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chiko619 @ Re:新参者(09/22) 「新参者」読みました。 東野圭吾さんは、…
kimiki0593 @ 相互リンク 初めまして、人気サイトランキングです。 …
Twist @ こんにちは! 遅ればせながらあけましておめでとうござ…
Twist @ こんにちは! 遅ればせながらあけましておめでとうござ…
Twist @ はじめまして^^ 先ほどこのロングインタビューを読み終え…
2014.09.24
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 しかし、実際には長い間手にすることなく、やっと今回読むことになった。
 だが、それで正解だった。
 もし、何年か前に、本著を手にしていたら、きっと頓挫していただろう。

 本著の副題は「向精神薬の科学と虚構」。
 今年 『ヒーリー精神科治療薬ガイド』 『精神科の薬がわかる本 』
『なぜうつ病の人が増えたのか』
 薬学が専門ではない私には、本著はとうてい理解できなかったと思う。

本著の内容については、「監訳者あとがき」に適確に述べられている。

  本著は、精神疾患は脳の病気であるという近年の精神医学が拠って立つ根本命題に挑戦し、
  それが虚構である可能性を指摘している。(中略)
  本書の言うところのいわゆる生物学志向の高い精神科医の一人である監訳者も、
  強いインパクトを受けた。(中略)
  精神科医のみならず、精神医療に携わる者や精神薬理学の研究者から、
  患者さんとご家族まで、一読に値するだろう。
  特に、精神科医には必読の書と言ってもいいのではないかと思う。(中略)
  ただし、本書に詳細に書かれている薬物療法の否定的側面だけを
  メッセージとして受け取って欲しくない。

  薬物療法の有効性を否定しようとするものでは決してないのである。
  むしろ、薬物療法に偏るのではなく、
  精神医学はもっと豊かなものであるというメッセージが含まれている。
  本書で特に読み応えがあるのは、向精神薬の発見からプロモーションに関する歴史である。
  (p.319)


精神疾患に有効な治療法がなく、薬の必要性が高かったので、それらは採用されたのである。
うつ病の人には、セロトニンとノルアドレナリンの欠乏があると言われているが、
執筆時点では、患者の脳のそれらの濃度を測定することは出来ず、あくまで推定だ。

  神経化学と薬の作用の神経薬理の知識は大いに増したが、
  理論のほうはここ50年ほとんど変わっていない。
  現在までに、薬理学的知見や技術が大いに進んだ。
  ところが情動に関する生化学的研究は、
  脳に全部で100以上あると推定される神経伝達物質のうち、
  せいぜい3つか4つのものとの関連にかぎられている。(p.145)

  どの精神障害であっても、
  原因や薬の作用メカニズムはわかっていないというのが本当のところだ。
  それにもかかわらず、精神障害は生化学的なバランスのくずれによって生じるという理論が、
  広く受け入れられている。(p.217)

そして、これに関連して、監訳者は、こう記している。

  アミン酸仮説では、脳の障害による構造的変化は想定しておらず、
  機能的な変化を想定している。
  しかし、MRI画像などの技術の急速な進歩により、
  うつ病は脳の構造的変化をともなうのではないかという知見が蓄積されてきた。
  うつ病は脳の機能的変化である、
  という考え方から器質的変化である、という方向にシフトしてきている。
  こうした背景のもと、
  ストレスホルモンの受容体を標的にした抗うつ薬の開発などもさかんに行われており、
  製薬会社がたんにセロトニンなどのアミンにこだわっている時代はやはりすぎさりつつある。
  (p.321)

上記の文章が書かれたのは、2008年1月。
ここで述べられている「脳の構造的変化」とは、
「神経細胞新生仮説」 に繋がるものなのだろうか?
その辺りは、私には分からなかった。  

次に興味深かったのが、精神障害の治療法をめぐる二つの派閥の勢力争い。
『うつに非ず』 『精神科医が狂気をつくる』 で記された対立が、ここでも紹介されている。

  精神障害の治療法を比較検討する研究はすべて批判の対象となりうる。
  たとえば、精神療法が効き目が小さいとする研究が出ると、
  それは経験不足の精神療法家が行ったからであり、結果はあまり当てにならないと言われ、
  薬物療法があまり有効でないと結論する研究には、投与量が適切でないとか、
  最新の薬が使われなかったという具合に批判が出る。
  薬の有効性を疑う人たちは、薬の副作用や、
  再発を防ぐためにずっと薬を投与しつづけることの危険性を口にする。
  精神療法に批判的な人は、自殺などの好ましくない結果があると、
  不適切で効果のない精神療法のせいだと批判する。(中略)
  様々な治療法についての研究の行われ方、結果と評価の受け止められ方は、
  薬を処方できる精神科医と
  処方のできない心理士やソーシャルワーカーの間の縄張り争いを反映している。(p.279)

そして、本著の中で、私が最も考えさせられたのが、次の記述。
精神障害の治療について、核心を突いたものだと思った。

  精神障害の患者と家族は、彼らが抱える問題が
  精神的なものではなく身体的なものであると考えたがる傾向がある。(中略)
  精神障害が好まれない大きな理由の一つは、精神障害と診断されると
  スティグマ(社会的烙印)をともなうことになるのではないかという危惧である。
  精神的問題は、その人が弱い人間であり、
  問題を克服する努力が足りない証拠だと信じる人が、いまだにたくさんいるのである。
  それはちょうど、アルコール依存症の人を、
  意志が弱く道徳心に欠けると非難するのと同じである。
  精神障害であると診断されると、
  患者の家族は自分たちが非難されているように感じることがよくあるし、
  実際、家族が違った接し方をしていたら問題は生じなかったかもしれないと考える人もいる。
  その上、もし問題が生化学的なものだということになれば、
  薬で治すことができるように思えるし、
  さらにまた精神療法家にも誰にも、個人的なことをさらけ出したくない人も多い。
  問題が身体的なものであるならば、その必要もないのである。(p.285)





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Last updated  2014.09.24 12:06:28
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