PR
Freepage List
Comments
Keyword Search
十年振りに息子が帰ってきた。娘の格好をして。
「お父さん。聞いて欲しいことがあるんです」しごくまじめに息子は言う。
「なんだ」と私は答えた。言いたいことは分かっている。
そして息子は言った。「私は、いや俺はゲイなんだ......」
息子は元気に派手な衣装を着て、仲間達と踊っていた。仲間はみなゲイだった。
華奢で本物の女性にしか見えないものもいる。筋肉りゅうりゅうでゴツゴツしたものもいる。髭の濃いものも髪の毛が薄いものも。
そして息子はそんな中の中心にいた。そしてみな綺麗だった。外見うんぬんじゃない、性別がどうとかじゃない。素直にそう思うことが出来たのは、彼ら、いや彼女達が一生懸命だからだ。
ダンス大会は終わった。息子のチームは惜しくも二位だった。泣き崩れる息子達。でもそんな息子達が誇らしく思えた。
息子とその仲間達は大会終了後、私のいる応援席へと駆け寄ってきた。思い切り抱きしめてやりたい。本当にそう思った。
みなが一応に泣き崩れていた。勿論息子も。
そんな姿を見て私は涙を拭い、彼等、いや彼女達に精一杯の大声で言った。
「男が女の腐ったみたいに泣くもんじゃねえやい……」