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(大村歩)
「本年中に2回の大きな株価上昇機会が御座います」「何よりも、世界一スパコンに対する旺盛な官民需要を、最大限に活用した成長が見込まれます」
これらは「こちら特報部」が入手した斉藤被告らによる出資募集の資料にあった口上だ。関係者によると、昨年5月ごろに資金を集めようと、投資家向けに配布されたものだという。
人工知能(AI)の発達によるSF的未来社会を構想する「特異点論者」――。資料の冒頭部分にある斉藤被告の紹介だ。続いて同被告の案内を受けて、ペジー社製スパコンを視察する麻生太郎財務相の写真がデカデカと載っている。
資料では、斉藤被告が関わる新規法人2社に「安定した研究開発のため」として計10億円の出資を要請。出資後の株式時価総額は計200億円以上になるとしていた。一方、同被告が会長のスパコン製作会社「エクサスケーラー」には、25億円分の出資を求めた。
株式上場の予定もないのに時価総額をうたったり、25億円の詳細な使途が書かれていないなど怪しげな部分も多いが、麻生財務相との写真が効いたのか。 「一部の投資家は出資に応じたようだ」(関係者)。
しかし、斉藤被告はその7ヵ月後の昨年12月、東京地検特捜部に詐欺容疑で逮捕、起訴された。起訴状などによると、スパコン用の新型プロセッサー(処理装置)とメモリー(記憶装置)の開発費用として、経済産業省から助成金計6億5300万円をだまし取ったとされる。同被告は今年5月の初公判で、詐欺罪の起訴内容を認めている。
ペジー社など斉藤被告が率いるグループ企業は、経産省から新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)を通じ、2010~17年度の間に、5つの研究開発で助成金計約48億円の交付決定を受ける一方、文部科学省から科学技術振興機構(JST)を通じ52億円の融資を受けていた。しめて100億円だ。
斉藤被告の逮捕後、JSTは融資全額の返還を求め、経産省も起訴事実となった2つの研究開発について約9億4千万円の返還を求めた。これらは返還済みだが、15~17年度の経産省分の助成金約35億円については、返還のメドはたっていない。同省の担当者は「本来は今年3月末に出るはずの成果報告書が出ておらず、費用を精算できていない。詐欺事件を起こした会社なので精算は厳正に行い、問題があれば返還を求める」と話す。
いずれにせよ、斉藤被告らは国や民間から旺盛にカネを集めていた。その殺し文句は「世界一のスパコンをつくる」。実際、それは達成されたため、一部には「詐欺はいけないが、ペジー社の技術力は素晴らしい」と擁護する声もある。
しかし、その技術力のアピールにも「だましのテクニック」が使われていた可能性はないのか。
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