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出帆篇に続くシリーズ第13巻。 とうとう、幸のお話は今巻で完結。 かなりのスピードでお話は進んでいきますが、それでも波瀾万丈、紆余曲折。 最後の最後まで、目が離せない展開です。 ***長月朔日、30軒程の呉服商が名乗りを上げた吉原の衣装競べが行われる。扇屋の花扇花魁が纏う日本橋音羽屋の装束は、桁外れに金銀を掛けた上全てを考え尽くしたもの。芸者歌扇の漆黒の縮緬の小袖に銀鼠の帯、変わり島田に菊栄の笄の佇まいも人々の心を捉える。その時、引手茶屋の二階には、音羽屋忠兵衛と井筒屋三代目保晴の姿が。花扇と歌扇の一騎打ちは、僅差で花扇に軍配が上がり、日本橋音羽屋は大店のお抱えとなる。しかし、歌扇もそれ以後遊客から引っ切り無しに座敷に呼ばれるように。一方、屋敷売りを専らとする新店を開く準備を進めていた幸は、菊次郎に勧められ、呉服町にある白粉屋・末広屋の間口十間の居抜きを、菊栄と半分ずつ買い上げることに。翌年初午、菊栄の開店日、歌扇が「ただ菊栄の笄ぞ」と唄うと、手代たちも唱和しつつ引き札を配ったことで評判を呼び、江戸中に知れ渡る存在に。また、五鈴屋呉服町店も高家や豪商など合わせて40軒程を顧客に持つようになり、穂積家からは、末娘の婚礼衣装と嫁荷を五鈴屋に任せたいとの申し出を受ける。そして、力造も二代目吉之丞の色「王子茶」を生み出すことに成功、大流行する。ところが、末広屋が家屋敷を二重売り、五鈴屋と菊栄の方は「沽券帳」に記載がないことが判明。幸と菊栄は、両店の立ち退きを求めている名義人・井筒屋三代目保晴と名主宅で対峙、立ち退くか本公事にするかを迫られ、本公事として町奉行所に願い出ることに。商いを続けられなくなった菊栄は店を閉じて江戸本店に戻り、幸は屋敷売りを休む。そして、江戸店近くで出火、逃げる最中、菊栄に似た人影を見つけ浅草寺の方角を目指した幸は、焔を隠し持った風に襲い掛かられ、賢輔に負ぶわれて逃げるも生死の淵を彷徨うことに。浅草呉服太物仲間の5店と会所が焼け、江戸店周辺も被害甚大だったが、見舞いに来た富五郎は、以前借りた反物代と志にと小判20枚を差し出し、客の足が向く工夫のため使ってほしいと言う。幸は会所の再建と田原町三丁目を「ここに来たら何でも揃う」場所にすべく準備を進め、揃いの王子茶の水引暖簾を掛け、店の表と内に床几を置き、双六仕立ての店舗案内を配ることに。菊栄もそこで新店の準備を始めると、浅草寺の四万六千日が終わる頃には客足が戻り始める。そんな時、音羽屋忠兵衛が密告により謀書謀判の罪で捕縛され、大番屋に連れていかれる。幸は賢輔と共に井筒屋を訪ね、音羽屋の手代が栗綿の買占めと末広屋の二重売りの主犯と知る。が、手代は逃亡し行方不明、主人の忠兵衛に奉行所で裁断がなされ、妹の引取を幸が命じられる。 「私は音羽屋忠兵衛の女房です。 一緒に江戸を去り、行きついた先で、必ず立ち直ってみせます。 こないなことで負けしまへんよって」 「身体にだけは気を付けなさい」(p.338)大火から7ケ月、神無月四日の天赦日、揃いの王子茶色の半纏を身に付けた男たちが、田原町の買い物双六を配り始めると、日を追うにつれ人々で賑わうように。師走十四日、創業16年目を迎えた江戸本店に、16年前薬玉紋の反物を買えなかった女性客が、その時背負っていた赤子と共に訪れると、主従は「お待ちしていました」と迎えたのだった。 ***2026年春に放送予定のTVドラマのシーズン3は、第9巻あたりのお話からのスタート。果たして、今巻までのお話を全て描き切るのか、それとも後半部はシーズン4?さて、原作の方も、実はまだ「特別巻」の上下2巻が既に刊行されていますので、私は、引き続き読み進めていこうと思います。
2025.10.29
