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2017年12月25日
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テーマ: ニュース(96950)
カテゴリ: ニュース
現在公開中の映画「否定と肯定」について、映像ジャーナリストの桜井均氏は17日の「しんぶん赤旗」に、次のように批評を書いている;




 裁判の原告はホロコースト否定論者イギリスのデイヴイッド・アーヴィング、被告はアメリカの歴史学者デポラ・リップシュタット。ユダヤ系アメリカ人女性であるリップシュタットは、アーヴィングを「ヒトラー信奉者、証拠をゆがめ、あり得ぬ結論を導く人物」と自著で批判し、名誉棄損で訴えられた。

 イギリスの裁判では、立証責任は被告側にある。そこで、弁護団は原告アーヴイングの過去の研究書、20年間に及ぶ日記を精査し、その矛盾点をつく方針を立てた。 徹底したファクト主義を真くために、依頼人とガス室の生還者をあえて証言台に立たせなかった。 否定論者は、彼らの心的外傷(トラウマ)を標的にフラッシュバックを起こさせ、ガス室の存否に「2つの見方がある」ことを認めさせようとするからだ。

 弁護士リチャード・ランプトンは、法廷は「治療の場」ではなく「真相解明の場」であるとして、記録→解釈→論証の回路を情報公開しようと考えた。この「法廷」のプロセスは、「調査報道」のそれに酷似している。ランプトンは、依頼人リップシュタットに「君ではなく裁判を守る」と告げる。それは、プロデューサーが現場取材者のはやる気持ちを抑え、より深く正確な情報で「放送を守る」のと似ている。主役は真実であり、この場合、ガス室で死んだ600万の死者の声である。

 原告アーヴィングは、「シアン化物(チクロンB)が換気装置で発見されたことは認める」と証言した。しかし、人間を殺すためではなく、チフスを媒介するシラミを駆除するためだったと言いだした。ランプトンは動じない。以前、アウシュヴィッツを実地調査したとき、リップシュタットから「シラミを殺すには人間の20倍の濃度が必要」と聞かされていたからだ。さらに、アーヴィングは「チクロンBは、チフスで死んだ死体を消毒するためだ」とつけ加えた。ランプトンは反撃に出た。「すぐに焼却する死体をガス消毒する理由は何か?」。アーヴィングは「思いつきで書いたかもしれない」とうろたえるが、弁護人は手をゆるめない。 「いつもの手口で、思いついた愚論をまくし立て、結論をあいまいにするだけだ!」 とアーヴィングを面罵。まるで、調査報道のクライマックスを見るようだ。

◆「慰安婦」の事件を想起

 映画を見ながら思い出した。20年ほど前、安倍晋三議員が慰安婦の「強制連行」を裏付ける資料がないとして、歴史教科書から「慰安婦」の記述を消す仕事に励んでいたころ、NHKの教育テレビ「問われる戦時性暴力」について、放送前に「公平に」と注文をつけた。幹部はそれを過剰に「付度(そんたく)」し、現場もそれにあらがえず、元慰安婦・加害兵士の言葉を消してしまった。この事件に関わった者たちは、証言者の無念を覚えているだろうか。その後、安倍首相は「付度」「フェイク」「ポスト真実(トゥルース)」の言説を旺盛に再生産している。

 さて、結審に際して、判事はリップシュタットの弁護人に 「借念に基づく発言ならウソと非難はできないのではないか」 と尋ねた。これは「表現の自由」に関わる難問である。そして、インターネットにおける「フェイク表現の自由」をどうとらえるかという今日的な問いでもある。

 映画の脚本を書いたデイヴイッド・ヘアは応えている。 「言論の自由には、故意に偽りを述べる自由が含まれているかもしれないが、同時に、その偽りを暴く自由も含まれている」 と。映画「否定と肯定」は、否定論者との熾烈(しれつ)な法廷闘争を「調査報道」の話法で描き、フェイクと闘う市民とジャーナリストに多くのヒントを用意している。
(さくらい・ひとし)


2017年12月17日 「しんぶん赤旗」日曜版 31ページ 「偽りを暴く法廷闘争を『調査報道』の話法で描く」から引用

 歴史修正主義と聞けば、私などは真っ先に安倍首相を連想してしまうのだが、欧米の歴史修正主義は、映画の予告編を見た限りではあるが、もっとしたたかで、うっかりすると裁判で勝ってしまい兼ねない「実力」を持った恐ろしい存在のように見えました。しかし、不正義を許さないために人々は連帯し、被告人が勤務する大学は被告が裁判のために休職を余儀なくされても月々の生活費は保障するというような協力もあり、2001年に正義を主張するデポラ・リップシュタット氏が勝訴したのは、本当に良かったと思います。





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最終更新日  2017年12月25日 19時58分19秒


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