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前回のエントリーのつづきです。真夏の日中に通常便で送られてきたフーリエのボトルたちに(予想したほどでなかったとはいえ)劣化が見られた事について、私は二つの可能性を書きました。1.蝋封の密閉能力を超えて空気が侵入してきた。2.外部からの酸素の流入がなくてもワインは高温になれば劣化する。もうひとつ3番目の可能性があります。「shuzの味覚やテイスティング能力があてにならなかった。」というものですが、とりえあずいったん棚上げにしておきます。でもって、それぞれの可能性についての反論(もしくは擁護)のご意見をいただきました。正直なところ、どちらが正しいかわからなくなってきているので、両方を紹介したいと思います。まずひとつは、「蝋封は通気性を遮断するのが目的であり、ワインが激しく膨張しても耐えることを想定したものではないはずので、そんなに圧力に耐えられるものではないか」というご意見。あらためてワインが噴くメカニズムについて改めて検索してみたところ、Yahoo!知恵袋にまさにそのものずばりの質問がありました。物理学のコーナーで質問しているのがミソですね。http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1213027962詳しく解説が出ていますが、この数字を我が家のフーリエの場合にあてはめて計算したいと思います。気温は車内で最大で50度まで上がったとします。通常の水の膨張率(20度)をあてはめて計算すると、750ml ×0.00021×(50−15)=5.51ml これが近似値。もう少し厳密に、水の温度ごとの密度の数字をあてはめて計算すると、750ml × 0.999099[g/cm3]@15度/0.98805[g/cm3]@50度 = 758.38mlなんと8mlも液体が膨張することになります。上の簡易計算とはかなり開きがでました。まあいずれにしても5〜8mlというレベルの液体膨張があるということですね。一方で、ヘッドスペースの空気も同様に膨張しようとする、というか気体の方がはるかに膨張率は大きいわけですが、せりだしてくる液体の力で膨張できず、結果的に中の圧力が高まります。上のYahoo知恵袋では15気圧なんていう試算も出ています。コルクがせりあがったりするわけですね。(高温によるガラス瓶の膨張というファクターもあるそうですが、そちらは無視してもよいそうです。)もっとも今回のフーリエの場合はそれ以前の問題でした。ワイン液面がコルク下20mmの場合、きた産業さんのレポートによれば、ヘッドスペースのエア容積は約6cc。ではフーリエの場合はどうかとセラーの11フーリエたちのボトルを調べてみたら、隙間は平均5mmもありませんでした。とりあえずここでは5mmとすると、単純計算で容積は4分の1で2ml程度ということになりますよ。。ヘッドスペースが2mlの余裕しかないのに、5〜8mlの液体が膨張する。ということは熱膨張により容量の増えたワインは、ビン内の空気を追い出し、さらに行き場がなくなって膨大な圧力が発生する。その圧力が、コルクとビンの隙間から、ワインをしみださせた。なお、このとき送られてきたボトルは「横置き」にされていました。ということはこの空気はコルクとは接しておらずに横にしたボトル上部に残され、出て行くことができずに瓶内に残っていたことになります。よって膨張した5〜8mlの液体の大部分がコルクを通じて外にせり出そうとされたことになります。その結果、液体は蝋封の外までは染出しませんでしたが、コルクの真上までビッショリと濡れ、蝋内で「噴いた」状態になっていました。8mlもの液体が蝋とボトルやコルクの間に流れ出たのか、それとも瓶内が高圧になったまま、かなりの液体がとどまったのかは定かではありませんが、少なくとも蝋封の内側には相当の圧力が加わったはずで、このときに空気が侵入していなかったのかは確証が持てません。。また、そこから15度以下のセラーの温度に戻したときにはどうでしょうか?蝋封のシール能力が完璧なら、瓶の内部はかなりの陰圧になるということになりますが…。ボトルを立てて保存していた場合、噴くまでにいたらなくても、前述のとおり、瓶内のヘッドスペースの圧力は15気圧なんてことにもなりえるようなので、コルクがせり上がってしまいます。こういうとき、蝋封の場合は、蝋が割れてしまうか、あるいは伸縮するのでしょうかね?(その点、スクリューキャップの場合は、45〜60mlのヘッドスペースがあります。)‥とかとか考えると、たしかに蝋封の密閉能力をやや過大に評価しすぎていたかもしれません。明確な根拠はありませんが、例のフーリエのボトルたちの劣化の原因から、スッパリと酸素の流入を除外するのはやや早計かなという気がしてきました。いずれにしても、今回のテーマからは外れますが、蝋封の密閉度については、平時はともかく激しい温度差にさらされたときにはどこまで持ちこたえられるのか、検証が必要かもしれませんね。探せばどこかにそういう実験結果もあるのでしょうか。次は、外部からの酸素の流入がなくてもワインが熱劣化する可能性についてです。
2013年11月30日
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ついに50台に突入してしまいましたよ。このサイトを始めたころはまだ30台だったことを思うと隔世の感があります。当時はニフティサーブ華やかなりし頃で、日々ワインフォーラムをROMって知識を仕入れていたものです。ワインサイトも少なかったし、そもそもネットのショップというものがありませんでした。その点、今はネット上にワインの情報はあふれ返っていて、クリックひとつで日本全国からワインを買うこともできる。いい時代になったものです。私自身はといえば、最近はニューリリースのワインを追いかける気力がなくなってきて、ワインの購入頻度がだいぶ減りました。そのわりに手持ちのストックが減らないのはなぜなんだろうという気もします。ワインの好みも、ワイン会でご一緒する方々に美味しいローヌやカリフォルニア、イタリアなどを飲ませてもらっていることもあって、一時のブルゴーニュ一辺倒から、わりと浅く広く的な志向に戻ってきました。ワインを飲む頻度や一日あたりの酒量は以前よりむしろ増えていますが、年のせいか、酔いが回りやすくなってきました。ワイン会ではこのところ必ずといってよいほど寝落ちしてしまって、主催者や参加者に迷惑をかけています。さて、今年の誕生日に開けたのは表題の銘柄です。02年は娘のビンテージということで、いろいろと買い込みました。特にロベール・アルヌー(今はアルヌー・ラショー)についてはヴォーヌロマネ・レ・ショーム、エシェゾー、クロヴジョ、そしてスショと合計1ケース近く買いましたが、若いうちからガンガン開けてしまい(02VTで早くから開けたのがアルヌーとパリゾでした)、結局これが最後の1本です。今にして思えばさすがに早飲みしすぎたかもしれません。グラスに注ぐと、かなり濃いめながら、はっきりとオレンジがかったガーネットの色調です。香りは、お、いいですね。カシスやブラックチェリーのリキュール的な果実、八角、丁子、甘草などのスパイス、黒土、皮革や下草系の熟成香など。これまで飲んできたレ・ショームやエシェゾーでは熟成するにつれて、あまり好ましいとはいえない動物的な香りが目立ってきて、それによって私のアルヌーへの好感度もすっかり下がってしまったのですが、今回のボトルは久しぶりに非の打ち所のない素晴らしい芳香です。味わいはどうでしょうか?一口含むと、リキュール的に濃縮された果実味が広がります。タンニンはなめらかに溶け込んでいて、酸はバックボーンをきちんと支えています。無茶苦茶凝縮感があるわけではありませんが、ナチュラルなバランスと構造がすばらしい。いやあすばらしいですね。50歳の記念にあけるにふさわしい一本…と思いきや。どうも微妙に違和感があります。注意深く味わうと、芳醇な含み香に隠れてほんのわずか、味わいの中にコルキーなニュアンスが感じられるのです。う~ん、ブショネですか。香りのダメージはまったくないのですが、飲んでみると、本当に少しだけ感じるのです。頻度はそう多くないけれども、最近こういう味だけのブショネに時々遭遇します。まあ、といってこれだけのワインを流しに捨ててしまうのももったいないし、ブショネのことはなるべく気にしないようにして(と思うと逆に気になってしまうのですけどね)、飲み続けました。不幸中の幸いだったのは、飲んでいくうちにこのニュアンスが消えることもなかったけれども、酷くなることもなかったこと。最初はボトル半分翌日に残すつもりでしたが、さすがにブショネのワインを二日に分けて飲みたくはないので、結局その日のうちにひとりで一本飲みきりましたよ。コルキーなニュアンスさえなければ、本当にすばらしい一本だったのですが、まあこういう悲喜こもごもまたワインという飲み物の宿命でしょう。ちなみにこのスショの飲み頃を紐解いてみると、WA:2007~2017年、BH:2012+とのことで、体感的にもそのとおりだと思いました。##誕生日おめでとう、コメントはご不要に願います。##
2013年11月30日
