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――2018年頃から、滋賀県警をはじめとするいくつかの警察が、連帯労組関西生コン支部の組合員を逮捕・弾圧していく事件が繰り返されてきました。この事件についてはメディアの報道がほとんどありませんので、多くの人は知らないと思います。事件の概要をかいつまんでお話しいただけますか。
竹信 関西生コン支部(関西支部)というのは、全日本建設運輸連帯労働組合(全日建連帯)という労働組合の支部で、関西一円の生コンクリート業界の運転手たちを組織している組合です。これは日本に多い企業別組合ではなく、日雇いや非正規雇用の運転手が多く所属している産業別組合なのです。雇い主である生コンの運送会社はほとんど零細企業なので、場合によっては偽装倒産もあるし、実際につぶれてしまうこともある非常に不安定な職場です。そこに仕事を発注している生コン会社も零細で不安定な会社が多いのです。そういう環境の中では 企業別に労組を組織しても安定した労使関係は確保できませんので、産別組合でなければそもそも成り立たないのです。 加えて、大手企業からセメントを買って生コンをつくってゼネコンに売る零細の経営者は乱立させられセメントを高く買わされ、ゼネコンからは価格を競わされて安値販売を強いられたりするのです。そうすると、構造的になかなか利益が上がらず、組合が賃上げを要求しても賃金が上がらない。
こうした中での過当競争、値崩れ、 劣悪な生コンによる危険建築物の登場を防ぐため、生コン会社が業者団体をつくり、価恪安定のために工場や生産量の集約をしていく形で協同組合化することを、通産省が認めた のです。関生支部はそれを利用して零細企業の協同組合化を働きかけ、大手ゼネコンに対して価格対抗力をつけることで利益を確保させ、これで運送会祉の運賃を引き上げ、その利益を労働者の賃金に回す交渉ができるようにしたのです。 そうやって賃上げを勝ち取っていき、週休2日制などの待遇面や労働時間規制も改善させていきました。 経営者側は、「企業間の競争があるのでウチは賃上げできない」とは言えなくなり、一方、労組は企業を横断する組織を生かし、「労働条件を良くしなければ労務提供しない」と言えます。 それで労働条件はよくなっていったのです。
ところが、2017年の12月にゼネラルストライキをやったことなどをめぐり、数力月もたった後の2018年の7月から約1年にわたって大量の人が逮捕されていく大事件に発展します。事件の総計は10件を超しますが、大きく4つに分けることができます。まず、2018年の7月に会社の法令違反を調査・告発する コンプライアンス活動をしたことが恐喝にあたるとして滋賀県警による逮捕 が起きます。
次に、2018年の9月に先に述べたストを行ったことが威力業務妨害にあたるとされて、大阪府警による大量逮捕となり、さらに、労使交渉などをめぐって、京都府警が乗り出し、労組員らが強要未遂で逮捕されます。非正規の運転手が関生支部に加入して正社員化を求めたら団交を拒否され、その運転手が子どもを保育園に入れるための就労証明書の発行を求めたら、毎年出していた就労証明を出さないと言われます。 それでは子どもを保育園に預けられないというので、組合員があわててみんなで交渉に行ったら、それが強要未遂だというのです。 会社はついに就労証明書を出さなかったので、強要ではなく強要未遂なんですね。
最後が、和歌山県警の事件です。この事件は、組合事務所の周りに暴力団らしき人が徘徊していたので、それを差し向けたのが経営側ではないかとして、労組側が経営者の事務所に行って問い質すなどした事件ですが、それらも強要未遂や威力業務妨害に問われました。
こうして「コンプライアンス活動」「ストライキ」「団体交渉」「抗議活動」などの労働基本権に相当する権利行使が刑事事件化され、2府2県の警察に、延べ89人、うち組合員81人が逮捕された前代未聞の大量逮捕事件です。そのうち71人が次々と起訴(組合員は66人)されていきました。
――ひとつ理解ができないのは、組合員だけでなく経営側の人も逮捕されたということです。
竹信 協同組合(協組)というのは、生コンなどを製造販売する経営側の協同組合です。最初の滋賀県警の事件で逮捕されたのは滋賀県内の協同組合の業者ですが、関生支部は、地域の零細企業を協同組合に加入させて大手からの値下げ交渉に対抗させることで生コンの値崩れを防ぎ、賃上げのための利益を生み出す、という先に述べた作戦があり、協同組合に入っていない業者を入れるために加入業者に協力して働きかけをしてきたわけです。滋賀で逮捕された事業者は組合と一緒にこうした組織化に努めてきた事業者です。協同組合に入っていない「アウト」と言われる業者に対して、労組が協同組合に入るように働きかけることによって、値崩れを防ぐのです。こうした動きをめぐり、 滋賀県警の組織犯罪対策課は「イン」と言われる協組内の事業者が組合員と結託して大手ゼネコンの企業を脅したという容疑に仕立て上げて逮捕した わけです。
この事件で滋賀県警が問題にしたコンプライアンス活動とは、組合員が建築現場を回って、「汚水を垂れ流している」とか「置くべき所にコーンが置かれていない」とか「タイヤの擦り減ったクルマが出入りしている」といったことを見つけて注意を喚起し、時には公的な機関に通報して是正させる活動です。 関西生コンの労組は産別組合ですから、一企業にとどまることなくコンプライアンスを遵守させていき、業界全体の労働環境を良くしていく効果を目指しています。 警察はそういうコンプライアンス活動について、「法令順守を理由にゼネコンなどに因縁をつけた」と見立て、労組と協力関係にあった経営側を逮捕したのです。その証言を端緒に、恐喝などの容疑で多数の組合員を逮捕しました。それが滋賀県警のコンプライアンス事件です。
2つ目は、ストライキをしたことで大阪府警が組合員を逮捕しました。ストライキは労働基本権として認められているのですが、 産業別組合が圧力をかけた会社には組合員はいなかったから、それは正当な組合活動ではなく暴力集団による業務妨害行為にあたるという理屈 です。つまり、企業内組合しか労働組合ではないというわけですが、 産業別労組なのですから、そういう行為もあり得るわけで、欧米では珍しいことではありません。
――そんなことを言えば、連帯ストも支援ストもできなくなってしまいますね。
竹信 そういうことです。3つ目の事件での検察側の主張は「アウト」の業者を「イン」にしようとしたのを断られたために意趣返しをしようとして嫌がらせに執拗に交渉した、労使交渉ではなく嫌がらせなのだから強要、というものです。強要罪とは「生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した」場合に成立する罪ですが、それにあたるとしたわけです。しかし、 就労証明書を出してくれないと保育園に行かせられなくなり、共働きができなくなるわけですから、それを出さなかった行為の重大性を問わずに、強く求めたから強要、ということが通れば、子どもを持つ人は安心して働けません。
最後は、抗議活動などをめぐり、和歌山県警から逮捕された事件です。労組員が和歌山広域協組の事務所に行って数人で話をしていたというのですが、それが強要未遂だとして逮捕されたのです。 もし強要に相当するような態度なら、その場で警察を呼んで逮捕となると思う のですが、その出来事からだいぶたってからの逮捕で、となると、ここでも、 労組つぶしのための逮捕の口実にこの事件が利用された のではないかという疑いが出てきます。
(つづく)
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