2009年09月20日
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ヨナス・カウフマンとセミヨン・ビシコフ BBC[In Tunes]のホスト、ショーン・ラファティとヴェルディ「ドン・カルロ」について語る

just day before the opening night

2009年9月14日

Q: 舞台でドン・カルロをやるのは初めてですか?コヴェントガーデンでは?

JK: ええっと… みなさん、こんにちは! …5幕版は初めてですね。(ROHのドンカルロはイタリア語の5幕版という変則スタイル)

Q: そう4幕版もありますからね

JK: 4幕版はいろいろカットされているから今聴いたアリアも4幕版のものなんです。思い出がフラッシュバックのように甦ってくるシーンです。短い間だけどすてきだったエリザベッタとの思い出を振り返ってるんです。そのエリザベッタとのシーンは(4幕ではカットされていたからなかったけど)今回はやるんですよ!

Q: ドン・カルロは美しいエリザベッタと婚約していたが、結局父王に奪われてしまった。それが悲劇の始まりだった。

JK: そうです。結婚するはずだった2人は(偶然)美しいフォンテンブローの森で出会うんです。4幕版ではカットされているシーンです。2人はたちまち恋に落ちる。エリザベッタはカルロが自分の許婚とは知らなかったのに。言ってみればたった5分間の幸せな時です。そしたら悪い報せが届く。(笑)



JK: そのとおりです。特に興味深いのはテノールだけじゃなくてね、ほかの役でもかなりのどに負担を強いる曲ですよ。フランスのオペラみたいだ。というのも、もともとこの作品はパリで書かれたヴァージョンですからね。ある種の声を最初から最後までずっと維持しなくっちゃいけない。登場人物が幸せだろうがどん底だろうが歌い手は役そのものの感情になりきらなくっちゃいけないし、音楽が非常に難しくて低い音域から高い音域を同時に出さなくてはいけないし、弱音と強音も同時に出さなくてはいけない。でも僕は好きです。自分の声のいろんな側面を見せることができるからです。

Q: そうですよねヴェルディはこの作品に輝かしい声を求めていたんです。指揮者のビチコフさんは昨年のワーグナーのローエングリンで大変な成功をおさめました。私の思うにヴェルディはこの作品でワーグナーの薫陶を受けているといえるのでは?

SB: はっはっは。それは本当です。フォンテンブローの最初のシーンからもうヴェルディがベル・カント・スタイルを排しているのがわかるはずです。そしてどんどん進化を重ねて巨大な交響的展開を遂げていきます。これはとっても「ワーグナー的」な言ってみれば「止めない」演奏なんですね。だから芝居も止まらないし、登場人物それぞれの避けがたい暗い運命も必然的になってくるのです。逃げられない、変えられない運命、宿命に向かって突き進むのです。

Q: 本当に感動的な音楽ですよね。批評家は??と言っているようですが。

SB: ??

Q: あなたはこのドン・カルロをヴェルディのどういう作品と位置付けますか?

SB: 「ドン・カルロ」は私が思うに非常に稀有な傑作です。ヴェルディの作品の中でだけではなく、オペラ作品全体の中でです。この作品は「ボリス・ゴドノフ」やワーグナーの「リング」に匹敵します。人間の存在そのものについて語っている作品だからです。政治における人間の矛盾や相克が国家と教会の対立という形で描かれていますし、登場人物はそれぞれの人間関係に悩みを抱えています。義務と名誉の対立、本能と愛、大義の対立が語られます。だから演奏するのは難しいです。「椿姫」のような単なる個人的ドラマではなく、描いている世界が幅広いからです。

Q: ここで四重唱を聴いてみたいのですが、アッバードがスカラ座で録音したものなんですけど。エリザベッタはカティア・リッチャレッリです。エボリ公女がフィリッポ二世にエリザベッタがカルロの肖像画を持っていると告げ口します。王は怒ります。そのあとの4分間の重唱。これはオペラ的勝利と言っていいぐらいのもので登場人物の人間関係の軋轢がすべて描かれているのです。

≪音楽≫
4幕のフィリッポ、ロドリーゴ、エボリ、エリザベッタの四重唱(フランス語版)

Q: 4幕版と5幕版、イタリア語版とフランス語版を混同されがちですよね。



Q: 本当ですね。カルロが失ったものが何か、わかるのですものね。ドラマをもっと緊張感のある迫力のあるものとして感じられますよね。
ドン・カルロは大変な難役でしょうか?

