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トランプ氏は相互関税で巨額の貿易赤字を解消し、製造業の雇用を国内に取り戻すといいました。関税を「交渉の武器」として振りかざし、不法移民対策や薬物密輸阻止といった要求をのませる強権的な「ディールの手段」としたのです。
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しかし、現実は大統領の期待通りには進んでいません。25年の米国のモノの貿易赤字は1・24兆ドルと過去最高を更新し、輸入抑制の思惑は外れました。さらに、高関税は輸入コストを押し上げ、インフレ再燃で自国民の家計を直撃しています。25年の消費者物価指数(CPI)は一時3・0%まで上昇しました。部品や原材料を輸入に依存する製造業ではコスト増が収益を圧迫し、工場閉鎖やレイオフ(一時解雇)が相次いでいます。報復関税による農業などの輸出産業の市場喪失も深刻です。
こうした逆風の中、日本が関税引き下げの対価として約束した総額5500億ドル(約87兆円)の対米投資は、実行段階に入りました。2月には、オハイオ州の火力発電所やメキシコ湾の石油ターミナルなど、約360億ドルの「第1弾」案件が発表されました。3月には、高市・トランプ日米首脳会談に合わせて、テネシー州やアラバマ州での小型モジュール炉建設を含む、約730億ドルに及ぶ「第2弾」計画が具体化しています。投資先の地域は、中間選挙や大統領選挙での「激戦州」に加え、共和党の強固な支持基盤の「赤い州」にも集中しています。日本の富がトランプ氏の権力維持に動員されている形です。
しかし、 2月に米最高裁が「相互関税は違憲」との判決を出し、日本が結んだ投資約束の前提は崩壊しました。 日本は当初通告された「24%」の理不尽な高関税を免れるため、巨額投資を条件に15%への引き下げを「勝ち取った」はずでした。ところが、違憲判決で日米合意の枠組み自体が法的に消え去りました。現在は通商法122条に基づき、実効税率は11~13%程度で推移しています。日本が巨額投資の約束で「勝ち取った」15%の合意よりも低いという逆転現象が起きているのです。
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巨額の投資を継続する正当性は存在しません。投資の進ちょくに不満があれば課徴金を上限15%に引き上げるというトランプ氏の脅しは、関税を「人質」にした身代金要求に等しいといわざるをえません。
違憲判決で根拠を失ったディールに固執し、国民の血税や民間資金をトランプ氏の選挙対策へと献上し続ける日本の姿は、「対米従属」の極みです。国富を流出させるだけでなく、国際社会における日本の地位を「米国の属領」へと失墜させるものです。今こそ日本は、崩壊した合意の無効性を堂々と主張し、属国的な盲従から脱却する矜持(きょうじ)を示す時ではないでしょうか。
(みやざき・れいじ 明海大学准教授)
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