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2009.09.26
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『雁』森鴎外(新潮文庫)

 文豪ですね。
 この小説家の作品も、考えれば私は、長く読んでいなかったように思います。
 というより、「漱石・鴎外」と並べた時、私は「漱石派」なんですね。
 漱石と鴎外の小説中、既読の作品数の差に、かなりの隔たりがあるように思います。

 小説家にも、「鴎外派」と「漱石派」がありますね。
 実際にこの両者に世話になった小説家は言うまでもなく(例えば荷風とか、芥川とか)、その後の小説家にもそれはありそうです。

 「漱石派」の方が多そうな気はしますが、今思い出してみますと、えー、例えば、太宰治・三島由紀夫なんかは「鴎外派」ですね。
 太宰は、確か『女の決闘』に、「漱石よりも鴎外」と書いていたような気がしますし、三島も鴎外の文体の影響を受けたと何かに書いていたように思います。
 安吾は、以前にも触れましたが、漱石嫌いです。
 しかし梶井基次郎は、「漱石派」ですね。手紙に「梶井漱石」と書いてあったりしています。谷崎も、「漱石派」ですね。『それから』に大層感心をしていました。

 こうして考えてみると、存外「鴎外派」も多いです。
 というより、鴎外は、いかにも「玄人好み」な感じがします。

 なぜこんな話になったかといいますと、鴎外について、いえ、この『雁』について、僕はよくわからない事がふたつあったからです。
 それを考えながら、この作品を読み始めたのですが、分からない事とはこのふたつです。

  (1)鴎外は、どんな読者を想定してこの小説を書いたのか。
  (2)鴎外は、そもそもなぜこんな「恋愛小説」を書いたのか。

 この(1)と(2)は同根と考えてもいいのですが、とにかくそんな事が気になりました。
 で、読み始めると、ますますこれが気になるんですね。なんと言っても、もっとも典型的な事例は、こんな表現部ですね。

その後だいぶ金が子を生んでからは、末造も料理屋へ出這入することがあったが、これはおお勢の寄り合う時に限っていて、自分だけが客になって行くのではなかった。それがお玉に目見えをさせると云うことになって、ふいと晴がましい、solennelな心持ちになって、目見えは松源にしようと云い出したのである。

 「solennel」というのはフランス語で「儀式張った」という意味だそうです。注にそう書いてあります。

 まず鴎外が想定している読者は、こんなフランス語が普通に読める人達なんですね。
 考えてみれば、そうなのかも知れませんね。この作品は雑誌「スバル」に連載ですが、「スバル」を読む読者というのは、まー、大学生か大学関係か、要するに外国語は二種類くらいは理解できるインテリゲンチャなんでしょうね。

 つまりこの小説は「インテリゲンチャ」向きの小説である、と。

 もっとも鴎外は、晩年その世界に入った「史伝」の多くを、「東京日々新聞」「大阪毎日新聞」に連載し、難解で読者が困ったという話を聞いた事があります。

 つまり、鴎外は、読者の事なんか何も考えなかったのだ、とも言えそうです。
 この辺は、漱石と鴎外の、大いに異なるところですね。
 もちろん漱石は、朝日新聞に入社後は専業作家として作品を書いていたのですから、読者の設定とその好みに合う作品を描く事は、本職を軍医として持っていた鴎外とは、そもそも比較の対象にならないのかも知れませんが。

 一方で鴎外は、小説は何を書いてもいいものだという、その時代としてはとても先見性の高い考え方を持っていました。
 だから(「だから」なのかどうかは少し迷いますが)、同じく「スバル」に『ヴィタ・セクスアリス』なんかを書いて(この本は主人公の「個人性欲史」であります)、軍人(軍医)であるのにかかわらず、「発禁処分」を受けたりしていますね。

 えー、とりあえずここまでをまとめてみますと、こういう事が言えそうですね。

鴎外はほとんど「白痴的」に、小説『雁』を書きたいから書いた。

 うーん、画期的な『雁』論じゃないかしら。
 さらに、この画期的な『雁』論は、次回に続きます。


 よろしければ、こちら別館でお休み下さい。↓

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Last updated  2009.09.26 07:12:49
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暇やから、ほんまに今日は暇やから  
今猿人 さん
、それに今回は鴎外がテーマということやし、で、初めて来てみました。色々書いてますなぁー。
さてさて、私見で御免。「つまり、鴎外は舞姫に尽きます、はい。それと、鴎外訳の『即興詩人』。これ翻訳というより、実は鴎外の(創作的)意訳で、ホント良いです。皆さん、読んでみてね。」
お邪魔しました。また来ます、かぁー?。 (2009.09.26 10:48:23)

Re:暇やから、ほんまに今日は暇やから(09/26)  
analog純文  さん
 今猿人さん、コメントありがとうございます。
 いかにもヒマそうですね。
 あわせて、大兄はいかにも「鴎外派」でありましょうねぇ。
 鴎外派は、玄人好みですね。
 そもそも鴎外の「真骨頂」とは何かを考えると、何というか散文的に言えば、「感性の理性化」みたいな感じがするんですが、「感性の理性化」って何と言われると、そこがそれ、鴎外派ですわ。はは。
 ということで。 (2009.09.26 13:52:04)

仕方がないので?  
今猿人 さん
「お気に入り」に入れときます。(クスン)

ところで、質問が。
その1 詩歌はどうなっとるんですかぁ?
その2 ここには、こちらと掲示板と二つありますが、その使い分けは?
その3 私のhpにリンク掛けましょか?
その4 今日も暇ですかぁ?

それでは(去) (2009.09.27 07:43:52)

Re:仕方がないので?(09/26)  
analog純文  さん
 今猿人さん、コメントありがとうございます。
 「お気に入り」ありがとうございます。泣かんでもよろし。
 ご質問ですが、「詩歌」は現在のところ、予定に入っていません。というか、考えたこともありませんでした。ちょっと考えてみますね。(ただ、この後、「詩人」登場予定が一度あるかな。)
 「その2」ですが、私もこのブログの使い方について熟知してませんが(「ホーム」と「ダイヤリー」の使い分けも出来ていません。)「掲示板」というのは、各回の記事に関わりない書き込みの欄ではないかと愚考致します。
 「その3」よろしくお願い致します。私もしてみますが、うまく行くかしら。
 「その4」あ、えー、残念さんながら、今日に限って、ちと、忙しい、かな。えー、ごめん。
 では、また。 (2009.09.27 08:35:19)

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