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『 「朝だけ断食」で5キロ減 41歳男性記者が挑戦でわかった効果〈AERA〉 』
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朝食を食べない生活をして、8カ月になる。正直、全くつらくない。むしろ、1日3食の生活に戻すのが考えられないほど、朝食を食べないメリットばかりを感じている。
きっかけは、ある病気で投薬が必要になり、脂質代謝異常と食欲増進の副作用が出てしまったこと。食べても食べても満腹感が得られず、脂肪がどんどんたまっていった。顔と腹がパンパンにふくれあがるが、脂質代謝が落ちているので、ジムなどで運動してもなかなか痩せられない。この「アンパンマン」状態を何とか改善する策はないものかと思案して、行きついたのが「朝だけ断食」だった。
記者は朝だけ断食開始から1カ月で体重が3.5キロ減り、現在では4.5キロ減った状態をキープしている。そこに至る詳細は後述するとして、まずは朝食を抜くだけで痩せるメカニズムを知っておこう。
『朝だけ断食で、9割の不調が消える!』の著者で、鶴見クリニック理事長の鶴見隆史氏はこう話す。
「現代の栄養学の基準は、昭和40(1965)年ごろに確立されたもので、明らかに『食べすぎ』なんです。成人男性は1日2千キロカロリーが必要で、1日30品目を満遍なくとろう、という現代栄養学の基準が主流となってから、がんや生活習慣病も増えていきました。成人男性でも、1日1600キロカロリーもあれば十分。1日3食は、人体の生理リズムにも反しており、朝食を抜いた方が健康を維持できるのです」
鶴見氏によると、1日の人間の生理リズムは「排泄(はいせつ)」「消化」「吸収」の三つに分けられるという。午前4時から正午までは「排泄」の時間、正午から午後8時までは「栄養補給と消化」の時間、午後8時から午前4時までが「吸収と代謝」の時間となる(グラフ参照)。1日のうち、食事をとるのは8時間。次の食事まで16時間のインターバルをとるサイクルだ。
午前4時から正午までは汗や尿、便などと一緒に体にたまった疲労物質や毒素、老廃物を体外へ出す時間だ。その分、正午から午後8時までの間に昼食、夕食をしっかりととって栄養補給をする。午後8時以降は食事を避けることで、深夜から早朝にかけて消化したものを体に吸収することができ、弱った部分を修復する機能が働くという。
また鶴見氏いわく、食後8時間以上たつと、消化管でモチリンというホルモンが分泌される。モチリンには腸の運動を活性化させ、腸に残った老廃物の排泄を促す機能がある。空腹が長いほどモチリンは活発に分泌されるので、毎日16時間以上の空腹状態を作ることで、腸にこびりついた宿便も排泄され、便秘も改善するという。
8カ月前、記者が参考にしたのは、2001年に出版されてからすでに33回も版を重ね、断食の“バイブル”とも言われる故・甲田光雄氏の『奇跡が起こる半日断食』だった。
同書に書かれている内容は、とてもシンプルだ。1日3食の生活では、前の食事が消化し終わらないうちに次の食事をすることになり、内臓が休まる時間がない。これでは腸にも負担が大きく、さまざまな不調を引き起こすとされる「宿便」もたまりやすい。そこで、朝食を抜くことで消化吸収に必要な18時間を確保し、毎日、内臓を健全な状態に戻してあげる。朝食を食べないと内臓が正しく機能し始めるので、高血圧や糖尿病など生活習慣病の予防にもなる、というのが「朝だけ断食」の要諦だ。
18時間と聞くと、長時間空腹に耐えなければいけないイメージが浮かぶが、実はそうでもない。前日の午後7時に夕食を食べ終え、翌日の朝食を抜けば、13時には昼食を食べられる。また2時間ほどの誤差は許容範囲とされているので、前日の夕食から次の日の食事までに、最低でも16時間空ければよいことになる。16時間のインターバルをとるという前出の鶴見氏の理論とも合致する。
本来は朝食で摂取する水分を補うために、日中は水分を多めにとること以外には、細かい決まり事はない。お金もかからず、特別な機器もいらず、計測などの手間もなし。ただ朝食を抜けばいいというシンプルさにひかれ、昨年7月から「朝だけ断食」を実行してみた。
初日は予想通り、かなりの忍耐がいる。朝、妻と子どもが食べるハムエッグやコーヒーの香りが、空腹感を刺激しておなかがギューギュー鳴る。食欲を振り払うかのように早めに出社。仕事に集中しようとするも、頭の片隅で考えるのは昼食のことばかり。13時に食べた社食のカレーは、帝国ホテルのそれかと見まがうほどの美味だった。
2日目も空腹感は強かったが、3日目からは体が慣れてきたのか、家族の朝食を見ても、何も思わず。4日目からは、むしろ体内に「余分なもの」が入っていない爽快感の方が勝るほどになっていた。頭がボーッとすることもなく、午前中はすっきりとした気持ちで仕事に集中できる。
宿便が出ていったからなのか、体重もみるみる減った。昨年7月25日時点で69.4キロあった体重は、2週間でおよそ2キロ減。おなかまわりについていた脂肪の「浮輪」が目に見えて小さくなっていくのは、快感を覚えるほどだった。
開始から1カ月後には、65.9キロまで絞れ、3.5キロの減量に成功。今は、65キロ前後をキープしているので、実質的には4.5キロもやせたことになる。もともとが食欲が止まらず、脂質代謝異常の状態だったとはいえ、ダイエット効果は抜群だった。(編集部・作田裕史)
※AERA 2019年4月1日号より抜粋

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