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…というわけで、こんなものを買って、シールの具合を試してみました。酸素検知剤エージレスアイの色が変っていないボトルの袋を半分に切り、シールをした部分にこのスプレーを吹きかけます。やはり。微妙に漏れているのが確認できます。う~む。中にはこんなに酷いものもありました。この程度の微細な漏れだと、酸素検知剤エージレスの色は少し変っていることもあるようです。(エージレスアイを一緒に撮影しています。)かなりの数を調べてみました。検知液がボタボタと垂れるような袋こそ滅多にありませんでしたが、エージレスアイの色調が変っていないものはどれもわずかに漏れていました。見た目に端の部分のシールが甘かったり、シールする際に袋が捩れてしまったようなものは漏れている確率が高いようです。敗因はやはり50本をまとめて短時間で処理しようとしたことでしょう。…ということで、今度は50本イッキに処理するなんて乱暴なことはせず、エージレスを小分けにして10本単位で丁寧にシールしなおしました。T氏のアドバイスどおり割り箸をはさんでシールすると綺麗にできますね。また、私の買ったシーラーはハンディタイプで使いやすい反面、シール能力はイマイチのようなので、温度のメモリを最大値に近いぐらいまで上げて、シール箇所を少しずつずらしてひと袋あたり最低3回シールするようにしました。どうでしょうか?見た目にはかなり綺麗にシールできましたよ。ところが、この調子で100本以上シールしつづけたら、今度はシーラーがオーバーヒート状態?になってしまったようです。温度ダイアルを下げても、シールすると袋が溶けて切れてしまうようになってしまい、仕方なく作業を中断しました。今回の成果ですが、おかげさまでシールしなおした半分以上のボトルでエージレスアイの色が変りました(=無事脱酸素状態になった。)ただ、まだ色が変らない袋があるので、次回はハンディタイプでなく、据え置き型のシーラーを使って再チャレンジしてみようと思います。ちなみにこのシールチェックスプレー、ちょっとした凶器です。着色性がスゴイ上に、いったん着いたらなかなかとれない。洋服についてしまったらアウトでしょう。また色が色だけに、「どこか怪我したの?」とか、ラベルに間違ってついてしまうと「げっ、液漏れか?」とか、あらぬ誤解をうけそうです。使われる方はくれぐれもご注意を。
2013年11月28日
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AWCさんの11デュジャック今やこんな値段なんですか!志村さんよりアルマン・ルソーの98シャンベルタン札幌ワインショップさんよりアンリジローのフュドシェーヌ各VTトスカニーさんよりスピネッタの10バルバレスコシブイですね。大元さんのフィサン 1er Cru クロ・ナポレオン07(ピエール・ジェラン)ウメムラさんよりジャック・カシューの07、08、10エシェゾー。いずれも10K以下ふたつ前のエントリーでブルラヴァーさんからコメントいただいて、あらためて思い出しました。私自身、蝋封のワイン(フーリエ)が真夏の昼間にに間違って常温で送られてくる、というトラブルを経験して、それをYOLやRWGのコラムにもしていたのでした。灯台下暗し、でした。いや、お恥ずかしい。このとき受け取ったダンボールは私の手にも暖かく感じられました。少なくみつもっても40度以上、もしくは真夏の車内でよくあるような非常識なまでの高温に晒されていた可能性も否定できません。でもって、私が実際にテイスティングしたフーリエの感想は以下のとおりでした。<熱浴び1本目>http://plaza.rakuten.co.jp/szwine/diary/201208250000/<熱浴び2本目>http://plaza.rakuten.co.jp/szwine/diary/201211260000/<熱浴び3本目>※ブログに掲載していなかったので、コラム原稿の一部を引用します。9ヵ月後の感想です。~黒系果実のコンポート、八角、丁子などのスパイス、シャンピニオン、皮革、スーボワのニュアンスも。熟成香が前面に出てきているというほどではなく、まとまった香り~飲んでみると、液体が舌の中央に乗ってくる感じがなくて、口腔内に鋭角的な刺激が感じられる。テクスチャーのなめらかさが欠如していて、ザラザラ、トゲトゲしたものが頬の粘膜の内側を刺激する感覚。~果実味は豊かで旨みが乗っているが、後半にエグみ。フィニッシュには酸がやや暴れて果実が抜けたような感じに。~翌日は木質的、藁っぽい香りが顕著に出てきた。~二日に亘ってなんとか愉しむことのできるレベル。明らかにバランスを崩しているが、想像していたよりはまっとうな状態をキープしている。~昔、ワインの保存で検証したボトルでいえば、リビングでひと夏保存していたワインの姿に近い感じ。<比較して飲んだ健全なボトル>http://plaza.rakuten.co.jp/szwine/diary/201305210000/<コラムに書いたマトメ>~総じて今回の「熱浴びボトル」、危惧していたよりはずっとまっとうな状態をキープしていた。しかし正常なボトルとの間には違いがあった。~この傷跡が今後さらに長い年月寝かせたときにどうなるのかは未知数。今回の結果をもって「真夏に常温配送したぐらいなら大丈夫」と一般化するつもりは毛頭ない。~ボトルが「蝋封」であったことはかなり大きなファクターだったと思われる。通常のキャップシールだったら、盛大に液漏れして、空気の侵入により短期間にもっと酸化が進んでしまっていたかもしれない。このコラムを書いた時点では、「脱酸素パック」のことは頭にありませんでしたし、そこから派生した「スクリューキャップ(蝋封にもあてはまる?)ならほとんど劣化はしないのではないか」という仮説もなく、むしろ「真夏に常温で送られてくれば、劣化しているのが当然。」という先入観があったことは否定できません。とはいえ、それを差し引いても、当時のボトルの香味を思い浮かべるに、さすがに「高温の影響がまったくなかった」「蝋封なら酸素が流入しないので劣化しない」とは言い切るのは無理があるのかなぁと思いました。一方で、蝋封だったゆえにこの程度で済んだというのは間違いなくあると思います。かつて徳丸さんのセラーが壊れて、噴いてしまったりしたワインをテイスティングしたことがありましたが、そのときのボトルの香味は完全に崩れていましたから。これらのことから何が言えるでしょうか?1.実は蝋封は完璧には酸素を遮断できない?→熱浴び1本目のエントリーの写真にあるように、このときのボトルは完全にワインがコルクから染み出て、蝋の中で「噴いた」状態になっていましたので、その分の酸素が流入した可能性はあるかもしれません。→蝋封でどの程度空気を遮断できるのか、ひと月ほど前に例のコルクやスクリューキャップのデータの参照元である「きた産業」さんに質問のメールを送ったのですが、返事をいただけませんでした。上記のようなことはあるものの、皮膚感覚的には、割れたり微小な穴があいたりしない限りは、スクリューキャップと同等、もしくはそれに迫る密閉能力を期待してよいような気がしています。仮にもしそうだとすると、、2.外部からの酸素の流入がなくても熱劣化は起こる?→実はこの事実を強く示唆する論文が平野さんから送られてきたのですが、ブログでの紹介は一拍お待ちください。(英語なので(汗))→ただし、その場合、前回の脱酸素パック検証の「3年常温保存」のワインたちにはなぜ明確な劣化が見られなかったのか、という堂々巡りになります。もろもろ辻褄が合うように説明しようと思うと、【その1】~外部からの酸素がなくても、熱劣化は起こる。~ただしその場合、相当な高温(40度前後?おそらく飲み手によってバラツキあり)に晒されない限りは、一般愛好家に知覚できる次元で顕在化はしない。もしくは【その2】~脱酸素パックワインでも見られたように、高温に置かれれば、その分熟成は早くなる~それが一定のレベル(飲み手によってバラツキあり)を超えると、熟成促進でなく、ネガティブな変化(劣化)として知覚されるようになることもある。~外部からの酸素流入が遮断されていれば、通常のものよりもその閾値は高くなる。というところでしょうか?なんだか自分でもわからなくなってきました。まだまだ断続的につづきます。
2013年11月27日
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ヒロヤさんよりジャック・プリウールの10シャンベルタンほかウメムラさんよりジャックカシューの07、08、10エシェゾーゆはらさんよりルーミエの04シャルム・シャンベルタン(ジャン・ピエール・マチュー)フィッチさんよりラヤスの04シャトー・ヌフ・デュ・パプ脱酸素パック化で悪戦苦闘していて考察の方が間があいてしまいました。こちらも並行して書いていきたいと思います。熱劣化は温度変化による酸素の過剰な流入が主要因なのではないか。だったら逆転の発想で、劣化の元である酸素の流入を絶ってしまおうというのが今回の「脱酸素パック」です。そして、私が参加した「脱酸素パックワイン」の検証会に出されたワインたちは3年間『常温』で保存されていたにもかかわらず、明らかな劣化は見られませんでした。熟成が進んだとおぼしき変化はありましたが、たとえば私は5銘柄中3銘柄で脱酸素パックのワインの方を美味しいと回答したぐらいでした。ということは、1.高温になったり、その過程で温度変化があったりしても、供給される酸素がなければ、明確な熱劣化は起こらないのではないか?2.熱劣化の原因はほぼ酸素の過剰供給に集約され、他の原因はあったとしても決定的なものたりえないのではないか?(もし他に決定的な原因があるとすれば、今回の脱酸素パックのボトルも明確な熱劣化が顕著に見られたはず。)3.この理屈に従えば、酸素の流入がほとんどない「スクリューキャップ」のワインにおいては、熱劣化はほとんどないのではないか?最後の仮説はなかなか大胆に聞こえますが、とりあえず理屈は通っているような気がします。これに対して、私のワインの師匠であるワインショップ平野弥の平野さんからメールでご意見をいただきました。(平野さんとはこの件で何往復かメールのやりとりをしています。)まずひとつめは、スクリューキャップについてです。>スクリューキャップで熱劣化したワインは山ほどありますよ。 私のあくまでも味覚的な判断ですが。典型的には、チリのコノ・スルは、ほとんどが軽く熱が入っています。また、エミリヤーナのエコ・シャルドネは、最初に私が扱い始めたころは、比較的状態が良く、透明感があったのですが、半年前に仕入れたワインは、典型的な熱劣化のワイン、スーパーにあるような常温で夏場を過ぎたイタリアの白ワインのようになっていました。本来はとてもフルーティーでフレッシュなワインだったのですが、・・・。官能検査の難しいところは、尺度の基準を統一化することです。、日本でもっとも状態管理に厳しいおひとりであろう平野さんが考える劣化の基準と私程度の者が考える劣化の基準とではおそらく相当ハードルの高さに差があることは想像にかたくありません。平野さんが仰る劣化しているボトルというのは、はたしてどのレベルのものなのだろう?・・と思ったら、なんと平野弥さんから宅急便で現物が送られてきたではありませんか!これは貴重なサンプルです。少し休ませてから検証してみたいと思います。このボトルを飲んでみて、私でも劣化が確認できるようなら、上のストーリーに誤りがある可能性が高いということになります。#他の要因、たとえば光による劣化、などという可能性も考えられなくはありませんが。もうひとつ、平野さんが化学を専門とするお客様と会話された内容を紹介したいと思いますが、これについては長くなるのでまた別のエントリーで。
