森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2017.11.20
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普段、私たちがよく使う言葉で、次のような言葉があります。



これら言葉にはあまりよいイメージはありません。
とるに足らないもの、無視してもよいもの、放っておいても支障のないもの、たいして役に立たないもの、金にならないもの、あると却って迷惑なもの、わずらわしいもの、適当に処分していいものとして認識しているものの総称です。

これらは人間が、自分、他人、物を勝手に是非善悪の価値評価をした結果生まれた言葉です。
もともと自然界にはそんなものが存在しているわけではありません。
観念の世界で作り出されたものです。
人間にとって役に立つ利用価値があるかどうか、経済的にお金が儲かるかどうか、人から高い評価が得られるものかどうか。「交換価値」「利用価値」「経済的価値」「評価価値」でもって自分の身の回りのものすべてをよい悪いと選別した結果作り出された言葉です。

例えば家庭の炊事、掃除、洗濯、整理整頓、育児のような仕事を「雑事」とみなして軽視し、自分はもっと意味のあることをするべきだ。クリエイティブで創造性のあることを手掛けたい。あるいは「雑事」は他人に任せて、趣味や旅行、グルメ三昧の生活に軸足を置いて生活を楽しみたい。

「雑仕事」は、細かい伝票整理のような仕事です。伝票がたくさんあると確かに煩わしいものです。


また「雑草」という言葉があります。本来自然界に「雑草」という植物はありません。
人間にとって存在していては困るものとして認識されている植物群のことを言います。
そこで除草剤を振りかけたり、雑草をビニール製の寒冷紗のようなもので覆って、邪魔者扱いしています。それでも雑草はへこたれず伸びてくるので、ついに人間が敵視するようになったのです。

青森のリンゴ農家の木村さんは、夏に雑草を刈り取りません。
周りの農家は訳もなく雑草を刈り取ります。除草剤や草刈り機で刈り取ります。
木村さんは刈り取ると夏の地表温度が30度を超えてリンゴの木の根がやられるといいます。
根がやられないためにみんな水の散布をおこないます。木村さんに言わせればしなくてもよい仕事です。
木村さんはいろんな植物を生やしたままにしているので、地表温度は20度台の前半です。
水やりは必要ありません。またマメ科の植物は窒素を固定してくれるので肥料もやる必要もないのです。木村さんのリンゴ栽培では「雑草」というものはないのです。
これこそ植物の「存在価値」を見つけ出して活用しているという例です。

「雑魚」という魚は、鯛やヒラメ、マグロやハマチ、フグ、金目鯛などの高級魚と比べると見向きもされません。小さな魚やイワシやボラのような魚です。

それはまだいい方で、網にかかっても、経済的価値がないので、面倒な魚として、そのまま捨てられてしまいます。

森田では雑事、雑用、雑仕事、雑草、雑魚などといった考え方はしません。
すべての生き物には「存在価値」があるという立場に立っています。
森田では人間の都合によって、安易に是非善悪の価値評価をしてはならないといいます。
それぞれの「存在価値」を見つけ出して、最後の最後まで活かしてゆきましょうという考え方です。


森田先生曰く。「善し悪しとか苦楽という事は、事実と言葉との間に非常な相違がある。この苦楽の評価の拘泥を超越して、ただ現実における、我々の「生命の躍動」そのものになりきっていくことができれば、それが大学卒業程度のものでもあろうか。「善悪不離・苦楽共存」というのもこのことである」
(森田全集第5巻 653ページより引用)

森田先生が言われている大学卒業程度の段階という言葉はとても奥が深いように思います。
神経症が治るという2番目に「思想の矛盾の打破」というのがあります。
ちなみに1番目は「精神交互作用の打破」です。
「思想の矛盾の打破」とは、「かくあるべし」に重きを置いた世界から離れて、事実、現実、現状を出発点にする生き方に転換できたときに身につくものです。
この段階が実現できた段階では、神経症が治るだけではなく、神経質者としての本来の生き方を体得し、味わい深い人生を歩み始めた人の姿といえるでしょう。
ここまでは森田理論学習に取り組んでいる我々が目指すべき確かな目標となります。

森田先生は、その上に是非善悪という価値判断をやめて自然と一体となった究極の生き方があるといわれているのです。価値判断をやめればすべてのものには存在価値がある。
生きとし生けるものは、意味もなくこの世に存在しているということは考えられない。
自分も他者も、動物も植物も地球上に存在するものすべてに存在価値はある。
それぞれが持つ存在価値を見つけ出して、思う存分最後の最後までその価値を実現していこうではありませんかと提案されているように思えてならないのです。
森田ではむしろ「雑」をつけて呼ばれているものこそ、大切な宝物として取り扱う必要があるといっているのです。
そういう考え方に思いを馳せれば、雑事、雑務、雑用、雑仕事、雑念、雑誌、雑役、雑種、雑草、雑魚という言葉は死語になってしまう。





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分からない歴20年子@ Re[2]:成功するためには感謝力が必要となる(04/09) 森田生涯さんへ  お返事ありがとうござ…
森田生涯 @ Re[1]:成功するためには感謝力が必要となる(04/09) 分からない歴20年です子さんへ コメント…
分からない歴20年です子@ Re:成功するためには感謝力が必要となる(04/09) 森田を知って随分経つのに今だに難しく感…
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