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第54話「白髪の少年」

白鳳九(ハクホウキュウ)は傷心のまま青丘に戻った。
すると狐狸洞で待っていた折顔(セツガン)が現れる。
「やっと戻ったな、東華(トウカ)に会えたのか?」
「…いくら待っても…来なかった…なぜ帝君は私を騙したの?祝宴をすっぽかすなんて…」
その時、折顔はふと鳳九の異変に気付いて脈診した。
やはり思った通り、鳳九は身ごもっている。
鳳九は自分のお腹に東華帝君の骨肉が宿ったと聞いて呆然としたが、ついにこらえ切れず号泣した。


一方、魔尊・緲落(ビョウラク)は血涙(ケツルイ)を手に入れ、ついに封印を破っていた。
そこで禁忌の地へ駆けつけ、拘束されていた聶初寅(ジョウショイン)を解放すると、しばし籠って体内の邪気を練ると伝える。
「私が籠っている間、魔族はお前が束ねろ」
すると緲落は聶初寅に力を授けて消えた。

その頃、碧海蒼霊(ヘキカイソウレイ)に駆けつけた燕池悟(エンチゴ)は偶然、連宋(レンソウ)と出くわしていた。
連宋はなぜか誰もいないと教えたが、そこへふらふらになった重霖(チョウリン)が現れる。
「梵音谷(ボンオンコク)の入り口へ…」
3人は即刻、移動すると、東華帝君がひとりで結界を守っていた。
「緲落が出てきた…」
そこで東華帝君は連宋に結界を任せて谷へ向かう。
燕池悟は魔尊が結界を破ったと知り、困惑した。

すると重霖は赤魔君が亡くなったと伝えて意識を失った。
激昂した燕池悟は剣を招喚して敵討ちに向かおうとしたが、連宋に落ち着けと止められる。
「梵音谷が開けば四海八荒の危機となる!まずは結界を守れ!血気に逸るな!」
燕池悟はふと喣暘からも同じ戒めを受けたことを思い出し、今は連宋と共に結界を守ることにした。

成玉元君(セイギョクゲンクン)が白鳳九を心配して狐狸洞にやって来た。

しかし鳳九は東華帝君と姫蘅の仲を完全に誤解していた。
すると成玉は連宋から事情を聞き出してみると言って飛び出して行ってしまう。

梵音谷には邪気が充満していた。
東華帝君の身体は赤金血(セキキンケツ)で守られていたが、妙義淵は十悪蓮花境(ジュウアクレンゲキョウ)より浄化が難しいと分かる。
「一刻も早く緲落を探し出して邪気ともども消さねば…」
一方、魔族の統領となった聶初寅は緲落から授かった力を振りかざし、口答えする者をことごとく排除していた。



白鳳九が戻って3日、狐狸洞に折顔から文と一緒に流産を防ぐ安泰薬と堕胎薬が届いた。
…どちらを選ぼうと秘密は守る…
すると鳳九は迷わず巨大な安泰薬を口に放り込み、九天へ出かけた。
しかし東華帝君はまだ太晨宮に戻っていない。
鳳九はしばし宮殿をめぐりながら、霊狐として東華帝君に寵愛された日々を懐かしんだ。
…帝君は私だけでなく姫蘅にも情がある
…阿蘭若(アランジャク)の夢の時は私を選んだけれど、姫蘅の命が危うくなると私を捨てた
…私に顔向けできないから会いに来ないのね
…私は帝君との愛を大切にして守りたかった、でももう疲れたわ、私は頑張った
…帝君が来れば何を言っても信じたのに、結局、来てくれなかった
…身ごもった私は青丘にはいられない、帝君、これからの道は独りで歩みます

連宋と燕池悟の体力が限界に来た頃、東華帝君が浄化を諦めて入り口に戻って来た。
このままでは梵音谷が開く日に邪気が漏れるため、神器を使って梵音谷を封印するしかない。
その時、東華帝君はふと誰が白鳳九の所へ行ってくれたのか聞いた。
すると燕池悟がまだ鳳九へ伝えていなかったと思い出す。
東華帝君は鳳九を心配して動揺したが、その場で崩れ落ちるように膝をつき、喀血した。

白鳳九は心の整理がついた。
そこで縁啓(エンケイ)台を訪ね、神仙として生まれ変わる葉青緹(ヨウセイテイ)に修為を授ける。
「目覚めたら修行を指導してあげて、チンティが神仙になる時、私が九天の瑶池(ヨウチ)で清めるわ」
鳳九は謝孤栦(シャコシュウ)に人間界へ修行に行くと伝えた。
本来、青丘の掟では即位したら人間界で修練するが、色々あって遅れていたという。
「札を渡しておく、もしチンティが神仙になる時、私が戻っていなかったら札で知らせてね」

人間界に降りた白鳳九がひとりで大きなお腹を抱えていた頃、東華帝君たちは九天に戻っていた。
連宋から事情を聞いた成玉は帝君と鳳九が行き違っただけだと分かったが、すでに鳳九は黙って人間界へ行ってしまったという。
その頃、重霖は比翼鳥(ヒヨクチョウ)族の郡主・潔緑(ケツリョク)を訪ねていた。
比翼鳥族が世を守るため犠牲となり、心を痛めた帝君が比翼鳥族の落ち着き先を探しておいたという。
しかし潔緑は王族の唯一の生き残りとして女王となった今、天族と運命を共にすると決めた。
ただし年寄りと子供は避難させたいという。
重霖は比翼鳥族の覚悟を必ず帝君に伝えると安心させ、最後に燕魔君からの言付けを伝えた。
「緲落の一件が解決したら、己の領地に比翼鳥族を住まわせたいと…」
潔緑は思わず微笑んだが、魔界は自分たちに合わないため、兄が憧れていた青丘に連れて行って欲しいと頼んだ。
…兄上、まだ心残りはある?
…兄上は愛が実らずとも悔いなく生きた
…梵音谷の悲劇は繰り返さない
…私はこれから堂々たる女王になる!←(๑•̀ㅂ•́)و✧海賊王になるっ!

白鳳九は人間界で店を開きながら東華帝君の息子・滾滾(コンコン)を立派に育てていた。
「にゃんちーん!ただいま~!」
「滾滾、お帰りなさいっ!…よお!また白髪だわ」
すると鳳九は息子の白髪をすぐ黒く染めることにした。
滾滾は私塾の友だちの髪はみんな黒いと話し、なぜ自分の髪だけ白いのか分からない。
そんな時は決まって母は神仙だから仕方がないと答え、人間界の掟に従っていると誤魔化した。

連宋は白鳳九を心配して十里桃林を訪ねた。
そこで白真(ハクシン)は鳳九のある一面を教える。
実は料理の得意な鳳九が麒麟株(キリンシュ)の料理だけは作らなかった。
「あれは西天梵境(サイテンボンキョウ)でしか育たぬ
 鳳九は昔、好物で青丘で育てようと300年もの時を費やした
 学問まで怠けては父親に打たれる始末だ
 しかし心血を注いでも育たず、結局、精魂尽き果て全部、捨ててしまった
 それ以来、麒麟株の料理を作るどころか口にもしていない」
折顔(セツガン)も確かに鳳九は意地を張ると誰より強情だと認めた。
「白浅(ハクセン)は淡白だが鳳九に比べれば情け深い、あの子は己の非情さに気づいておらん
 己は情に厚いと思い込んでいるが、麒麟株を口にせぬことも忘れておる」
連宋はさながら東華帝君は捨てられた麒麟株かとぼやいたが、東華帝君には天地の守り神ゆえの苦悩があるとかばった。
すると白真は鳳九がどこで修練しようと家族は干渉しないと教え、行き先を知らないという。
東華帝君なら鳳九の居場所を探す術があるはずだが、連宋は鳳九の無事を願うからこそ会いに行かないのだと説明した。

一方、人間界の白鳳九は再び居を移すことにした。
滾滾は引っ越せば友だちと遊べなくなると訴えたが、鳳九は神仙の外見が長いこと変わらないため、同じ場所で育てることができないと説明する。
「分かりました、僕はにゃんちんが行く所へついていきましゅ」
滾滾は物分かりの良い子供だった。

縁啓台では謝孤栦が目覚めた葉青緹に修行を指導していた。
葉青緹は自分が人間界で白鳳九の命を救ったため、鳳九が恩返しとして仙体と修為の半分を授けてくれたと知る。
しかし記憶がなく、自分と白鳳九がどんな関係だったのか分からなかった。
すると謝孤栦は全てを忘れ去るのも悪くないと話し、思い出せば悩みが増えるという。

市中の店を引き払い、山中の農村に越してきた白鳳九と滾滾。
そんなある日、うたた寝していた白鳳九は東華帝君が緲落との戦いで破れる夢を見て飛び起きる。
なぜこんな夢を見たのか、東華帝君なら今頃、太晨宮で釣り糸を垂れているに違いない。
しかし胸騒ぎがする鳳九はふと空を見上げた。