2013年11月25日
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アーベンさんのドメーヌ・デュジャック 6本セットシャトートーキョーさんのDRCヴォーヌ・ロマネ 1er cru 2006シーザーさんのセシル・トランブレーみちのくさんのミシェル・ラファルジュ「思わぬトラブル」ではやや不穏なので、タイトル変えました。酸素検知剤エージレスアイの色が変らなかった件については、最初脱酸素剤エージレスやエージレスアイの不良も疑いましたが、結局時間が解決してくれました。というのも、水~木曜日ぐらいになったら、ようやくセラーの中でポツポツと色が変ってきたボトルが出てきたからです。(酸素検知剤エージレスアイの変化は、セラーの中ではHPに書かれているよりもかなり時間が余計にかかるようです。)といっても、綺麗なピンク色になったのはせいぜい10本に1本程度。3~4本は赤と青の間ぐらいの微妙な紫の色調。残りの半分は真っ青なままです。やはり慣れていないのに短時間で慌ててシーリングしようとしたのがいけなかったのでしょうか。↑右は比較的脱酸素に成功した袋(といっても完璧でなはい。0.1%以下の脱酸素状態になるともっと鮮やかなピンクになる)左は脱酸素化できていなそうな袋。検証会を主催したT氏にもメールでいろいろとアドバイスをもらいました。いわく、~脱酸素剤エージレスは袋をあけてすぐにシールすれば小分けしても問題ない。 (前回はエージレスの劣化を気にして50本一気にシールしようとしたのがそもそも間違いだった)~シールの温度設定に注意。T氏はデフォルトよりも少し高めにして使っている。溶着時間が短いと溶着できてなくて、最大だと溶け過ぎてベロンとなってそこで切れたりする。~シールが完了して自動的に電気が切れた後も、冷えて固まるまで5秒ほどレバーを押し込んだままにしておくのが良い。~シール部分が捩れないように、開放部を綺麗に折りたたんで揃えて割り箸で挟んでおくと綺麗にシールできる。などなど。これらのアドバイスをもとに、翌週末、再チャレンジすることにしました。
2013年11月25日
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というわけで、週末に3時間近くかけて自宅のワイン100本分の作業をしたわけですが、翌日仕事から帰宅してみて、「おや?」と思いました。脱酸素パック化したボトルに入れたエージレスアイ(脱酸素の状態を色の変化で表示するもの)の色が青のままで昨晩から変っていないのです。エージレスアイは、購入時真空パックで送られてきたときには鮮やかなピンクでした。↑この色ですね。これが酸素に触れると2~3分で青に変色します。↑こうなります。右が脱酸素状態、左が空気に触れた状態。写真では今イチ彩度が再現できていませんが、実物はもっと違いがあります。脱酸素剤エージレスの作用時間(空気が抜けるまでの時間)は半日~一日と書かれていたので、まだ袋内の酸素が吸収されつくしていないのかもしれません。さらにエージレスアイは空気に触れると2~3分で青に変りますが、脱酸素状態になってピンクに変わるのには2~3時間を要するとのこと。また、それは気温が25度の話なので、セラー内ではもっと時間がかかるかもしれません。http://www.mgc.co.jp/seihin/a/ageless/eye.htmlということで、まあこの晩はとりあえず翌日まで様子を見る事にしました。これが月曜日の話。さて、翌日、再びセラーを開けてみると、ボトルたちの中の酸素検知剤エージレスアイは青のままで変化ありません。シールが弱かったのでしょうか?さらに私を困惑させたのは、使い残しの酸素検知剤エージレスアイの色でした。使い残したエージレスアイを三つの袋に小分けにして保存したことは前に書きました。このうち、元の袋から出して分けた二つの袋内のエージレスアイたちの色が青になったままなのです。ということは密閉したはずの袋内の酸素が抜けていないということになりますが、密閉時には脱酸素剤(エージレス)を一緒に入れているので理屈上は酸素が抜けているはずです。下が色が変っていない(酸素が抜けていない)袋。これって一体どういうことなんでしょうか?1.脱酸素剤エージレスの不良で、酸素が抜けていなかった。2.酸素検知剤エージレスアイの不良で、酸素が抜けても変色しなかった。3.低温であること、もしくはそのほかの理由で脱酸素の過程がまだ終了していない。4.シーラーの問題かなにかで、うまくシーリングできていなかった。エージレスには消費者の立場で日々接していますが、今回のような作業者側の立場で使ったことはないので、なんともわからないことだらけです。理科の実験のようになってきましたが、つづきます。
2013年11月23日
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ところで今回の作業には時間的な制約があります。エージレスは空気に触れた瞬間から酸素を吸い始めるため、一定の時間内に作業を終えなければなりません。私が購入したエージレスは100個入りだったので、一本に2個使うとして、50本分一気に作業してしまうことにしました。作業時間は2時間以内と書かれていました。エージレスは開封後に小分けしてまたシールすれば再利用できるそうですが、真空パックにする機材が我が家にはないことから断念しました。最初からもっと小単位で買っておけばよかったと悔やまれます。(20個単位などでも売られていますね。)1.まずはセラーからボトルを取り出して、ガゼット袋に一本一本詰め、10本×5列に並べます。2.次に「エージレスアイ」を開封して、50本分投入。残った450個は3つの袋にわけて、エージレスを入れてシールをしました。3.そのあとエージレスをひと袋に2個ずつ投入。2×50=100個でちょうど足りるはずだったのが、2個足りません。考えてみれば、前のエージレスアイの保存のために2個使ってしまっていたのでした(笑)。4.全部入れ終えたら、今度はシーラーで封をします。ところがこれが慣れていないと結構手間取ります。追随される方は(くれぐれも自己責任でお願いします)、事前に空ボトルなどを使って何度かリハーサルをしたほうがいいですよ。5.最初のうちは斜めに止めてしまったり、端がシーリングされていなかったりもしましたが、作業を進めるうちにだんだんとコツがわかってスムーズに出来るようになりました。6.トータルの作業時間は小一時間というところでしょうか。仕上がった袋にはプチプチを巻いてセラーに戻しました。これが結構面倒で、緩衝材の役割も果たしてくれる専用袋が開発されればいいのに、なんて思いました。ということで、この日はあと1サイクル=50本作業して、トータル100本弱を脱ワインパック化。セラーの出し入れを含めた作業時間は合計2.5時間ぐらいだったでしょうか。残りはまた翌週、ということでいったんは作業を終了したのですが・・・。
2013年11月21日
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長々と脱酸素パックとそこから派生する熟成・熱劣化の問題について書いてきましたが、ここはやはり論より証拠、自らやってみようと、南さんが推奨していた袋やエージレス、シーラーなどを買い込み、セラーのワインの脱酸素パック化にトライしてみました。脱酸素パックに対して、私がもっとも期待しているのが、「災害時や停電時・セラーの故障時のための保険的活用」です。東日本大震災を契機に、多くのマニアや収集家の方がワインの保存方法についてあらためて考えさせられたと思います。YOLやRWG誌でも書いたとおり、私も停電時の予備電源についてはソーラー発電やUPSなども含めいろいろ検討しました。結局妙案は見つからず、とりあえずやったことといえば、品川の寺田倉庫に預けていたワインたちを品川と横浜に分散したことぐらいでした。また、私自身3度、私の周囲でも片手では足りないぐらい、セラーの故障を経験した愛好家の方がいます。もしこの方法が有効かつ副作用がないということが明らかになれば、セラー内のボトルたちを脱酸素パック化することによって、もしものときにも対応できることになります。私が検証に関して、高温の影響よりも還元のリスクに注目していたのもまさに上記の理由からです。セラー内で長期保存していて、開けてみたらおかしな熟成の仕方をしていたというのがもっともコワイので。作業は土曜日の夕刻になってから行いました。用意したのは以下のものです。南さんが推奨されていたガスバリアコーティング袋。本来はお菓子などに使われるものですね。200枚で3.8Kと結構値が張りました。我が家にあるボトルはちょうど200本ぐらいなので問題ありませんが、ストックが数十本ぐらいの方にとってはやや効率悪いですね。ハンディシーラー。先達の方々が使ってたという品とは異なりますが(売り切れでした)、エージレスを買ったショップで薦められていたので買ってみました。値段は3K弱。エージレスS-100。ひと袋で酸素を100ccまで吸収できるそうです。ということは空気でいえば約500cc。ひと袋に1個で十分のような気もしますが、念のため2個入れることにしました。必要なものはこれだけですが、私は念のためこれも用意しました。エージレスアイ。袋内が本当に酸素がなくなっているかを目視で確認することができます。脱酸素化している状態だと写真のようなピンク色で、酸素に触れると青色に変わります。ちなみにこのエージレスアイ、最小ロットでも500個入りのものしか入手できないのが残念。もっと小分けのものがあればいいのにと思います。まあ500個でも2kチョイと、それほど高価なわけではありませんがね。(つづきます。)
