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副題は「分断社会を読み解く7つの視点」ということで、 黒猫ドラネコさんによる「陰謀論と排外主義の現在地」、 山崎リュウキチさんによる「『熱狂』を生み出す仕掛け」、 古谷経さんによる「近代に取り残された人々」、 藤倉義郎さんによる「カルトと陰謀論・排外主義の結節点」、 選挙ウォッチャーちだいさんによる「選挙の現場を侵食する陰謀論と排外主義」、 清義明さんによる「『名無しのQ』とは誰だったのか」、 菅野完さんによる「癒しの日の丸」という7つの論考をまとめて掲載した一冊。 ちなみに、巻頭「はじめに」は、藤倉義郎さんが、 巻末「あとがき」は、菅野完さんが記されています。筆者は、ウェブライター、作家・評論家、フリーライター、著述家等の方々のようですが、私が知っていたのは、『日本会議の研究』の著者である菅野完さんだけでした。(その書籍については、本著p.218でも触れられています)そして、本著も『日本会議の研究』と同様、扶桑社新書の一冊です。 ***本著にしばしば登場するのが『参政党』とその党首・神谷さん。その政治団体のルーツや勢力拡大の様子について、随所で記されているのですが、このことについて知っている人は、実はあまりいないのではないかという気がします。そういう私自身が、『参政党』に関する記述が出てくるたびに、驚きの連続でした。また、三浦春馬運動や斎藤元彦再選運動等に見られた実態を「推し活」「虚投射」と関連付けた論考も、実に興味深いものでした。さらに、「クルド人問題」については、 実際、川口市でも蕨市でも 「素行の悪いクルド人が大暴れしている」という事実はない。(中略) クルド人にまつわるデマは、ネトウヨに留まらず、 かなり広く一般層にまで浸透している。(p.147)と記されていることも踏まえて、本著を読み進められると良いと思います。
2026.02.27
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『全面改訂 第3版 ほったらかし投資術 』を購入した際、 バランスをとるために購入したのが、2024年10月発行の本著。 帯には「政府・マスコミの欺瞞があなたの老後を奴隷にする」とあります。 著者は、昨年亡くなられた経済アナリストの森永卓郎さん。 *** いま多くの経済評論家やマスメディアが展開している老後生活に関する議論には、 12の特徴的な神話が含まれている。 6つの投資関連、そして6つのライフスタイル関連だ。 それらはすべて欺瞞、つまりウソだ。(p.12)いきなり激しくケンカ腰ですが、まず6つの投資関連の神話とは、 ① 年金の不足は投資で補う ② 分散投資でリスクは回避できる ③ 長期積立投資で利回りは預金を上回る ④ 国内よりも成長性の高い米国株に投資すべき ⑤ 専門家に任せておけば投資はほったらかしでよい ⑥ 株価が下がったときこそ投資のチャンス(p.12)いきなり、『全面改訂 第3版 ほったらかし投資術 』に書かれていたことに大ダメ出し!この6つの神話の誤りをズバズバと指摘していきます。そして、日経平均株価が1989年12月29日に3万8915円まで上昇し当時の最高値を記録、それが3万2000円程度まで下がった時、森永さんは「調整は終わった」と判断すると、預金のかなりの部分を日経平均連動の投資信託に投じますが、さらに日経平均は下がり続け、バブル期に稼いだカネが泡と消えてしまった経験から、次のように述べています。 今後の日本経済で同じことが起こる可能性は極めて高いと私は考えている。 だから、いまやるべきことは、投資からの撤退であり、新規参入ではない。 泥船に乗り込んではいけないのだ。(p.50)次に、6つのライフスタイルの方はと言うと、 ① 大都市は魅力に溢れている ② 電気は電力会社から買えばよい ③ 食料もカネで買えばよい ④ 東京は安全で安心な街 ⑤ 働き続けて健康と生きがいの一石二鳥 ⑥ 都落ちなんてできない(p.58)そして、老後の生活設計のポイントとして、次の6つを挙げます。 ① 収入増ではなく、生活コスト減 ② 投資から手を引く ③ 嫌な仕事をしない ④ 太陽パネルで電気代をタダにする ⑤ 食料はできる限り自分で作る ⑥ 最終目標は住民税非課税世帯(p.86)森永さんは、東京を離れて埼玉県所沢市の西端のトカイナカに拠点を移し、近隣で農園を借りて主要野菜20種以上にイチゴやスイカ、メロンまで栽培していたそうです。