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2017年12月02日
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テーマ: ニュース(96951)
カテゴリ: ニュース
11月29日の欄に引用した「前衛」12月号の記事の続きは、笠原氏自身が同シンポジウムで報告した内容について、次のように紹介している;




『日中全面戦争と海軍-バナイ号事件の真相』(青木書店、1997年)と
『海軍の日中戦争-アジア太平洋への自滅のシナリオ』(平凡社、2015年)および
『日中戦争全史(上・下)』(高文研、2017年)

にもとづいて、 日本の歴史研究者ではこれまで私以外には究明してこなかった、日中戦争を全面化し、戦時国際法に反して、宣戦布告をせずに中国の首都南京を爆撃し、世界戦史上最初となった長期的かつ大規模な南京空爆作戦を敢行した海軍の戦争責任を問うたもの である。(注2)報告の概要は以下のとおりである。

 日中戦争についての歴史書の多くは、1937年の盧溝橋事件によって「日中全面戦争に突入した」あるいは「満州事変に始まる日中戦争が全面化した」などという記述をしているが、海軍は1936年の段階で陸軍に先駆けて日中戦争発動態勢をとり、海軍航空隊は中国の首都南京への渡洋爆撃への出撃待機をしていたが、陸軍の反対で実行されなかったのである。そして1937年7月7日の盧溝橋事件が勃発、厳密にいえば、当時の呼称で「北支事変」が開始された。すなわち華北に限定された戦争が開始されたのである。それは陸軍が1935年から開始した「華北分離工作」の延長であり、華北を「第二の満州国」とする狙いに基づいていた。

陸軍参謀本部さらに天皇も戦争を華北に限定する方針であった のを、8月9日に上海において謀略による大山事件を仕掛けて、8月13日から第二次上海事件を引き起こして、華中へと戦争を拡大、さらに8月15日には宣戦布告もせずに中国の首都南京を渡洋爆撃、つづいて華中・華南の都市爆撃をおこない、戦争を一挙に拡大。「北支事変」から「支那事変」へと名称を変更させ、現在の呼称でいえば「華北戦争」を「日中戦争」へと拡大したのが海軍であった。

 9月10日に上海に飛行場を開設した海軍航空隊は、九六式陸上攻撃機と九六式艦上戦闘機からなる南京空襲部隊を編成し、中国政府の首都南京の軍事・政治・経済機能を破壊して、国民政府を屈服させ、中国国民に敗戦を自覚させるために、大規模な南京空爆作戦を敢行した。海軍航空隊の南京爆撃は第1次(9月19日)から第11次(9月25日)までおこなわれた。その後も南京爆撃は10月、11月と長期にわたっておこなわれ、国民政府の首都機能は麻痺し、政府関係者や広範な市民に恐怖感、敗北感を与えた。そのため、蒋介石は11月20日、国民政府の首都を奥地の重慶に移転することを発表、政府機関・文化教育機関など諸機関・施設の移転作業を開始するにいたった。

 2月上旬に上海を占領した中支那方面軍の指揮官(松井石板、武藤章、柳川平助)が、作戦になく準備も装備もなかった南京攻略戦を参謀本部の統制を無視して強行し、南京事件を引き起こすが、現地軍の独断専行の前提として、海軍航空隊による南京爆撃が戦略爆撃の効果を発揮して、陸軍の地上からの南京攻略が容易であると判断させたことがあったのも重要である。すなわち、海軍航空隊の南京爆撃が陸軍部隊による南京攻略戦の前哨戦の役割を果たしたともいえる。

 さらに海軍航空隊は、日本軍が南京城内に突入した12月12日、南京上流の長江に停泊していたアメリカアジア艦隊の揚子江警備隊に所属する砲艦のパナイ号を撃沈、4名の死者、3名の重傷者、10名の負傷者を出した(パナイ号事件)。パナイ号事件は日本海軍機がアメリカ砲艦を「不意打ち」「卑怯な急襲」によって攻撃、撃沈したとして、後に真珠湾奇襲攻撃によってアジア太平洋戦争が開始されると、「真珠湾攻撃への序曲」としてアメリカ国民に想起、記憶されることになった。 日本の海軍の側でも、パナイ号を撃沈したのが真珠湾攻撃で戦艦ウェストバージニアに魚雷を命中させた村田重治であり、パナイ号事件の対米処理に奔走した海軍省次官の山本五十六が、1941年12月8日の真珠湾奇襲攻撃を、連合艦隊司令長官として命令したのであった。

 パナイ号事件は、通説にいわれる陸軍が日中戦争から対米戦争へ「海軍を引きずっていった」のではなく、その逆であったことを象徴的に物語る事件であった。


月刊「世界」 2017年12月号 140ページ「南京事件80周年国際シンポジウムに参加して」から一部を引用

 日中間の武力衝突を全面戦争にしたのは実は日本海軍で、宣戦布告もせずに当時の中国の首都・南京を空爆したのは戦時国際法に違反する行為であったという指摘は鋭いと言えます。戦争が終わってまだ10年や20年では、戦犯裁判を逃れた当事者が何喰わぬ顔で普通に暮らし、中には総理大臣までやった人物もいるのですから、学問の世界と言えども、あまり直接的な研究発表はやりにくかったのかも知れません。





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最終更新日  2017年12月02日 19時40分13秒


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