2013年11月20日
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この作り手、三茶のワインバー「TEPPEN」でたまたまグラスを飲んだところ、みずみずしくすばらしい味わいだったのに感激して、自宅用にも3本買い込みました。すでにサントネ・キュベSを2本飲んで、このマランジェが3本目ですが、どういうわけか自宅では本領発揮のボトルに遭遇できずじまいです。やわらかい色調のルビー。香りは赤系果実のゼリーや紅茶、ハーブなど。口に含むと透明感のある果実味を中庸を得た酸とやさしいタンニンが支える味わいで、全般にじんまりとまとまっています。実売3K前後のピノとしてはこんなものかなというところで、けなすべき点はありませんが、これなら少し出来のよいACブルとさして変らないよなぁという思いもあり…。ワインバーで飲んだときには光るものがあったんですけどねぇ。飲んだ時期の問題かなぁ。★★★
2013年11月18日
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自分のストックの「脱酸素パック化」に備えて、セラーの整理をしていたら出てきたボトルです。おそらくかわばたさんのサンデーセールで買ったものかと。通常我が家でこのクラスの銘柄を買うことは滅多にありません。というのも1級クラスって、自宅で飲むには高すぎるし、ワイン会に持参するにはやや小粒だしと、入手しても出番がないからです。そんな1級クラスをあえて買ったのは、きっと相当安く買えたからでしょう(笑)。07年とあってか、色調はそんなに濃くはありません。全般にオレンジがかっています。香りは注ぎたてこそ無口でしたが、グラスを二回しほどスワリングすると、とたんにカシスやダークチェリー、それにスパイス類や紅茶、皮革、土などの入り混じった芳香が。もはやこの香りだけで元はとれた気分。飲む前からいやはやご馳走様でしたと言いたくなります。。でもって味わいはというと、果実味がクリーンで甘い。イチゴゼリーのようです。タンニンはすでになめらかに溶け込んでいて収斂性は感じられません。ただ、酸はやや引っ込み気味ですね。そのため酒質はやや平板な印象を受けます。十分にレベルの高いワインですが、ヴォーヌロマネの1級、しかもボーモンとあれば、もう少し上を求めたくもなります。美味しいですけどね。★★★★翌日:例によってペリエの小瓶の残りを。香りは初日よりさらに華やかになりました。味わいは初日より酸のバックボーンが前面に出てきて、果実味もしっとりとした印象になりました。明らかに二日目のほうが向上しましたね。この辺の底力はさすが1級です。ユドロノエラ、いいですわ。何本か買い増ししたいんですが、最近のVTは値段が高くなってしまったのが残念。
2013年11月17日
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RWG誌のコラムの原稿を書いていますが、「脱酸素パック」の話は考察まで含めると、とても一回では書ききれないので、二回に分けて書くことにしました。主催者のT氏とは検証のあと30回近くもメールで意見交換をしてきましたし、ここに来てやまじさんともいろいろとやりとりをしています。Andyさんもさっそくブログに掲載してくれました。http://www.matsubarafamily.com/blog/item/5634まだよくわからないところやさらなる検証が必要なところもありますが、かなりいろいろなことがクリアになった気がします。検証にあたって懸念していた点や疑問に思った点について再度おさらいです。1 夏場30度を超える部屋で3年間常温保存していたとのことだが、熱による劣化は本当にないのか?少なくとも、高温により熟成はかなり進んでいるのではないか。→頭で理屈を判っていても自分の舌で確かめないと納得できない部分がありましたが、実際に今回飲んだワインには熱劣化の症状は見られませんでした。一方で熟成がセラーのものに比べて気持ち早いかな、という感じはたしかにありました。しかし、これについてもネガティブな印象ではなく、香りがよく立っており、味わいも概してクリーンでした。高温というファクター自体は熟成の促進にはつながるが、劣化の直接の原因ではない、劣化の原因はあくまで高温にいたるまでの、あるいはそこから下がるときの温度変化だということなんでしょう。2 昼←→夜、夏←→冬といった温度変化の繰り返しにより、劣化が見られるのではないか。私がかつて検証した「夏場冷蔵庫、それ以外はリビング保存」のボトルたちは決定的な高温に晒されなかったにもかかわらず、2〜3年後にはかなりの変化が見られた。→温度変化による劣化の原因が酸素の流入以外、たとえば膨張と収縮の繰り返しが液体の組成に何らかの悪影響をもたらしたとかであれば、3年間常温で保存した今回の脱酸素パックのボトルにも何らかの劣化が見られたはずです。しかし、今回のワインたちには明確な劣化は見られなかった。となると、やはり原因は酸素の流入だったということになるわけで、私たちがよく出くわす「噴いてはいないけれども明らかに熱劣化している」ボトルの原因は、温度変化によって中の液体や気体が膨張したり収縮したりを繰り返すうちに酸素の流入が増えたというのがファイナルアンサーといってよいのではないでしょうか。3 スクリューキャップのワインで還元状態になるリスクが指摘されているように、このメソッドでも酸素が完全に遮断されることによって還元状態になるのではないか。あるいは(1と矛盾するが)熟成が阻害される、綺麗に熟成しないということはないだろうか。→今回のボトルたちでは還元は見られませんでしたし、3年とはいえ、熟成も順当に進んでいたように思われます。ただ、これについてはもう少し検証が必要な気もします。たとえば、ボトルたちは「立てて」保存されていましたが、もし寝かしていたらどうでしょうか?ヘッドスペースの空気は横にしたボトルの上部に行き、コルクとは直接接しなくなります。気体の中にSO2が充満しても、排出されずらくなり、リスクは高まるかもしれません。いやしかし、今までの計算のように、ボトル内のSO2の多くは醸造時に取り込んだ酸素との結合で消費されてしまっているので、還元や熟成が進まないなどといった心配をしなければならない量ではないかもしれません。試してみないことにはなんとも、です。4.結局のところ、ワインが熟成するためには瓶詰め後に微量の酸素が継続的に供給される必要はあるのかないのか?→今回のボトルがどれも綺麗に熟成していたことを思うと、少なくとも3年というスパンでは、必要ないと断ずるほかありません。では、継続的に供給され続けるるボトル(=通常のボトル)との熟成の差はどうなのかということについては、もっと長期にわたる検証をしないとなんともいえないです。たとえば常温保存でなく、災害時の保険用にセラーのボトルにこの脱酸素パック処置を施した場合、数年は全く問題ないとして、10年15年と寝かせたときに、熟成が遅くなるとか、熟成の仕方が変ってくる、ということがあるのかないのか。もっともこれは必ずしもネガティブな予想だけでなく、より良好な熟成を遂げている可能性だってあるわけです。まあその前に袋の耐久性が問題になりますね。5.噴いてし脱酸素 ワインまっても劣化はしないのか?→今回の検証ワインには噴いているものはありませんでしたが、仮に噴いてしまっても代わりに流入してくる空気の中に酸素はありませんから、劣化はしないでしょう。ただし、前にも書いたように、いったん空気が入り込むと、気体と液体の膨張率の違いから、ちょっとした温度変化でも液体が流出しやすくなります。よって、いったん噴いてしまったボトルについては、以降は温度変化の少ない環境にに保存していおいたほうがよいのでしょう。5.スクリューキャップのボトルは常温で置いておいても劣化しないというのは本当だろうか?→前に私が唱えた説ですが、上の理屈でいけばそういうことになりますよね。高温環境でも温度変化でも、結局のところ劣化の原因は酸素の流入ということであれば、酸素がほとんど流入しないスクリューキャップのボトルは劣化しないことになります。どなたか試してみてください(笑)。#そうなると、SO2のバリアを持たないSO2無添加自然派ワインなどはスクリューキャップを積極的に採用するのがいいのではないかと思ったりもするのですが、どうでしょうか。もろもろ考えるに、この脱酸素パックを使って保存する場合は、『ボトルを寝かせるよりは立てて』、(袋内はほぼ湿度100%になるらしいのでコルクの過度の乾燥や液体の目減りの心配はない)『ある程度温度変化のある環境下で』(そのほうが通気性が高まりガス交換が活発になる)、『特にビオワインなどにおいて』最大の効果を発揮するのではないかという気がしてきました。これって現状の保存のセオリーとは正反対ですが、ガスバリアコーティングと脱酸素剤という現代の技術革新の賜物なわけですから、保存方法もそれに応じて変ってくるということがあってもよいわけで‥。(断続的につづきます)
2013年11月16日