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風待ち篇に続くシリーズ第12巻。 いよいよお話もクライマックスに近付いてきました。 ここまで読み進めてくると、もはやTVドラマとは違う世界が頭の中に出来上がり、 そこで、登場人物たちがいきいきと動きまわっています。 ***浅草太物仲間の年内最後の寄合で、丸屋の仲間入りと浅草呉服太物仲間の申し入れが決まり、幸は早速、かつて賢輔が考案した「家内安全」の文字散らしの小紋染めの準備を始める。勧進大相撲春場所初日は藍染め浴衣地を求める客で賑わうも、以後8日間は雨で静かな日が続く。一方、市村座で2代目吉之丞の『柳雛諸鳥囀』が始まり、日本橋音羽屋が衣装を盛大に売り出す。そして、奉行所から冥加金1600両を出せば浅草呉服太物仲間の結成を許すとの沙汰が。法外な要求に腰が引ける者もいたが、幸は惣次の助言に従って、蔵前屋に口利きを頼み、呉服切手のアイディアと「家内安全」の小紋染めを示しながら、仲間で扱おうと提案。さらに、千代友屋を訪ね切手を準備し、町奉行所の外倉を訪ね1500両の貸金放棄を願い出る。呉服商い再開後、武家の客も目立ち始めた頃、旗本・本田家から嫁荷の注文が入る。ところが、船荷が届く直前、用人・今井藤七郎が来店し、他店に任せざるを得なくなったと謝罪。解約了承後、輿入れ日が長月朔日と知った幸は、今津村の弥右衛門からの文に記されていた江戸歴には記載のない日食について情報提供するが、今井は腹いせかと立腹し立ち去った。今井は音羽屋に相談、変更不要の返事を得るが、相手家と相談して念のため輿入れ日を一日延期。本田家は事なきを得たが、当日大名を招いての朝茶会を催した音羽屋忠兵衛は不興を買うことに。一方、武家間で五鈴屋の評判が上昇、旗本・穂積家奥方の来店など名家や豪商の要望も増えるが、幸は「今、五鈴屋が何を求められ、どう応えるべきか」を見極め、店主を賢輔へ繋ごうとする。砥川から紹介された吉原の大文字屋市兵衛から衣装競べ参加を要請された幸は、以前断った花鳥楼の衣装競べとは、今回は趣旨が違うことを確認する。そして、帯結び指南に参加していた三味線の師匠・お勢の教え子で、年季明け後も吉原に残って芸一本で身を立てようとしている扇屋の遊女・歌扇に声をかける。 ***この他にも、菊栄が自らが考えた笄(こうがい)の図案を和三郎に見せ、試作を依頼したり、菊次郎が染物師・力造に2代目吉之丞の色を作ってくれるよう依頼したり、鉄助が結婚したりと、色々と変化がありました。中でも注目は、自身の店の名を「菊栄(きくえい)」とすることに決めた菊栄の次の言葉。 「なぁ、幸。 私ら、反物と簪、と商う品は違うけんど、 何か一緒にできる日ぃが来るように思います。 どないな形になるか、今はまだわからへんのだすが、 五鈴屋と私の店、互いに支え合うて何ぞできる日ぃが、きっと来ますやろ(p.86)」第3巻でも同様のことを言ってましたが、最終巻でそれが実現することを期待しています。
2025.10.19
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前巻が発行されたのが2023年08月末。 2年余を経て手にした新刊です。 対局シーンに注ぎ込まれる絵力は圧巻で、まさに羽海野先生の面目躍如! 最近、どんな作品からも感じたことがなかった圧倒的パワーでした。 ***島田八段との対局を前に、屋上で林田と一緒にカップ麺とおにぎりを食べる零。が、対局に向け集中するあまり、ひなたへの連絡が疎かになった零は、心配で三日月堂へ。三角公園で新メニューのおやつを屋台で売るひなたの元気そうな姿に、零は胸の中がキラキラ。しかし、会えない寂しさを忘れようと菓子作りに没頭していたひなたは、零を前に本心を吐露。対局前、普段通り過ごす島田に次々と想定外の事態が発生し18分の遅刻、持ち時間54分を失う。序盤、島田はいつもと違う展開で零を締め付け、その攻めをしっかり封じてからいよいよ開戦。