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設置後まもなく、国際的なスパコンの省エネ性能ランキング「Green500」の」1~3位を獲得した。 これが官民での資金集めに貢献したことは間違いない。
だが、不審点は多い。まず、この3機に搭載されているプロセッサーだ。NEDOの助成金を受けた「PEZY-SC」プロセッサーは助成期限の14年3月完成とされてきた。だが。一連の詐欺事件の検察側冒頭陳述によれば、 この時点では「PEZY-SC」は完成しておらず、ペジー社側はNEDOへの成果報告書に「試作品が完成」とウソを書いた。 完成できなかったのは資金繰りが苦しかったからだが、同社はこの後のNEDO助成金もだまし取っており、資金繰りが好転したとは考えにくい。
結局、このプロセッサーは完成し、実在するのか。驚くべきは 「完成しているという認識だったので、実在するかどうかの確認はしていない」 という経産省担当者の言葉だ。
Green500への申請で、計測に立ち会ったという理研もKEKも「プロセッサーが完成していたか否か、確認する立場にない」と口をそろえる。
さらにこの3機の詳細データ、特に 冷却システムを含めた全体を動かす電力が非公表なこと も疑問だ。
大電力を使うスパコンは熱を持つが、熱はスパコンの処理能力を落とすため、効率的な冷却が必須だ。斉藤被告側は、スパコン全体を液体フロンの入ったタンク内で冷却する手法を開発し、それにより省電力性能が向上し、世界一を達成したとPRしていた。
ただ、計算性能を使用電力で割った値でランク付けするGreen500は、 使用電力に冷却電力を含めなくてよい。このため、実際には冷却電力を膨大に使う「非省エネ」のスパコンが上位になり得る「欠陥」がある。 ベジー社側は、この欠陥を突いて「世界一」を獲得したのではないか。
本来、国費で研究開発する以上、 国はきちんと成果物の内容や意義を精査すべきだ。 しかし「モノを確認するにもコストがかかる」(経産省担当者)と及び腰ではどうしようもない。
「スパコンとは何か」の著書もある東京大名誉教授の金田康正氏(計算科学)は「プロセッサーなどスパコンのハード開発は米インテル社などの世界企業の寡占状態にあり、勝ち目がほとんどない。そこで世界一を競うなど、ベジー社は無理な勝負をしていた印象だし、その無理になぜ百億円もの国費が投じられたのか分からない」と指摘する。
金田氏も参加した民主党政権下での事業仕分けでは、千百億円かかった理研のスパコン「京」をめぐって、「世界一」の価値が問われた。いわゆる「二位じやだめなんですか」(蓮肪参院議員)論争だ。
当時、事業仕分けを仕切ったシンクタンク「構想日本」の加藤秀樹代表理事は「あのとき、京を推進していた文科省は『国民に夢を』などと 情に訴え、国威発揚のためといった話を持ち出してきた。 斉藤被告も『このままでは中国に負ける』などとあおっていたそうだが、まさに同じ構造。およそ科学や費用対効果の議論と関係ないナショナリズム的な色彩が、スパコン開発にはある」と話す。
金田氏はこう強調した。
「スパコンはしょせん、道具にすぎない。その道具を使って何ができるかはソフトウエア、つまりは人間業次第だ。百億円もあったら、モノであるスパコンに無駄に資金を投入するよりも、 人に投資していれば、ずっと効果的だったろう 」
<デスクメモ>
現実逃避のための国威発揚。その材料にスパコン開発も浮かんでいる。もっと向き合うべき課題は多い。少子高齢化、原発問題、東アジアでの共存・・・。どれひとつ、まともに議論できず「日本スゴイ」で思考停止。事態は悪化するばかりだ。まずは「スゴくない」現実を受け入れよう。(牧)
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