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毎年買っているヴィレーヌ。実はこの11メルキュレは東急の試飲コーナーでグラスで飲んだことがありまして、そのときにはよい印象が受けませんでした。とはいえ、そこはかのヴィレーヌ氏のワイン、少し寝かせておけば状態も落ち着き、香味も向上するのではと思って開けてみましたが…。う~ん、これはいただけませんね。赤系果実や乾いたスパイス、紅茶などのオーソドックスな香りはいいのですが、味わいはピリリとした神経質な酸があり、タニックです。皮膜のような乾いたタンニンが支配的で、果実味に瑞々しさや旨みが感じられません。フィニッシュもストンと落ちてしまう印象。抽出が強すぎたのでしょうか。正直、今の段階では「美味しくない」ワインです。タンニンがなじむまである程度時間が必要なのでしょうか。ディゴワーヌを数本買い込んだのですが、あちらはもう少しバランスがとれていることを祈りたいです。★★
2013年11月13日
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先日開けたカンボンにはそれほど心を動かされることはありませんでしたが、このボトルはよかったです。鮮やかな赤い果実を中心とした破綻のないバランス。酒質は非常にクリーンでなめらかでありながら、グリップもしっかりとある。今はフレッシュな香味中心ながらすこしばかり土っぽいニュアンスも垣間見れて、数年寝かせると複雑さが出て面白くなりそうです。ヴァン・ナチューレのよい面が出たワイン。こういうボトルを飲んでしまうと、値段は高いですが、「キュベ・マルセルラピエール」も買っておこうという気にさせられます。ちなみに、先日のル・カンボンとの差はワインの出来よりも、コンディションの問題が大きいような気がしてなりません。やはり蝋封という要素は大きなファクターなのでは。★★★★
2013年11月11日
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さて、比較試飲のあとは、脱酸素パックで2年保存した以下のボトルたちを飲ませていただきました。すでにひとりボトル一本に近い酒量に達していたので、テイスティング力や判断力の面ではおぼつかないものがありましたが、いずれも美味しく飲めたのはたしかです。ル・カンボン2008(マルセル・ラピエール)銘柄の名を聞いて、「これは厳しいのでは?」と考えていたボトルです。というのも、マルセル・ラピエールのワインはSO2不使用のため、ひときわ丁寧な状態管理が要求されるからです。カンボンは良年しか作られないキュベですが、08年が05や09ほど酒質が強いとも思えませんし…。しかしこのラピエールも全く問題なかったですね。赤い果実や紅茶、ミネラルなどの風味に富んだ透明感のあるクリーンな酒質が印象的で、比較対象がなかったため、熟成が通常より進んでいるのかについては判断できませんでしたが、単体としてはすばらしい味わいでした。モレ・サン・ドニ・プルミエクリュ・ザルエット2000(ポンソ)これまた難物のポンソ。SO2使用量は他のドメーヌで使用する量の1/3分から1/5といわれています。ザルエットはロッシュの若木主体でしたっけ?あまり酒質が強いとはいえない2000年。どんなものかと思いましたが、濃縮感のある果実味を中心にしっかりとした酸が支え、豊かなタンニンも滑らかに溶け込みつつあり、ポンソ節全開のすばらしい味わいでした。最後にボルドーワインもということでシャトー・ジスクールが出されました。年代はブラインドで。黒系果実、カシス、杉の木、スパイス類、かすかにオークも残っています。飲んでみると果実味がなめらかで、酸も豊か。タンニンは豊富ですが丸く攻撃性はない。今美味しく飲めますが、それほど熟成が進んでいるようには思えません。あまり強い年とは思えないので01年ぐらいでしょうか?→正解は04年。当たりはしなかったけれども大外れということもないかなと(笑)。ということは、私がセラーで保存した通常のワインに対する肌感覚で感じているのと同じ程度の熟成度合いだったということです。すでに酔っぱらっていたとはいえ、この追加3本の味わいには考えさせられるものがありました。SO2に関する考察を長々と書いてきたように、酸化をブロックするという意味でSO2の効用は大きなものがあるはずです。それを全く使用していなかったり極力使用を抑えたラピエールやポンソのワインはただでさえ保存に気を使いますが、それらについても脱酸素パックのボトルは雑味のない、クリーンな香味をみせてくれました。いや待てよと、ここで私は思いました。むしろS02のバリアがなく、最初から酸素の直撃を受けるビオ系の銘柄ボトルであればこそ、このソリューションは有効性が高いのではなかろうか。今回のように常温で保存するという冒険を犯さずとも、購入直後に脱酸素パックに入れてセラーで保存しておくことによって、通常保存のボトルよりも綺麗に熟成してくれることを期待できるのではなかろうか?このところ推進中のボジョレー再発見プロジェクトの関係で(笑)、自然派銘柄もよく飲んでいるのですが、正直なんだかなぁ、というボトルに結構あたってきたところでした。近いうちに、我が家でも脱酸素パックを導入してみて、緊急避難的な意味合いにとどまらず、上記のような積極的な活用をできないか、試してみたいと思います。ということで、まだつづきます。(が、そろそろ飲んだワインのネタもたまってきたので、以降は断続的に書きます。)
2013年11月10日
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検証は、九段下の「ビストロ南」で行われました。検証の進め方は以下のとおりです。・セラーで保存したものと、脱酸素パックで保存した同一銘柄のボトルをそれぞれブラインドで並べて試飲。ボトルの保存期間は3年。(グラスはISOテイスティンググラスではなく、一般的なボルドータイプのものを使用。)・参加者(10名)はどちらが美味しく感じたかを回答。・そのあとで、どちらがパックのワインだったかがオープンになる。・被験ワインは5銘柄。線が細く繊細なもの、程よく熟成感のあるもの、かつ値段が手頃なもの、ということで以下の銘柄を選んだそうです。1.Chassagne Montrachet 1er Cru les Caillerets 2008, Ramonet2.Puligny Montrachet 1er Cru La Garenne 2007, Etienne Sauzet3.Chambolle Musigny V.V. 1er Cru Les Sentiers 2007, Herve Sigaut4.Pommard 1997, La Pousse d'Or (中身は1er Cru Les Jarollieres)5.Bourgogone Rouge 1985, Selection Nicolas Potelテイスティンググラスと吐器を使って行うものではなく、あくまで通常のワイン会の一環として行われましたので、会が進めばその分酔いが回ることになりますし、一緒に食べた料理の影響なども受けるかもしれません。そういう意味では、実験ラボ的なものではなく、良くも悪くも一般愛好家目線での検証です。#もっとも一般愛好家というにはやや語弊があるかもしれません。この日の参加者はプロの方や有資格者も含めたかなりのつわものぞろいでしたので…。まあ、こうしたワイン会の環境下で違いが分からないようであれば、実際に大差はないということですし、ワイン会に持参しても問題ないということにもなるのではと思います。なお、主催者からは「どちらが脱酸素パックのワインかを当てる」ことは求められませんでしたが、私はコラムの記事のために、自分が脱酸素パックだと思うほうを記録しておきました。詳細まで書いてしまうと、RWGのコラムに書くことがなくなってしまうので端折りますが、結果はおおむね以下のとおりでした。*セラー保存、パック保存のどちらが美味しいと思ったかについては、ほぼ拮抗。*5銘柄中2銘柄(ラモネとエルヴェシゴー)はパック保存の方が美味しいと答えた人数の方が多かった。*私個人の評価としてはより美味しいと答えたグラスは5銘柄中3銘柄がパック保存だった。*なお、私がパックかセラーかの予想を当てられたのは5銘柄中3銘柄。2銘柄は不正解だった。もう少し詳しくみていくと、、~両者に違いがなかったかといえば、それぞれ違いは感じられました。ただし、その振幅はボトル差もしくは同じ銘柄の流通経路違い(異なるインポーターなど)程度のものに感じられました。~劣化という基準でみれば、このあとに飲んだボトルも含めて劣化したボトルには一本も遭遇しませんでした。~結局のところ、検証の間、どちらがパック保存かを明確に判別することはできませんでした。(パック保存ボトルの特徴の傾向がつかめなかったため)~後日、自分のコメントをあらためて眺めてみると、時期的に閉じ気味なものがあったセラー保存に対して、パック保存の方はいずれも開いていて外向的なものが多かったように思います。パック保存の方が総じて少しばかり熟成が進んでいたと解釈してよいのかもしれません。~ただし、その熟成の仕方は実に綺麗なもので、以前のRWG誌の検証ボトルのようなノイジーな要素はありませんでした。~私が当初心配していた還元状態だったものはありませんでした。(あえて言うと、最初のラモネにほんの少しその傾向を感じたような気がしましたが、あとから思うと私の思い込みによる見込み違いだった可能性が大です。)つづきます。
2013年11月10日