そして、投資については次のように述べています。 それでは、老後資金をどのように運用すれば良いのか。 私は、若い人はiDeCoを活用すべきだと思う。(中略) 一方、高齢者や高齢期が間近な中高年はどうすればよいか。 私は、預貯金を続けるしか方法がないと思う。(p.102)インフレから資産を守るための選択肢としては、物価連動国債を組み込んだ投資信託(例えばMHAM物価連動国債ファンド)を挙げていますが、バブルがはじけた後には必ずデフレがやってきて、元本保証の預貯金価値は確実に上昇するので、そこまでインフレヘッジが必要だとは思っていないとも述べています。本著に記された様々な事柄の根本には、森永さんの次の思いがあると強く感じました。 現在、国が音頭をとって進めている「貯蓄から投資へ」という政策は、 「真面目に働き、老後に備えて貯蓄をする」という誠実な日本人を 「老後資金をギャンブルにつぎ込んで一攫千金を狙う」という ギャンブル依存症の病人に変えようとしている。(p.98)
2026.02.23
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オリジナル版が2010年、そして改訂版が2015年に発行され、 この全面改訂第3版第1刷は2022年3月、私が読んだ第15刷は2025年3月の発行。 なので、本著に記されている内容は既に4年以上前の情報ということになります。 著者は経済評論家の山崎元さんと都内IT企業に勤務する水瀬ケンイチさん。 *** 一つ目は、個別株投資は生活に支障をきたすということです。 これは個別株投資自体が悪いのではなく、おそらく自分の性格に原因があると思うのですが、 四六時中、株のことが気になってしまうのです。(中略) 分析というのは、いくらやってもキリがありません。 特に、投資銘柄の四半期決算の後は、 決算短信を読み込むことで土日は丸々つぶれてしまいました。(p.27)この箇所を読んで、私もそうなってしまうだろうなと感じると共に、先日読んだ『コメンテーター』の中の「うっかり億万長者」に登場する河合保彦の姿を思い浮かべてしまいました。まぁ、彼はデイトレード一本で暮らしていましたが。さて、投資のプロが銘柄選定して投資タイミングを見計らって売買する「アクティブ運用」と、多くのインデックス運用が該当する市場平均に淡々と連動するだけの「パッシブ運用」とでは、アクティブ運用のファンドの7~8割がインデックスに負けていると気付き、水瀬さんはインデックス投資家に変身、自分らしい生活に戻ることが出来たと言います。 そして、p.44~45には「ほったらかし投資術」実行マニュアルが掲載されており、そこでは、「無リスク資産」は「個人向け国債変動金利型10年満期」又は銀行預金(1人1行1000万円の範囲を守ること)で持つ、「リスク資産」は全て、全世界の株式に投資するローコストな(手数料の安い)インデックス・ファンド(「eMAXIS Slim全世界株式(オールカントリー)など)に投資する、iDeCo、NISA、つみたてNISAなどを最大限に利用し、これらの口座の運用商品選択は全世界株式のインデックス・ファンド(又はそれに準ずる商品)とすることを推奨しています。「無リスク資産」は「個人向け国債変動金利型10年満期」又は銀行預金で持つという部分は、現時点で投資をする予定のない者にとっても、有益な情報ではないかと思います。もちろん、銀行預金は、1人1行1000万円の範囲を守るということについても、複数の銀行口座に分けて維持管理するのは面倒、とか言っててはダメなんでしょうね。 世間では「投資しないと、老後の資金が足りなくなって、不幸な老後になる」と 脅す人が少なからず存在しますが(主に金融ビジネスの関係者です)、 計画的にお金を貯めて、支出するなら、老後の生活破綻の心配をする必要はありません。 人は、投資をしなくても幸せな人生を送ることが十分可能です。 投資は「やらなければいけないもの」ではなく、 「やると有利だと思った人がやるもの」というのが、 「ほったらかし投資術」の基本思想です。(p.50)「まぁ、やってもやらなくても別に良いんだよ」と言ってくれてるわけで、迷っている者にとっては、リラックスして臨むことが出来る有難いお言葉です。 仮に運用管理費用に年率0.1%の差があったとしても、 1000万円の投資額に対して年間の差は1万円です。 「どうせ選ぶなら手数料等のコストは小さい方がいい」と思って 運用会社による手数料引き下げを大いに評価する一方で、 この程度の差を「微差」と呼んで容認する程度に著者達は大らかです。 大差のないものに対して強くこだわるのは、投資以外にあっても無意味でしょう。(p.91)確かに、投資以外の様々な場面でそういうことは言えるんだろうなと思いました。1000万円の0.1%は1万円、それを大きいと捉えるか、大したことないと捉えるか。 投資家が一番知りたいのは、将来の儲けの期待値に直結する期待リターンですが、 期待リターンに関しては、「過去の延長を将来の予想とする」アプローチは 全く役に立ちません。(中略) 「リスク・プレミアムはおおよそこれくらいだろう」といった常識や、 「機関投資家はどのような予想を持っているか」といった情報から推測する以外に、 プロも個人も含めて投資家にとって可能で有効な方法はありません。(p.126)これも、直球ど真ん中の当たり前のことを言ってるのですが、スゴイ。こういう箇所に、著者の誠実さを強く感じます。 例えば、25歳から年間250万円を投資に回し、250万円で生活したAさんと、 100万円を投資に回して400万円で生活したBさんは、18年後の43歳時点で(中略) Aさんは6250万円、Bさんは2500万円を持っています。 もちろん、Aさんの経済的余裕と金融的独立を評価する考え方を持つ人もいるでしょう。 しかし、他方で、年間150万円支出が違う生活を18年続けたことの効果が無視できません。 150万円の差が丸々教育費的な自己投資になっているとは限りませんが、 Bさんの方がAさんよりも、この間スキルに多く投資していたり、 豊かな経験を持っていたり、 良い人間関係(人付き合いはお金と時間を必要とする「投資」です)を 持っていたりする可能性が小さくないように思われます。(p.166)ここも、本著の著者が信頼に足る人たちだなと思える箇所です。「人付き合いはお金と時間を必要とする『投資』です」は、けだし名言。
2026.02.22
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最初、読み始めた時は、まるで行政の刊行物を読んでいるような感じで、 ページを捲るペースがなかなか上がりませんでした。 しかし、生田川や湊川の付け替えに関する記述辺りから徐々に勢いがつき始め、 戦後の焼け跡を生きた人々の声が紹介され始めると、一気に読み進めていきました。 副題が「戦災と震災」なので、その様子を描いた一冊だと思っていたのですが、 読み進めていくと、私が描いていたイメージとは少々色合いが違うことに気付きました。 そこで、著者・村上しほりさんの経歴を見直してみると、専門は都市史・建築史とのこと。 なるほど、そういう視点で神戸について記したものだったのかと合点がいったのでした。 *** 結果的に、神戸市内でも重要施設とみなされた工場や建築物の周りでは、 県知事による疎開空地の指定や防空法による除去命令が出された。 多くの木造家屋が引き倒され、防火帯を作る作業が進められた。(中略) 建築物の疎開は、人員疎開と異なり防空法による強制力があった一方で、 除去建物は県が買収・除去し、土地は所有者の選択に応じて県が買収か貸借して、 移転費や補償費が支給された。(中略) こうした疎開事業のために、戦時下神戸では約2万2000戸の建物が失われた。 これは全国的に見ても、東京都区部の約20万4000戸、大阪市の約7万2000戸、 名古屋市の約2万9000戸に次ぐ4番目の多さだった。(p.109)「疎開」と言えば「人員疎開」しか知らなかった私にとって、この「建物疎開」の記述は、かなり衝撃的なものでした。さらに空襲で焼け跡が広がり、戦後占領期には接収が行われ、その後の戦後及び震災復興事業や都市改造事業でも、多くの利害衝突が生じたことでしょう。こういった歴史の積み重ねの上に、現在の神戸の街があるということがよく分かりました。そして、本著を読むことで、何故六甲道や新長田で重点的に再開発事業が行われたのか、さらに、現在も三宮を中心に様々な場所で再整備が進められているのかも分かりました。知っていて眺めるのと、知らずに眺めるのとでは、街の景色は全く違って見えるものですね。
2026.02.21