が、零は辛抱強くバランスを取り続け、相手に主導権を握られても渡し切ることは絶対にしない。そして、締め付けが取れ始めると、力づくで畳みかけて来る圧力に押されながらも指運で勝利。対局後、ひなたの作った雑炊を食べながら、二人で語り合う零。一方、上野のおでん屋には、土橋に敗れたスミスを始め研究会メンバーや神宮寺、柳原らが集う。 ***それにしても、対局前から対局中、そして対局後の島田八段の心理描写が本当にスゴイ。どの頁からも、島田の心の奥底に潜む「気」が怒濤のように押し寄せてきます。そして、巻末の羽海野先生によるメッセージには、もう言葉がありません……最終巻、楽しみに待っています。お身体を大切になさってください。
2025.10.19
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合流篇に続くシリーズ第11巻。 今巻は、毎年開業日に訪れる夫婦連れの正体が明らかになることで大きな進展が。 幸はその好機で妙手を重ね、浅草太物仲間と共に大躍進を遂げていきます。 そして、巻末には、これまででも最大級の感動を呼ぶ展開が。 ***開店8年目を迎えた五鈴屋江戸本店は大いに賑わい、お梅と梅松の祝言も滞りなく行われる。明けて宝暦10(1760)年、5年前の夏に縮緬を10反買って行った下野国の呉服商いの男が再訪、下野国では何年も前から綿栽培が試されている様子を語り去って行った。一方、菊栄は二代目菊瀬吉之丞の「娘道成寺」顔見世舞台で披露目される簪の準備を進めていた。しかし、如月に入ると火事が相次ぎ、江戸の街の3分の1近くが焦土と化す。幸は、所縁のひとたちの無事を確かめるが、日本橋音羽屋は全焼、結の安否は不明のまま。そこで、井筒屋3代目保晴を訪ね、結は無事だが音羽屋の証文類は全て焼けたと聞かされる。保晴は、店主不在の夜間に火が回って来た時、奉公人が誰も店や蔵を守らなかったことに触れ、 「忠義に過ぎて命を落とされるんも難儀やが、 大事の時、頼りになる奉公人が一人も居てへん、いうんは店にとって一番の不幸や」 奉公人は店を支える柱やさかいにな、と惣次は話を結んだ。 ああ、この人は変わった - 幸は前夫の背中をしげしげと眺める。(p.73)大火から10日程後、五鈴屋の藍染浴衣地が八ツ小路で倍の値段で売られていると聞き、幸が現地に出向くと、そこで5年ぶりに結に再会、しかし妹は捨て台詞を吐いて立ち去る。日本橋音羽屋が店を広げ、太物商いにも乗り出すことを受け、幸は浅草太物仲間の寄合で、仲間の全店で五鈴屋の型染めの技を共有し、藍染浴衣地を商えるよう道筋を付けることを提案。賢輔の描いた「火の用心」の図案を見せながら、自らの商いに対する信念を語り協力を請う。一方、音羽屋忠兵衛の横やりで二代目吉之丞の『娘道成寺』が差替、菊栄の簪の披露目は白紙に。さらに、木綿の長雨による収穫量の減少に加え、繰綿が買占められ、白生地が入手困難になるも、寄合では、河内屋が先陣を切って直買いしている店が3件、蔵の在庫を仲間に融通することに。そして、五鈴屋の型染めの技が和泉屋出入りの染物師から漏れてしまうが、型紙は無事だった。霜月朔日から始まる市村座の顔見世興行で、主演・源蔵が藍染浴衣を舞台衣装として使い、舞台装束は日本橋音羽屋が揃えると聞いた佐助は、今回の一連の出来事の裏側について皆に語る。しかし、火伏守りの浴衣地は各店でよく売れたものの、白生地の入荷見込みが立たず品薄状態。そんな時、5年ぶりに富五郎が江戸本店を訪れ、幸と菊栄は中村座の千穐楽に招待される。その花道で、揃いの衣装の二人の女形、富五郎と吉之丞が両挿しの簪を揺らし美しく舞い踊った。宝暦11(1761)年如月8日、夫婦連れで毎年創業日に訪れる男性客が巨漢の男児を伴い現れる。男の正体は相撲年寄・砥川額之介で、藍染浴衣を30人程の力士全員に贈りたいと言う。手形の柄と共に各力士のそれぞれのしこ名を柄にしようと、幸は書家・深川親和に会いに行く。