森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2017.07.26
XML
倉田百三氏は様々な強迫観念に苦しんだ。
観照障害、不眠、耳鳴り、回転恐怖、計算恐怖、いろは恐怖などである。
観照障害は、物事を見た場合に、部分見えるけれども、全体がつかめないという症状です。
倉田さんが夕日を眺めていたところ、夕日の太陽の赤いところはわかる。
目を他に移せば赤くなった雲はわかる。
けれども、全体として夕焼けを知覚できないというものです。
ものを見た場合、部分としては見えるけれども、全体としては見えない。
ですから、感動が起こらないのです。
木を見た場合も、木肌とかは部分的に見えるけれども、全体としては松の木と感じとれない。


この強迫観念に対して森田先生は次のように指摘されている。
節穴から差し込む陽の光でも、これを平常心で眺めれば別にどうということもない。
これを意識的に凝視すれば、そこにはあたかも天文の星雲世界のごときほこりの渦巻きがあり、さらによくよく観察すれば、さも一定の法則でもあるかのようなほこりの運動が見える。
こんなささいな光線の中にも、思い定めれば、そこに宇宙を、そして宇宙の法則さえ発見できるかのごとくである。こういう意味の発見に、人は自己の精神機能の発揮の喜びを覚える。
倉田さんが、 「池の水面によどむほこり、街路の風に吹かれて舞う反古」にも限りない美を感じるというのも、そういうことである。
これを直ちに美と称するのは思い違いである。倉田さんが美ととらえたのは、対象そのものではなく、自然の凝視という意識的努力の成功の喜びである。
自己の欲望を達成の努力に対する快感を持って、これを美と誤想しているに過ぎないのである。
対象を如実に眺めてそこに美を感得しているのではなく、美と快を混同して、自分の快適な気分に陶酔し耽溺しているだけである。これはふとしたきっかけでこの気分は容易に反転する。
人間であれば誰しもしばしば陥る不快な気分のときに、対象に陶酔し耽溺できないのは全く当然であるが、倉田さんはこのことに焦りもがき、自分から美の感覚が失われたと嘆き、俺に執着して計らい、ついに強迫観念陥っていいったのである。
不眠症も耳鳴り症も、不眠や耳鳴りの不快な気分を思い捨てようとして、いよいよこれに執着しはからい、その計らいを打ち捨てんとする虚しい努力の結果である。

倉田さんのすべての苦悩の根源は理想主義にあった。

生の欲望と完全欲を果てしなく満たさんとするがゆえに、その道程を妨げるもののすべてを意識的に排除しようとしたのである。そうした排除の心理は、己の理想の実現の障害になりうる。
どんな小さなものであっても、これを振り払わずにはおられない。
倉田さんの理想主義は、 「真理に服従するこころがけではなく、実は自分の都合のいいように、世の中のことをやりくりしようとする理想主義である」と見なしていた。
迷妄から脱せよ、事実を事実のままに受け入れよ。そこから生まれるのでなければ、真の理想主義ではない。倉田さんから渡される日記を見て、森田先生はいつもそうつぶやいていたという。
(神経症の時代 渡辺利夫 TBSブリタニカ参照)





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2017.07.26 06:30:05
コメント(0) | コメントを書く
[観念重視から事実重視への転換] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Favorite Blog

寒い時期の脳卒中、… New! 楽天星no1さん

長谷寺~室生龍穴神… へこきもとさん

心食動操 メルトスライム25さん
神経症を克服します♪ ROSE33333さん
「私」がいる幸せ えみこた2さん

Profile

森田生涯

森田生涯

Comments

分からない歴20年子@ Re[2]:成功するためには感謝力が必要となる(04/09) 森田生涯さんへ  お返事ありがとうござ…
森田生涯 @ Re[1]:成功するためには感謝力が必要となる(04/09) 分からない歴20年です子さんへ コメント…
分からない歴20年です子@ Re:成功するためには感謝力が必要となる(04/09) 森田を知って随分経つのに今だに難しく感…
森田生涯 @ Re[1]:成功するためには感謝力が必要となる(04/09) 長谷川勤さんへ 読んでいただいてありが…
長谷川勤@ Re:成功するためには感謝力が必要となる(04/09) 森田理論学習のすすめ のブログ 本日初…

Calendar


© Rakuten Group, Inc.
X

Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: