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「第一次政権下で新しい教育基本法をつくった。今その中身について、教育委員会制度の改革など法改正の議論を進めているところだ」。2月20日の衆院予算委員会。安倍首相が改正教育基本法に触れたくだりは実にあっさりとしたものだった。石関貴史議員(維新)が「大変な功績だ」と持ち上げても、首相は反応しなかった。
改正教育基本法は2006年11月、自民、公明両党の賛成多数で可決、成立した。1947年の制定以来59年ぶりの全面改正だった。前文には、「個人の尊厳」と並んで「公共の精神の尊重」を明記。教育の目標には愛国心の理念が盛り込まれた。
首相がさほど改正教育基本法を誇らないのは、内容が不満だからだ。早稲田大の西原博史教授(憲法学)は「 首相は国のために死ぬことを促し、邪魔な教師を排除しようとした のにそうなっていない。公明党が基本法に『仕掛け』を仕組んだからだ」と指摘する。
「仕掛け」は3つあった。教育の研究者の多くが「教育内容への国家介入を防ぐための条項」と位置付ける 「教育は不当な支配に服することなく」の文言は、自民党の削除要求をはねつける形で残った。 自民党が主張した「愛国心」は「国と郷土を愛する態度を養う」との表現にとどめた。 「宗教的情操を高める」との言葉も入れさせなかった。
公明党は約3年間、70回も自民党と協議を重ねた。同党の山下栄一元参院議員は、教育の中立性を守るための攻防を振り返る。「時の政権といえども教育に介入しないよう『不当な支配に服さない』との表現を残すことにこだわった。『国』と『愛』の間に『郷土』を入れて『愛国』と続かないようにし、心を縛られないよう『態度』でなければだめだと譲らなかった」
首相が07年9月に辞任に追い込まれた後も「改革」は進まなかった。
首相は対談集で「日本が攻撃を受ければ米国の若者が血を流す。しかし今の憲法解釈では、自衛隊は米国が攻撃された時に血を流すことはない」と話している。西原氏は「改正基本法で、権力側が『愛国心とは血を流すことだ』と定義し、学習指導要領に盛り込む仕組みはできた」とみる。
だがこれは、 学校現場や自民党ハト派、文部科学省などがバランス感覚で押しとどめてきた。 せっかく基本法を改正したのに実を取れなかったと、首相や周辺がいら立ちを感じているのは間違いない。
09年9月から約3年間、政権を担った民主党は、高校無償化や「35人学級」化とともに、学校と保護者、地域住民が話し合いながら学校を運営していくコミュニティ・スクールづくりなどに取り組んだ。中川正春元文部科学相は「安倍政権の上から押しつけるような教育改革ではなく、各学校や地域に合わせた教育を進める狙いだった」と説明する。
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