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2015年に出版された『日本美のこころ』と 2019年に出版された『日本美のこころ 最後の職人ものがたり』を加筆修正し、 文庫として1冊にまとめたもの。 巻末「あとがきに代えて」によると、元々は雑誌『和樂』の連載記事とのこと。 彬子女王が各地に赴かれ、「日本美のこころ」を体現する様々な「もの」や、 それらを育んだ「人」「地域」「時代」等々について取材した事柄を記されています。 格調高く、しかもとても読みやすい文章は、これまでにも度々目にしてきましたが、 その対象をまるで目の前で見ているように伝える筆力は、本当にお見事と言うしかありません。 *** 理由はそれだけではない。 1708年にマイセンでヨーロッパ初の磁器が作られるようになるまで、 磁器はアジアでしか作ることのできないものだった。 実は磁器は、当時の科学技術の最先端を駆使した工業製品という性格を持っていたのである。 アウグスト王は観賞用としての蒐集の他に、地域の産業振興のために磁器の開発を進めた。 硬質で美しい日本磁器の特色を再現すべく、職人を囲い込んで研究にあたらせ、 その結果生まれたのがマイセンの磁器である。(中略) 今ではドイツが世界に誇る高級磁器として知られるマイセンが、 創設当初に目指したのは日本の磁器だったのである。 九州の陶工たちは、遠い異国の王様が、自分たちが作ったやきものに そこまでの憧れを持っていたとは夢にも思わなかったに違いない。(p.96)全く知りませんでした。しかし、知ってしまうと色々と合点がいくのです。当時の日本において、なぜ磁器が主要輸出品の一つとして数えられているのかに。科学技術の最先端を駆使した工業製品、今ならこれに匹敵するものは何になるでしょうか。
2026.02.21
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2024年2月にハードカバーで発行され、 昨年12月に文庫化された中山七里さんの一冊。 今年1月には、続編にあたる『被告人、AI』も発行されています。 AIの凄さに気付かされて間もない私も、興味津々で読書を開始しました。 ***日中両国間における技術交流として、日本からは著名なアニメスタジオのスタッフが、中国からは最新のAIソフトを開発した技術陣が相手国に赴き、技術協力を行うことに。そして、東京高裁管内の地裁及び家裁の本庁を対象として、中国から技術協力の申し入れが。それが、概要を聞けば判決文まで作成してくれる画期的ソフト『AI裁判官』<法神2号>だった。 この<法神>を導入して、過去の判例を落とし込みさえすれば、 もう一人の裁判官が誕生します。 このAI裁判官は実在の裁判官と同じ思考回路、同じ道徳規範、同じ倫理観を獲得しています。 従って、事件のストーリーと物的証拠をデータとして入力すれば、 彼が下す判決をそのまま判決文として出力してくれます。 もう、本物の裁判官が山積する事件に忙殺されたり、 長時間かけて判決文を作成したりする手間は完全に解消されるのです。(p.035)<法神>の開発者・楊浩宇から直接説明を受けた東京高裁第一刑事部総括判事・寺脇貞文は、東京地裁刑事部・高円寺円判事補に、2年前に発生した事案のデータ入力を依頼する。すると、実際の判決内容は入力していないのに、裁判長が認めた判決文とほぼ同じ内容を表示。寺脇は管区内の地裁判事たちに<法神>の有益性を説き、<法神>のリース導入が決まる。一方、18歳少年が父親を刃物でメッタ刺しにした上で逃走、追跡劇後に逮捕される事件が発生。この事件の裁判長は東京地裁刑事部長・檜葉判事、右陪席・崎山、左陪席・高円寺円に。戸塚久志に死刑を求刑する検察側と、保護観察処分を求める弁護側との最終弁論後の評議室、檜葉は採決に入る前に、裁判員らに<法神>が作成した判決文を提示し、自身の判断に誘導する。しかし、円の交際相手である警視庁司法警察員警部補・葛城公彦が懸命の捜査を継続、戸塚兄弟と幼馴染がプールで撮影した写真に辿り着き、証拠物件の再分析が行われることに。そして、最終弁論前に弁護人の申し出により証拠調べが再開されると、久志の虚偽供述が判明。最終弁論は2週間後に延期されるが、その前に検察は無罪諭告の予定を通告してきたのだった。裁判と並行して、葛城の高校時代の同級生で、ソフトウェア開発分野では知る人ぞ知る萬田美智佳が<法神>の検証を行い、寺脇、円と共に、楊にその結果を伝える。<法神>には、重要判例の尊属殺重罰規定違憲判決のデータが故意に入力されていなかった。その背景には中華思想があると、楊の発言から円は感じ取る。 ***巻末の「解説」は、AIエンジニアで参議院議員の安野貴博さん。今回の衆議院議員総選挙で大躍進を遂げた「チームみらい」の党首でもあります。その「解説」で、高円寺円の祖母・静が、「静おばあちゃん」シリーズのキャラと知りました。これも未読なので、『被告人、AI』と共に機会を見つけて読んでみようと思います。