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そもそも温度変化って、何でワインによくないのでしょうか?温度変化によって「噴いてしまったボトル」がよろしくないのはわかります。液体が外に漏れた分、酸素が流入してきますし、液体の通り道ができてしまうことによってコルクの密閉性が低下し、その後も空気の流入が続く(らしい)ということは前に紹介した菊屋大久保さんのコラムにも書かれています。さらに、液体と気体では膨張率がぜんぜん違うので(気体の方がはるかに大きい)、一回噴いたことによって空気が流入したボトルでは、同じことを繰り返すと中の液体はさらに減り、より多くの空気の流入を許すことになります。一方で、我々は「噴いてはいないけれども熱劣化している」ボトルにも頻繁に遭遇します。経験的にショップに長期にわたって滞留していたボトルの中には状態の悪くなっているものが少なくないようにも感じています。また、リアルワインガイド誌「ワインの保存」の検証時も、「夏場冷蔵庫に避難させておき、それ以外の季節はリビング」に保存していたボトルは、ずっと常温で保存させておいたボトルよりははるかにマシだったものの、2年も経過するとやはりかなりの変化が見られました。(いずれも噴いてはいませんでした。)これらのボトルは夏場に決定的な高温には晒されなかったことから、劣化の原因は温度変化だろうと当時私は書きました。では、温度変化により劣化する理由はは何でしょうか?仮説1.温度変化により、中の液体が膨張と収縮を繰り返すうちに、液体の組成に悪影響を及ぼすから? →もしそうだとすれば、常温で3年間保存していたという今回のボトルにはネガティブな痕跡が見られるはずです。仮説2.膨張と収縮を繰り返す過程で、コルクが外気(酸素)を多めに吸い込んでしまうから? →これが原因だとすれば、今回の検証は酸素のない環境なので、劣化は見られないはずです。さらに、もし仮説2が正解だとすると、今回の検証とは関係ありませんが、「外気を通さない、すなわち酸素の流入のない(厳密にはほんのわずかに通す)スクリューキャップのボトルは、セラーに入れずに常温で保存しても、(高温で熟成が進むことはあるにせよ)劣化はしないのではないか。」という、なかなかに大胆な仮説に行き着くことになります。…というように、今回の脱酸素剤パックワインの検証は、単にテクニカルな保存法の話というにとどまらず、ワインの熟成や劣化のメカニズムのクリティカルな領域に大いに関連してくる検証だったわけです。私自身、検証に臨む前はそこまで深く考えてはいませんでしたが(笑)。
2013年11月09日
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さて、今回の検証は「脱酸素剤パック」のワインを「常温」で3年保存したものをセラーで保存していたボトルと比べて飲んでみようというものでした。私が確認したかった点は、主に以下の3点に集約されます。1 夏場に30度を大きく超える高温環境におかれることによる劣化は本当にないのか?少なくとも熟成は早まるのではないか。2 昼←→夜、夏←→冬といった温度変化の繰り返しにより、何らかの劣化が見られるのではないか。3 酸素が完全に遮断されることにより、還元状態になってはいないか。あるいは熟成していないということはないか。3については前項で書いたとおり「そもそもワインの熟成に微量の継続的な酸素供給は必要なのか?」という根源的な問題に関係してきます。瓶詰め時に溶け込んだ酸素との重合だけでワインが熟成するのであれば、脱酸素パックのボトルたちも問題なく熟成している可能性があります。一方でスクリューキャップのボトルで「還元状態になってしまう」という問題があるように、外気を過度に遮断してしまうことによる還元のリスクが高まることも想像できます。ただし、今回のボトルたちは、一般的なコルクが使用されており、ボトルは立てて保管されていたので、パック内の空気(脱酸素剤により酸素はなくなっている)とボトル内とのガスの交換はそれなりにあったと想像されます。これらの要素がどのようなアウトプットとなっているか。次に1の高温の影響。普通に考えれば、日中30度を超え35度に迫るような室内にひと夏置いておくことは考えられません。しかし、これについては実は私はあまり心配していませんでした。というのも、だいぶ以前に同じような原理の「デファンスール」を使用をすることによって「60度の温度でも問題なかった」という記事を読んでいましたし(ちなみにそのときの検証ボトルはラターシュだったかと。太っ腹!))、南さんのブログを読んでみても、これまで相当の本数を飲んできたが大丈夫だったと書かれています。また、菊屋大久保さんは国税庁醸造試験所による、外気を遮断した実験装置での実験に立ち会ったことがあり、その結果は、「煮沸の温度帯になっても明確な劣化は発生しない」というものだったそうです。http://www.foodwatch.jp/secondary_inds/winedist/12231とはいえ、黎明期のRWG誌の「ワインの保存」の検証において、ふた夏経過後、三夏経過後の、まるで枯れ草のように見る影も無くヨレヨレになったボトルたちを飲んだ経験からすれば、「実際に自分の舌で確かめてみないことには…」という気持ちは大いにありました。もうひとつ、劣化はしないにしても高温環境により熟成が早まるとして、その早まり具合については、正直私は飲んでみなければわからないと思っていました。高温に置かれることによって、液体の内部で起こる化学反応が早まると言われています(一説には24度以上になると早まるとも)。しかしそれは前述の「酸素供給なしで本当に熟成するのか」という問題と表裏一体、もしくは「行って来い」になる可能性もあります。まあ、仮に熟成が進んでいたとしても、酸素のない環境で促成栽培よろしく綺麗に熟成してくれているのであれば、それは歓迎できるという見方もありますし。なお、「液体の内部で起こる化学反応」については、短い文章ですが、以下の東京農業大学教授のコラムが「科学の遠く及ばない領域である」と断じており、興味深いいです。渋みは変化する 赤ワインとタンニンhttp://www.nodai.ac.jp/journal/nakanishi/0909.html心酔わせるアントシアニン ワインの赤色の秘密http://www.nodai.ac.jp/journal/nakanishi/0603.htmlでもって、もっともわからないのが、2の「温度変化による影響」でした。(つづきます)
2013年11月09日
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さて、ここまで、「コルクを通じて流入してくる酸素=悪」という論調で書いてきました。そもそもこの点についてはどうなんでしょうか?私が今回参加した「脱酸素剤パックワイン」の検証では、パックに穴が開くかシールがはがれない限り、酸素はほぼ完全に遮断されています。天然コルクのように継続的な微量の酸素の供給がない環境下で、はたしてワインは健全な熟成をするのだろうか。実は今回の検証で私自身がもっとも懸念していたのもこの点だったのです。その前に関連資料から…。またしても、きた産業さんのPDFファイルから引用しますと、3-6 年程度、あるいはそれ以上の長期びん内熟成タイプのワインの場合に限った一般論ですが、0.2-0.3ミリグラムO2/ 月のあたりがカベルネ S. やメルロなどに、0.05-0.15mgO2/ 月のあたりがシャルドネやリースリングなどに、それ以下の酸素透過度(スクリューキャップのレンジ)はピノグリやソービニオン B. などに、それぞれ最適ではないか、という意見もあります。また、下記のような記述もあります。香りには原因物質があります。かならずしも 1 対 1 対応ではないでしょうが、「パッションフルーツ、グレープフルーツ」の香りはメルカプタン由来、「柑橘系、リンゴ」の香りはテルペン化合物由来、などです。筆者はこの分野を化学的に述べるだけの知見を持っていませんが、一般論としてメルカプタンは酸素を嫌い、テルペン化合物はわずかの酸素がある方が香りが引き立つといわれます。最近よく話題になる甲州種ブドウの香りの原因物質に、「3- メルカプトヘキサノール」と「ベータダマセノン」があります。前者は酸素を嫌いますが、後者は酸素がないと香りが引き出されないということです。「白ワインにはスクリューキャップ」、という認識をもたれている方も多いでしょうが、酸素透過をおさえることが必ずしもすべての白ワインに良くないことがわかります。(中略)一方、赤ワインは、醸造工程でマイクロオキシジェネーションをすることがあったり、開栓後にデキャンティングで酸素に触れさせる場合があったりすることからもわかるように、一般的に酸素を好む場合が多いといえます。代表的な赤の香りである「バニラ、オーク、ナッツ」の原因物質、フェノール系化合物は酸素を好みます。醸造工程最後で酸素供給量をコントロールして充填時に条件だしをすればスクリューキャップでいい、といえるのかもしれませんが、合成コルクは天然コルクと同じく経時変化的にわずかづつ酸素を通すので、「壜内熟成」というワイン本来のスタイルに向いているといえるでしょう。ということで、それぞれの品種の香りの成分を引き出す物質があって、それらが好む酸素の量というのがあるようですね。ところで、私がきた産業さんのサイトとともに大いに参考にさせていただいているサイトがあります。FoodWatchJapanさんの元菊屋大久保商店店主である大久保順朗氏の連載「再考・ワイン物流改善」です。http://www.foodwatch.jp/author/okubo_yoriakiいや、このコラム集はスゴイです。まさに目からウロコの連続。追々紹介していきますが、私もこれを読んで何度「なるほど、そういうことか!」と膝を打ったことか。このテーマに関連した内容はおおむね#38~41あたりですね。#38 高温ダメージの正体はビン内酸素流入による酸化http://www.foodwatch.jp/secondary_inds/winedist/12230#39 ワインの高温劣化は温度そのものによるのではないhttp://www.foodwatch.jp/secondary_inds/winedist/12231#40 酸化による熟成と劣化を分けるものは何か?http://www.foodwatch.jp/secondary_inds/winedist/12232#41 酸素がどの物質と結び付くかで結果は異なるhttp://www.foodwatch.jp/secondary_inds/winedist/12233ただし、氏のコラムの中でも「熟成に継続的な(微量の)酸素供給は全く不要か?」ということについては、下記のように明確な答えは書かれていません。ここで私は、ワイン業界の常識の一つを疑わざるを得なくなった――「ワインの熟成に極めて緩やかで微量な継続的酸素供給が必要であり、コルク栓はその状況を提供してくれるワイン熟成に不可欠なファクターである!」というあれだ。このフレーズの「極めて緩やかで微量な継続的酸素供給」の吸引酸素総量と、「吹きこぼれを起こしていなくても劣化しているワイン」が吸引した酸素総量には、どれほどの差があると言うのか? 吸引酸素総量が同じでも、吸引に要した時間の長短だけで「熟成」と「劣化」に分かれてしまうのか? この件に関しては、戸塚先生も明確な回答をお持ちでなかった。…ということで、3年保存した「脱酸素剤パックワイン」検証のボトルたちの中には還元状態になっているものもあるのではないか、というのが私の参加前の想像でした。ふぅ。やっと本題に入れます。
