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chiko619 @ Re:新参者(09/22) 「新参者」読みました。 東野圭吾さんは、…
kimiki0593 @ 相互リンク 初めまして、人気サイトランキングです。 …
Twist @ こんにちは! 遅ればせながらあけましておめでとうござ…
Twist @ こんにちは! 遅ればせながらあけましておめでとうござ…
Twist @ はじめまして^^ 先ほどこのロングインタビューを読み終え…
2016.01.23
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カテゴリ: 教育・子育て
『これでいいのか小中一貫校』 の山本さんの著作。
 小中一貫校の問題をはじめ、新自由主義教育改革全体について
 その様々な問題点を指摘している。
 そして、その行きつく先について、大いなる警鐘を鳴らす。

 読んでみて思ったのは、日本の教育政策が、
 いまだに欧米を後追いしたものに過ぎないということ。
 そして、それが経済的な効果を第一の目的としたものであるということ。
 さらには、そこでは効率が最優先されているということ。


「第1章 新自由主義教育改革とは何か」において、次のように述べている。

  従来、少なくとも日本の戦後教育改革の理念に基づけば、
  教育の公共性とは、全ての公立学校がどこでも平等に教育サービスを提供することによって
  保障されるものと考えられていた。
  6・3・3制は、そのための「教育の機会均等」原則を実現する教育制度であった。
  しかし、現代のグローバル経済の社会において、
  国際競争に勝ち抜いていけるようなエリート養成に重点的に資源配分していくことこそが
  教育の公共性の実現である、と財界、政府は発想を転換したのだ。(p.19)

ようするに、かつての「一億総中流」の世の中ではなく、
「格差社会」を目指すことに舵を切ったということ。

  アメリカの教育委員会は今日でも96%が公選制であるが、

  さらに、教育改革を先進的に行う自治体、
  シカゴ、ボストン、デトロイト、フィラデルフィアなどは、
  公選制教委を廃止して市長の任命制に移行し、
  教育に対する市長の権限を強化する改革を行った。
  そのような新自由主義教育改革は以下のような制度から構成されるものであった。


  2.スタンダードに基づいた一斉テストの実施
  3.一斉テスト「結果」に基づいた学校評価・教員評価
  4.学校選択制(その結果に基づいた学校統廃合、公教育の民営化を含む)
  5.教育バウチャー制度(生徒数に応じた教育費配分制度)
  6.学力テスト体制に即した「学校参加」、校長にリーダーシップの拡大(p.25)

要するに、政治が教育を主導していくよう転換されてきているということ。
このような教育改革を行う自治体は、アメリカでも上記のような大都市が先陣を切っているが、
これについては、日本においても同じような傾向が見られる。
まずは、東京や大阪等の大都市で先行実施されたものが多い。

さて、「第2部 学制改革の突破口」の
「第6章 小中一貫校とは何か」では、次のような記述がみられる。

  九州に典型的に見られる地域の新自由主義的再編は、
  大資本や多国籍企業が活用しやすいような大規模な単位に地域を再編していくものであり、
  旧来からの住民の生活圏としての地域はその障害物とされていく。
  そして、旧来の集落が小学校区を形成しているケースはきわめて多い。
  地域から学校を消滅させることは、
  住民の生活圏を破壊させるためには極めて有効なのだ。(p.186)

なかなか衝撃的な文章である。
これが真の狙いであれば、恐ろしいとしか言いようがない。

  その新自由主義的なグローバリゼーションの特徴と影響については、
  この会議では「教育費の削減と一斉テストによる教育支配」
  「民営化と公設民営学校への公的資金注入」などが、主な問題点として、取り上げられた。
  特に、テスト結果については、
  経済的、社会的に不利な立場にある生徒のテスト結果は
  一般的に低いことが実証されているにもかかわらず、
  それが教員の評価にダイレクトにつながっている点は大きな問題であるとされた。(p.213)

これは、NAFTAにおいて行われた、
第11回「公教育を守る3カ国国際会議」についての記述であるが、
なかなか興味深いものがある。
テスト結果の数字には様々な要因が絡み合っており、その扱いはとても難しいということだ。

  2015年1月に文科省が、
  「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置に関する手引き」を公表したのだ。(中略)
  そこには、総務省による、学校がなくなることによる地域コミュニティの衰退を
  懸念する意向が強く反映されている。(p.61)

本著において、今後進められるであろう統廃合において、
明るい希望の光の一筋として提示されているのが、この「手引き」である。

  「手引き」では、児童生徒数に応じた機械的に統廃合を進めるのではなく、
  「小規模校のまま存続させることが必要と判断するところ」として、
  以下の4例が挙げられている。

  1.近隣の学校との距離が遠すぎる。
    スクールバスを導入しても安全安心な通学が出来ないと判断される場合。
  2.学校統廃合を行った際に、
    さらなる少子化や地域の産業構造の転換により児童生徒数が減少するなど、
    通学可能な統廃合を進めることが困難になる場合。
  3.同一市町村内に1校ずつしか小・中学校(小中一貫校)がない場合。
  4.学校を当該地域コミュニティの存続や発展の中核的な施設と位置づけ、
    地域をあげてその充実を図ることを希望する場合。(p.220)

特に4については、地域の存続問題とかかわるところであり、
「まちづくり」「まちおこし」とも密接にかかわる部分である。
これらの問題に関心のある方たちは、
小中学校の統廃合問題にも、ぜひ関心を向けてもらいたい。





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Last updated  2016.01.24 11:29:33
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