2026.02.20
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6つのお話から成る一冊。 読み始めて早々、「いつものマハさんじゃない……」という思いが沸きあがり、 それが、暫く続いたのですが、やがてその感覚は薄れていくことに。 そして、春日武彦さんによる巻末『解説』を読んで、その理由が分かりました。 冒頭から4作は、マハさんが作家デビューして1、2年以内に書かれたもので、 その後の2作は、それからおよそ15年を経て書かれたものとのことです。 ***「深海魚」 瀬川真央は狭い部屋の押し入れの上段を「海の底」と呼び、オチかけたときそこに逃げ込む。 小4で同じクラスだった佐々木流花に7年ぶりに再会、「海の底」でまた2人の時を過ごす。 高校で真央をいじめる大野正美はそのことを知るが、流花のアパートで沈むことに。「楽園の破片」 ボストン美術館で講演をする高木響子は、濃霧で急行が遅れ開始時刻に間に合いそうにない。 もう一人の講師は、響子と7年付き合った後、別れたばかりのレイ・オークウッド。 響子は、陽性反応を示す妊娠検査薬のスティックを化粧ポーチに入れ、会場に向かうが……「指」 室生寺弥勒堂釈迦如来坐像の微かに持ち上がっている両手中指を眺める研究室助手と指導教官。 昼食を済ませ、チェックインするや否や「中指を……そっと、空気を揺らす、みたいに」。 翌朝、伽藍洞で一部始終を知る食堂で働いていた若い男の子の言葉に……、そして指が……「キアーラ」 『聖フランチェスコの生涯』の修復に携わっていた田倉亜季は、10年ぶりにアッシジを再訪。 フランシスコとキアーラが一緒になる日を、幼い頃から願っていたリタからの手紙に導かれ。 実はアレッサンドロに思いを寄せていたリタ、彼女が持つ赤い滴の付いた欠片がまっすぐに…… 「オフィーリア」 額縁の中に封じ込められた女は、まさに水中に沈み、やがて池底の泥の褥に横たわるところ。 街角の画廊のショーウインドウ、日本人画家の部屋と画室、大殿の妻となった娘が睦む部屋、 娘が溺死するところを、画家が絵の中に閉じ込め永遠に生きさせようとする庭園を転々とする。「向日葵奇譚」 脚本家・塚本は、ゴッホの姿を写した唯一の写真、その後姿を見て一晩で台本を書き直す。 ゲネプロでは、凡人の中の凡人として描かれたゴッホに俳優・山埜祥哉がすっかりなりきる。 初日前夜、山埜が見たという奇妙な夢に登場した塚本は、長年愛用の青いパジャマを着ていた。 ***エロス&ホラー。こんな色合いの作品も、マハさんは書いていたんですね。ちょっと驚きました。でも、随所に「らしさ」は感じられます。
2026.02.14
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著者はデジタルハリウッド大学教授でIT戦略コンサルタントの橋本大也さん。 第1刷発行が2024年3月18日で、私が読んだ第10刷発行は2025年5月23日。 第1冊発行から間もなく2年が経過しようとしていますが、 その間にも、AIは目覚ましいスピードで進歩を続けてきました。 実際に、私が本著を読み始めた時点では、掲載内容を自身のPC上で確認すべく、 どんなChatGPTをどのように入手するか、その他に何が必要か等々思案していたのですが、 間もなくすると、GoogleにはAモードが、Yahoo!にもAIアシスタントが登場し、 本著に書かれているプロンプトを入力すれば、ある程度答えてくれるようになりました。「CHAPTER2 思考を補助してもらう」については、Googleを使って色々とやってみましたが、『吾輩は猫である』の感想文を書いてもらい、さらにそれを子どもらしく修正してもらうと、学校代表ぐらいにはすぐにでも選ばれそうなものが出来上がってしまいました。理科や社会の自由研究でも同様の結果になると思われ、宿題の意味がなくなってしまいそう……ただ、グラフを描いたり、イメージ、動画、プレゼンテーション資料、音楽の生成等々、「CHAPTER10」に記載されている事柄については、私はまだ全く出来ていない状況あり、今後、PC周辺環境を整えると共に、私自身が様々な知識と経験を蓄積していく必要があります。しかしながら、本書がその第一歩を踏み出すきっかけとなってくれたことは間違いありません。
