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しかし、法は心に響かない。歴史問題では法律論を超えた取り組みが必要だ。安倍政権は「未来志向」を強調する半面、過去を記憶していく努力が不十分とも感じる。「国と国」にとどまらず「人と人」の和解の在り方を探るべきである。
第2次大戦中の強制労働への補償を考える上で、ドイツの対応がお手本となる。 ドイツは2000年、政府と企業による「記憶・責任・未来」基金を設立し、約166万人の被害者に対し、07年までに計約44億ユーロ(当時のレートで約7千億円)を支給した。
こうした取り組みにはドイツ国内でも反対論があったが、1998年に政権の座に就いた シュレーダー左派連立政権が推し進め、大きな成果を収めた。 ドイツ人は自らの手で過去と向き合ったことに誇りを持った。
日韓は65年、国交正常化のための日韓基本条約と共に請求権協定を結んだ。日本は5億ドル(同1800億円)の経済協力資金を韓国に供与し、両国間の賠償請求権は「完全かつ最終的に解決された」と確認した。
この時、国家間では確かに法的決着をみた。しかし、資金は経済開発に使われ、元徴用工ら個人への補償は十分に行われなかった。 協定は「それ以上の和解努力」を否定するものではない。
好例が三菱マテリアルの対応だ。 同社は2016年、第2次大戦中に日本の鉱山などで強制的に働かせた3千人以上の中国人被害者に対し、1人当たり10万元(同170万円)を支払うことで合意し、謝罪した。
中国は1972年の日中共同声明で賠償請求を放棄した。日本政府はこれを盾に賠償問題は「解決済み」としたが、 三菱マテリアルは自主的に謝罪と賠償に応じた。 民間企業が参加したドイツの基金と合わせ、和解を探る先例となり得る。
日本では「韓国は国際約束を無視した」「解決済みの問題を蒸し返した」といった感情的な言説があふれている。そうした雰囲気の中では「日本側も何かやれることがあるのではないか」という冷静な意見を唱えることが難しくなる。
その結果、徴用工問題は「日本VS韓国」という構図で捉えられ、国家間の対立の側面ばかり強調される。日韓が力を合わせ、どうやって和解を促進するかという方向に議論が進まない。
北東アジア安定の鍵を握るのは日韓だ。共に民主国家で、米同盟国でもある。北朝鮮の非核化など安全保障上の目的を共有し、中国の台頭に懸念を抱いている。韓国との良好な関係は日本人自身の利益となる。
真の和解には過去の行為を認め、心に刻むことが大切だ。 戦後70年に寄せた4年前の安倍晋三首相談話は、 将来世代に謝罪を続ける宿命を背負わせてはならないと訴える一方、 過去の歴史に真正面から向き合わなければならないとも述べた。 後者の取り組みが進展しているとは言い難い。
<MIKE MOCHIZUKI>
1950年金沢市生まれ。米ハーバード大で博士号。専門は日本政治、日米関係、東アジアの安全保障。犬ジョージ・ワシントン大の「アジア太平洋における記憶と和解」研究・政策プロジェクト共同責任者。
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