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「おまえは神に祈って霊感を出したが、今後一生、霊感でやっていくには、
一定の期間、断食をすることになっている。大がかりなものでなくとも、
魚とか肉を一生断って、食卓に上げないことになっている。これは昔
からのしきたりで、みんなやっていることだ。外国でも、昔からそういう
しきたりになっている」
長谷川わかは考えた。そういえば、子供が若くて死んだからと言って、
お茶を断って飲まない人がある。
《でも、神が何と言おうと、贅沢でない食べ物を食べるのは、ささやかな
私の楽しみだ。人間には、身体を養うために食べる権利があるはずだ。
断食などさせられてたまるものか。絶対に断食などやってやらないよ!》
長谷川わかはそう堅く決意した。
しかし、神は続けて言った。
「神のことをやるには、昔から断食をやるのがしきたりだ。だから、今日
からおまえに断食させる。おまえは子供を持っているから、自分が食べな
いと、子供にも栄養をとらせることができなくなってしまうことになる。
子供の成長期におまえが断食すると、子供の成長のために良くない。
だから、いまのうち、子供が幼児で少食の間に、五十日間だけ断食させる。
その後は、子供の成長に合わせて、何をどれだけ食べてもよい、というよ
うにする方針である」
「そんな!勝手に、わたしの身体の方針を決めないで下さい。わたしには
子供がいるのだから、今でも絶対に断食はできない。子供が幼くて手間が
かかって、身体も使うから体力も要ります。だから、断食なんてできる
はずがないじゃありませんか。いったい、急に、何を言い出すのですか!
神も人間並みに口を利くのなら、もっと人間の生活習慣を考えて、現実の
生活に合わせたらどうですか?」
「……」
「子供のことがなくても、わたしは人一倍食いしん坊だもの。神の操り
人形みたいになって、断食などしてやるものか!」
長谷川わかは頑張った。
「それならば、意地を張ってみろ。おまえが自分の意思で断食をしなく
とも、神の意思でおまえを断食させる」
「いや、そんなことはさせません。わたしは、なんと言っても絶対に
食べます!」
長谷川わかは、八畳の座敷の真ん中に、上等な座布団二枚を敷いて座り、
毎日ほとんど二十四時間、ぶっ通しに訓練された。
一日一度、五分間だけ休憩、五分間だけ寝ることが許された。その他は、
一日中、威厳をもって活発にしゃべる神、話す神霊から、自分の身体内で
講義を聞かされ、演習をやらされた。活発な対話を行って、問答議論を
しつつ教育を受けながら暮らした。
自分の全然知らないことを自分の口でしゃべる、それが神による講義で、
それを聞く、口や声帯の持ち主であるところの自分が生徒なのである。
現在の教育テレビや放送大学では、テレビの画面で講師の顔と文字や
絵を見ながら受講するが、彼女の場合は、黒板に相当するものは霊視野
である。そこに、超時空でいろいろなものが見え、3D映画のように
動きも伴って見えた。
質問があれば即座に質疑応答できる。
講師である神の顔や姿は絶対に見えない。大石内蔵助など、出現する
霊は見える。参照すべき情景は、必要に応じて霊視聴できた。
(中略)
そうこうしている間に、神の講義は、天文学、宇宙の構造から、地球
以外にも人類が住んでいる天体があること、そこに建築物もあり社会が
形成されていること、それぞれの家庭があること、生まれ変わりが実際
に行われていること、業の相続、因果律、因果応報の原理、六道輪廻の
実際、地球地理、人類の発生と分散、日本民族の形成過程、日本史・
世界史の大要、各種の宗教の根本や儀礼などについてにおよんだ。
独特の、超脳による、自己身体における視聴覚教育を受けたわけである。
「離れているところを次々に見ていくときには、移動しながら見るん
です。移動するときは、小型の透明な飛行機やヘリコプターじゃない
です。身体が空気中に出ていて、じかに風が当たるの。孫悟空みたいな
金斗雲だか、アラビアンナイトの空飛ぶ絨毯でもないんだけど、ちゃん
と自分だけで飛べて、相当速く移動していて、風がわたしの頬や顔に
当たる。皮膚が震えて痛いぐらい、強く当たるんです。
それで、神と一緒に飛びながら、日本全国、九州から北海道のほう
まで、名所の主なところを飛び回っていって…。まるでスーパーマン
ですよ、テレビでやっていたでしょう?わたしは、ああいう赤いマント
は着ていなくて、このまま普段着なんですけど、手をこうして少し前に
出して、ちょうど、ああいう姿勢で飛んでいくんです。
それで、わたしの神が、あれは宮城だとか、宮中でこういう行事が
