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静かな静かなクリスマス。今年は特別な御馳走もケーキも無く、普段の一日と同じように過ぎようとしています。因みに、今ストーブの上で大根を煮ています。なぜかって言うと・・・直に聞いてくださる機会のある方には、お話してもいいかしら。ハハハ・・・年末帰省の日が近づきました。28日から1月の下旬まで、自宅では見せない気働きを心がけ母と過ごしてきます。例年だと十日間ほどの期間ですが、これからは少しでも長く滞在して共に過ごす時間を増やせたらと考えて、三週間ほど・・・。ただ・・・私の性格が災いして疲れが溜まるといけないので、今回は考え方を変えようと思っているのですが、できるかしら。自分を変えるって、とても難しいです。振り返ってみますと、今年もよく遊びました。体は正直で、体力が続かず遠出が苦手となってきましたが、日帰りのきのこ狩りに何回出かけたでしょうか。多くを望まず現状維持の日々がこれからも続くといいな・・と思う日々です。今年も私の拙いブログを読んでくださった皆様に感謝いたします。ありがとうございました。来春からの楽しみを胸にして、暫し薩摩の女となります。
2012.12.25
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教室の中が、がらーんと広い。一緒に帰ろうとせっちゃんを探したけんだけど、廊下にも下駄箱の前にもいなかった。もう帰っちゃったのかな・・。勉強時間が終わってからぼんやりと校庭を見るのが大好き。真ん中には大きな栴檀の木があってフクロウが棲んでいるって聞いたけど、まだ見たことはないんだ、見てみたいなぁ。みんなニコニコお家に帰っていくけど、あたしは学校帰りの道がきらい。山崩れの崖からはみ出している木の根っこにぶらぶら下がったり、急に開けた道端から見える遠くのまあるい山を眺めるのは大好きなんだけど、時々坊主頭ののりちゃんが待ち伏せしているから。一人で棲んでいるおじさんの家の縁側には、ドクダミの葉っぱが沢山下げてありカラカラに乾いている。もう使っていない井戸の横に大きな石がひとつ置いてあり、てっぺんには破れた麦藁帽子がいつも載っている。おじさんは時々見かけることがあるけど、あたしをじろっと見るだけで、まだお話ししたことはない。お家が並んでいるのはここまで。左に曲がったら道の両側は高い木に覆われた暗い林が続いていて、一人で歩くのがちょっと怖くなってくる。くねくねと曲がっている道の途中に畑を切り取って作ったような脇道があり、のりちゃんはそこであたしが通るのを待ちぶせしているのだ。やっぱりいる、今日も待っている、どうしよう。まわり道は知っているけど、うんと後戻りしないといけないし、気づいたからって後ずさりするのもなんだかすっきりしない。それに、なぜか目の前を通り過ぎて少し離れるまでは立ちつくしたままで追いかけてこない。道端に転がっている小石を踏みながらうつむいて歩いていくと、右手に木切れを持ったのりちゃんのズボンが見えた。走ってはいけないと思うけど、どんどん早足になってくる。あの先の曲がり角だと見えなくなるから、うんと早く走れる。そうっと振り向くと、口をかみ締めたような顔つきののりちゃんがこちらに向かって走ってくる・・・。なぜだろう、なぜ時々追いかけてくるんだろう。追いつかれるとあの棒を打ち付けられるかもしれない。左の細道に入ると竹やぶがあり隠れるところも沢山あるけど、その先にはお墓が並んでいるし、風が吹いたら竹がザワザワと音をたてて気持ちが悪くなりそうだし・・・そうだ畑につながる右の坂道を登ろう。昨日雨が降ったからか坂道はつるつると滑り桃色の運動靴は泥で黒く汚れてくる。でも、上のほうの林に逃げ込むまでは止まれない。ぼうぼうの草の間に並んでいる木の下にしゃがむと、あたしの体は茂みに隠れて目の前は小さな白い花を咲かせた草だけになった。それをかき分けて下の道を見ると、ランドセルを揺らしながら走っていくのりちゃんの背中が見えた。私の周りは緑色の世界。つんつんととがった葉っぱや、黄色い風車のような花が揺れている。あたしが踏みしめた葉っぱからは不思議な匂いがしてくる。いつも嗅いでいる匂いなのに、目をつぶっていると何だか胸の中がどくどくしてくるような匂い・・。このままここに座り続けたら、あたしはこびとになってしまうかもしれない。頭の上も葉っぱだらけで、枝に小さな緑色の実が付いている。あぁ梅の木だったんだ・・・。ぐるりと廻った反対側に、茶色い何かがくっついている。傷ついた木から樹液が出てきて固まったのかなぁ。でも下まで重なっているそれは、何だか生き物のようだ。指でつまんでみるとはじき返すようにプルリと動いた。もしかして・・・きのこ。せっちゃんと杉林の中で見た白いきのこは土の上に生えていた。木に出てくるきのこってあるのかなぁ。根っこに近いのはあたしの掌よりも大きくて、色も薄くなって柔らかそう。触っていると、気持ちいいような悪いような・・・。きちんと並んでいるのを見ていたら、いやーな感じがしてきてひとつ引っ張ってみた。「あ、ゼリーだ」、プルプルの中には透明なゼリーがたっぷり。上と下を剥がしていくと、どんどんプルプルが増えていく。あたしは小さな緑色の世界の中で、プルプルおばけと戦っている。次々に引っ張って掌でグチャリと握ると、はみ出したゼりーは桃色の靴の上にドロリと落ちて、靴はどんどん汚れていく。少し乾いて硬くなったのは、引きちぎってバラバラにした。木の根元にあるのは、踏みつけて潰してやった。ぜーんぶ、ぜーんぶやっつけてやるんだ、あたしに見つかったからいけないんだ・・・。耳のそばでブンと音が鳴り、風が吹いて、白や黄色の花がゆさゆさと揺れた。もう大丈夫、のりちゃんは遠くを歩いている。梅の木畑を出て小さなお茶の木がある高い場所からまあるい山の方を見ると、紅色や灰色を混ぜん込んだような空が見えた。汚れてしまった靴を見ていると何だか寂しくなってきて、のりちゃんに追いかけられた事、梅の木おばけを全部引きちぎって退治したことは、あたしだけの秘密にしようと思った。そして、今度追いかけられたら、「やめて」って言ってやるんだ。絶対に。
2012.12.10
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