2013年11月07日
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一方、普及品のコルクで立てておいた場合はそうはいかなそうです。この場合、瓶内に流入してくる酸素と結合するのに必要な遊離亜硫酸量は1×36=36+1.7=37.7ミリグラム×4=150.8ミリグラムとなり、添加した亜硫酸の量を超えてしまいます。というか、逆算すると、(20-1.7*4)/4=3.3となり、わずか3ヶ月かそこらで瓶詰め時のSO2を使い切ってしまうことになります。まあいずれにしても、安いコルクを使用した普及クラスのワインの場合は、早めに消費するべきということなのかもしれませんし、こういうことがあるから、SO2の添加量を多めにする→頭痛や二日酔いになる人が出てくる、ということなのかも。もっとも安いワインの場合でも、スクリューキャップを使うと話は全然違ってくるわけで、その場合、今度はSO2が全然逃げないことによる、還元のリスクが高まるということではないでしょうか。ところで計算していて思ったのですが、天然コルクの酸素流入量は、データ上でもあまりに幅がありすぎて、数値の置き方次第でいろいろ解釈できてしまいそうです。たとえば、前々項では、良質コルクでボトルが乾いている場合の想定を0.1ミリグラムとしましたが、これが0.2ミリグラムだとすると、(20-1.7*4)/4=3.33.3/0.2=16.5ヶ月となり、1年と数ヶ月で瓶内のSO2を消費することになります。どこかで「瓶詰め時に添加されたSO2は1年後には5分の1程度になってしまう。」という記述を読んだことがありますが、コルクの酸素透過量が上記のような数字だとまさにそういうことになるわけですね。一方で、「戦前とか50年代のようなオールドビンテージのワインが長持ちするのはワイン作りが今と異なっていたからではなく、SO2の添加量が多かったからではないか。」という説があります。これについて計算してみましょう。SO2の添加量を10倍の200ミリグラムと想定します。現在のEUの規制は、1リットル当たり、辛口赤ワインなら160mg、甘口白ワインは300mg、貴腐ワインは400mgとのことなので、あながちありえない数字ではないですよね。このうち遊離亜硫酸となって酸化抑制にあてられる分を約2/3とすると、200×2/3=約133(133-1.7*4)/4=31.55長期熟成を前提としてれば、当然コルクは上質のものを使っているでしょうし、ボトルも横にしているでしょう。ただし、経年変化によりコルクの性能は低下するでしょうから、ここでは酸素流入量を、良質&横向きにしては多めの0.1ミリグラム/月として計算してみます。31.55/0.1=315.5ヶ月=26.29年 もSO2が酸素をブロックし続ける計算になります。とはいえ、26年となるとそろそろリコルクを考えなければならなくなっている時期なので、その前にコルクの性能はもっと低下しており、酸素の流入とSO2の消費ペースは上がっているはずですね。すみません、酔っ払って書いているので、計算がいい加減かもしれません。さらにつづきます。<追記>ところで、SO2のことを考え出すと、いくつか合点のいくことがあります。自分の子どものヴィンテージの02年03年のワインをリリース時にいろいろ買い込んだことは折に触れて書いてきました。実は02年のブルのリリースは前年よりやや遅れて、真夏にもろにかかってしまったものがかなりあったのです。それで(たとえリーファーを使用していたとはいえ)港湾や陸路での輸送などにおける熱の影響が若干心配でした。しかし、最近になって開けている02年のブルたちはどれも綺麗に熟成していて、特に激しく劣化しているようなものには当たっていません。先だってロマネさんとワイン会でご一緒したとき、ロマネさんも「自分でリリース直後に買って保存しておいたものはえてして綺麗に熟成している」と仰ってましたが、私も同感です。一方でバックビンテージの並行ものなどを購入してみると、結構状態面で「?」をつけたくものがあるのは今も変りません。これなどは、リリースしてから入手するまでの間にあまり好ましくない流通環境におかれたことによるのではないかと漠然と思っていました。しかし、上記のような計算に照らして考えてみれば、「残存SO2量」のファクターも大きいのでは、という気がします。リリース直後はまだSO2がボトル内に結構残っているから、輸入時や配送時に酸化のリスクにさらされてもワインは持ちこたえられる。一方でバックビンテージになれば、SO2は使い果たされてしまっているケースが多いでしょうから、同じような扱いで仕入れてもイカれてしまうこともあるかもしれない。まあ、だったらそもそもSO2無添加の自然派ワインなどはどうなんだと言われそうですし、それに対する明確な答えはまだ持ち合わせていないのですが…。
2013年11月06日
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SO2については、おそらくビオワインなどに関心をお持ちの方のほうがよほど詳しいと思うので、あまり私が付け焼刃的な知識で書くのもおこがましいのですが、とりあえず話を進めますので、間違いに気づいたらやさしく指摘してやってください。まず、「きた産業」さんの下記の記事から見ていきたいと思います。。ワイン醸造の基礎 -亜硫酸の話ーhttp://www.kitasangyo.com/e-Academy/b_tips/back_number/BFD_19.pdf~ワインに添加された亜硫酸はその一部が当夜アルデヒド、アントシアニンなどと結合して、亜硫酸としてはほとんど効果の無い統合型になる。~残りの遊離型亜硫酸は、そのほとんどが一価のマイナスイオンHSO3-(重亜硫酸イオン)に、一部が乖離しない分子状のSO2になる。~これらの比率はワインのPHによって異なり、PHが高いほど抗菌活性は弱くなる。~遊離型亜硫酸を含む貯蔵中のワインに亜硫酸を追加する場合は、ほとんどが残るという意見と、30% ぐらいは結合型になると言う意見がある。~亜硫酸を添加していてもフェノール化合物の酸化的熟成を完全には防げない。(フェノール化合物も同様に酸化されやすい物質なので)~熟成中の赤ワインに亜硫酸を添加する意義は、亜硫酸で香りを酸化から守ってやりながら、フェノール化合物の酸化的熟成を進めることにある。亜硫酸の規制量は、たとえばEUの場合、1リットル当たり、辛口赤ワインなら160mg、甘口白ワインは300mg、貴腐ワインは400mgとのこと。SO2の添加タイミングはプレス時や瓶詰め時など何度かあるようですが、瓶詰め時には一般的に30~60mgぐらい添加されるケースが多いと聞いています。(間違ってたらご指摘ください。)ここから先はまったく机上の計算になりますが、仮に40mg添加したとして、その半分が遊離亜硫酸として残り、流入してきた酸素と結びつく(酸化の抑制に使われる)とします。実際にはもっと多くのパラメーターがあるでしょうし、こんなにシンプルな話ではないと思いますが、ここでは単純化して計算してみます。前々項のエントリーで引用したとおり、酸化抑制のために消費されるSO2は酸素流入量の4倍程度になるとのことです。したがってヘッドスペースの酸素と合わせたとしても、寝かせた場合 0.36(3年間の流入量)+1.7(ヘッドスペース)×4=8.28(酸化抑制に必要なSO2の量)
2013年11月05日
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前回紹介した「きた産業」さんの記事の8ページ目に各素材別コルクの酸素透過量データがグラフ化されています。http://www.kitasangyo.com/e-Academy/wine/wine_closure_column.pdf軸が対数軸なので、正確な数字を読み取りにくいのですが、良質なコルクを湿らせた場合(1st quality bark closure wet)→約0.005/月 ~ 約0.1ミリグラム/月 ぐらいのレンジに線が引かれています。一方、コルクが乾いている場合(bark closure dry:良質か並質かの記載はなし)は0.05~1.00ミリグラム/月 のレンジに引かれています。いずれにしてもかなりの幅がありますね。5年~10年、あるいはそれ以上の熟成を想定したワインであればそれなりのコルクを使っていると想定されますので、まずはそれぞれのミニマム値に近いほうの数字(寝かせた場合=0.01、立てた場合=0.1)を、仮にボトルを寝かせていた場合と立てておいた場合の酸素透過量に見立てて、3年後の酸素流入量の累積値を計算をしてみました。(↑ということで、全くもって机上の計算です。)良質コルクでコルクが湿っている場合(ボトルを寝かせていた場合を想定) 0.01ミリグラム/月×36=0.36ミリグラム良質コルクでボトルが乾いている場合(ボトルを立てておいた場合を想定)0.1ミリグラム/月×36=3.6ミリグラム並級のコルクを立てておいた場合1ミリグラム/月×36=36ミリグラムちょうど十倍ずつになりました。条件がよい場合(セラーで寝かせておいた場合)は、3年経過してもヘッドスペースの酸素(1.7ミリグラム前後)よりごくに少ない量しか流入してきませんが、コルクが乾いていると(=立てておいた場合)累計でセラーのヘッドスペース分以上の酸素の流入を許す計算になります。並級コルクの安価なワインを3年にわたって立てておくと、かなりヤバイことになりそうです。ここで3年と見立てて計算したのには理由があります。かつてRWGの黎明期の「ワインの保存」の連載でボトルを立てておいた場合と寝かせておいた場合の3年後の検証をしたことがあって、そのときの試飲では明確な違いを見つけられなかったからです。ちなみにこのときの検証ワインはCH.タルボ99年とM・グロの99NSGでしたので、使用コルクはそれなりに上質なものだったのでしょう。ということは、この程度の酸素の流入量は中期的にワインの香味に大きな違いを生じないということでしょうか。その前に、ワインの熟成や劣化に関連する大きなファクターとして忘れてはいけないSO2について、次項でこちらと併せて考察してみたいと思います。