2026.02.14
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冒頭部は、優莉匡太が刑務官と教誨師をいかにして懐柔したか、 さらに、結衣が武蔵小杉高校を卒業する日の憂鬱が描かれます。 そして舞台は一転、総理官邸が破壊され無政府状態となった日本へ。 第二次宮村内閣はアメリカの傀儡政権となり、実質的統治下に置かれていました。 国連で日本が無力国家と認定されようとしていると知った宮村総理のもとには、 あのメフィスト・コンサルティングが現れ、この状況を傍観するよう進言されることに。 ***日暮里駅近くのホームセンターを襲ったギャングたちを一蹴した結衣、瑠那、伊桜里、凜香。瑠那と凜香は、恩河日登美の居場所を突き止めるべく元閻魔棒・城原がいる万博跡地を目指す。大阪都立フォルトゥーナ学園に潜入すると、投資家で瑠那の幼少時の知人ハッダードに再会、さらに、カジノ模擬実験場VIPルームでは、日登美と瑠那の仇敵・サイードに遭遇する。瑠那は、日登美にサクリフェスで勝負を挑むと、言葉で動揺を誘い続ける。 義父母より先に、わたしに神様の存在を説いてくれたのは、 ジハドに生きる者たちだったから(中略) 異教徒と犯罪者は殺していいって教えだった。 父親だろうとなんだろうと、 恒星天球教の教祖と結ばれた凶悪犯の脱走死刑囚と、その信奉者は皆殺しにする。 結衣お姉ちゃんや凜香お姉ちゃんは心のどこかで人殺しを悔いているけど、 わたしはちがう(p.222)憤怒の感情を抑えきれなくなった日登美は怒りを爆発させ、その場から逃走する。しかし、状況を報告した匡太からの反応は、ネキに骨抜きにされた腹立たしいものだった。さらに、緋色総合舎が襲撃されたことの責任まで指摘され、愛知県設楽町へと向かうことに。一方、瑠那はイエメン紛争を激化・長期化させた元凶であるサイードと対峙。城原は銃殺され、瑠那と凜香は瑠那の実母のもとへと連行されるが、ハッダードが催涙弾を投下すると、瑠那は敵を次々に銃撃、母親を盾にしたサイードも撃ち抜く。そして、絶命寸前のサイードから日登美の居場所を聞き出すと、あいりん労働福祉センターへ。日登美と対峙した瑠那は、その欠点を見抜いた攻撃を展開して追いつめ、遂に仕留める。そして、匡太はただの腑抜けとなっており、全てを仕切っているのはネキだと知らされる。 ***特殊作戦群に召集された蓮實は、関西経済圏独立阻止のための軍事行動を命じられるが、矢幡元総理のSP・錦織らと共に、半グレ候補が集まる法的独立支援保護施設・緋色舎を目指す。錦織の息子・醍醐律紀が潜入に成功し、匡太はあいりん労働福祉センターにいるらしいと分かる。そして山奥を逃走中に周囲を敵に囲まれるが、結衣と伊桜里、雲英亜樹凪に救われる。その後、単独行動をとる結衣は、メフィストのアライケに名古屋飛行場に連れていかれると、そこにラファールBが降り立ち、篤志を日本に送り届けに来た岬美由紀が現れる。 優莉匡太が死刑になっただけでは、あなたたちは変われないままだった。 今後もそう。 もしあなたの父親が、どこかで人知れず死んでいたと判明したとしても、 子供たちの心は救われない。 優莉匡太の子という自覚から逃れられず、人格の本質も元のまま。 人殺しであり続ける。(中略) 絶対的な邪悪はこの世にあるの。 それがあなたの母親であり、父親だった。 特に父親。 あなたが第二次反抗期を終えるには”親殺し”しかない(p.342)この言葉を残し、美由紀はラファールBでインドネシアへと引き返していった。そして、結衣、瑠那、伊桜里、凜香に篤志を加えた5人は、あいりん労働福祉センターに集結。ネキとは、元有名ダンス系ユーチューバーのEE、江崎瑛里華のことだと確認しあう。 ***巻末の「解説」によると、「EEこと江崎瑛里華」とは、「JK」シリーズの主人公・有坂紗奈が制服姿で踊るK-POPダンスのユーチューバーとして活動する際に用いている名前とのこと。今巻登場した「令和中野学校」も、シリーズとして刊行されています。私は、いずれのシリーズも未読ですが、『高校事変』が完結した際、必要を感じれば、読んでみようかなと思っています。
2026.02.11