JK: う~~む。何をやるにも簡単てことはないですから。でもカルロはやっぱり大変な役ですよ。でも難役をやることで今までは持ってなかった新たな力や新たな可能性を得られます。だからひとつオペラをやるたびに一歩一歩上がっていくことができると思います。大変でも終わってみれば成長してるかなと。

Q: えぇ。それにイタリア語とフランス語って違うでしょう。イタリア語の方がフランス語のよりやりやすいですか?私が思うにイタリア語は感情的に表出しやすいからやりやすいかなと思うんですけど。

JK: それはなんとも言えませんね。僕が言えるのは、フランス語とイタリア語とどっちがいいかと聞かれても返答するのは難しいってことです。どちらも抑揚があるし、ポジティブな感じと一方は~な感じ。でも作曲者によると思いますね。ヴェルディはパリに住んでいたとはいえイタリア人だから。ドンカルロはイタリアのオペラですよ。とどのつまり。イタリア語で歌うとやっぱり「ヴェルディ的」に感じますからね。多分ヴェルディ自身もカットしてるんだけど、中盤にバレエシーンがありますよね?



JK: そうなんですよ!(笑い出す)国王のお慰みのためにね。それに不幸なことに5幕の最後にほんとはテノールのアリアがあったはずなのに、ヴェルディはそれをやめてエリザベッタのアリアに変えちゃったんですよ。だからドンカルロではテノールのアリアの出番は少ないんです(笑)。

Q: そのうちビシコフさんが改訂してテノールのアリアを戻してくれるんじゃないですか?

SB: はっはっは! まさか。

Q: ありえない?

SB: ないよ。

Q: ーーのためにでも?

SB: ヴェルディに手を入れるなんてことは絶対しないよ。

Q: (JKに)コヴェントガーデンの第1シーズンですが、あなたはいろんなところで歌って大変お忙しい。こんな大役をどうやってさらってるんです?

JK: ええ~~~っと。大変でもないよ。だって新しいことをやるのは楽しいことですし。気持ちを固く持ってだね。リハーサルしないのが肝要かな。
初役をやる時にはよくないことだけどね。今回は初役じゃないし、フォンテンブローのシーン以外は経験済みだ。このシーンがあるおかげですごく演じやすい。だって4幕版だとお客さんが見るのはいきなりのカルロの鬱々とした悲嘆からなんだよ。母親に恋しちゃったって告白したって客は共感してくれないよね。でも5幕版でカルロの喜びや自由や幸福感を第1幕で見ていればたとえそれが短い時間でも、何が起こったのか知ることができる。だから5幕版をやるのが楽しみなんです。すごく筋が通っている。だから今後もやるとしたら5幕版だな。4幕版じゃなくて。

Q: すごくドラマティックなお話ですからね。次は最後の方のアリアを、幻のテノールのアリアじゃなくて申し訳ないんですが(笑)。
エリザベッタはカール5世の墓前で悲しみを天に導いてくださいと祈る。そしたら人々が登場した後、実際にカール5世が現われてカルロを抱いて連れ去ってしまうんです。究極のところで神の存在が示されるんです。すごいシーンですよね。

SB: 最終幕のカルロとエリザベッタの二重唱は、彼らが現在の自分と決別し、次の段階に進むことを歌っています。フォンテンブローのシーン以来初めて彼らの二重唱に「調和」が生まれるのです。人生において得た経験からそうなっているので音楽にもそれが現われてまるで音楽が空中を漂っているような感じになります。これは普通じゃない感覚です。そしてこの作品が終わる時、カルロの魂が召される。これが終着点です。この瞬間すべてが救済されるのです。

音楽≫
エリザベッタのアリア
この世の虚しさを知る神よ
フランス語版

出演シーン終了





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最終更新日  2009年09月21日 19時57分54秒


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