しろねこの足跡

しろねこの足跡

2003.12.03
XML
テーマ: 小説日記(233)
カテゴリ: カテゴリ未分類
おじょうさんのお部屋の青い絨毯は、毎日ひき抜かれた黒髪のせいでお掃除が必要でした。

これはおじょうさんの最初のココロの叫びだったのです。
「助けて、おかあさん、助けて、おとうさん」

でも、おかあさんはおじょうさんのココロの叫びではなく目の前の散らかった髪の毛を見て、ひどく怒りました。

「おなたはとても強い子だから、いじめだって乗り越えられるわよ。おとうさんにもそう伝えて大丈夫だからっていっといたから心配ないわよ」

おじょうさんは思ったのです。ずっと自分は強い子だと思っていた、でもそれは本当は違う。おかあさんに強い子であるように振舞わされていたことに。
だって、おかあさんはことあるごとにいってたんですもの。

「体が弱いから、せめてココロは弱くならないようにしたいと思っていた」

でも、もうしっかりした強い子を物心ついたときから振舞ってきたおじょうさんには、いまさら他の自分は表現できないのでした。


そう、誰もがとおる思春期の悩みをいじめと家族の葛藤によってきづかされたおじょうさんには、だれにも相談できる相手がいないのでした。

もう、しろはおじょうさんの動揺にはついていけなくなっていました。
だって、ネコはそんなことで悩むことはなかったからです。

しろの悩みは、北国にはなればなれになったシマのことぐらいでした。でもきっとネコの遺伝プログラムによって都会に素敵なオスネコが現れたら、しろはきっとシマのことを忘れてしまいます。
悲しいけど、ネコは人間ほど強くない。自分の仔猫を残すためにしくまれた、合理的で残酷な本能に従うしかないのです。

しろは本能で動けない、人間を、おじょうさんをかわいそうとも思いました。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2003.12.04 13:10:30
コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

Keyword Search

▼キーワード検索

Favorite Blog

ココロ ニ アカリ… たぬき1616さん
Nonsense Story ふーたろー5932さん
一期一会 子閻魔116さん

Comments

ゆう@ とうとう出ちゃったね うわさは本当だったよ。 http://himitsu.…
たぬき1616 @ Re:日記の一時閉鎖のおしらせ(09/19) しろねこさんが幸せそうでなによりです。 …
ふーたろー5932 @ Re:日記の一時閉鎖のおしらせ(09/19) お久しぶりです。 問題があるままでも、…
ふーたろー5932 @ Re:乱反射2(06/28) え? 家に溺死者!?( ̄□ ̄;)ギョッ と…
しろねこ32245 @ Re[1]:乱反射1(06/26) ふーたろー5932さん ありがとうござい…

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: