2009年02月14日
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カテゴリ: BALLET
ハンブルクバレエ日本公演 2009

ノイマイヤー振付「人魚姫」その2

2009年2月12日 東京・渋谷・NHKホール

※内容を書きますのでこれから初見の方はご注意ください。

演出・振付・舞台装置・照明・衣裳:ジョン・ノイマイヤー
音楽:レーラ・アウエルバッハ
指揮:サイモン・ヒューウェット
ヴァイオリン:アントン・バラコフスキー
テルミン:カロリーナ・エイク


キャスト:
詩人:イヴァン・ウルバン
人魚姫/詩人の創造物:シルヴィア・アッツォーニ
エドヴァート/王子:カーステン・ユング
ヘンリエッテ/王女:エレーヌ・ブーシェ
海の魔法使い:オットー・ブベニチェク

第1幕

幕が上がる前、舞台中央に大きな貝殻。
白いネオンチューブが1本。これは波頭、海面を示すもの。

第1場:プロローグ:船上
詩人、ヘンリエッテ、エドヴァート。


絵画のような情景。白い壁が四角に切り取られている。
シルクハットをかぶった男性が椅子の上に乗って文字がニ行書かれたその壁に張り付いている。微動だにしない。
ここは船の甲板。船で結婚式を上げている青年将校(エドヴァルト)(カーステン・ユング)。とのその友達。
花嫁(エレーヌ・ブーシェ)にキスする青年将校。
知り合いの作家(アンデルセン)(イヴァン・ウルバン)はそんな2人を見つめている。

絶望した作家は海の中に飛び込む。

第2場/海底
魔法の影:ピーター・ディングル マティアス・イアコニアンニ ステファノ・パルミジアーノ
人魚姫の姉妹:マリッサ・ジメネ ユンス・パク マリア・バラノヴァ ステファニー・ミンラー パトリシア・ティキー ディナ・ザリポヴァ
海:アメリー・ベルテ オデッテ・ボルヒェート スカイ・ハリソン ユンス・パク ルチア・ソラーリ ミヤナ・フラチャリッチ マリアナ・ザノット リディア・ペテキニオ マウデ・アンドレイ ハナ・コーツ シルヴァノ・バローネ オルカン・ダン ウラジミール・ハイリアン エドヴィン・レヴァツォフ ジョエル・スモール トーマス・シュトゥーマン ブラウリオ・アルヴァレツ アルバン・ピネット

海底に落ちて行った作家は海底の人魚たちの世界を目にする。
人魚の男女のカップルたち。
人魚姫(シルヴィア・アッツォーニ)は白い化粧に顔には青いライン。
うろこを思わせる青と緑のアッパー(これはあとで帯のようにぐるぐる巻いてあるもので下の袴とつながっているとわかる)。
下半身は袴の裾の長いの。能で履くような引きずるもの。
3人の黒子(魔法の影)がついていて人魚姫が海中を泳ぐときにサポートする。
明らかに日本の伝統芸能のお能と人形浄瑠璃を取り込んでいる。

人魚姫の表情はいっしゅ異様。
動物的。目がぎらぎらしていて、獲物を探している感じ。
好奇心旺盛な王女。かわいらしさのかけらもない。

エドヴァートとヘンリエッテが結婚式の衣装で上手から出てくる。詩人は一番下手の手前に座り込んでいる。詩人は常にメモ帳(詩や創作を書きつけている)を手にしている。こういうことからこの場面は詩人が絶望の末に見ている悪夢もしくは妄想だとわかる。

第3場/船内
海軍士官:アルセン・メグラビアン ベン・シトリト ヨハン・ステグリ コンスタンティン・ツェリコフ キラン・ウエスト
水兵:ヨロスラフ・イヴァネンコ 草野ヨウスケ レナート・ラートケ アレクサンダー・トラッシュ アルバン・ピネット

