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chiko619 @ Re:新参者(09/22) 「新参者」読みました。 東野圭吾さんは、…
kimiki0593 @ 相互リンク 初めまして、人気サイトランキングです。 …
Twist @ こんにちは! 遅ればせながらあけましておめでとうござ…
Twist @ こんにちは! 遅ればせながらあけましておめでとうござ…
Twist @ はじめまして^^ 先ほどこのロングインタビューを読み終え…
2023.11.05
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 著者は、ライター、コラムニストの稲田豊史さん。
 タイトルを見て気軽に読み始めたのですが、読み進めるにつれ衝撃の連続。
 想像を遥かに超えた、優れた経済社会学の一冊でした。

   ***

  「料理をミキサーに放り込んで、ブーンと回してドリンクにして飲む。
   たしかに普通に食べるのと同じ栄養がとれます。
   だけど、それって食べ物と言えるのでしょうか?」(p.64)

これは、倍速視聴に抵抗感がある、台湾から青山学院大学大学院に留学中の陳さんの言葉。

しかし、早送りする人たちは、「観たい」のではなく「知りたい」のです。
彼らにとって、それらは作品ではなく「コンテンツ」、鑑賞ではなく「消費」なのです。

  「全員が全員ではないけれど、やっぱり観客が幼稚になってきてるんだと思う。
   楽なほうへ、楽なほうへ。全世界的な傾向だよね。
   全部説明してもらって、はっきりさせたい。自分の頭が悪いことを認めたくない。
   だから、理解できないと作品のせいにする」(p.95)

これは、アニメーション映画『この世界の片隅に』等をプロデュースした
ジェンコで代表取締役を務める真木さんの言葉。
脚本家の佐藤さんは、「口では相手のことを『嫌い』と言ってるけど本当は好き、
みたいな描写が、今は通じないんですよ」と言っています。

  SNSの誕生によって、どんな民度、どんなリテラシーレベルの人間も、

  それが、多くの人に「わかんなかった(だから、つまらない)」と言われない、
  説明セリフの多い作品を生み出した可能性は高い。(p.99)

著者の知り合いの映画宣伝マンは、「わかんなかった(だから、つまらない)」は、
論理的な説明やエビデンスがいらない「バカでも言える感想」と一刀両断したのですが……。
TVアニメ版『鬼滅の刃』については、脚本家やその卵たちも


  本来、趣味であれ個性であれ、その道のプロに追いつく必要などはないはずだ。
  そんなことを言い出したら、どんな趣味もどんな学問も、
  始める前から徒労感に押しつぶされてしまう。(p.151)

Z世代にとって、24時間繋がり続けるLINEグループで、仲間との和を保つことは至上命題。
パッケージコンテンツ所有欲は低く、サブスクで済ませようとする気質があると言います。
そんなZ世代は、SNS上で輝きを放つ全国レベルの猛者たちまで「すぐ隣の存在」と受け止め、
彼らと自分を比べるなかで、実際に押しつぶされていくと言います。

  「ミレニアル世代が”未体験”に価値を求めるとすると、”追体験”に価値を求めるのがZ世代。
   彼らは先のわからないことや想定外の出来事が起きて気持ちがアップダウンすることを
   ”ストレス”と捉える傾向が強い」(P.166)

これは、2021年6月に「Business Insider Japan」に配信された
「Z世代に流行する『ネタバレ消費』とは?”失敗したくない”若者のホンネ」という記事の一部。
博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所の森永さんは、
こうなった理由を、次のように説明します。

  「大人が子供の気持ちを先回りして察しようと動く。
   子供たちは、とにかく大事に大事に育てられているので、痛みに弱い。
   失敗したり、怒られたり、恥をかいたりすることに対して、
   驚くほどに耐性が低い」(p.167)

少子化や教育のあり方の転換が影響しているのでしょうか。
さらに、キャリア教育の推進は、次のような状況に若者たちを追い込んだと言います。

  ただ、それは仕方のないことだ。
  大学で「5年後、10年後の自分のロードマップを描け」などと指導されれば、
  それを達成すべく、
  在学中から綿密なライフプランやキャリアプランを組み上げる必要がある。
  悠長に回り道などしている暇はない。
  「とりあえず就職してから、自分の適性や本当にやりたいことを模索していこう」
  が許されない時代であり、世相なのだ。(p.169)

結果、彼らは学問にまでタイパを求めるようになったと言います。
さらに、2020年度の私立大学新入生への「月平均仕送り額から家賃を除いた生活費」は、
1990年の7万3800円から1万8200円に激減し、日々バイトに精を出すしかない。
こうして、彼らは今、次のような状況の中に身を置いているのです。

  仲間内でのコミュニケーションのため、LINEグループの和を保つため、
  30年前に比べればおそらく何十倍、何百倍もの本数が流通するコンテンツを、
  次々とチェックしなければならない。
  その量は早送りしなければ消化できないし、慎重にリスクヘッジしなければ、
  ただでさえ貴重なお金をドブに捨ててしまう。
  彼らはとにかく余裕がない。
  時間的にも、金銭的にも、そして何より精神的に。(p.178)





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Last updated  2023.11.12 10:44:15
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