そして、店に訪れた砥川には、幕下力士には手形の柄、幕内力士には各々のしこ名柄を提案、同じ反物を浅草太物仲間で扱う了承を得て、半纏用に手形柄を河内木綿に染めるよう依頼される。葉月17日、中村座と市村座が三度火災に見舞われ、幸は菊次郎を訪ねるが面会は叶わなかった。そして、しこ名と手形柄の反物が出来上がり、興行初日に浴衣地が各店で売り出されることに。初日前日、触太鼓を打ち鳴らす男たちの纏う手形柄の半纏が大きな評判を呼ぶと、神無月11日の勧進大相撲初日の取り組み終盤から、反物を求める人々が各店に押し掛けた。神無月25日、浅草太物仲間の寄合では、和泉屋を始め各店店主が五鈴屋に礼を述べる。そして月行事が、太物商に転身する駒形町丸屋が仲間に加わることを次回採決することを告げ、さらに河内屋が、これを機に浅草呉服太物仲間へ看板を書き換えることを提案。それは、五鈴屋が再び呉服を商えるようになる道筋を切り開くものだった。 ***浅草太物仲間では、下野国の綿栽培を支援することも決まります。幸が江戸の地で信頼のおける仲間を増やし、その結束力を高めていったことが、大店に対抗する土台となり、自らの道を切り開いていくことに繋がりました。お話も完結まで残るところあと2冊、一気に読み進めていきます。
2025.10.13
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淵泉篇に続くシリーズ第10巻。 前巻では、結衣に振り回され、臥薪嘗胆の日々を過ごす幸の姿が描かれましたが、 今巻は、それを乗り越え、五鈴屋が太物商として大ブレイクを果たす痛快な展開。 特筆すべきは、幸と五鈴屋を支える、菊栄の先を見越した言動の数々です。 ***力造が仕上げた木綿地の藍染反物を寛ぎ着としての浴衣地に、幸はこれを密やかに進めていく。一方、西隣の提灯屋・三嶋屋からは、遠州に移るので家屋敷を買ってもらえないかとの話が。そして、大坂を出発した菊栄、鉄助、お梅の3人が、長雨や川止めに遭いながらも江戸に到着。翌々日、菊栄は幸と共に蔵前屋に出向き、そこで惣次に出会うが、二人は初対面を貫き通す。幸は、端午の節句に来店した若い母親の一言をヒントに、反物の扱い方や裁ち方の手解きを始め、皐月二十八日の川開きには、主従や力造一家と一緒に花火見物に出かける。その帰途、子猫を拾ったお梅は、その世話をするため暫く江戸に留まることを決意。鉄助は、お梅と既にこのまま江戸で暮らすことを宣言していた菊栄の二人を残し翌日帰坂する。菊栄は足場を固めるべく東奔西走、三嶋屋売却の誘いも五鈴屋に代わり自らが受けることに。さらに、菊栄は賢輔を誘って湯島の物産会へ出かけ、浴衣地の図案に苦しむ賢輔に助言。 「惚れた女子はんでもええし、身近な人でもええ、 自分にとって大事なひとに着せてみたい、と思う柄を描いたら宜しい」(p.147)創業日から12日後、黒船街から出火し、紙問屋・千代友屋は店は無事だったが水浸しに。幸は、紙を買い取ると共に、お結びや貸し布団を手配し届ける。一方、白子から道具掘りの型掘師・誠二が弱り切った体で江戸に辿り着くが、次第に回復。賢輔は両国の川開きの打上げ花火を描いた図案を、力造と梅松、そして誠二に見せる。しかし、誠二はもっと大きい紙に描いた方が良いと助言、しかし大きな型地紙の入手は難しい。また、梅松がこの図案は錐彫りでは無理なので、道具彫りの誠二に任せたいと言うが、誠二は、錐彫りでないと出せない味わいもあると述べ、二人で力を合わせて彫ることに。そして、賢輔の新しい図案が完成し、寸法の大きな地紙も千代友屋の尽力で入手の目処が立つ。鉄助が文次郎の仲介で在方の機屋と繋がることに成功し、大量の白生地が江戸店に運ばれてくる。賢輔は、花火柄、柳に燕、団扇、蜻蛉等の図案を考え、梅松と誠二が型紙を彫って力造が型付け。幸は、菊栄の好意で元三嶋屋の土地と屋敷全てを買い上げると、店舗や蔵を拡大すべく改築開始。