船上。
甲板では王子の友達たちが踊っている。上半身裸の水兵たち。
このシーンで私は「ベニスに死す」キタ~!と思ってしまった。
ヨハン・ステグリも水兵の一人として美しい踊りを見せていた。
水兵たちは掛け声をかける。
「ああ~!!」と叫ぶ。
思わず詩人も「あ~!」と叫んで口を押さえる。
詩人の若者たちへの憧れと自己同一化(とそれを否定する羞恥心)が示される。
やっぱり「ベニスに死す」に似ている。

下手の奥に階段が作ってある。船の甲板なのだ。

これも詩人が回想(妄想)している昔のシーンなのだ。
構造としては「眠りの森の美女」で現代の王子が過去の世界に入っていって覗き見しているのに似ている。

青年将校(王子)は上半身だけ白の軍服。足は素足。妙にエロティックな筋肉質の脚が剥き出しになっている。彼は楽しそうにゴルフの練習をしている。彼はとても現実世界のエドヴァルトに似ている。

ゴルフ・ボールが海に飛び込む。
王子は何のためらいもなく海に飛び込む。

第4場/海の中

人魚姫はそんな彼を見て興味を感じいっしょに遊ぶ。
王子はまったく気付かない。
王子の耳に貝殻をあてがい海鳴りを聴かせる。

第5場/嵐

しかしそんな姿を見た海の悪魔はいじわるをする。
海に嵐をおこし、船を転覆させる。

船は沈んでいき、王子は溺れる。
人魚姫は王子を導き海岸に連れていく。

第6場/嵐が去った後の静けさ

人魚姫は彼に間接キスする。詩人もいる。

第7場/浜・教会の近く

王女の学友:マヨ・アリイ フロレンシア・チネラット マジソン・キースラー タイシア・ムラトーレ 大石裕香
修道女:カトリーヌ・デュモン パトリシア・ティキー 

海岸では修道女が2人、生徒を連れて散歩に来ている。
女学生の中の一人、王女(ヘンリエッテによく似ている)は倒れている男性に興味を感じる。
ひとりで行進の列を抜け出して介抱する。
目を覚ます王子。
しかし人魚姫と詩人はこの様子をじっと見ていた。

第8場/海底

人魚姫と詩人
人魚はグレーのカトリックの修道院の学校の制服をいつの間にか持っている。
「これを着たいわ。」

第9場/変身

人魚姫は王子に関心を持ってもらうため人間になりたいと海の悪魔に訴える。
海の悪魔(オットー・ブベニチェック)は手荒な作業を開始する。
ここが第1幕ではもっとも衝撃的なシーンである。
巻きつけてある袴を脱がし、さらに下の青いタイツも脱がす。
肌色のレオタードだけになった人魚姫は哀れそのもの。
歩こうとしても痛みに悲鳴を上げる。

第10場/浜

王子が彼女を拾い船上に連れていく。
船上の大人のカップルたち。

第11場/船内

乗客:オデッテ・ボルヒェート カトリーヌ・デュモン スカイ・ハリソン レスリー・ヘイルマン ルチア・ソラーリ ミヤナ・フラチャリッチ マリアナ・ザノット
 シルヴァノ・バローネ オルカン・ダン ダリオ・フランコーニ ウラジミール・ハイリアン ヨロスラフ・イヴァネンコ 草野ヨウスケ エドヴィン・レヴァツォフ
給仕:レナート・ラートケ トーマス・シュトゥーマン ブラウリオ・アルヴァレツ アルバン・ピネット

歩けない人魚姫は車いすに乗せられる。
人魚姫は大人の女性としては扱われない。ちょっとおかしい子。知能の足りない子として扱われる。彼女は水兵の服を着せられ、水兵たちと踊る。
まるでETみたいに好奇心を持って皆を見ているが彼女には理解できないことだらけ。
この世界では彼女は異質の存在。道化、なのである。
王子のためにすべてを捨てた彼女に与えられたのは醜さと王子の友情、周囲の侮蔑と憐みだけだった。
王子は王女に告白し、キスする。
目前に見せつけられて苦悩する人魚姫。

めちゃハンサムなダリオ・フランコーニ。くらくらするぐらい。なんとなく西島さんに似ている。エドヴィン・レヴァツォフも背が高く金髪なのでめっちゃ目立っていた。

第2幕
第12場/人魚姫の部屋

人魚姫は箱に入っている。
四角い部屋の中にいるのだが、彼女には息苦しい。
彼女には広い果てしのない世界しか合わない。
彼女はほとんど発狂している。
ニジンスキーに出てきたペトルーシュカのように、足をアン・ドゥオールとは逆の形に交差させて踊り、苦悩を表現する。

第13場/王子の宮殿―結婚式

結婚式の招待客:オデッテ・ボルヒェート カトリーヌ・デュモン スカイ・ハリソン レスリー・ヘイルマン ルチア・ソラーリ ミヤナ・フラチャリッチ マリアナ・ザノット
シルヴァノ・バローネ オルカン・ダン ダリオ・フランコーニ ウラジミール・ハイリアン ヨロスラフ・イヴァネンコ 草野ヨウスケ エドヴィン・レヴァツォフ

ブライドメイド:大石裕香 マヨ・アリイ フロレンシア・チネラット マジソン・キースラー タイシア・ムラトーレ  

結婚パーティで踊る人々。
水兵たちのダンス。
人魚姫はピンクのブライド・メイドの服を着せられている
不格好な人魚姫。
背を曲げて猫背でよたよたと歩く小さな不細工な女。

愛を誓う王子とヘンリエッタ。
人魚姫はふらふらと自分の持ち場を離れて王子に近づいていく。
他のブライドメイドに連れ戻される。

このシーンで出てくる赤毛の人魚姫の妹のダンスがすごい。大柄で足がピキャーと上がる。ブベニチェックと踊ってたと思う。

このままでは王子は結婚してしまう!
そうじゃない!
人魚姫は貝殻を王子の耳にあてがう。
王子は海鳴りを聴く。思い出しかける。
海でおぼれた時助けてくれたのは…?

しかし思い出す前に現実に帰る。
王子は笑いながら花嫁と出ていく。
人魚姫の絶望。

海の悪魔が現れて、彼女にナイフを渡す。
「これで王子を殺せばお前は海に帰れるんだよ」
いやいやする人魚姫。
しかし何度も押しつける悪魔。

王子と二人きりになった人魚姫は王子に不器用に近づくとナイフを振り上げる。
しかしそのまえに王子にぶつかってナイフを落としてしまう。
王子には冗談としか思わない。
これで何するの?
無邪気にナイフを振り回し自分に刺す真似までして死んだ振りをする。
人魚姫は笑う気分じゃない。
人魚姫は真剣な瞳。
王子は人魚姫にキスしそうになる。

しかし王子はまた冗談にして出ていく。

テルミンの音楽が不気味に奇妙に、神秘的に響く。
人魚は突如発狂する。トウ・シューズの結び目を苦労してほどき袖に投げ入れる。
ピンクの服を脱ぎ捨てる。汚いもののように。
人魚姫は人魚のかっこうをする。尾を立てようとする。
でもひれがない!
不格好な足しかない。
もう優雅に踊れない。
絶望。
人魚姫は倒れこむ。
眼は虚ろ。
彼女はばったり倒れて死んだのかと思う。
箱の奥から詩人が現れる。

第14場/エピローグ:別の世界

詩人は初めて上半身裸になる。
詩人は人魚姫と踊る。
人魚姫の箱のような部屋のセットに二人でいると、
シャンデリアが上に上がり、大きな天井が下りてくる。

天上に無数の星が輝きだす。
人魚姫と詩人は天界に上がっていく

全幕了。





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最終更新日  2009年02月16日 21時09分23秒
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