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本著を読んで、 自分が台湾について何も分かっていなかったと気付かされました。 そして、「国民党副主席と中国共産党序列4位が会談」という記事を見て、 その意味するところがちゃんと分かるようになっていました。 *** 台湾研究者の若林正丈は、台湾を理解するための方法として、「台湾はどこにあるか」 および「台湾とは何であるか」という二つの視点に注目するとよいと提案している。 前者はすなわち、台湾は東アジアにおける地政学的に重要な場所として、 大国間の争奪の対象となってきたという視点である。 後者は、台湾に住む人びとが、台湾人としての意識および、 台湾を一つの政治的な主体とする認識を強めてきたという視点である。 両者は互いに無関係ではなく、前者の大国による台湾支配という要素は、 住民の「台湾とは何であるか」をめぐる考え方に大きな影響を与えてきた。 また、近年では後者の台湾の主体性という要素が、 米中対立という大国間の争いを左右する重要なポイントになっている。(p.20)第二次世界大戦後、日本による統治が終わると、国民党による台湾統治が始まった。しかし、共産党との内戦に敗れ台湾に撤退すると、本省人は外省人への不満を募らせるように。そして、中華人民共和国が国連舞台に登場すると、中華民国はそれまでの地位を失って孤立。そのような対外危機の中、国民党政権は活動を活発化させた党外勢力への締めつけを強化する。蒋介石 蒋経国、李登輝と続いた国民党政権は、中華民国憲法を改正して民主化を達成。しかし、2000年に行われた二度目の総統直接選挙で敗れ、民主党の陳水扁政権が誕生する。国民党は、中華民国による大陸と台湾の統一を夢見る勢力を糾合し「汎藍陣営」を形成、一方、李登輝は国民党を離れ台湾の主体性を重んじ民主党政権を支える「汎緑陣営」を構築する。そして、中国との緊張関係が高まった08年の総統選挙では、大陸との関係改善を訴える国民党の馬英九が当選、政権を奪還して両岸の交流は大きく拡大する。が、16年の総統選挙では民進党の蔡英文が当選、立法院でも初めて過半数の議席を獲得した。そして、24年の総統選挙では民進党の頼清徳が当選、政権を維持している。 ***グローバル化が進む国際社会の中で、これまで以上に微妙なバランスの中で行動することが求められる台湾。そんな中で、社会の多様性や少数者の権利を重んじる思想の共有が進んできたのです。日本にとっても、学ぶべき事柄がとても多いと感じます。
2026.02.08
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朝ドラ「ばけばけ」も、その舞台が松江を離れる一歩手前までお話が進みました。 波乱万丈の激動の日々を描く……といった感じとはちょっと違う、 どちらかと言えば、日々の営みを淡々と紡いでいく落ち着いた感じのドラマですが、 当事者にとっては山あり谷ありの連続で、紆余曲折の人生だったに違いありません。 本書を読むと、実際の小泉家と稲垣家はかなり格式の高い家柄という印象ですが、 本当にあった出来事とドラマに向けて創作されたストーリーを適度に融合しながら、 トキとヘブンのそれぞれの生い立ちや、松野家とその周辺の様子を上手く描き出しており、 観る者を強く惹き付けて放さない、優れたドラマに仕上がっていると思います。ドラマでは、本書の「第1章 それぞれの生い立ち」と「第2章 セツと八雲の出会い」に記された時期までがこれまでに放映され、「第3章 さよなら、松江」「第4章 熊本・神戸で築いた家庭」「第5章 晩年の八雲」「第6章 セツのそれから」が、今後放映されることになります。「ばけばけ」は、昨年10月にスタートして既に4カ月余が過ぎており、残るは2カ月弱。つまり、二人の生い立ちや出会い、松江での日々を描くことに重点が置かれたわけですが、実は、八雲が松江で暮らしたのは1年3カ月、セツと一緒に暮らしたのは9カ月ほどです。熊本や神戸、東京での暮らしの描写は、比較的駆け足で進んでいくものと思われます。熊本では柔道の大家・加納治五郎や漢学者・秋月悌次郎と出会うことになります。そして本書では、錦織さんのモデルである西田千太郎のその後は略年譜に記されているだけで、八雲が帝大講師となった翌年、病のために34歳の若さで亡くなっています。一方、サワと庄田のモデルとなった夫妻は、共に教育界で大きな業績を残していきます。ビスランドやチェンバレン、マクドナルドらとの交友もどう描かれるのか楽しみです。帝大での後任・夏目漱石やマッカーサーの軍事秘書フェラーズは、登場しないでしょうね。本書は、セツと八雲のひ孫で小泉八雲記念館館長・小泉凡さんが語った事柄をまとめたものです。直系血族であり、曾祖父母を研究してきた方からの言葉だけに真実味がありました。