浴衣を縫い上げるのは、もと御物師・志乃を中心に帯結びや裁ち方指南の参加者15人と、お才の伝手の染物師の女房10人で、来年の両国川開きの日を披露目の日と定め作業を進める。さらに、近江屋から壮太と長次を奉公人として再び迎えることで接客体制を整えると、湯屋仲間と繋がり浴衣を無料提供、その浴衣を着た湯屋仲間の500人が、川開きの日に20艘の涼船に乗り込むと共に、翌日からは店番が浴衣を着て高座に上がることに。当日、五鈴屋の浴衣は、市村座の役者を伴う豪勢な音羽屋の屋台船を上回る人々の関心を集めた。翌日以降、湯屋の高座に座る店番を通じて浴衣の評判は広まり、店には多くの客が押し寄せる。また、菊栄が奥の小物問屋で商う花火柄の藍染の団扇も評判となり、こちらも大人気。さらに、夏が終わると新柄を売り出し、寝間着や肌着にも使われるように。そして冬、「木綿の橋を架ける手掛かりを得た」梅吉は、ようやくお梅に求婚したのだった。 *** 「ただなぁ、惣ぼんさん、否、井筒屋三代目保晴さんが、敵なんか味方なんか、 私には今ひとつ、判断がつかしまへん。 なぁ、幸、あのおひとに纏わる今までの経緯を、 洗いざらい、話してもらわれへんやろか」(p.71)これは、菊栄の言葉ですが、前巻の記事に書いた私の思いと一致します。やっぱり、少々怪しいのか? 杞憂に終わることを願っていますが……そして、次もやっぱり菊栄の言葉です 「旦那さんの紙入れ、あれは極上の桟留革だす。 御寮さんの簪と櫛と笄はお揃いの白鼈甲。 一見、地味な装いだすが、あそこまでの品を普段使いしはるて、相当だすなぁ」(p.155)こう菊栄に言わしめた、1年に1度、創業の日だけに五鈴屋を訪れる、夫婦連れの買い物客。その夫が幸に耳打ちしたのが、 「私はねぇ、この店が太物に新しい風を吹き込んで、天下を取るに違いない、 と睨んでいるのですよ」(p.155)この言葉から、いつかきっと千代友屋と同じように幸の力になってくれるのでしょう。
2025.10.11
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瀑布篇に続くシリーズ第9巻。 TVドラマのシーズン2を通り過ぎ、シーズン3で放映予定のお話の始まり。 これまでと違って既視感のあるお話ではなく、初めて目にするお話になるので、 ちょっとくどくなるかも知れませんが、少々丁寧に記録していきます。 ***結が型紙と共に姿を消した大晦日、夜になって音羽屋から結は無事との遣いが。そして元旦、佐助と共に音羽屋を訪ねるも、忠兵衛に追い返されてしまった幸は、小正月に薬種商・小西屋五兵衛が現れた際、結と二人で会えるよう頼む。そして、如月二日、姉妹は花嫁の支度部屋で顔を合わせるが、結は自分の感情を幸に激しくぶつけるばかりで、全く聞く耳を持たず、以後、姉妹は二度と交わることのない道をそれぞれに歩むことになってしまう。後日、本両替商・蔵前屋からは、本両替仲間の寄合で音羽屋が後添えを迎えた報告をし、手土産として十二支の漢字を柄にした小紋染の反物を、仲間全員に渡したと聞かされる。その際、井筒屋3代目保晴が、柄の中に『金・令・五』の文字が混じっていると指摘、忠兵衛は顔を朱色に染めると、後添えが、自分は五鈴屋7代目の妹で、型紙は姉が「嫁資」として持たせてくれたものだと述べたという。梅松の尽力で『十二支の文字ちらし』の中に『金・令・五』を潜ませた型紙が無事再現され、音羽屋日本橋店開店の日に、五鈴屋でも十二支の文字散らしの小紋染めを売り出せるように。引き札と口上で江戸中の耳目を集める豪勢な宣伝を大々的に行う音羽屋に対し、十二支の漢字に各干支の絵を添えた刷り物に、小紋染めの端切れを貼り付けるという工夫で対抗。そして売出初日、駒形町紙問屋・千代友屋店主の妻が訪れ、音羽屋での文字騒動を伝えてくれる。心配してくれた女将に、幸は感謝を伝えると共に開店3年祝いに贈られた樽酒への感謝も述べる。