森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2017.07.23
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森田先生は「不即不離」について次のように説明されている。
神経質者の考え方、あるいは精神修養の誤ったものは、その恐ろしいという心を否定・圧迫し、一方には近づきたいという心に、いたずらに鞭打ち、勇気をつけようとして、無理な努力を工夫し、その結果は、かえって精神の働きが萎縮し、片寄ったものになってしまう。恐ろしくないように思おうするから、いたずらに虚勢を張ってかたくなになり、強いて近づこうとするから、相手の迷惑などにも、少しも気がつかず、図々しくなってしまうのである。

これに反して、両方の心が相対立しているときには、相手に接近してもくっつききりに即しない、すなわち不即の状態で、相手の喜ぶときには、近づき、相手の迷惑のときには、ちょっとその場をはずすなどである。
また、一方には、恐ろしいために、離れていても、離れきりにはならないで、ちょっと相手の話し声がするとか、暇な時があるとかいうことを、極めて微妙に見つけて、直ちにその近辺に近づいていくというふうに、不離の状態になる。
つまり即するでもなく、離れるでもなく、常にその駆け引きが、自由自在で、極めて適切な働きができるのである。
「親しんで狎れず、敬して遠ざからず」というふうになるのである。 (森田全集第5巻 243ページより引用)

私が以前勤めていた会社にはとても気難しい部長がいた。
前日自分の贔屓のプロ野球のチームが負けただけでイライラして、その気持ちを周りの人に吐き出していた。
その状況をわきまえないで、その部長に近づいて仕事の進行状況や問題点の相談などに行くと、いつも怒りが爆発していた。私はその部長の直属の部下としてサポートしていた。

他の営業所の所長からは、部長に電話をする前に、まず私宛に電話がかかってきて、今の部長の精神状態は安定しているかどうか確認してから、改めて部長に電話をするという方法をとっていた。
これは状況をよく観察して、状況に合わせて行動を選択するということだと思う。

森田先生は、 犬を連れて散歩に行くと、犬は主人のそばばかりにくっついて歩くのは、退屈でたまらないから、何かを見つけてはサッサと駆け出していく。
見失いはしないかと心配していると、また、どこからともなく帰ってきて、主人の足元へ絡みついてくる。これが犬の自然な心で、いわゆる「不即不離」の状態である。
すなわち、犬は退屈のために主人を離れるが、そうかといって、絶えず主人を見失いはしないかということが気にかかるから、決して離れてしまう事はない。

それでは、どうすれば「不即不離」が体得できるのか。
欲望と不安のバランスをとる事を心がけて生活すればよいのである。
欲望の充足のために努力するのはいい。ただし欲望の追求が無制限に放置されてはならない。
もともと欲望が強いときには、必ずその反対に不安がつきものである。
要するに欲望の追求だけに偏ってもいけないし、不安との格闘だけに偏ってもいけない。
不安と欲望を目の前の状況をよく見て、状況に合わせてバランスを取るということが大切なのである。

神経症で苦しい時は、生の欲望の発揮は蚊帳の外になり、注意や意識を不安を取り去ることばかりに集中している。
神経症から解放されようと思うなら、まずは不安と欲望のバランスを回復させることである。

「不即不離」を人間関係に応用していくと、幅広い人間関係を構築していくことになる。
神経症の人は対人関係が苦手で、親友と言われるような友人は2 、 3人いればそれで充分だというふうに考える人もいる。
その考え方はコップ一杯に水が満たされた人間関係が2、3個しかないということである。

あるいはその友人が理不尽な態度をとるようになった時はどうなるのか。
考えてみれば恐ろしいことである。
自分がよりどころとしていた人間関係が崩れやすいということである。
その先に待っているのは孤立である。

「不即不離」を中心とした人間関係は、コップに少しだけ水が満たされた人間関係をたくさん構築することだ。そして、その時その場に応じて付き合う人変えていくことだ。
必ずしも親密な付き合いをする必要はない。
無理のない範囲で、付き合ったり離れたりするような人間関係を築きあげることだ。
仕事仲間、家族関係、親族関係、同級生、OB会、趣味の会、自治会、集談会の仲間など幅広く薄い人間関係をたくさん作っておくことである。
つながりがあれば、あとは必要に応じて引っ付いたり離れたりする。
憑かず離れずの「不即不離」の人間関係を築きやすい。
年賀状1枚を出すだけの人間関係も立派な人間関係だ。
そんな関係の人を、仮に300人作ったとすると、人間関係で問題を抱えたり、孤立してしまうということは考えにくい。





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Last updated  2017.07.23 06:30:05
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森田生涯 @ Re[1]:成功するためには感謝力が必要となる(04/09) 分からない歴20年です子さんへ コメント…
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