2026.02.07
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『町長選挙』に続く、連作短編集シリーズ第4弾。 第3弾の文庫版が発行されたのが2009年3月なので、本当に久々の邂逅。 今回は、表題作を含む5つのお話。 精神科医・伊良部と看護師・マユミの言動は、今回も突き抜けています。 ***「コメンテーター」中央テレビの午後のワイドショー『グッドタイム』は、他の民放2局に視聴率で負けっぱなし。その原因の一つは、蔓延するコロナ関連のネタでコメンテーターがパッとしないから。プロデューサー・宮下に命じられ、畑山圭介は大学時代のコネを使って美人精神科医を探す。しかし、紹介されたのは、伊良部総合病院院長の息子で精神科医の伊良部一郎だった。現場の不安をよそに、伊良部がリモート出演すると、その登場時刻から視聴率が上向く。それは、看護師・マユミが、女性ロックバンド、ブラック・ヴァンパイヤのギター担当だと、若者たちが気付いて、情報をネットで拡散させたから。以後、伊良部の破天荒な言動も評判となり、遂に平均視聴率5.5%を叩き出す。「ラジオ体操第2」営業で軽自動車を運転する福本克己は、後続車に煽られた怒りを抑え込むと過呼吸発作。その夜、公園でスケボーに興じる若者たちに沸き上がった怒りを抑え込むとまた過呼吸発作。テレビのニュースを見ても過呼吸発作が起こるようになった福本に、伊良部は助手席で助言、煽り運転常習者に急ブレーキをかけて追突させ、危険運転致死傷罪で書類送検に追い込む。伊良部は、喫煙所外で喫煙するパンク野郎、階段に座り込む三人組にも注意する模範を示すが、江ノ島電鉄踏切で撮り鉄たちの傍若無人な振る舞いを我慢する福本に、とうとう匙を投げる。しかし、福本はあの踏切に差し掛かると、車を停め遮断機のポール前でラジオ体操第2を始める。さらに、あの公園でもスケボーに興じる若者たちに注意、そしてラジオ体操第2を始めた。「うっかり億万長者」業界最大手の生保会社を2年で退職した河合保彦は、蓄えた50万円でデイトレード始めるが、2年たった今では、資産10億円を有するものの、株式市場を見ていないとパニックに陥る。伊良部の治療と称する指導で、六本木ガーデンにベンツにグルメ等々と贅沢三昧を味わうが、元同僚の言葉を機に激しい自己嫌悪に襲われるようになり、河合は残った資産の全てを寄付する。「ピアノ・レッスン」27歳のピアニスト・藤原友香は、新幹線のぞみに乗れなくなり、演奏会でも四方を囲まれると客席に座っていられず動機がして意識が遠のくようになり、伊良部総合病院へ。伊良部から広場恐怖症と診断され、ドクター・ヘリを使っての荒療治等を試みるも改善せず。しかし、マユミのロックバンドのライブにキーボードで助っ人参加すると、一気に殻を打ち破る。「パレード」山形県で生まれ育った北野裕也は、東京の有名私大に進学するもコロナでリモート授業ばかり。3年生になって対面授業で教授から指名された際には、一言もしゃべれなくなってしまう。伊良部から社交不安障害と診断され、不登校の中学2年生・マサルとグループ・セッション。老人ホーム、チャリティーバザー、ハロウィン仮想パーティのパレードで行動療法を敢行する。 ***今巻で最も印象に残ったのは、次の記述。 近年、情報番組のコメンテーターは流行の職業だった。 本業で少しでも実績があれば、それを肩書として コメンテーターのポジションを得ることが出来る。 大衆は権威に弱いため、一度テレビで顔が売れればさらに権威が増す。 基本は井戸端会議なので、専門知識などなくても務まった。 場の空気を読み、少し本音をまぶし、少し面白いことを言う。 その匙加減がうまい人間が生き残り、コメントで禄を食む。 要するに新手のテレビタレントなのである。 テレビ局としても、ギャラが安く、簡単に入れ替えの利くコメンテーターは 便利な出演者だった。 司会者が多少いじっても、うるさいマネージャーが出て来ることもない。(p.27)目から鱗が落ちるとは、まさにこのこと。なるほど、あれはテレビ局が使いやすいテレビタレントたちが集まってただただ井戸端会議をしているだけだったのか……じゃあ、どんなくだらないことや間違ったことを言ってても、目くじらを立てることはないか。
2026.02.01
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