行われているところだとか、あれは議事堂で、議員が沢山いて日本の
政治をするところで、こういう法案を審議しているところだとか、案内
してもらいながら行くんです。
手をこう伸ばして、少し下向きにして空中を行くんです。そして
目的地に到着すると、その辺りの上空に停まったまま、空から参拝
したり、どういう神が祀ってあるとか、その神社仏閣のいわれの説明を
受けるんです。わたしの神から。
皇室とか神社ですから『空からじゃ、失礼になりませんか』って聞い
たら、『これは神が飛ばしているのであるからよいのだ』って。
わたしは普通に拝むんだけど、神さまは、神の仲間同士でしょうから
『おう、ご苦労さま!』なんて言って、お互いに挨拶しているわね。
どうなっているんでしょうね、こういうの。
普通、こういう神仏って言ったら、参拝する対象は神社仏閣だけに
かぎられますわね、そうでしょう?それが、わたしの神の場合は
おかしいんですね。
それで、愛宕山の放送局を見たのです。建物の中でアナウンサーが
ニュースとか天気予報とか放送していて、丘に高い鉄塔が立っている。
そこから、アナウンサーの声が電波になって発射されていて、それが
ラジオの機器なしで、じかに、わたしに受信されたんです。左の耳たぶ
あたりで聞こえるの。いまは紅白歌合戦をカラーで見ますが、当時は、
まだテレビは放送局でやっていませんでした。
キリスト教の教会も沢山行きました。長崎の天主堂だかへ行って、
上のほうからマリア像を眺めて、『あれが、第二次大戦の始まる前、
おまえに現れて予言した聖母マリアの像だ』とか、教えてくれるんです。
(中略)
そうだ、あのときに泉岳寺も見たんでした。あれが四十七士の墓の
あるところだって。
ああ、今、神様が、『大石神社っていうのがある……』って。そんな
神社、あるなんて知りませんね。本当でしょうか?
わたしも知らないけど、あるんですってよ。でも、こうなって(霊
として)大石内蔵助が出てくるし、とてもいい雰囲気だから、よく成仏
しているんでしょう。皇室と日本の国全体を救う大目的を達成できた
って言っていますし……」
なるほど、四十七士は、真実はまったく知られていないが、浅野内匠
頭と共に日本全体を救った大英雄として、天人の世界にあるのだろう。
「松島の景色も楽しんで、東北へ行って、出羽三山ね。羽黒山と月山、
湯殿山、あるわね。全部で五十ヵ所以上行ったから、あとは覚えていな
いけど、一つひとつ、そういう場所のいわれを、詳しく教えてもらった
んです。これは、わたしの霊感の完成記念の修学旅行だったんですね。
外国にも行ったんですよ。パリのエッフェル塔、ニューヨークの自由
の女神、ナイヤガラの滝など、たくさん見ました。一日中かかったわね。
宇宙にも行って、宇宙人の社会も家庭も見学したんです。宇宙人と
いっても地球の人間と同じです。何から何まで人間の世界と同じで、
ビルも会社も学校もあるんです。わたしの見たのはちょうど夕飯時で、
家族でテーブルを囲んで夕飯をとっていました。
不思議ね。これらはみんな、わたしが断食していたとき、身体は座敷
にいたままで廻ったんです。イエス・キリストは、四十日の間断食した
っていうことですね。『だから、おまえには、もっと長く五十日間、
完全断食やらせる』って、やらされたんです。それで、神から『宗教は
異なるが、霊感の能力の点からだけ言うと、おまえはイエス・キリスト
とそっくり同じである』って言われました。
「それは逆ですよ。我々の遠い昔の先祖が地球を訪問したとき、
地球で生活しながら調査、研究するために持ち込んだものが多いのです。
古い時代には我々の星にも争いや戦争がありましたから、そのときに、
政府に対する反乱軍をひとまとめにして宇宙船に乗せ、地球へ島流しに
したことがあるのです。我々の調査により、地球で人間が生活できる
環境があるとわかったからですが、これにはひとつの実験としての目的
もありました。『人間の新天地での生活と、進化の過程を見る』という
ものです。そのために、当分生活できるだけの物資と、自分達の力で
生産し、生活していけるようにとの配慮から、たくさん種を置いてきた
のです。だから、地球と我々の星には同じようなものがたくさんありま
す。
当時の地球には、地球自体の生命が進化してやっと人間になった
ばかりの者、我々が島流しにした犯罪者、我々の星以外の進化した星
から宇宙旅行の途中で立ち寄った人間、我々と同じように地球を調査
するために来ていた人間などがいました。地球は昔からいろんな星の
進化した人間にとって、観察、調査、研究の対象だったのです」
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