思ったのに、このままじゃ何もできなさそうです。 ふと思ったのですが、これって胎児の自己主張だったりして。「私はちゃんとお腹にいるんだから、ママだって自覚してよね!」と胎児が主張するために、つわりって存在するのかもしれません。 あなたのいうことは十分分かったから、あんまりママをいじめないで……。
2005年11月02日
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「そんなことになったら、この世は滅びかねんぞ!」「静粛に!」 秀信の一喝で、場内は静まり返った。それほどの胆力を秀信は持ち合わせていた。眼鏡のブリッジを上げながら、秀信は言葉を続ける。「ですからこれ以上、勾玉が増える以前に我々弓削家は、クローン製の勾玉の出所を調べ上げなければならないのです。実際、現在、弓削家の陰陽師たちと私の弟であり、巫子である晴信はそれを調査しています。ここにいる凛太郎が弓削家に滞在しているのも、勾玉捜索に何らかの血路を開いてくれるのではないかと考えた次第です」「ふん、こんな小僧に何ができるものか」 信行は鼻を鳴らした。秀信は一瞥を食らわせると、凛太郎に命じた。「凛太郎。彼を呼んでくれないか」「はい、先生」 青ざめていた凛太郎は、深呼吸した。こんなことでくじけていてはいけない。元々自分が蒔いた種でもあるのだから、秀信の期待に応えるためにもしっかりしなければ。力強く、凛太郎はその男の名を呼んだ。「明、来て!」 次の瞬間、まさに魔法のごとく、陽気そうな男が凛太郎の傍らに現れ出た。「遅かったじゃねェか、凛太郎ちゃん。ずいぶん待ったぜ」 あっけに取られる信行たちを明は見渡してから、少し棘のある口ぶりで言った。「おっ、いつぞやのお札オヤジ――信行っていったっけ――もいるじゃねェか。凛太郎、こいつらにひょっとして苛められてなかったか?」 明の言葉は、案外嘘でもなかった。凛太郎は明から目をそらして答える。「そ、そんなことないよ……」「マジで?」 疑わしげな目で、明はキョロキョロと辺りを見回す。あけっぴろげなその態度は、厳粛な部屋の雰囲気を打ち砕いていた。部屋にはどこかなごんだ空気までが流れ始めていた。 秀信が呼びかける。「明殿。自己紹介がてらに、本来の姿をこの方々にお見せいただけないかな?」「うげっ、勘弁してくれよ。俺が普通の人間じゃねェってバレちまうじゃねェかよ」「だいたい、凛太郎さまの命に従って、ここに瞬間移動してきたこと自体が普通の人間の仕業じゃないと思いますが……」「なんか言ったか、陰険眼鏡の家来?」 祥に悪態をつく明を、凛太郎がいさめた。「やめてよ、明。それより先生の言うとおり、皆さんに明の本当の姿をお見せして」「ヤダよ、何でこんな陰険そうなヤツらに……」「頼むよ、明」 ひたと自分を見つめる凛太郎の目に、明はせつなげな笑みを浮かべた。「まっ、お前がそこまで言うなら……ほらよ」 明が指を鳴らすと、その姿は白い閃光に包まれた。 やがて伝説の鬼の美しさに、一同は――信行までもが、ため息をついた。 つづく
2005年11月01日
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