2013年11月04日
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さて、前のエントリーで「わずかな通気性が確保される」と書きました。ここで「おや?」と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。「ワインのコルクが呼吸するというのは俗説で、コルクは空気を通さないのでは?」よく愛好家の間で交わされる議論ですね。当ブログでも以前議論になって、堀賢一さんにまでお出ましいただいたことがあります。最近はスクリューキャップや合成コルクの登場などもあって関連した研究データも増え、ネット上でもいろいろなデータが入手できるようになりました。下記の記事などは必読です。大変参考になります。「ワイン醸造家のみなさんへワインの選択肢、スクリューキャプ?合成コルク?天然コルク系?(PDF)」http://www.kitasangyo.com/e-Academy/wine/wine_closure_column.pdfとくにこの中の3/4(8ページあたり)のデータは実に面白いです。少し紹介すると…・一般的な天然コルクでは0.2~0.5ミリグラム/月 程度の酸素の流入があり、これは0.8~2ミリグラム/月 のSO2のロスに相当する。スクリューキャップではこれが0.01~0.03ミリグラム/月ぐらいになる(0.04~0.12ミリグラム/月のSO2のロス)。・一般論として、酸素1ミリグラム/月の透過は、4ミリグラム/月のSO2のロスに相当。・コルクは品質によって酸素の流入量にかなりの幅があり、1級天然コルク(良質なもの)でボトルを横にしていればスクリューキャップ並みに低いこともある。一方で縦置きにしている場合は1ミリグラム/月になる場合もある。・ワイン液面がコルク下20mmの場合、ボトルのヘッドスペース内の酸素の量は約1.2ccになる。ボトルのヘッドスペース部分の酸素は、ワインの熟成や劣化に関係のあるファクターとしてよく引き合いに出されますね。生産者の中にはそれを嫌って、ヘッドスペース部分に不活性ガスを注入したり、あるいは極力ヘッドスペースギリギリまで充填する生産者もいます。ところで上記の酸素の単位がまちまちですね。ヘッドスペース内酸素だけがccであらわされています。これを重さに換算するとどれぐらいになるのでしょうか。ネットで調べてみると22.4リットルが32グラムに相当するそうなので、単純に計算すると1.2ccの酸素は1.714ミリグラムということになりました。ヘッドスペースの酸素量とを比べてみると、ヘッドスペースのインパクトよりもむしろコルクの通気性って意外に大きいんだなぁと思いませんか?私はそう思いました。(※といってもあくまで標準コルクで月に0.14cc~0.35ccというミクロの世界の話です、念のため。)並級コルク(おそらく千円前後あるいはそれ以下のレンジに使われる短くて粗いもののことだと思います)を立てておけば1ミリグラム/月とのことですから、最悪2ヶ月程度でヘッドスペースにあるのと同等かそれ以上の酸素が流入することになります。安価なレンジのワインはもともと構成要素の少ないことが多い(酸化に弱い)上に、これだけの酸素の流入があれば、たしかに長く置いておくのはリスキーでしょう。というか逆に早めに飲まれるものだから、このようなコルクでもOKという判断なのでしょうね。(ここまでで、なにか計算間違ってませんかね?正直あまり自信はありません。)一方で、愛好家の方々がセラーに長期にわたって保存しておくようなレンジのワインはコルクも当然それなりのものを使っていますから、セラー内でボトルを横にして湿らせておけば、スクリューキャップに迫るレベルの密閉性能を発揮する、すなわちほとんど酸素の流入を考慮に入れなくてよいということになります。あれ?ということはですよ。ボトルを寝かせて置いた時(コルクが湿った状態)とずっと立てておいた時(コルクが乾いている状態)とでは、長期熟成においてはボトル内に進入してくる酸素の量はかなり違ってくるということになりますよねぇ。大丈夫なんでしょうか?この辺の試算を次回のエントリーでしてみようと思います。
2013年11月03日
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次号のリアルワインガイドのコラムで、先日参加した「脱酸素パックワインの検証」ワイン会のことについて書く予定です。脱酸素パックワインは、楽天ブロガーの大御所である南さんが自身のブログで提唱している保存法。気体を通さないガスバリアコーティングの袋に、脱酸素剤と一緒にワインを入れ密封してしまうことによってワインの劣化を防ごうというアイデアです。カステラなどのお菓子でよく使われているものを想像すればわかりやすいでしょう。http://plaza.rakuten.co.jp/romantei1925/diary/200706240001/http://plaza.rakuten.co.jp/romantei1925/diary/200707010001/http://plaza.rakuten.co.jp/romantei1925/diary/201106120000/酸素を遮断してしまうというコンセプトは古くて新しいもとでもいいましょうか。かつては菊屋大久保酒店さんが「デファンスール」という名で商品化していましたし、ネット上でも真空状態で実験している方などもいらっしゃるようです。私が何度となく取り上げているワインセーバー「Why not?」もまたしかりです。そんな中、この方法の面白いところは、いったん用意さえしてしまえば非常に安価にできること(1本あたり35円とか)と、もうひとつ(これが結構ポイントではないかと思うのですが)真空状態にする場合などと違って、脱酸素化した空気が袋内に残ることでわずかな通気性が確保されることです。この脱酸素パックを使って自宅で3年保存したワインをセラー保存のものと比較検証しようという会に先日参加させていただいたのです。ちなみに主催者は南さん本人ではなく、愛好家の方です。RWG誌読者でもあるその方がが創刊当時私が「ワインの保存」の連載をしていたことを覚えていてくれて、今回お声がけをいただいた次第です。ありがたいことです。詳しいことは次号のリアルワインガイドのコラムに書く予定ですが、関連して気づいたことや思ったことなどをつらつらとブログで断片的に書いていこうと思います。というのも、今回の検証と考察を通じて、いままでもやもやとしていたワインの保存と劣化に関するかなりの部分がクリアになった気がするからです。なんだか真理に一歩近づいたかのような気分です(笑)。
2013年11月03日
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この日、私は主賓の方が好きなトルショーと、予備ボトルとしてジャドの白を持ち込みました。シャルムシャンベルタン03(ジャッキー・トルショー)03年ということでどんな造りかと思いましたが、いつものトルショーさんでした。繊細な酒質の中にジューシーでピュアな果実味が健在です。パワーはありませんが、しなやかさが際立ちます。これだけグラスがボルドーグラスだったのがなんとも残念。ピュリニーモンラッシェ・シャンガン02(ジャド)料理がもう一品あるとのことだったので、急遽スペアを出しました。ドメーヌ・ガジェものです。ジャドの02年の1級白は何本か飲みました。いずれもすばらしい出来だったので(おまけに安い)、懐に余裕のあるときに買うようにしています。このボトルも厚みのある果実味とバニラ風味が溶け込んでよい状態になっていました。トルショーはすっかり見かけなくなりましたね。我が家に残っているのは02の特級が2本と05年の1級が何本か。大事に飲もうと思います。★楽天のトルショー。96ロッシュが10万ですか…★
2013年11月02日
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前のエントリーからのつづきです。パイサール02D.O.ビエルソ。珍しいメンシア種によるワイン。ブラインドだとメルロと答えそうです。なめらかかつしなやか、エレガントな酒躯。良い意味での土っぽさ。きめ細かいタンニン。ニュイサンジョルジュ・レ・サンジョルジュ96(Rシュヴィヨン)ほぼ熟成のピークにあたるのではないでしょうか。各要素が溶け込んですばらしい熟成香が出ています。果実味濃厚でエキス分たっぷり。美味しい。クロ・ヴジョ97(ルイ・ジャド)ドメーヌものです。シュヴィヨンとは対照的に透明感があり、クリーンな色合い。とてもクラシックにまとまった秀逸な熟成ピノでした。私が持ち込んだワインは次のエントリーにて。
2013年11月01日
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