白鳳九が庭で乾物を作っていると、滾滾が慌てて家に戻って来た。
「娘亲!娘亲!滾滾にも爹爹(ディエディエ)はいましゅか?」
「いいえ、あなたの親はにゃんちんだけよ?」
「でも友だちにはみんなでぃえでぃえがいましゅ!」
すると母はまた神仙だからだと答え、神仙には母親しかいない場合もあるという。
しかし聡明な滾滾はとうに母の矛盾に気づいていた。
「にゃんちん、ちゃんと説明できないから″神仙″を言い訳に使うんでしゅか?」
「ゥッ…勉強が大変でいい子じゃなくなったわね
 じゃあ明日はにゃんちんと山へ行って精気をいっぱい吸いましょう?」
「にゃんちん、″ご飯を抜く″ってことでしゅか?いつもそうやって脅しましゅね」
滾滾はふてくされて家に入ってしまう。

一方、九天では司命、成玉、連宋の3人が必死に梵音谷を封印できる神器を調べていた。
すると連宋がついに邪気を封じる方法を発見する。
しかしその書物を見た成玉は言葉を失った。

連宋は太晨宮を訪ね、満身創痍の東華帝君を引き止めた。
「もう少し待っては?
 今、夜華(ヤカ)と白浅を探していますし、数日後には折顔や白真上神が九天に来ます」
「梵音谷がじき開くゆえ、もう待てぬ」
連宋は星光結界と碧海蒼霊を使えば東華帝君に危険が及ぶと反対したが、東華帝君は譲らなかった。
「すでに準備は万全だ…ただ…」
「ただ何です?!」
「…小白に会いたい」



その夜、白鳳九が滾滾に夕餉を食べさせようとしていた時、突然、謝孤栦から札が届いた。
滾滾は空中に浮かぶ札に驚き、初めて見る仙術に目を輝かせる。
「にゃんちん、何かあったんでしゅか?」
「滾滾…仙界に戻るわよ」
一方、魔界では魔尊への生贄を拒み、各一族が門を閉ざしていた。
憤慨した聶初寅は側近の精気まで吸い取り、ついに自分の配下を生贄にすると決める。
しかし燕池悟が現れ、九死に一生を得た魔兵たちは一斉に逃げ出した。
「聶初寅、喣暘の仇を討ち、今日をお前の命日にする!」
「…今日、お前を喣暘のもとに送ってやろう」

白鳳九は天界へ戻り、縁啓台に駆けつけた。
謝孤栦の話では明日、東華帝君が新しい神仙に位を授けるが、その後、九天の瑶池を永遠に封印するため、縁によって仙籍に入れる者は2度といなくなるという。
「帝君がこの機にそなたに会いたいそうだ」
「…私を九天に来させるため瑶池の封印を?慈悲心に欠けるやり方だわ」
「その子は…」
謝孤栦は鳳九が連れて来た白髪の少年が東華帝君との息子だと知り、なぜ鳳九が人間界に降ったのか分かった。

「私は九天へ行く、何日かこの子を預かって」
「鳳九殿下、ご安心を…」
「にゃんちん、滾滾を連れて行ってくれないの?これまでにゃんちんと離れたことがありましぇん」
「滾滾、良い子ね、にゃんちんは大切な用があるの、でも用が済んだらすぐ戻るわ」
鳳九は滾滾と指切りすると、謝孤栦に託して出かけて行った。

魔界では聶初寅と燕池悟の一騎討ちとなった。
しかし聶初寅はいつの間にか凄まじい力を身につけ、燕池悟は思わず膝をつく。
実は聶初寅は東華と緲落の共倒れを期待し、あわよくば自分が魔尊になって魔族を再興しようと考えていた。
「小燕、これが最後の機会だ、私に服従すればお前の一族を守る…
 さもなくば今日、お前の命をもらう」
「ふっ…ぶはははは~!お前はただの傀儡だ…未来などないんだよ!」
その時、籠っていた緲落が姿を現した。
「聶初寅…欲をかけば結末は悲惨だぞ?」
「魔尊…」
すると緲落は聶初寅の精気を奪い始めた。
焦った聶初寅は命乞いしたが、燕池悟が聶初寅を始末してくれたら東華帝君の秘密を教えると叫ぶ。
こうして聶初寅は呆気なく離散した。

つづく


(  ̄꒳ ̄)9ちゃん…ゼロか100しかないのね~
でも女の人って切る時はバッサリだよね?…ってえ?私だけ?(´゚艸゚)∴ブッ





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最終更新日  2021.01.28 12:18:21
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