『福島の歴史物語」

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2007.10.21
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 逢瀬町多田野に、『鬼ヶ城』『西鬼ヶ城』『東鬼ヶ城』『鬼ヶ坂』『鬼兜』などと言う鬼の付く地名の所がある。あるとき、鬼穴と称するものがこの鬼の名の付く地区にあるのを知った。私の頭の中では、御霊櫃峠伝説に言う『悪人』と『鬼』と呼ばれる人がつながった。それはどんな穴なのか? 人の住んだ形跡が残されてはいないか? 『郡山の地名』を見てみると、多田野大概帳に『昔この山に鬼神が籠もったとされる岩穴がある。ここは人も寄りつかず岸壁が厳としてそびえ、穴は高い岩の中程にあって二間四面ほどの大きさである』と記されている。なお多田野本神社社伝に、浄土松に住んでいたという盗賊と大蛇を退治したとある。
 葉が落ちて探しやすくなると思われた晩秋の某日、逢瀬町史談会の鈴木忠作氏のご案内を得て、小雨降る中、幾度も谷川を越えながら、沢登りのような逢瀬川源流の谷の道を登った。雨は降るし足元も悪い。私は半分音を上げ、半分迷惑をかけたくないと思って二度ほど諦めようとしたが、それでも歩くこと小一時間。前を塞ぐ小さな滝に行く道を失い、見上げた右の崖・高さ約二十メートルほどの所に、多田野大概帳に記載されているように二間四方ほどの穴の入り口が見えた。もちろんその高さから中を覗き込むことはできない。なんとそのとき鈴木氏がこう言った。
「以前にも探しに来たことはありましたが、分からなくて途中で引き返しました。それで見たのは今日がはじめてです。そのため橋本さんに『もう戻ろう』と言われたけれど、あと少し、あと少しで遂に念願が叶いました。地元でもこれを見た人はほとんどいないので見られてよかったと思います。ご苦労さんでした」
「私も、もし一人で来たら駄目だったでしょう。ありがとうございました。しかし来てはみるものですね。複数の洞窟だと思ったものが一つだったし、人の手にかからない自然のものだということも分かったのですから」
 彼は周辺に転がっている水晶を含んでいる石片に目をやりながらこう言った。
「私は『昔の人がここにある水晶を他人に採られないように鬼が住んでいるから行くな』と言って人を遠ざけたものと思っていました」
「なるほど、しかしそれでは、この穴に住んでいた鬼が、里の人に悪さをしたといういうような伝説はありませんでしたか?」
 彼は即座に返事をした。
「それはありません」
 私はそれを聞きながら考えていた。
 ──なぜ黒い岩の鬼穴とその周辺には見られない、水晶を含んだ白い石片がこの辺りに散らばっているのか? もしかして、この行き止まりの滝の上に水晶の鉱脈があり、大雨のときにでも流れてきたのであろうか?

  16 櫃石
 鬼穴から戻る途中の車の中で、鈴木忠作氏が言った。
「来たついでに、櫃石に寄りましょう」
「えっ、これからですか?」
 晩秋のこの時間、すでに辺りは薄暗くなりはじめていた。峠の頂上に目をやると、薄く掃いたような雪もみえる。
「いや、近いですから」
 躊躇している私にそう言うと間もなく、車は峠の道に入った。つづら折りの山道の八合目辺りか、車を降りて十メートルも入ったところに畳で四畳ほどの大きな櫃石があった。
「これは……、櫃石というより櫃岩ですね。それに私は、これは峠の頂上周辺にあるものとばかり思っていました」
「そうですか、ただこの大きな岩が、なぜ一個だけここにポーンとあるのか、不思議だと思っています。もっともそれだからこそ、櫃石というように特別に名が付けられたのかも知れません」
「そうですね。私の素人目で見ると、この岩は溶岩のようにも思えるのですが、この辺りに火山はなかったですよね」
「ええ、ありません。あえて言えば磐梯山がありますが、猪苗代湖の向こう側ですからね。ここまで飛んで来る訳がないです」
 私は、鉱石の専門家に見てもらえば何らかの発見があるのではあるまいか、などと考えていた。






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最終更新日  2007.11.15 17:24:58
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