また、菊次郎からは、音羽屋は店のつくりから鐘木に至るまで五鈴屋そっくりで、「帯結び指南」や着物にどんな帯を合わせるかの助言をしているとも聞かされたのだった。そんな時、小金井宿で呉服小商いを始める男が縮緬の反物十反を買い付けに訪れる。さらに、菊菱の紋様の裃姿の侍が現れ、縮緬の白生地を百反も購入して行った。しかし、その侍は黒松屋が長年呉服所として関わってきた加賀藩前田家の者だったため、五鈴屋は黒松屋から顧客を奪い取ったということで、呉服仲間から外されてしまうことに。そして富久の祥月命日、幸がお竹と共に松福寺に参った際、井筒屋3代目保晴と出会い、保晴から、70年程前に同じ目に遭ったものの、却って商いを広げた越後屋を例に挙げながら、 「あんたの言う通り、仲間を外れるんは、商道をはずれることや。 五鈴屋の暖簾を守って真っ当な小売であり続けるためには、 呉服太物問屋を作るのが一番やろ。 ただ、五鈴屋のほかは、駒形町の丸屋一件しかないさかい、何軒か揃うまで刻はかかる」 「それまでは、呉服の商いは控えるしかない。 あの越後屋でさえ、店を移したり、おかみの御用達になったり、とえらい苦労してはった。 五鈴屋がいずれ自ら仲間を作るまでは、ほかの者に付け入る隙を与えんよう、 暫くは呉服商いを諦めることや」 「上納金のことも、今回の仲間外れのことも、偶然と違いますで。 早う気ぃついた方がええ」(p.142)宝暦6年元日、京坂に旅立つ富五郎が、江戸紫の十二支の文字チラシ小紋染めを求めたが、呉服商いを控える幸は選別として差し出すも、富五郎はそれは貸してもらうことにすると言う。睦月十五日未明、中村座と市村座が焼失するが、音羽屋が尽力し市村座は1カ月半で再建する。客足遠のく五鈴屋に、3年前修徳の掛け軸の文字を読み解いた今津村の儒学者・弥右衛門が訪れ、彼が幸の兄・雅由の学友だったと分かり、掛軸に書かれていない続きについても教えてくれる。それは「新たな盛運の芽生えは何もかも失った時、既に在る」というもので、幸らを元気づける。葉月二十日に江戸を発った幸、梅松、茂作は、19日で大坂に到着、本店の面々に再会する。10日程の滞在期間に、幸は治兵衛と賢輔の将来について、文次郎とは木綿について語り合い、8代目となった周助については、道善の持ち込んだ見合い相手との結婚話が進められることに。さらに、菊栄が訪ねて来て、兄夫婦から紅屋を追い出されようとしていると聞かされるが、菊栄は飾りが揺れる簪を縁に紅屋を出て独り立ちし、江戸に出ようと考えていたのだった。江戸にもどった幸に、菊次郎は二代目菊瀬吉之丞を襲名する吉次が楽屋で寛ぐ浴衣を発注する。幸が、工夫と検討を重ねながら出来上がった2枚の浴衣を市村座に届けるが、その際、そこで日本橋音羽屋店主・結とすれ違うことに。そして師走十四日、音羽屋から祝い酒が届くが、幸は稲荷神社に寄進するよう人足に依頼する。一方、力造は幸の言葉を切っ掛けに、裏にも表のように糊を置いて染めることに挑戦。賢輔が「木綿さえ綺麗に染める藍を用いるのなら、小紋では勿体ない」と言葉を発すると、幸は、藍染の美しさが際立つ反物で、湯帷子でも単衣でもないものを仕立てることを思いつく。そして、梅松の手による中紋とでも呼ぶべき大きさの鈴が尾で結ばれた型紙が掘り上がり、力造が生地に糊を置いていくことになる。 ***ドラマのシーズン1では、結が幸に対し妬みを露わにする様が何度か描かれていました。原作ではそういう場面が見受けられなかったので「何故かな?」と思っていたのですが、今巻の展開を読んで、なるほどそういうことかと合点がいきました。また、こちらは予想通りに、今巻でも要所要所で惣次が登場し、幸を救ってくれる展開に。しかし、まだ何か秘められたものがありそうな気もします。
2025.10.04
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